CES 2026は、日本企業にとって大きな転換点となりました。
かつて世界の家電市場を席巻していた日本メーカーですが、近年はその存在感の低下が指摘されています。
しかし今回のCESでは、日本企業の新しい兆しが見え始めました。
AI、モビリティ、エネルギーといった成長分野において、日本企業がどのような戦略で世界と戦おうとしているのか。
この記事では、CES 2026に出展した日本企業の動向を分析し、そこから見えてくる今後の成長戦略を整理します。
Index
■CES2026の日本企業の出展状況
■CESに出展した主要日本企業の展示ハイライト
■日本の強みが光る「エネルギー・最新素材・デジタルツイン」の新潮流
■CES2026から導き出す日本企業の成長戦略の4つの柱
■まとめ
■CES2026の日本企業の出展状況
CES 2026における日本企業の出展状況は、二つの側面から捉える必要があります。大手メーカーの回帰という明るい兆しがある一方で、全体の出展比率では依然として厳しい現実が浮き彫りになりました。ここでは、日本企業の現在地を正確に把握するため、具体的なデータとともに出展状況を整理します。
大手メーカーの回帰
CES 2026では、ソニー・ホンダモビリティ、パナソニック、日立製作所といった日本を代表する大手メーカーが積極的な展示を行いました。
パナソニックや日立製作所は、AIやサステナビリティを軸とした展示を展開しました。これは、単なる製品展示から「未来のビジョンを提示する場」へとCESの役割が変化したことを的確に捉えた動きといえます。
世界を驚かせた日本発スタートアップ31社
CES 2026で特筆すべきは、JETROが支援した31社の日本発スタートアップの活躍です。「Eureka Park」内に設置されたジャパンパビリオンから出展したこれらの企業のうち、4社がCESイノベーションアワードを受賞しました。
受賞企業には、複数カメラの映像をクラウド上で同期しスワイプで視点切替できる「SwipeVideo」を開発したAMATELUS、脳と身体の協調性を測定・トレーニングする「SHOSABI」、転倒リスクを1分で評価できるシステム「StA²BLE 2.0」を開発したUNTRACKEDが含まれています。これらのスタートアップは、明確な課題解決型のアプローチで世界を驚かせました。
■CESに出展した主要日本企業の展示ハイライト
CES 2026の主要テーマの一つが、AIとモビリティの融合です。日本の主要企業は、この領域で独自の強みを発揮し、世界に向けてビジョンを発信しました。ここでは、各社の展示内容と、そこから読み取れる戦略的な意図を解説します。
ソニー・ホンダモビリティ「AFEELA」が示す2026年デリバリーへの自信
ソニー・ホンダモビリティは、EVブランド「AFEELA」のセダンモデルを出展し、2026年内のデリバリー開始を改めて宣言しました。AFEELAの特徴は、クルマを「移動空間」ではなく「知性を持つパートナー」として再定義している点にあります。
高度なAI機能やエンターテインメント体験を車内に統合し、ソフトウェアのアップデートによって機能が進化していく「ソフトウェア定義車両(SDV)を実現しています。日本企業がモビリティの新しい価値を定義しようとする姿勢が、世界から高く評価されました。
ホンダの新EV「Honda 0 Series」とソフトウェア定義車両(SDV)の進化
ホンダは独自のEVシリーズ「Honda 0 Series」を披露し、SDVへの本格的なシフトを示しました。従来のハードウェア中心の自動車開発から脱却し、ソフトウェアによって車両の機能を継続的にアップデートする戦略を明確に打ち出しています。
ホンダの展示では、AIによる自動運転支援、ユーザー一人ひとりに最適化された車内体験、クラウド連携によるサービス拡張といった要素が強調されました。これは、日本の自動車メーカーがIT企業との競争軸で戦う決意を示すものです。
パナソニックが描く「AIインフラ」と循環型ウェルネス空間の両立
パナソニックは「AIインフラ」というコンセプトのもと、エネルギー管理、スマートホーム、ウェルビーイングを統合した展示を行いました。単なる家電メーカーから、暮らし全体を支えるインフラ企業への転換を目指す姿勢が鮮明になっています。
特に注目されたのは、循環型ウェルネス空間の提案です。AIが住環境を最適化し、エネルギー消費を抑えながら居住者の健康をサポートする仕組みは、サステナビリティと生活の質の両立を実現する可能性を示しました。
日立製作所×NVIDIAの連携に見る「産業用AI」の圧倒的な実装力
日立製作所は、NVIDIAとの連携を通じて産業用AIの実装力を世界にアピールしました。発電、送配電、輸送、製造といった重要インフラ領域でのAI活用に焦点を当て、日本企業ならではの信頼性と技術力を前面に押し出しています。
日本の大手企業は、単なる製品展示ではなく「エコシステム全体のビジョン」を示すことで、グローバル競争での存在感を取り戻しつつあります。
■日本の強みが光る「エネルギー・最新素材・デジタルツイン」の新潮流
AI×モビリティだけでなく、エネルギー、先端素材、デジタルツインといった領域でも日本企業の技術力が際立ちました。ここでは、これらの分野で注目された展示内容と、日本企業が持つ競争優位性について掘り下げます。
データセンターの熱問題を解決するENEOSの革新的な冷却ソリューション
ENEOSは、データセンターの冷却という世界的な課題に対するソリューションを展示しました。AIの普及によりデータセンターの電力消費と発熱は急増しており、冷却技術は重要な差別化要因となっています。
ENEOSが提案する冷却ソリューションは、エネルギー効率と環境負荷低減を両立させる点が特徴です。石油・エネルギー企業からグリーンテック企業への転換を図る同社の姿勢が、この展示には表れています。
