BtoBマーケティングにおいてオンラインセミナーが定着しつつありますが、今後のマーケティング活動をさらに進化させるためには、これまで主流であった展示会などのオフライン施策とオンラインセミナーの特徴を理解し、組み合わせていく必要があります。

今回はオンラインイベントのプラットフォーム”EXPOLINE”をセミオーダーで提供する株式会社スプラシア CEO 中島氏と共に、展示会とオンラインセミナーの現状をデータで紐解き、これからの顧客接点についてディスカッションします。

Agenda
1:オンラインセミナーのトレンドとは?
2:展示会のトレンドとは?
3:展示会とオンラインセミナーの未来とは?

スピーカー紹介

オンラインセミナーのトレンドとは?

原口:
2020年からBtoBマーケティングにおいてオンライン化が急速に加速しましたが、その頃と比べると最近のオンラインセミナーに対するニーズは変化しましたか?

中島:
開催する目的そのものは当初からあまり変わっていませんが、クライアントからのオーダーやニーズがより明確になったと感じています。
おそらく、昨年はオンラインセミナーをやることが目的になってしまっていた方々もいましたが、今年になると前回の反省を踏まえて、より具体的な課題が見えてきたのではないかと思います。

弊社にお声がけいただいたご相談の中でも特徴的なオーダーをいくつかご紹介します。

【リコメンド機能】
オンラインセミナーであっても偶発的な出会いが重要だと言われています。
例えば、展示会などリアルな場所ではふらっと立ち寄ったブースで新しい商材やソリューションに偶然出会う可能性があり、その可能性も含めて情報収集を目的に足を運ばれる方も多いと思いますが、オンラインではそのような偶発的な出会いはほとんどありませんよね。

この機能はユーザー個人のサイト内における視聴/閲覧履歴から、おすすめのコンテンツを出すことで新しい出会いを提案しており、ユーザーからすると受動的におすすめコンテンツがサイトで紹介される仕組みになっています。

【パーソナライズ】

セミナーに登録してもらった役職や部署などお客様の情報によってサイトに表示する情報を変えるなど、カスタマイズが可能です。

リコメンドは視聴/閲覧履歴などサイト内行動データに沿ってコンテンツをおすすめしているのに対し、パーソナライズは役職や部署などの登録情報によって出す情報を変えられるので、よりターゲットを絞ったコンテンツをおすすめできます。

これはまさしくデジタルだからこそできることですね。

【営業アテンド/チャット機能】
顧客がログインすると自動的に営業に通知され、営業からお客様にアプローチできる機能。

つまりオンラインであっても、イベントとして”運営”できる機能になっています。

これまでオンラインセミナーはマーケティング系の部署が企画し、集めたリードを営業に渡してフォローする形式が主流でしたが、今ではマーケティング部署だけではなく、営業も巻き込んでイベントとして運営していくケースが増えています。

これまで多くのオンラインセミナー/イベントをサポートしてきましたが、しっかりと成果を出せている企業は営業がイベントの運営に前のめりに関わっているという共通点がありますね。

展示会のトレンドとは?

中島:
ここまでオンラインセミナー/イベントのトレンドをお話ししてきましたが、オフラインの接点である展示会は何か変化がありましたか?

原口:
多くのクライアントにインタビューしましたが、やはり最大の変化は「来場者層の変化」ですね。
まず、来場者数の推移からお話しします。
このグラフは展示会が再開し始めた2020年8月から2021年7月までの来場者数を前回比の推移で表したものです。

2020年2月〜3月あたりは前年比50%程度まで回復しており、一時的な増減を繰り返していますが、7月にはまた50%まで回復しています。
このように展示会の来場者数は回復傾向にありますが、コロナ禍前ほどたくさんの来場者を集める必要はないのではないかと考えます。「そもそも従来のように、とにかくたくさんの人を集める必要が無くなった」と言い換えることもできます。

短時間でサクッと情報を集めたい人はオンラインで、しっかり目で見て確認したい、その場で相談して解決したい人は展示会で情報を収集するようになるのは間違い無いでしょう。

