agenda
1:リアルな顧客接点をデジタルへと拡張する
2:リアルな場をデジタルで拡張した具体的な例
3:デジタルへと拡張するために必要なもの / こと

少しずつ復活しつつあるコロナ影響下でのマーケティング活動。
顧客とのタッチポイントが減ってしまい、様々な業界でリアルとデジタルを融合したハイブリッド施策をよく目にします。

しかし、今までリアルで行っていた施策をそのままデジタルに移行するだけでは、なかなか今まで通りの効果を実感できないのが現状。

今回はHAKUTENが運営するオウンドメディア Think EXperience(TEX)を運営する編集デスク 原口と中部営業所のプランナー矢島が、コロナ禍のマーケティング活動においてデジタルで拡張する”LINK STATION”という考え方をご提案。

合わせてコンテンツマーケティングの視点からこのThink Experienceの裏側についてもご紹介していきます。

※本セミナーは2020年12月11日に実施した内容です。

リアルな顧客接点をデジタルへと拡張する

矢島 : 今回はショールームや店舗 / 工場など、リアルな顧客接点の場所を進化させていくということをテーマに話を進めていきます。
現状としてイベントは、少しずつ再開の兆しは見えつつも、やはり大型の展示会はまだ難しいという段階。店舗やショールームも入場規制などの対策が施されており、営業はしつつも稼働率が下がっており、まだなお厳しい状態が続いています。

原口 : 最近では、 閉めていたショールームの再開に向けた新しい施策や来場者の感染対策など、ご相談いただく機会が多くなりました。

矢島 : 2020年4月ごろから言われていることではありますが、やはりオンラインの展示会やハイブリッド施策への関心が高くなっていますね。

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000063081.html

ある調査結果を見ると、オンラインのみの配信より、ハイブリッド展示への関心の方がパーセントとしては高い。
オンラインだけでは物足りないという心理があるのでしょうか。

矢島 : 実は今、人々の関心に比例してなのか、ハイブリッド施策がたくさん出てきています。
大枠のパターンが出てきているものの、全ての業種に関して通用するフォーマットというものがまだ存在していないと感じます。

原口 : そうですね。
様々なオンライン展示会の形があって、各業界の色に合わせて行く必要がありますね。

矢島 : ここからは、様々な業界におけるハイブリッド施策について事例を紹介しながらポイントを説明していきます。

一種の展示会のようなもので、オフラインの場所では商品だけを陳列させ、接客や説明などは全てオンライン上で行うという形です。
しかし、大型機械のような大規模な商品ではこのフォーマットでは難しいですね。

原口 : 他にも、アシックスさんが無人店舗を作ったことも記憶に新しいです。
オンライン接客を通して、自分の足に合う靴を見つけてくれるというサービスもありました。
“オンラインだけ”で、”店舗だけ”で、体験を完結させるということではなく、このように両者を融合していくのも大切ですね。

矢島 : しかし成功事例はあるものの、まだまだ数が足りないのが現実。
ハイブリッド展示会はなぜ難しいのでしょうか?数多ある理由を整理して掘り下げてみました。

大きく分けて理由が二つ。

1:デジタルとリアルの得意領域を混同してしまっている

各々の価値や得意 / 不得意分野を理解した上で、補完し合ったり、代替がきくエリアをしっかりと整理したりできていないことが多く見られます。

デジタルでの体験の追求や偶然的な出会いの演出など、リアルでなければ難しいものを無理やりデジタル施策として行っているように感じられます。

つまり、領域が噛み合っていないことで難易度が上がってしまっているということですね。

2:コミュニケーションはフォーマット化できない

取り扱う製品や客層 / ペルソナによって緻密に設計する必要があります。
オンラインだとコミュニケーションが複雑化してしまい、フォーマットが非常に作りにくいですね。

では、ハイブリッド展示会はどのようにしたら成功するのでしょうか?
それには、両者の得意分野や価値を理解した上で、それぞれの特徴を反映させた複雑なコミュニケーションが重要となります。

原口 : リアルとデジタルの融合とはいえ、”いいとこどり”だけを目指すと難しくなってしまいますよね。
“ハイブリッド”という言葉が余計に難しさを増しているように感じます。

矢島 : 企業の特色が活かされている上に、柔軟に場所を作り上げていくことができるという点では、やはりショールームが最も適しているように思います。
このように展示会などの顧客接点が制限されているからこそ、工場や店舗 / 自社ショールームが鍵になってきますね。

原口 : ショールームは、そもそも自社製品が魅力的に見えるようオーダーメイドで設計されています。
デジタルも同様に、”このように設計すれば、全部が伝わる”というフォーマットはなく、サービスやソリューションに合わせて設計していかなくてはならないことは明白です。

