近頃よく耳にする「共創」について、意味や定義を解説していきます。また、共創が求められる背景やメリット、具体的な事例も紹介します!

Index
共創とは? 意味や定義を解説!
オープンイノベーションとの違い
共創が注目される背景
共創の目的・効果
共創に必要な2つの要素
企業が共創を実現するための具体的な手法
創造性を高める「共創」事例

共創とは? 意味や定義を解説!

経済産業省が2022年に公表した「令和 3 年度企業による価値共創事業の実態調査」では、「価値共創」を以下のように定義しています。

「社会に変化をもたらす新しい価値を共に生み出す活動。そのために、画一的でない価 値観を有する多様なステークホルダーと、共有された大きな目的のもと、創造的対話 を継続的に実施する。各々が貢献(提供)できる資源を持ち寄り、組み合わせること で、実験・実装を行い、地域社会の共感を呼んでいくもの。

ここで言及されている共創の「ステークホルダー」は、企業、行政・自治体、研究機関・専門家、消費者・市民など、多様な組織や団体があげられます。

また、企業の社内メンバー同士でも「共創」という文脈で語られることもあります

「共創」の具体的な事例などについて詳しく知りたい方はこちらの資料もお役立てください。

オープンイノベーションとの違い

「共創」とよく混同される「オープンイノベーション」ですが、オープンイノベーションとは、企業がイノベーションを生み出すために、自社で足りない経営資源を外部の知見やリソースと組み合わせることを指します。

例えば、産学官連携や他企業との共同開発、ライセンス供与などです。

一方で、共創には「顧客起点」「社会や地域への貢献」という意味合いが含まれることが多く、定義としてはオープンイノベーションに比べてやや広いです。

「オープンイノベーションとは?」

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共創が注目される背景

「共創」が注目される背景には、以下3つの理由があります。

①自前主義の限界

近年、IT技術の進歩やグローバル化など、事業を取り巻く環境変化のスピードが早まり、競争が激化しています。

そんな中、自社の経営資源のみで研究開発や販売活動を行う自前主義(クローズド・イノベーション)は限界を迎えており、企業が勝ち残る戦略として、外部のリソース活用や協業が必要となっているのです。

②価値観の多様化

現代の日本は供給力が需要を上回っており、市場や消費者が自らの価値でモノを選ぶ時代になっています。
人々の価値観が多様化するなかで、顧客視点を取り入れる製品開発方法が注目される傾向にあります。

つまり、消費者との共創が必要となってきていると言えるでしょう。

③社会課題解決への機運の高まり

経済成長だけでなく持続可能性を重視した「SDGs」の浸透など、社会課題解決への機運が高まっています。
ESG投資やエシカル消費など市場からも社会的な責任が求められている現在においては、ほとんどの企業がSDGsの取り組みを意識しているのではないでしょうか。

しかし、フェアトレードや環境負荷の低減などの社会課題・環境課題の解決に向けた取り組みでは、サプライチェーン全体の透明性を高める必要があるなど、自社だけでは解決が難しいのが現状です。
そのため、共通の社会・環境課題の解決を目的に共創プロジェクトが発足しているという背景もあります。

共創の目的・効果

多くの企業にとって、共創は目的ではなく手段のひとつです。
ここでは「共創」の目的について解説します。

新規事業(新技術・新製品)開発

共創によって、自社の技術やアイディアだけでは生まれなかった新規事業や新技術、新製品の開発につながり、新しい価値を生み出せます。

また、生産や販売の過程において、資源の共有によるコスト低減などのシナジーも期待できます。

企業ブランディング

共創を通じて、自社の技術や高度人材などがステークホルダーと交流することでより深い企業理解へと繋がり、企業ブランドや企業イメージの向上につながります。

経営理念を実現するための活動や、CSR活動といった社会貢献の一環にもなり、企業の社会的価値を高められます。

コミュニティ形成

デロイト トーマツ コンサルティンもヒト・モノ・カネ・情報に次ぐ「第5の経営資源」としてコミュニティに注目しています。
同じ社会課題の解決という目的を共有した共創パートナーとの接点をを増やすことで、コミュニティが形成され、それが企業としての経営資源となるのです。 

