「価格を下げても選ばれない」「競合との差別化ができない」といった課題に直面していませんか。
商品やサービスが成熟し、機能や価格だけでは顧客の心をつかむことが難しくなっている今、注目されているのが「顧客体験価値(Customer Experience Value、以下CX)」です。
本記事では、顧客体験価値の定義や構成要素、なぜ今重要なのかという背景、そして実際に自社で取り組むための具体的なステップまで、BtoBマーケティング担当者を中心に、幅広い読者にとって役立つ情報をわかりやすく解説します。
Index
■顧客体験価値(CX)を構成する5つの要素
■なぜ顧客体験価値(CX)が重要なのか
■顧客体験価値(CX)を高めるための実践ポイント
■まとめ
■顧客体験価(CX)を構成する5つの要素
顧客体験価値を端的に言えば、商品やサービスそのものの機能だけでなく、出会いから購入、その後のサポートに至るすべてのプロセスを通じて、顧客が心で感じる「情緒的な満足感」を指します。
顧客体験価値は単一の要素ではなく、複数の価値が組み合わさって形成されます。ここでは、マーケティング研究で広く用いられる「戦略的経験価値モジュール」に基づき、5つの要素に分けて解説します。
これらの要素を理解することで、自社の顧客体験がどの領域で強みを持ち、どこに改善の余地があるのかを客観的に把握できるようになります。
① 感覚価値(Sense)
感覚価値とは、五感を通じて顧客に届く体験価値です。視覚的な美しさ、心地よい音楽、商品の手触り、香りなど、人間の感覚に直接訴えかける要素が該当します。
たとえば、店舗の照明や内装デザインが洗練されていると、顧客は「このブランドは信頼できそう」と直感的に感じます。ECサイトであれば、サイトのデザイン、フォントの選び方、画像の美しさなどが感覚価値に影響します。BtoB企業であっても、提案資料のビジュアルや営業担当者の身だしなみ、オフィス環境などが感覚価値として伝わります。
感覚価値は無意識のうちに顧客の印象を左右するため、ブランドイメージの土台となる重要な要素です。
② 情緒価値(Feel)
情緒価値は、ブランドや商品との接点で生まれる感情的な反応を指します。「安心できる」「ワクワクする」「共感できる」といった感情が、顧客の意思決定や継続利用に大きく影響します。
たとえば、サポート担当者が親身に対応してくれたとき、顧客は「このブランドは自分を大切にしてくれる」と感じ、信頼感が生まれます。反対に、不安や不満を抱えたまま放置されると、機能的には問題がなくても離反の原因となります。
情緒価値を高めるには、顧客の感情の動きを想像し、各タッチポイントで「どのように感じてほしいか」を設計することが不可欠です。
③ 思考価値(Think)
思考価値は、顧客の知的好奇心を刺激し、新しい気づきや発見を提供する体験です。商品やサービスを通じて「考えるきっかけ」を与えることで、顧客はブランドに対して知的なつながりを感じるようになります。
たとえば、BtoB企業がウェビナーやホワイトペーパーで業界の最新トレンドや課題解決のヒントを提供することは、思考価値の創出につながります。顧客は「このブランドは自分の成長を支援してくれる」と認識し、単なる取引先以上の価値を感じるようになります。
思考価値を意識することで、顧客とのエンゲージメントが深まり、長期的な関係構築が可能になるのです。
④ 行動価値(Act)
行動価値は、顧客の行動様式やライフスタイルに変化をもたらす体験です。商品やサービスを通じて新しい習慣や行動パターンを提案し、顧客の日常に溶け込むことで、継続的な利用や推奨行動につながります。
たとえば、アウトドアブランドが店舗でのイベントや体験型ワークショップを開催し、顧客に「自然の中でのライフスタイル」を提案することは、行動価値の創出です。顧客は商品を購入するだけでなく、ブランドの世界観に共感し、その価値観を自分の生活に取り入れるようになります。
行動価値を高めることで、顧客はブランドを単なる選択肢ではなく、自分のライフスタイルの一部として認識するようになります。
⑤ 連帯価値・関係性価値(Relate)
連帯価値は、ブランドを通じた社会的なつながりや、共通の価値観を持つコミュニティへの所属感を指します。顧客は「このブランドを支持することで、自分も同じ価値観を持つ仲間とつながれる」と感じます。