矢島 : 以前まではショールームや展示スペースなどの”リアルな箱”に、クライアントが来場することでコミュニケーションが生まれていました。
わかりやすく言えば、その”箱”に配信機能をつけることにより、リアルで作った体験や魅力をデジタルで配信できるということですね。
リアルとデジタルの両面を充実させて広げて行くことで、そこが両軸においての新しい拠点となります。

原口 : 今まであった場所に対して、新しい”何か”を追加することで、さらに機能を拡張して行くという考え方はコミュニケーションをスムーズにさせるという狙いがあり、まさに新しいショールームの形と言えます。

リアルな場をデジタルで拡張した具体的な例

原口 : ここからはリアルな場の機能を効果的に拡張させた具体例を紹介します。
リアルな場でサービスの魅力が最も伝わるシーンを作り、デジタルで配信したという例です。

バーチャル展示会はCGに頼りすぎたことにより、返ってサービスの魅力が伝わりづらくなったように思います。

一番大事なポイントは”展示会を再現する”のではなく、”サービスの魅力が最も伝わるシーン”を切り出すということ。
リアルでしっかりと作り上げたあとに、デジタルに乗せていくという考え方が大切です。

オンライン酒蔵見学「SAKW(日本酒)×NOMY(学)」

参考記事:https://www.walkerplus.com/article/1002373/

参加者には見学する酒蔵で作ったお酒を事前に自宅へ届け、実際に飲みながらオンライン見学をしてもらう。
距離などの問題で、興味はあったが行動に移せていない”潜在層”に向けて話すことで、理解を深めていきながら商品のファンにもなってもらえると言います。

オン / オフライン関係なく、1つの体験としてとても綺麗に流れていますね。
通常の工場見学 / バーチャル上、どちらかだけでは味わえない、両者のポイントをおさえた施策ですね。

ミニサイエンスショー / 高知みらい科学館

矢島 : これは高知の科学館で行われた施策。
コロナの影響で中止している科学実験ショーをオンラインで配信したという事例です。
既存のファンはもちろん、休校などで科学に触れられない子供達に向けて、普段も行っている科学実験ショーをYouTube上で配信しました。

言葉にしてしまうと簡単ではありますが、非常に効果的な施策だと言えます。
オンライン上で実施しておくことによって、実際に開催できるようになった時にもまた同じ体験ができるということは、オンラインを通してオフラインの場への誘引にもなっているということです。
よくできたアプローチだなと感じました。

他施策事例

原口 : NIKEが行った、コロナによる運動不足を解消しようという施策。
NIKEが提供する”一緒に運動をする楽しさ”や”史上最高の自分”のような、自分を高めていくという楽しさや素晴らしさをそれぞれ離れた場所でも感じられますね。
何か製品やサービスを紹介するだけでなく、ブランドが大切にしている精神やストーリーをオンラインで伝えていくことで、体験を設計できている取り組みです。

他にもキャンプ用品ブランドのSnow Peakの施策。
YouTubeを活用し、店舗から様々なキャンプ情報を提供。
テントの立て方やギアの使い方など、実用的な情報からキャンプの楽しみ方まで、アウトドアブランドならではの視点で発信しています。
もちろん店員さんもアウトドア好きが多いので、宣伝だけではなく、いち”キャンプ好き”から発信できることがいいですよね。

矢島 : 自分たちの一番の魅力をきちんと発信できていること自体が魅力ですね。
自分たちが良い思うものをダイレクトに自分たちの手で伝えるという、その伝え方が良いと思いました。魅力の伝え方がとても上手ですよね。

原口 : 他にも車メーカーのCitroënもオンライン施策を行いました。
ベルランゴと言う新しい車種のオンライン発表会で、弊社でサポートさせていただいた案件です。
オンライン発表会というと華やかなステージをイメージしますが、こちらは全く違う発表会でした。

社長自身が新車種ベルランゴに乗り、ドライブしていくというストーリー仕立て。
その道中で、デザイナーやマーケターなどベルランゴを作ってきた人々と出会い、会話を通して魅力を紐解いていく流れでした。

見せたいのはデザインだけでなく、乗り心地や乗っている姿、乗って何をするかなど“車を乗る体験”。
芯をぶらさずに伝えられるということが一番大切なこと。その要素を大切にしたまま配信していくのは素敵だなと思いました。

原口 : また、オンライン配信はマーケティングだけではなく、リクルーティングにも有効です。
こちらは就活生を対象にした企業のオンライン対応が応募意欲に与える影響度合いのグラフ。