コミュニティ基盤ができることで、知識や技術など他の経営資源がコミュニティ内で相互に作用し、結果として企業として必要不可欠な競争力が高まると言えるでしょう。

「共創」の具体的事例について詳しく知りたい方はこちらの資料もお役立てください。

共創に必要な2つの要素

続いて、共創に必要な要素や条件について解説します。

▶パーパス

パーパスとは、ステークホルダーの共通の課題を言語化した、共通目的のことです。

共創において、業種や専門性、立場が異なるステークホルダーと共にプロジェクトを推進するには、パーパスの策定が必要不可欠と言えるでしょう。

また、イノベーションの実践を推進するためのアライアンス組織であるFCAJ の研究プロジェクトから派生して生まれたフレームワークとして、パーパスと各ステークホルダーの目的・役割を図化した「パーパスモデル」も注目されています。

パーパスモデルは、多様なステークホルダーが一緒に活動するための「パーパスを中心とした共創プロジェクトの設計図」です。共通のフォーマットをつかって、プロジェクトのパーパス(共通目的)を中心に、誰がどんな役割で何のためにプロジェクトに参加しているのかを可視化することができます。

(引用元:図解総研

▶共創の場

共創には、創造的な対話や実験を継続的に行える「共創のための場=共創空間」が重要です。

リアル空間やオンライン上のコミュニティなどで、対話やプロトタイピングができる共創の場を作り、運営することが求められるでしょう。

企業が共創を実現するための具体的な手法

引用:https://www.kansai.meti.go.jp/2-3sangakukan/kachikyousou/houkokusyo.pdf

ここでは、企業が共創を行う際の具体的な手法について紹介していきます。
オランダ・アムステルダムの研究機関(Waag technology & society)では、「探求」、「実験」、「実装」という 3 つのプロセスの循環によって価値共創が進んでいくとしています。

探究

1)主体が共創空間などの場に参加する
2)つなぎ手※による支援を受けながら、関係をつくり課題を探究する
3)ステークホルダーと目的を共有し、プロジェクトを形成する
※様々な主体を巻き込み、互いにつなぎ合わせることで価値共創につなげるキーパーソンのこと

共創をおこなう際、自社が主体となってプロジェクトを立ち上げる方法と既にある共創の場に参加する方法があります。

自社で共創プロジェクトを立ち上げる場合は、パートナー企業を募る必要があるため、リアルでコミュニケーションできる共創空間や、場所にとらわれず知識の共有ができるオンラインコミュニティなどの拠り所をつくるところから始めましょう。

また、このコミュニティ形成においては、様々な主体を巻き込み、互いにつなぎ合わせることで価値共創につなげていくうえでのキーパーソンとなる「つなぎ手」の存在も重要です。

共創プロジェクトは、大きな方向性としてのパーパスを共有したコミュニティであることが前提です。それぞれの技術やナレッジを組み合わせていくキューレーターとしてつなぎ手が機能し、目的や実現したい姿の解像度をあげるところまでが探究のステップに求められます。

実験

4)ステークホルダーを増やしていき、小さく実験できる場で実行していく

目的や実現したい姿を共有し、プロジェクトを形成した後はその志を共にするステークホルダーを増やしていくことと、小さく実験しその成果や進捗を伝えていくことが大切です。

いきなり大きな予算を動かすのではなく、小さく実験し検証を繰り返すなど、プロトタイピングをしながら仲間を増やしていくことが重要です。

実装

5)実験を重ね、地域の生活や社会への実装を行う
6)課題解決に向けて、つなぎ手やプロジェクトの枠がなくても自立し、地域に根付く

実験の段階で成果や課題解決の兆しが見えたら、次は地域や社会など少し大きなフィールドでの実装段階に入ります。
例えば、自治体や行政などと連携して地域の規制を緩和して実証実験を行うケースや、農協・漁業組合などの団体と連携し、最新のICT技術を活用したデータ収集を行うケースがあります。