実際に展示会に出展している担当者へのインタビューでは、「来場者の特徴として目的や課題を明確に持った人が多く、商談になりやすい。」や、「以前では出会えなかった層(マネージャークラス)に出会えた。」などポジティブな意見もある一方で、「展示会リード数は減少しているのでオンラインなど補填手段を考える必要性を感じている。」など補填手段としてのオンライン施策を検討していると言う声もありました。

中島:
なるほど。
確かに展示会全体として来場者数は減少しても、興味関心度の高い人との接点が目的なのでむしろ効率が良くなったと言う意見も納得できますね。
一方で、「以前では出会えなかった層に出会えた」との声もありましたが、なぜだと思いますか?

原口:
もちろん、オンラインセミナーも増えているので多くの情報収集ができますが、展示会のように「1日でたくさんのサービスを検討したい」と言うニーズは展示会でしか解消できないのではないでしょうか。

例えば、SaaSの導入を検討しているときに全てのオンラインセミナーを細かくチェックして、サービスを比較検討することって面倒ですよね。展示会ではそれを1日で完結できるだけでなく、ブースの説明員に具体的な質問ができたり、自社に近い導入事例などの話も聞けたり。

リアルだからこそできるコミュニケーションのメリットも展示会には多くあると思います。

また、決裁権を持つマネージャークラスはサービスの詳細ではなく、業界動向やトレンドの把握を目的に来場していることも要因の一つかもしれませんね。

2019年までの展示会はBtoBマーケティングにおいて最大のリード獲得の場であり、とにかく来場者を増やすことが成功だと考えられていました。

しかし、2021年はただ情報収集したい顧客は効率化を求めてオンラインセミナーへとシフト、目的を持ったターゲットは展示会に来場するなど、来場者数が減少。

その代わりに展示会の役割が明確になりました。

また、オンラインセミナーは今まで 展示会に行かなかった層も気軽に参加できるため、オンラインセミナーを組み合わせることでリーチできる顧客層は広がったとも言えます。

展示会とオンラインセミナーの未来とは?

原口:
ここまで展示会、オンラインセミナーの話をしてきましたが、改めてその特徴やポイントをまとめてみましょう。

まず、展示会の“これまで”と“これから”をまとめるとこのようになります。

これまでの展示会はとにかく多くの人が来れば成功であり、そこで存在感を出すために大きな小間で出展し、一度に多くのリードを獲得することが重要でした。また、その後のフォローも営業がテレアポによって商談を獲得すると言う考え方が主流でした。

しかし、オンラインシフトによって 「本当にニーズのある人が来場する」と言う本来の展示会の存在意義に立ち戻ったため、これからは小さな小間で関連する展示会に多く出展し、その後はオンラインで素早くフォローしていくことが重要です。

中島:
オンラインイベントのキーワードは「ストーリー」「体験」「運営」の3つです。

情報をどうやって、どの順番で伝えていくべきかストーリー性。
それを飽きさせずにしっかり伝えていくための体験。
そして、それをどう運営するか。

ついついユーザー目線が抜け落ち、出したい情報を全て出してしまったために、サイト内の回遊性や滞在時間が低くなってしまったなんてこともよくある話です。

自社の魅力を伝えるためにも、「ユーザーが何に興味を持つのか?」「どのような順番で伝えたらわかりやすいのか」など、あくまでユーザーを中心にしたストーリー設計が不可欠です。
そして、リコメンドやラリーなど他のコンテンツの視聴も促進するような体験設計によって、より顧客ニーズにあった情報を提供できます。
最後に、そのイベントの運営をマーケティング組織だけで実施するのではなく、営業も巻き込み、顧客を“人でフォローする”ことでより成果は最大化されるでしょう。

マイクロイベント化するオフラインの展示会、さらに体験価値が向上していくオンラインセミナー。
これらうまく連携し、活用するハイブリッドな顧客接点がこれから必要になるのではないでしょうか。

登壇者紹介

株式会社スプラシア
スプラシアは、オンラインイベントプラットフォーム「EXPOLINE」をはじめとした、イベント領域におけるSaaS製品の提供、アーキテクト力を活かしたシステム開発などを行っている東京都築地に本社をもつIT企業。