2025年、世界で次世代を担う注目の人材100人を紹介するForbes JAPANの特集「NEXT100」に、当社所属のアートディレクター/空間・体験デザイナー、伊藤 愛希(いとう・あき)さんが選出されました。

空間体験という“記憶”を形づくる彼女の仕事は、国内外で高い評価を受け、世界3大デザインアワードの一つであるRed Dot Design Award グランプリや日本空間デザイン賞グランプリなど数々の賞に輝いています。
今回は「NEXT100」に選出されたことを記念して、彼女の仕事へのまなざしや、これまでてがけた案件やキャリア、そしてこれからのビジョンについて話を聞きました。

選出に関するニュースやこちら

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「空間・体験デザイナー」として選ばれたことに、喜びを

― Forbes「NEXT100」に選出されたときの気持ちは?
素直に嬉しかったです。特に「空間・体験デザイナー」という肩書きで評価していただけたことに、大きな意味を感じました。空間体験は、人の心に強く残るものですし、人生を豊かにする力があると思っています。今回の選出を通して、そうした「空間体験」という分野にももっと光が当たるきっかけになればと思いました。

― ご自身では、どのような点が評価されたと感じていますか?
人の記憶に残る“物語のような体験”をつくることを常に意識し、コンセプトから細部まで一貫してデザインしてきた点だと思います。そして何より、空間体験は一人ではつくれません。入社して以来、どんな時も諦めずに支えてくれた先輩方や、常に隣で共にプロジェクトを作っているメンバーがいてくれるからこそ、さまざまな挑戦を形にすることができました。周りの方々に出会えて、みんなと積み重ねてきた日々が、評価に繋がったのだと思います。

和傘の美しさを、銀座の街から世界に伝える

伊藤さんの代表作の一つが、2023年から2024年にかけて銀座資生堂ビルで展開されたクリスマスのウィンドウディスプレイ「在る美」です。和傘をモチーフに、動きと光を組み合わせたインスタレーションは、国内外で高い評価を受け、Red Dot Design Award グランプリ、日本空間デザイン賞グランプリなど、名だたる賞を多数受賞しました。

― 「在る美」の制作において特に意識されたことは?
日本の工芸品が元々持っている美しさ「そこに在る美」を引き出した作品になります。
和傘をクリスマスツリーに見立てました。傘が開閉する特徴を活かし、動作設計までを含めてデザインを行ったことで、より“生きた”空間になったと感じています。

【「在る美」について】

「Red Dot Design Award 2024」グランプリ、 “東京銀座資生堂ビル”「在る美」が受賞

日本空間デザイン賞2024 グランプリ、博展が手掛けた“東京銀座資生堂ビル”「在る美」が受賞

物語を描くように、空間をデザインしたい

― 空間デザインを志したきっかけを教えてください。
幼い頃から、テレビドラマやCMの空間美術に魅了されていました。自由帳には、CMの絵コンテやセリフの書き起こし、ドラマの部屋の間取り図まで描いてるような子でした。その延長で、当時好きだった漫画の舞台である武蔵野美術大学を目指し、建築学科に進学しました。学びを深める中で、建築という領域は形になるまでに時間がかかるという特性を感じるようになり、「目の前にある課題をもっと早く社会に実装したい」と考えるようになりました。
その思いから、建築よりも短いスパンで実装が可能で、企画から空間設計、施工まで一貫して携われる博展に入社しました。以来、ショーウィンドウから展示会、イベント、商業空間まで、幅広いプロジェクトに携わっています。

「みんなに伝わる」でも「近づくと深い」

― 空間デザインをする上で何を心がけたりしていますか?
いかに作品や素材に愛情を持ち、いかにドラマティックかつ親切でにわかりやすくするかを意識しています。
例えば「在る美」では、誰が見ても遠目から「クリスマスツリーだ」と分かるけれど、近づくと緻密なディティールがあって和傘の美しさがより感じられる。素材や構造、光の扱いなど、細部まで設計しているからこそ、「近づけば近づくほど深みがある空間を創る」ということを心がけています。

― わかりやすさをなぜ大事にしているのですか?
特にショーウィンドウはパブリックアートに近いものだと思っています。美術館に置かれるアート作品だったら、リテラシーを必要とするものでも成立すると思いますが、ショーウィンドウなので、なるべく多くの人が楽しめるものを作る必要があると思っています。

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商品より“物語が伴う文化”をつくりたい

―最近では、サントリーさんとのプロジェクト「グラスとコトバ」も話題になりましたね?
その案件は「バー文化を広めたい」という想いのあるプロジェクトです。若い世代にも、もっとバーの文化を楽しんでほしいというサントリーさんのビジョンに共感して、空間体験として落とし込んでいきました。
商品を売るためだけの体験作りというより、物語を持っている文化を育てる。そういう仕事を今はしたいです。

グラスとコトバについて

https://www.hakuten.co.jp/works/entry_9849

―空間デザインを超えて、社会的な文脈への意識も強くなっているのですね。
そうですね。最近、日本の工芸や食材や文化の魅力に改めて気づくことが増え、「日本っていいな」と感じるようになりました。私自身、ずっと気づけていなかった価値がたくさんあって、それは生産者や職人も同じかもしれません。だからこそ、空間や体験を通して、そうした魅力を伝える仕事が増やしていければいいなと思っています。

明日が少し楽しみになる、そんな体験をこれからも

― 今後の展望を教えてください。
自分がつくる空間や体験によって、誰かの明日が少しでも楽しみになる。そんなデザインをこれからもつくっていきたいと思っています。これからも、社内外の多様なクリエイターと協働しながら、新しい挑戦を続けていきたいです。
具体的には、ホテルを、手がけてみたいです!空間から食事、そして寝具まで、衣食住すべての体験を設計できるってすごく面白い。空間・体験デザインとして、これ以上ないフィールドだと思っています。
こうして振り返ってみると、やっぱり私は「日本ならではの衣・食・住の体験」に強く惹かれているのだと思います。

― それはぜひ見てみたいですね。他に、密かに考えている夢は?
より物語のある空間を作りたいです。映画を見た後くらい心にグッとくるものを作りたいですね。
そしていつかは——物語をもっともダイレクトに伝えられる映画制作にも挑戦してみたいです。

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最後に、伊藤さんはこう語ってくれました。

「空間体験は、人生に小さな物語を加えてくれるものだと思います。だからこそ、一緒に作る人にも、体験する人にも、出会えて良かったなと思える記憶を届けたい。」

これからの活躍にも、ぜひご注目ください。

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