食品は、人の記憶や感情と結びつきやすい特別な存在です。
長く愛されてきた商品には、「家族の食卓」「子どもの頃の思い出」「変わらない安心感」など、そのブランドとともに積み重ねられた生活者のストーリーがあります。
そのため、食品メーカーにとって周年イベントは単なる節目ではなく、これまで築いてきた信頼を改めて可視化し、未来のブランド価値を再構築する重要な機会です。既存顧客への感謝とブランドロイヤリティの向上、さらに新しいファン層の獲得にもつなげられる取り組みとして、戦略的に設計することが求められます。
本記事では、食品メーカーが周年イベントを成功させるための企画設計、運営のポイント、具体的なアイディアや事例まで、実践的なノウハウを体系的に解説します。
Index
■食品メーカーの周年イベントが果たす3つの重要な役割
■食品メーカーの周年イベントを成功させる企画のポイント
■食品メーカーの周年イベント企画のアイディア
■食品メーカーの周年イベント成功事例
■まとめ
■食品メーカーの周年イベントが果たす3つの重要な役割
食品メーカーが周年イベントを実施する意義は、単なる節目の祝賀にとどまりません。企業ブランドの向上、消費者との関係強化、さらには従業員のモチベーション向上という3つの重要な価値を同時に生み出すことができます。
周年という特別なタイミングは、企業のストーリーや価値観を改めて伝える絶好の機会であり、戦略的に活用することで中長期的なブランディング効果を得られます。ここからは、周年イベントが持つ3つの意義について詳しく解説していきます。
企業ブランドの向上
周年イベントは、食品企業の歴史や理念、商品開発のこだわりを顧客に伝える最適な機会です。創業からの歩みや困難を乗り越えたストーリーを発信することで、企業への信頼感と親近感を醸成できます。
特に食品業界では、長年愛されてきた商品の歴史を紹介することで、品質への信頼性と安心感を強化し、他社との差別化を図ることができます。
次々と新商品が登場しては消えていく現代において、何十年にもわたり世代を超えて愛され続けてきたロングセラー商品の存在は、それ自体が厳しい市場で勝ち抜いてきた「品質の証明」に他なりません。その歴史を紹介することは、顧客一人ひとりが持つ「家族との食卓の記憶」や「懐かしい思い出」を呼び覚まし、ブランドとの間に深い絆を生み出します。
消費者との信頼関係の強化
周年イベントは、長年商品を愛用してくれた既存顧客への感謝を伝える貴重な機会です。感謝の気持ちを形にすることで、顧客ロイヤルティを高め、継続的な購買行動を促進できます。
同時に、新規顧客に対しては「長く支持される企業」という信頼性をアピールできます。
このように、既存顧客と新規顧客の両方にアプローチできる仕掛けを用意することで、消費者との信頼関係を多層的に強化することが可能です。
従業員のエンゲージメント向上
周年イベントは社外向けの施策と思われがちですが、従業員のモチベーション向上にも大きな効果を発揮します。会社の歴史や成果を共有することで、従業員は自社への誇りを再認識し、一体感を高められます。
特に食品製造の現場では、自分たちが作った商品が長年愛され続けていることを実感できる機会は、大きなやりがいにつながります。従業員が主体的にイベント運営に関わることで、組織全体の士気が高まり、その後の業務にもプラスの影響をもたらします。
■食品メーカーの周年イベントを成功させる企画のポイント
周年イベントを成功させるには、企画段階での綿密な準備が不可欠です。ここでは、企画の効果を最大化するために押さえておきたいポイントを解説します。
1. イベントを1つのプロジェクト・事業として設計する
周年イベントを実施する上で重要なのは、単なる祝賀行事として終わらせるのではなく、1つのプロジェクト・事業として考えることです。
社内外のステークホルダーとの関係性を深められる場として機能させることで、ブランディング、顧客のLTV向上、従業員のエンゲージメント向上など、さまざまな観点効果を発揮します。
2. ターゲットとコンセプトを明確に設定する
ターゲットやコンセプトが曖昧なままでは、思ったような成果は得られず、形式的なイベントに終わってしまいます。「誰にどんな態度変容を起こしたいのか」を考えることで、周年イベントの価値が高まります。
ターゲット(消費者、取引先、従業員など)を明確に定め、そのターゲットがイベントを通じてどのような体験をし、意識や行動にどんな変化を起こしたいのかを考えましょう。この設計図がイベントの骨子になります。
3. 連続的なストーリーで周年イヤーを設計する
周年イベントは、当日だけで完結させるのではなく、半年〜一年を「周年イヤー」として、連続的に企画を展開することが重要です。
ブランディングやビジョン共有は一日でできるものではありません。一貫性のあるメッセージを継続して発信していくことで、企業イメージを社内外のステークホルダーに浸透させることができます。また、準備プロセスから共有するで、共感や応援を集める効果も期待できます。
■食品メーカーの周年イベント企画のアイディア
食品メーカーの周年イベントでは、これまでの歴史を振り返るだけでなく、顧客と共にブランドの「今」を楽しみ、「未来」を作るアクションが求められます。ここでは、食品ならではの特性を活かした4つの具体的な企画アイディアを紹介します。
