2025年12月10日(水)から12月13日(土)までの4日間、江東区辰巳のHAKUTEN T-BASE(制作スタジオ)にて「Hakuten Open Studio 2025」(以下、HOS)を開催いたしました。本展には約1500名の方々にご来場いただき、 HAKUTENの1年間の取り組みを代表する50を超えるプロジェクトやプロトタイプを展示し、来場者の皆さまと共にこれからの「体験のデザイン」を考える場として、一般公開も含めたオープンな形式で実施いたしました。本レポートでは、展示の見どころと来場者様の反応をお伝えします。

本年度のテーマは「よりあい -Shared Thought-」。 AIやデジタル技術が急速に進化し、効率や合理性が求められるいまだからこそ、直接顔を合わせ、考えを共有し、議論し、実験を重ねるプロセスこそが、良質な体験を創るために重要だと私たちは考えます。「共に語り、共に決め、共に動く」という「よりあい(寄合)」の精神を軸に、次なる発想や社会を豊かにする種が生まれる場を目指しました。

「よりあい」を体現する会場デザインと音の演出

◎空間全体デザイン

空間演出においても、テーマである「よりあい」を象徴するデザインを施しました。 会場の中心には、全国各地の職人によって作られた提灯を用いたモニュメントを設置。光があるところに人が集まり、会話が生まれる「よりあい」の場を形づくりました。

◎サウンドデザイン

会場内のサウンドは、人々が集い節目を共有する際の「手締め(一丁締めや三本締め)」のリズムに着想を得て、複数のスピーカーから流れる楽器の音が、緩やかなズレとゆらぎを持ちながら一つのリズムを生み出す心地よい音環境を構築しました。

◎グラフィックデザイン

キービジュアルデザインは、人と人が“よりあう”ことを視覚化。 それぞれが独立した個性でありながらゆるやかに繋がることで新しいかたちを作り、居心地の良い“場”が生まれる瞬間をキービジュアルとしてロゴ化しました。

展示キャプションや受付什器の腰巻といった空間内サインは、表情の異なる紙を重ね合わせて制作しています。紙の風合いが持つあたたかさや1枚ごとに違った表情を見せる仕上がりが、ゆらぎのある空気感をもたらすことを目指しました。 また制作メンバーが集まりその場で紙の配置を決めながら作っていくプロセス自体でもよりあいを体現したものとなっています。

思考プロセスを紐解く、4つの展示構成

私たちが追求する「体験のデザイン」の現在地をお伝えするため、本展では「よりあい」を軸とした4つの視点(問い×解い / 課題への挑戦 / 思考の交差 / 未来探求)で構成し、HAKUTENのクリエイティブの軌跡を紹介しました。

「01 問い×解い」ー 問いからはじまる「よりあい」

冒頭を飾る「問い×解い」のエリアでは、表出された課題への対応だけでなく、探るべき「問い」を見出し、その解を共に考えたプロジェクトを展示しました。

中外製薬株式会社が新たな研究施設を設立するに伴い、エントランスに設置した2種のモニュメント。Life Science(生命科学)の根幹である DNAの螺旋構造を元に導き出した「問い」からその試行錯誤した「解い」のプロセスを紹介しました。

上記写真右側の「Life Science Code | ライフサイエンスの記憶」は、イタリアで開催された世界最大級のデザイン賞「A’ Design Award & Competition 2025」の「Fine Arts and Art Installation Design Category」にて、部門最高賞のPLATINUMを獲得するなど、多方面からの評価をいただきました。

その他2025年の受賞歴まとめはこちら
https://www.hakuten.co.jp/tex/blog/award2025

株式会社資生堂とともに共創した、1年間の中での実績を集めたエリア。銀座エリア3拠点にある資生堂ウィンドウディスプレイをジャックし、SHISEIDOを象徴する花椿マークをモチーフとしてそれぞれ異なる視点から立ち上げた「ART OF CAMELLIA」のプロトタイプを初め、清水寺や出雲大社の屋根を手がける檜皮葺職人(友井社寺 氏)と共創した「Personal Forest」、唐草模様をモチーフとし、東京理科大学, 理学部第一部化学科, 准教授 菱田真史氏、監修のもと企画・デザインを行った「互う美」などの「生命美」を問いかけた制作プロセスを展示しました。