たとえば、環境保護や社会貢献を掲げるブランドは、同じ志を持つ顧客を引きつけ、ファンコミュニティを形成します。顧客同士がSNSで体験を共有したり、イベントで交流したりすることで、ブランドへのロイヤルティがさらに高まります。
連帯価値を高めることで、顧客はブランドの「応援者」となり、自発的な口コミや紹介が生まれやすくなります。
■なぜ顧客体験価値(CX)が重要なのか
なぜ今、顧客体験価値がこれほど注目されているのでしょうか。その背景には、市場環境の変化と顧客行動の変容があります。
ここでは、顧客体験価値が企業にとって重要である5つの理由をわかりやすく解説します。
機能・価格競争からの脱却と差別化
商品やサービスが成熟し、機能や価格だけでは差別化が難しくなっています。どの企業も同じような機能を提供し、価格競争に陥ると利益率が低下し、持続的な成長が困難になります。
顧客体験価値を高めることで、価格や機能以外の軸で顧客に選ばれる理由を作ることができます。
たとえば、ある電子機器メーカーは、製品の機能ではなく、購入後のサポート体制やユーザーコミュニティの充実度を強化することで、他社との差別化に成功しました。それにより、顧客は「製品を買うだけでなく、安心して長く使える環境が手に入る」と感じ、価格が多少高くても選ぶようになりました。
ロイヤリティ向上による顧客の「ファン化」
顧客体験価値が高いブランドは、顧客をただの購入者ではなく「ファン」に変えることができます。ファンは単にリピート購入するだけでなく、自発的に口コミを広げ、ブランドの応援者となります。
海外の調査では、「非常に良い体験」をした顧客はそうでない顧客と比べて、再購入する確率が数倍高く、友人や知人に推奨する確率も大きく高まるといった結果が報告されています。また、SNSや口コミサイトの影響力が増している現代では、顧客の声が購買決定に与える影響は無視できません。
顧客体験価値を重視することで、顧客ロイヤルティを高め、持続的な成長の基盤を築くことができます。
顧客生涯価値の向上と長期収益の確保
顧客体験価値の向上は、LTV(顧客生涯価値)の最大化に直結します。顧客が満足し、長期にわたって利用し続けることで、獲得コストを上回る収益を生み出します。
たとえば、サブスクリプション型のビジネスでは、解約率を1%下げるだけで、年間の収益が数百万円から数千万円単位で改善することも珍しくありません。顧客体験価値を高めることで、解約率を下げ、さらにアップセルやクロスセルの機会を増やすことが可能になります。
ブランドイメージの向上
顧客体験価値が高いブランドは、顧客からの信頼と評価を得やすく、ブランドイメージの向上につながります。ブランドイメージが向上すると、新規顧客の獲得コストが下がり、採用活動やパートナーシップの構築にもプラスの影響をもたらします。
たとえば、あるBtoB企業は、導入前のコンサルティングから導入後のサポートまで一貫して担当者の不安を軽減する体制を整えました。その結果、顧客満足度が向上し、事例やレビューがSNSやメディアで自然に拡散され、ブランド認知度が大幅に向上しました。
ブランドイメージは短期間で構築できるものではありませんが、顧客体験価値を継続的に高めることで、長期的な資産として蓄積されます。
デジタルとリアルを横断する複雑な購買活動への対応
現代の顧客は、オンラインとオフラインを自由に行き来しながら情報収集し、購買を決定します。Webサイトで情報を調べ、店舗で実物を確認し、SNSで口コミをチェックし、最終的にECサイトで購入するといった行動は、もはや珍しくありません。
顧客体験価値を高めるには、すべてのタッチポイントで一貫した品質と価値を提供し、顧客がどの接点から入ってきても快適に感じる体験を設計することが不可欠です。
たとえば、あるアパレルブランドは、ECサイトで購入した商品を店舗で受け取れるサービスや、店舗スタッフが顧客のオンライン購入履歴を確認できる仕組みを導入しました。その結果、顧客はオンラインとオフラインの垣根を感じることなく、シームレスな購買体験を得られるようになりました。

■顧客体験価値(CX)を高めるための実践ポイント
顧客体験価値を高めることの重要性は理解できても、「具体的に何から始めればよいのか」が分からないという声は少なくありません。ここでは、顧客体験価値を向上させるための5つのステップを、実践的な視点で解説します。
この手順に沿って取り組むことで、現場レベルでも無理なく顧客体験価値の改善に着手できます。