このように、具体的に実装していくパートナーと繋がることで、つなぎ手のサポートがなくても自立し、地域に根付く共創となっていきます。


以上のように、共創を実現には3つのプロセスがあります。

また、これらのプロセスは一過性のものではなく必要に応じてプロセスを行き来し、自律的な共創へと成長させていくことが重要です。

創造性を高める「共創」事例

①共創ラボ「LINKSPARK」|西日本電信電話株式会社

はじめに紹介するのはNTT西日本の共創ラボ「LINKSPARK」。

NTT西日本が推奨するDX推進の拠点「LINKSPARK」は、NTT西日本の技術やソリューションを活用して、地域課題の解決や産業発展に取り組み、新たなビジネスの実現を通して社会貢献していく象徴的な施設として位置付けられています。

大阪・名古屋・福岡の3拠点ある「LINKSPARK 」では、拠点ごとに異なる課題や地域特性に合わせて、目的を明確化し、お客様のDXが加速するような空間設計をおこなっています。

また、一方的に情報を伝えるのではなく、体験を通じて来場されたお客様に興味を持ってもらえるような仕組み作りをするなど様々な工夫が施されています。

「LINKSPARK」開設をサポートしたHAKUTENは、DXの力によって地域の産業を盛り上げる一手になれるようにプランニングしていきました。本プロジェクトの背景がわかるストーリーブログも公開しておりますのでぜひご一読ください。

共創ラボ「LINKSPARK」のプロジェクトストーリー

記事はこちら

②アウディジャパン「Audi Sustainable Future Tour Hachimantai 」

この共創プロジェクトは産官学で意見交換をおこなうツアーイベントです。

持続可能な社会の実現の重要性について、一人ひとりが考えるきっかけの場を作ることを目的に、アウディの電気自動車「e-tron」でサステナビリティに取り組む地域を巡るプレスツアーを実施しました。

ツアーの最後には、八幡平市市役所を訪れ、農業と観光の発展を目指す八幡平市長、国内にてエネルギー支援と地熱発電の研究をおこなうJOGMEC委員、東北大学の大学生、そしてアウディジャパンの産官学による未来共創ミーティングを開催しました。

③共創スタジオ「T-BASE」|株式会社博展

共創プロジェクトの具体例のひとつに、クリエイティブカンパニーHAKUTENが立ち上げたクリエイティブチーム「Experiential Design Lab.(EXD-Lab.)」があります。

Experiential Design Lab.(EXD-Lab.)」は、イベントの未来をつくりだすことを目的に、”イベント”の価値を再定義化し、次のトレンドをつくりだすためのプロジェクトです。

HAKUTENが所有する共創スタジオ「T-BASE」は“製造拠点から共創拠点へ“をコンセプトに、クリエイティブとエンジニアリングの双方向のコミュニケーションスペースを設け、デザイナーやエンジニア、外部パートナーがより実験的なクリエイティブに挑戦し、新たな価値を生み出す場として再構築しました。

ここでは、実際に顧客に納品前の仮組み(プロトタイピング)の様子を見ていただき、その場で意見を交換できます。

また、HAKUTENは江東区が推進する江東ブランドにも加盟しており、ものづくりに関するステークホルダーと実験や実証を繰り返しています。

さらに、共創スタジオ「T-BASE」では、イベントのサステナビリティについて共に考えるショールーム「T-CELL」の個別ツアーを開催しております。

企業のマーケティング活動において欠かせなくなっている”サステナビリティ”への取り組みに向けて、イベントのサステナビリティを共に考えるツアーです。

この見学ツアーはどなたでもご参加いただけますので、こちらのフォームよりお申し込みください。

上記内容から、共創を継続的に進めるには共創空間が非常に役立つことがわかります。

人と社会のコミュニケーションを「体験」によってつなぎ、お客様のビジネスを次へ動かすクリエイティブカンパニーHAKUTENは、「共創」についてまとめたお役立ち資料を公開しております!

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