株式会社博展(以下、博展)と株式会社榎戸材木店(以下、榎戸材木店)が中心となり今年初開催を迎えた「SHINKIBA CREATIVE HUB」。そのレセプションイベントとして、OPENING SESSIONがHAKUTEN /T-BASEにて開催されました。HAKUTEN OPEN STUDIO(以下、HOS)も同時開催される賑やかなT-BASEには、新木場の事業者やSHINKIBA CREATIVE HUBを訪れた関係者が集まり、一連の催しの立役者たちが語る企画への思いや未来への展望に聞き入っていました。

実行委員会 代表 博展 / 中里 洋介

街をかさねなおし、新木場で”火起こし”がしたい

始まりは3年前、博展が忘年会の延長線上に企画したHOSに原点があります。社員やごく親しい仲間内で始めたこのイベントは、2025年には1500名近くが集う規模に成長。せっかく新木場に人が集まるのであればと、博展のスタジオだけでなく新木場という街をひらく「SHINKIBA CREATIVE HUB」も同時開催されることとなりました。

実行委員会 共同代表 榎戸材木店 / 榎戸 勇人

では、なぜ「街をひらく」という発想に至ったのでしょうか。このイベントの代表である榎戸材木店・榎戸勇人さんはまず、新木場の特徴を3つ挙げました。

1. 江東区の地区計画条例により、住宅を建てられない(人が住めない)地域が大半を占める
2.この1年で15〜18%ほど地価が高騰しており、容易な新規参入が難しい
3.材木業の衰退、異業種の流入などによりステークホルダーが多く調整が難しい

木場からの大規模移転、バブルの崩壊、木材需要の減少など、いくつもの転換点を経て現在に至る新木場は、いつの間にか魅力が伝わりにくい街になってしまっていたのです。

転換点や課題をポジティブに捉えることはできないか。材木業に限らず、歴史とともに事業が多様化する今の新木場を可視化してみると、新木場はもっと面白くなるかもしれない。そういった思いを込め、「かさねなおす」をコンセプトに、中へ外へ街をひらくイベントを開催することとなりました。

榎戸さんとともに代表を務める博展・中里洋介は、「新木場で火起こしがしたい」と場を驚かせるコメントとともに、このイベントに対する思いを語りました。「もちろん、本当に火を起こすのではなくて(笑)。ここに集まった人で共感を生み、ディベロッパーや行政へとつないでいく。そういった思いや熱量が街の活性化の始まりには大切かなと思ってます。」と中里。まるで文化祭のように楽しみながら各々の事業を公開するオープンファクトリーやエキシビションも、街の一員としての当事者意識の醸成につながると補足します。

一方、榎戸さんは「このイベントが目指すのは材木屋の復活ではない」としながらも、幼い頃から慣れ親しんだ新木場の材木業に対する思いを語ります。「材木業の衰退を過去の話にするのではなく、この地域のストーリーや先人たちの思いをクリエイティブと掛け合わせることによって次世代に伝えていきたい。SHINKIBA CREATIVE HUBがそのツールとして機能していってくれたら」(榎戸さん)と期待を込めました。

中里もそれに続け、「土地のブランドや地場の特徴をゼロから築き上げるには何十年もかかる。新木場のブランドを継承し、新しい価値に変換していったほうが面白くなる。東京のカルチャーとして捉えればインバウンドにも訴求できるのでは」と新木場の未来に思いを馳せました。

価値のないものを価値あるものへ。駅を新たな地域の”資源循環拠点”へ

SHINKIBA CREATIVE HUBは、地域の事業者だけでなく企業も参加しました。続いてのセッションでは、駅を交通の拠点から、地域の拠点、さらに地域資源の循環拠点へと発展させ、地域と人をつなぐ駅にすべく、高架下にリサイクル素材によるインフォメーションセンターを設置したJR東日本スタートアップ株式会社と株式会社Spacewaspの取り組みが紹介されました。

本イベントにて新木場の高架下で実際に行った現地の様子

Spacewaspは植物廃材を再資源化し、建築内装に活用するというアップサイクルに取り組む会社です。今回は新木場で出た木くずから特殊な樹脂を生成し、3Dプリンターで切り株を模したインフォメーションセンターを出力しました。このインフォメーションセンターは植物素材を原料にしているため、土に還元されます。また、設置場所はデッドスペースになっていた高架下のJR所有地を利用。活用されてこなかった空間に価値をもたらす取り組みにもなりました。

今回のチャレンジに対して、Spacewaspの瀬戸口稜二さんは「素材となる木くずを、パウダー状の扱いやすい形でお譲りいただいた。事業者の皆さんの連携がスムーズで驚いたと同時に、素材としても問題なく使用できたので今後の取り組みも検討できそう」と手応え十分。JR東日本スタートアップの中村元さんも「駅周辺の人やモノがつながるハブへと進化させ、駅の地域拠点化を目指す。その第一歩として非常に意味のある取り組みができた」と語り、今後も新木場エリアにおいて人と資源をつなぎ、循環を生み出す地域拠点化に向けた伴走型地域づくりを推進していく考えを述べました。

10年後の新木場はどんな色、どんな形? ワークショップ

最後に、かえつ有明中学・高等学校のものづくりプロジェクトメンバーが会場参加者を巻き込んでミニワークショップを開催しました。ワークショップのテーマは、「新木場に対するイメージ」と「10年後の新木場のイメージ」。新木場の事業者から譲り受けた、色も形もさまざまの木片にそれぞれのイメージを重ね合わせ、コメントを書き込んで紹介し合うというものです。

客席にいたかえつ有明中学・高等学校の生徒が新木場のイメージとして選んだのは、赤く塗られた木片。街の随所に貼られたSHINKIBA CREATIVE HUBの赤いサインが印象的だったようです。また、都内在住の男性はフローリング材の木片を選びました。「幼い頃、自宅をセルフリノベーションする木材を買いに親に連れられて来たことがある。建築家の父が『良い木材を買うなら新木場だ』と言っていたのが印象的」と回想していました。

一方、新木場で材木店を営む男性は「新木場にはあまり活気がない」とリアルな印象を共有。「10年後には活気あるクリエイティブな街になっていてほしい」と願いを込めます。有楽町線をよく利用するという男性は角に丸みのある木片を選び、「バブル崩壊で状況は変わったが、かつては輸入材で世界とつながっていた場所。空港からのアクセスも良いし、円を描くように価値が広がる、にじみ出す10年後を迎えていたい」とコメントしました。

ワークショップでコメントを書き込んだ木片はSoko Station 146で展示された後、ものづくりプロジェクトで作っている小屋の壁の装飾に活用されるとのことです。

灯った火を、消さないために

「新木場は、きっともっとおもしろくなる。」

セッションを通じて、登壇者と来場者が、この言葉を確信し共有した一夜となりました。見えてきたのは、新木場の歴史を尊重しながらも、そこに新しい視点を「かさねなおす」ことで生まれる無限の可能性です。

博展はこれからも、この街の「火」を絶やすことなく、クリエイティブの力で新しい物語を紡ぎ続けていきます。

SHINKIBA CREATIVE HUB イベントの様子はこちらをご覧ください。

歩いて、見て、出会った。「木の街」にはさまざまな顔があるSHINKIBA CREATIVE HUB -OPEN FACTORY & EXHIBITION- レポート

https://www.hakuten.co.jp/tex/blog/report_shinkiba-creative-hub