TDKや小糸製作所が支える「次世代センシング・ライティング」技術
TDKは「No AI without data, no data without sensing」というメッセージを掲げ、AIを支えるセンシング技術の重要性を訴求しました。同社の磁性材料や電磁センサー技術は、AI時代のインフラを支える基盤として再評価されています。
小糸製作所も、次世代ライティング技術を展示し、自動運転時代における視認性や安全性の向上に貢献する技術を披露しました。こうした「縁の下の力持ち」的な技術こそ、日本企業の真骨頂といえます。
クボタがデジタルツインで実現する「建設・農業現場」の自律化
クボタは、デジタルツイン技術を活用した建設・農業現場の自律化ソリューションを展示しました。現場の状況をデジタル空間に再現し、AIによるシミュレーションと最適化を行うことで、労働力不足という深刻な課題に対応します。
この取り組みは、日本が直面する社会課題を技術で解決しようとする姿勢の表れです。グローバル市場においても、高齢化や労働力不足は共通の課題であり、クボタのソリューションには大きな市場機会があります。
宇宙・新素材分野でイノベーションアワードを受賞した日本企業の技術力
CES 2026では、宇宙技術や新素材分野でも日本企業が存在感を示しました。JETROが支援したスタートアップのなかには、宇宙関連技術や先端素材を扱う企業も含まれており、複数のイノベーションアワードを獲得しています。
- 独自の素材技術による軽量化・高耐久化
- 宇宙空間での利用を想定したセンシング技術
- 環境負荷を低減する新素材の開発
日本企業は完成品ビジネスでは苦戦していると言われます。
しかし、素材・部品・センシングといった産業の基盤技術では、いまも世界トップクラスの競争力を持っています。
■CES2026から導き出す日本企業の成長戦略の4つの柱
CES 2026の出展状況を踏まえ、日本企業が今後グローバル市場で成長するために必要な戦略を整理します。製品の品質だけでは勝てない時代において、どのような視点で戦略を構築すべきか。4つの柱に分けて解説します。
ハードウェアの価値をソフトウェアで更新し続ける「体験型ビジネス」への転換
日本企業がまず取り組むべきは、ハードウェア販売からソフトウェアを通じた継続的な価値提供への転換です。ソニー・ホンダモビリティのAFEELAやホンダのHonda 0 Seriesが示すように、製品は「売って終わり」ではなく「売ってからが始まり」の時代に入っています。
ソフトウェアのアップデートを通じて機能を追加・改善し、ユーザー体験を継続的に向上させる仕組みを構築することが不可欠です。これにより、顧客との長期的な関係構築と安定した収益基盤を同時に実現できます。
企業同士が連携する「エコシステム(協業ネットワーク)」の構築
日立製作所とNVIDIAの連携に見られるように、企業同士が強みを持ち寄って協業する「エコシステム(協業ネットワーク)」の構築は、製品やサービスの開発スピードを飛躍的に向上させます。すべてを自社で開発する従来型のアプローチから脱却し、強みを持つ領域に集中しながら外部との協業を進めることが重要です。
こうしたエコシステムを活用しつつ、自社の強みをデジタル技術によって最大化し、持続的な成長を実現するための主要な戦略を整理したものです。従来の「モノづくり」の枠を超え、いかにして付加価値の高いビジネスモデルへ転換すべきか、その具体的なアクションと期待される効果を定義しています。
| 戦略の柱 | 具体的なアクション | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 体験型ビジネスへの転換 | ソフトウェアによる継続的な価値提供 | 顧客LTVの向上、安定収益 |
| エコシステム構築 | グローバルテック企業との連携 | 開発スピード向上、技術補完 |
| 目的特化型AIの社会実装 | 脱炭素・労働力不足への対応 | 社会課題解決と市場創出の両立 |
| おもてなし×デジタル | 日本独自の価値をデジタルで拡張 | 高付加価値市場でのポジション確立 |
社会課題(脱炭素・労働力不足)を解決する「目的特化型AI」の社会実装
汎用的なAI開発では米中の巨大テック企業に対抗することは困難です。日本企業が強みを発揮できるのは、特定の社会課題に特化したAI活用です。脱炭素、労働力不足、高齢化といった日本が先行して直面する課題への解決策は、やがて世界共通の課題解決策になります。
クボタの建設・農業現場の自律化や、日立の産業用AIは、まさにこの目的特化型AIの好例です。明確な課題設定と、その解決に向けた技術実装を一体で進めることが成功の鍵となります。
日本独自の「おもてなし」とデジタル技術を融合させた高付加価値戦略
最後に、日本独自の文化的価値をデジタル技術と融合させる戦略も有効です。きめ細やかな配慮や品質へのこだわりといった「おもてなし」の精神は、ユーザー体験の設計において強力な差別化要因となります。
価格競争ではなく価値競争で勝負するために、日本ならではの強みをデジタル技術で拡張し、グローバル市場に向けて発信することが重要です。
■まとめ
CES 2026は、日本企業にとって課題と希望の両方を映し出す鏡となりました。出展数やイノベーションアワードの受賞数では韓国・中国に後れを取る一方で、スタートアップの躍進や大手メーカーのビジョン提示には確かな手応えがありました。
今後の成長戦略においては、ソフトウェアによる継続的な価値提供、グローバルエコシステムへの参画、目的特化型AIの社会実装、そして日本独自の価値のデジタル拡張という4つの柱が鍵を握ります。
こうしたグローバル展示会では、企業のビジョンを「体験」として伝えることが成功を左右します。
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