「02 課題への挑戦」ー 課題に立ち向かう「よりあい」

このエリアでは、社会課題や事業課題に対し、真正面から対峙し解決へと向かうプロジェクトを紹介しました。特にサーキュラーデザインや新しい技術実装への挑戦が並びました。

デジタルファブリケーションによる循環型展示。工具レスで組み立て可能な構造を開発しました。端材を最小限に抑え、軽量かつ再組立可能な、循環型の新しい展示手法を複数提示しました。

また資源循環率の可視化・サーキュラリティ評価の自動生成システム事例もご紹介しました。

「03 思考の交差」ー 視点を交合わせる「よりあい」

多様な視点と思考を交差させ、領域を越境していくブランディングや常設施設、大阪・関西万博の事例を展示しました。

平和と復興のエナジーをテーマとした大阪・関西万博2025 広島県ブース、「RE:WORLD HIROSHIMA」。被爆を経た平和への取り組みとエネルギッシュな広島の魅力を再構築。折り鶴を用いたアートや、見る・踊る・嗅ぐといった世代や国籍を問わず直感的に楽しめる体験の実装を通じて、魅力的な食文化を持つ、新しい広島像を提示しました。

※大阪・関西万博2025の実績まとめはこちら

その他にも東京・大手町のオフィスビルで10年以上かけて育まれた “都市の森”を舞台に、働く人々の日常に「森で深呼吸する」感覚を届ける試み「森呼吸BAR」のフィールドワークレポートから納品までのプロセス資料の展示や、東京ドームシティお化け屋敷の8年ぶり大幅リニューアルプロジェクトの一部を体験できるブースもなどを展示しました。

「04 未来探求」ー 未来に向けた実験の「よりあい」

最後のエリアでは、目の前の課題対処にとどまらず、未来の種となるアイデアや技術を探求するプロトタイプや研究開発作品を展示しました。

テクノロジーと五感の融合を体験に落とし込んだこちらの展示。ソニーが開発した、裸眼で立体視が可能な「空間再現ディスプレイ」に物理的な造作を組み合わせた映像体験(上記写真)に加え、空間芳香デバイス「Grid Scent™(グリッドセント)」を用いた嗅覚を体験デザインへ組み込む実験的なプロトタイプを展示。バーチャルとリアル、行為と香りを結びつける新たな体験価値を探求しました。

余材に新たな価値を与える「Ping-pong Block Project」 卓球ラケットの製造過程で生まれる余材を資源として見直し、次世代を担う中学生(新渡戸文化学園)と共に新しい遊びや学びを生み出す共創プロジェクト。廃材を価値あるものへと転換する、未来に向けたものづくりの姿勢を示しました。会期中は余材で作成された卓球台で実際に卓球を楽しむ来場者の姿も見受けられました。また、会期最終日の土曜日は新渡戸文化学園の学生の皆様も説明員として参画し、プロジェクトの概要を来場者に丁寧に説明をされていたのが印象的でした。

【博展×新渡戸文化学園×バタフライ】“余材から未来をつくる” 「Ping-pong Block Project」開催レポート
https://www.hakuten.co.jp/news/post_13645

制作の現場を一望する「Production Hub」

3階の展示フロアでの体験の締めくくりとして、T-BASE 1階の作業スペース「Production Hub」をご覧いただけるエリアを設けました。博展の制作部が単管パイプで組み上げた仮設の橋の上から、レーザーカッターやNC加工機が並ぶ作業場と、実際に制作に打ち込む社員たちの姿を一望いただきました。

まちをひらく「SHINKIBA CREATIVE HUB」との同時開催

本年は、HOSから生まれた地域回遊イベント「SHINKIBA CREATIVE HUB」も同時開催されました。新木場エリアの工場や倉庫8会場を開放し、普段は立ち入れない制作の現場や素材に触れる機会を創出。新木場駅には、街の木端から3Dプリントで制作されたインフォメーションセンターを設置するなど、企業の内側だけでなく、地域社会へと「よりあい」の輪を広げる3日間となりました。
※SHINKIBA CREATIVE HUBは12月11日(木)から12月13日(土)までの3日間の開催