1.アンケート調査で現状を把握する
最初のステップは、現在の顧客体験がどのような状態にあるのかを正確に把握することです。顧客の声を直接聞くアンケート調査や、NPS(ネットプロモータースコア)調査、カスタマーサポートへの問い合わせログ、SNSや口コミサイトの投稿などを収集します。
アンケートでは、「どの接点で満足したか」「どこで不満を感じたか」「期待していたことは何か」といった質問を通じて、顧客の感情や期待値を明らかにします。また、定量的なデータ(NPS、CSAT、CESなど)を取得することで、改善の優先順位をつけやすくなります。
たとえば、問い合わせ対応に不満を感じている顧客が多い場合、そのタッチポイントが体験価値のボトルネックになっている可能性が高いと判断できます。
2.顧客が求める理想を設計する
現状把握ができたら、次は顧客のニーズや感情をより深く理解します。ペルソナを設定し、「どのような課題を抱えているのか」「どのような価値を求めているのか」「どのように感じてほしいのか」を言語化します。
BtoB企業であれば、担当者だけでなく決裁者や実際のエンドユーザーのペルソナも設定し、それぞれの視点で体験を考えることが重要です。顧客インタビューや行動観察を通じて、表面的なニーズだけでなく、潜在的な期待や不安を掘り下げます。
顧客理解が浅いまま施策を進めると、企業側の都合を押し付ける結果になり、顧客体験価値の向上にはつながりません。
3.施策の立案と優先順位を決定する
顧客理解が深まったら、顧客の体験を時系列で整理し、カスタマージャーニーマップを作成します。認知・興味・比較・購入・利用・継続・解約といった各段階で、顧客がどのような行動をとり、何を感じ、どのような接点があるのかを可視化します。
ジャーニーマップを作成することで、「どの接点で顧客の期待値が満たされていないのか」「どこでポジティブな感情を引き出せるのか」が明確になります。すべてを一度に改善するのは現実的ではないため、インパクトが大きく、実行しやすい接点から優先順位をつけて施策を立案します。
たとえば、購入直後のオンボーディング体験が弱い場合、そこを強化することで初期離脱を防ぎ、長期的な利用につなげることができます。
4.施策の実行とKPIによる効果測定を行う
優先順位が決まったら、実際に施策を実行します。ここで重要なのは、いきなり大規模に展開するのではなく、小さくテストを行い、効果を検証しながら改善することです。
施策ごとに、NPS、リピート率、解約率、問い合わせ件数、レビュー評価など、変化を確認する指標を設定します。たとえば、サポート対応のスピードを改善した場合、問い合わせ満足度やNPSがどう変化したかを定期的にモニタリングします。
効果測定を行うことで、施策が実際に顧客体験価値の向上につながっているのかを客観的に判断できます。
5.実行結果を検証し改善する
施策を実行したら、必ず結果を検証し、次の改善につなげます。顧客の声やデータを継続的に収集し、「どこがうまくいったのか」「どこにまだ課題があるのか」を分析します。
顧客体験価値の向上は一度で完結するものではなく、継続的な改善が不可欠です。マーケティング、営業、カスタマーサポートなど、部署横断のプロジェクトや定例会を設け、全社で顧客体験価値を共有し、改善を続ける体制を整えます。
特に、改善活動を定着させるためには、以下のような取り組みを継続的に実行することが効果的です。
- 定期的にNPSやアンケートを実施し、顧客の声を収集する
- 部署間で顧客体験に関する情報を共有する仕組みを作る
- 改善施策の効果を全社で振り返り、成功事例を横展開する
- 顧客体験価値を評価指標やインセンティブに組み込む
継続的に改善を回すことで、顧客体験価値は着実に向上し、長期的な競争優位性を築くことができます。
■まとめ
顧客体験価値とは、ブランドとの出会いから購入・利用・サポートまでの一連の体験を通じて顧客が感じる総合的な価値です。機能や価格だけでは差別化が難しい今、この体験価値を高めることが満足度やロイヤルティ、LTVの向上につながります。
顧客体験価値の向上は一度で完了するものではなく、継続的な改善が欠かせません。部署横断で顧客の声を共有し、全社で顧客体験を重視する文化を育てることが、長期的な成長とブランド価値の向上につながります。
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