ファンと歴史を紡ぐ「思い出の食卓」エピソード展
長く愛されてきたブランドには、消費者の人生のワンシーンに寄り添ったストーリーが必ず存在します。「受験勉強の夜食」「初デートの味」「家族団らんの象徴」など、商品にまつわる思い出のエピソードと写真をWebやSNSで公募し、イベント会場や特設サイトで展示する企画です。
単なるパネル展示にとどまらず、エピソード内で語られた当時のパッケージや復刻版商品を実際に展示・試食できるようにすることで、来場者の記憶を刺激し、ブランドへの愛着(ロイヤリティ)をより深く、強固なものにします。
究極の「できたて」を提供する五感体験型ライブキッチン
食品メーカー最大の武器である「味覚」と「嗅覚」へのアプローチを最大化する企画です。普段は工場でしか味わえない「製造ラインから出た直後の味」や「焼き上がりの香り」を再現するライブキッチンを会場に設置します。
スーパーやコンビニで買う商品とは違う、圧倒的な鮮度や香りを体験してもらうことは、何よりのブランディングになります。さらに、プロのシェフによる調理実演や、開発担当者による「こだわりの食べ方」講座を交えることで、五感全体でブランドの魅力を再発見してもらう場を創出します。
次の時代を共創する「未来の味」総選挙&開発会議
過去を祝うだけでなく、未来へ繋げるための「共創型」プロジェクトです。「食べてみたい新しい味」や「復活してほしい幻のフレーバー」をファンから募集し、人気投票(総選挙)を行います。上位に入ったアイディアを実際に期間限定商品として開発・発売することを約束します。
自分のアイディアが商品になるかもしれないというワクワク感は、強い参加動機になります。また、試作品をイベント会場限定で提供し、その場での投票結果を反映させるプロセスを踏むことで、「みんなで作ったブランド」という当事者意識を醸成できます。
意外な美味しさを発見する「公式アレンジ」Bar
定番商品のマンネリ化を防ぎ、さらに好きになってもらうための「新しい食べ方」提案イベントです。自社商品に意外な食材を掛け合わせたり、通常とは異なる調理法を用いたりした「公式アレンジレシピ」を、Bar形式やビュッフェ形式で提供します。
「この商品にこんな使い方があったのか!」という驚きは、SNSでの拡散ネタとして非常に強力です。また、来場者に自分だけの「ちょい足しレシピ」を考案してもらうワークショップを併設することで、家庭での新たな消費シーンを生み出すきっかけを作ります。
■食品メーカーの周年イベント成功事例
ここからは、周年イベント・施策を成功させた食品メーカーの事例を紹介していきます。
①カルビー:創立75周年「フォトコンテスト」×「Fan With! Project」
カルビーは2024年に創立75周年を記念し、Instagram投稿型の全国フォトコンテストを実施。17拠点の従業員投票で各賞を選ぶ“社員巻き込み設計”で話題化しました。
また「Fan With! Project」と題したファンミーティングを開始。翌25年のポテトチップス発売50周年を記念したファンミーティングでは、参加後の購入金額が平均164%に伸長と成果も可視化。周年の“感謝”を購買行動へ繋げた好例です。
②江崎グリコ:創立100周年の統合施策(記念サイト・展示・Purpose発信)
Glicoグループは2022年の創立100周年に合わせて記念サイトや社史コンテンツを公開し、創業の哲学から未来ビジョンまでを一体で発信。周年を“ブランドの再定義”の機会にし、コーポレート・パーパスを世界へ周知しました。
国内外の全社員を対象とした社内イベントとアワード企画を実施し、社内の一体感向上を目指しました。
③エスビー食品:創業100周年キャンペーン(記念サイト・X施策×コミュニティ×施設リニューアル)
エスビー食品は2023年の創業100周を記念し、記念サイトやバーチャルミュージアムを公開。さらに100周年記念商品として社内公募により集まった865件ものアイディアをもとに生まれた商品を発売するなど、社員を巻き込んだ施策も実施しました。
またお客様とのコミュニケーションとして、Xでのプレゼントキャンペーンを実施し、応募約3万件・当選倍率300倍と大きな反響を獲得。また、コミュニティサイトや体験型イベントなど、多角的な接点を設けることで、オンラインとオフライン双方でブランドとの関わりを強化しました。
■まとめ
食品メーカーの周年イベントは、企業ブランドの向上、消費者との信頼関係強化、従業員エンゲージメント向上という3つの重要な意義を持ちます。
企画段階では、経営層との方針統一、明確なコンセプト設定、連続的なストーリー設計が重要なポイントとなります。
さらに、限定商品の販売や参加型コンテンツなどの工夫を加えることで、周年をきっかけにブランドの魅力を一層高めることができます。
周年イベントは企業にとって数年に一度の貴重な機会です。本記事で紹介したポイントを参考に、自社ならではの価値を発信し、顧客や従業員との絆を深める成功体験を創り出してください。
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