テーマに合わせた様々な「よりあい」コンテンツ

会期中は様々な「よりあい」コンテンツも企画、実施しました。

YORIAI TALK SESSION(よりあいトークセッション):会期中は、乃村工藝社様、ソニーグループ様、船場様、市原えつこ氏など豪華ゲストを迎えたトークセッションも多数実施し、デザインやサステナビリティ、アートなど様々な視点で体験を軸に熱い議論が交わされました。
ご来場いただいたみなさま、ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。

HOS2025 トークセッションレポートはこちら
https://www.hakuten.co.jp/tex/blog/talkreport_hos2025

YORIAI CAFE TOKIDOKI(カフェときどき):普段インナーコミュニケーション施策で実施している「tokidoki」プロジェクトがHOSにて特別オープン。バリスタが淹れてくれる最高のコーヒーであたたまろう。

YORIAI WORKSHOP(よりあいワークショップ):端材の寄木(よせぎ)でキーホルダーをつくろう。

YORIAI OPEN LUNCH(よりあいオープンランチ):お腹が減っても大丈夫。キッチンカーでみんなでランチ。

YORIAI PARTY(よりあいパーティー):12月11日、12日の夜には寄せ鍋を囲みながらよりあい、語らう招待制のレセプションパーティを開催。会場は多くの来場者で賑わいました。ケータリングはテーマに合わせて、同じ辰巳エリアを拠点に木材業を営む株式会社榎戸材木店様が経営・運営しているうみねこ食堂さんにご提供頂きました。

YORIAI MIYAGE(よりあい土産):人と人とが寄り合う体験 ≒ 乾杯とし、そのきっかけを生み出す升【より枡】を制作。新木場を神出鬼没に現れる ”寄合屋台” を見つけ出し、この升で乾杯するととっておきのプレゼントがもらえる。街めぐりのきっかけと新木場のモチーフである木の質感を兼ね備えた体験型お土産。(クリエイティブコレクティブ体験発想集団【Intandible Studio】がお土産の企画、実施を担当)

全体を振り返り

開催4年目を迎えたHOSは、今回初めて一般公開のオープンイベントとして開催しました。おかげさまで様々なメディアにも取り上げていただき、SNS等の情報をきっかけにご来場された方も多数いらっしゃいました。

普段からお付き合いのあるクライアントさまやパートナーさまにとっても、日々の案件を通して見る博展は、限られた一面であることが少なくありません。HOSにご来場いただくことで、「博展さんってこんなこともやってるんですね」や「これ、博展さんが手がけていたんだ」といった声を多くいただきました。

博展のデザインプロセスや制作の裏側、プロトタイプをお見せするこのような場をつくることで、新たな体験領域のご相談や、共創プロジェクトにつながる機会も増えてきています。スタジオをひらくことで、より良いコミュニケーションの循環が生まれていることを実感しています。

これからも博展は、人と社会のコミュニケーションに心を通わせ、未来へつなげる原動力となる「体験」をつくっていけるよう、発信し続けていきたいと思います。

ご来場いただいたみなさま、ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。

本イベントコアメンバー 左からクリエイティブディレクター歌代悟、プランナー中彩乃

2025年 イベント特設ページ (会期は終了しております)

https://hos.hakuten.co.jp/

<Hakuten Open Studio 2025 Credit>
CREATIVE DIRECTION:歌代悟
OPERATION DIRECTION:中彩乃
PLAN:浅井玲央
3D DESIGN:稲原章太郎, 木下侑樹
2D DESIGN:宮崎淳, 真崎絢香
WEB:後藤優里, 森本采女(デジタルエクスペリエンス株式会社
TECHNICAL DIRECTION:山田翔一, 浦田泰河
SOUND DESIGN:中川丘
PRODUCTION:池端翔太, 鈴木崚介, 池田夏唯
SIGN GRAPHICS PRODUCTION:松村峰, 山下美咲, 小林大介
WOOD WORKSHOP:中井綾香
LIGHTING PLAN:大塚日向
PR:酒井美菜子, 浅井亜紀子, 松浦緑子, 久我尚美, 伊藤愛希
SPECIAL THANKS:南正一郎, 田草川貴, 宮嶋聡, 中里洋介, 真崎大輔

<Report Credit>
Editor | 酒井 美菜子
Photographer | 村上 大輔