「影響がある」と答えた学生が50%もいるのですね。
つまり企業のオンライン対応が応募意欲に大きく影響しているということ。

就活生はデジタルネイティブであり、日頃からネットで情報収集するのは当たり前な世代。
その層に向けて企業から発信する際に、オンラインで伝えていくというのは、これから当たり前になっていくのではないかと思っています。

自社スタジオから配信して、企業としての魅力を伝えることがリクルーティングへの第一歩になる。

矢島 : 自分は中部で仕事をしているのですが、製造系の企業さんたちがリクルーティングに困っているという声をよく耳にします。
オンラインで会社説明会も増えていく流れができたのをきっかけに、古い会社だと思われたく無いという声もあるのです。
つまり、デジタルに対応している会社だという印象付けをしたいということですね。

原口 : 弊社もオンラインでの会社説明会を開催しましたが、コロナ禍でも弊社の魅力を十分に伝わったと就活生には好評でした。
より凝った演出や就活生の方々とのコミュニケーションの深さも担保でき、他社との差別化もできたように思います。

デジタルへと拡張するために必要なもの / こと

原口 : 今までご紹介してきた事例は、率先してデジタルシフトに取り組んできた企業ばかりだったので、自分たちにもできるか?という不安も多くあると思います。

配信などの専門知識や人員確保など様々な問題が出てくるので、実際に運用していくために必要なものなど、ここからは具体的なことを話していきましょう。

オンライン上でも顧客接点を進化させ、拡張させていくにあたって大切な3項目があります。

1:スタジオのスペース

原口 : この配信も弊社オフィスにあるスタジオから行われています。
このスタジオスペースは前はセミナースペースでしたが、そこに機材を揃え、スタジオ化しました。
機材を移動することもでき、お客様を招いたセミナーをオンラインで配信するなどハイブリッド利用ができます。
このように、自社内でスタジオを作りたいという相談にもお答えできます。

矢島 : あくまで弊社スタジオは、対談やセミナー用途向けのスタジオ。
ジャンルや目的など、個々のコミュニケーションに合わせたスタジオ設計も可能です。
柔軟に合わせていくということも大事なことの一つですね。

原口 : いわゆる”スタジオ”という先入観や概念を壊して、何を、どうやって伝えたいのか、ということを考えていくところから始めていくことが大切だと思いますね。
弊社は、そのフェーズのデザインやプランからサポートできます。

2:レコーディングキット

原口 : 機材周りがもっとも高いハードルのうちの一つですよね。
様々な用途に対応可能な配信設備を備えていますが、今置いている機材はプロ仕様ではありません。
ハイエンドなものではなく、あえてアマチュアの人も使えるようなものを揃えていくことで、自社のメンバーで運営していくことができます。

また、配信プラットフォームもたくさん種類があり、選ぶのが難しいですよね。
比較していくと判断が難しいので、それぞれの用途に合わせたプラットフォームを提案できる進行力も必要になります。
例えば、ユーザーとのインタラクティブ性を優先したいのか、多くのユーザーに拡散したいのかなど、ゴールをしっかり見据えることが大切です。

3:トータルサポート

原口 : オンライン配信を続けていく体制も、実はかなり大事な要素。
配信は、一度やって終わりではなく、継続的に活用していくことが重要ですね。
どんな立派なスタジオを作っても、一度だけの配信ではもったいない。

矢島 : オフラインが使えないので、仕方なくオンラインということではなく、オフラインが復活した後も使えるような配信拠点を目指しましょう。
今必要なものだけでなく、これから必要なものもプランニングしていくと言うことですね。
ハイブリッドの新しいコンテンツスペースという感覚で作っていくと、長期的な視点を持つことができると思います。

原口 :こういったことを継続的にしていくのには、その全てのプロセスを内製できるようにしておくことが大事。
全て外注していくとなると、高額になってしまい、継続が難しくなってしまいます。
いかに内製化していくかという部分からサポートさせていただきます。

原口 : 配信には、大きく分けて3つのステップがあります。

ー企画
クオリティ担保も欠かせないため、その都度台本や配信画面のテンプレートを制作をします。
台本 / 配信のテンプレートも提供させていただき、皆様が自走できるようなサポートも可能です。

ー収録
機材のセッティング / スタッフの人数・配置 / カメラのセットレイアウトなどをわかりやすくマニュアル化します。
どのような画作りをしていきたいかを明確に具現化し、作りっぱなしにしないということが大事ですね。

ー配信
それぞれの使用方法や映像編集など、セミナーを実施するだけでなく、1on1でメンバーの問い合わせも可能です。

原口 :
このThink EXperienceというこのメディアも2020年5月にスタートしたばかり。
半年以上続けていく中で、おかげさまで登録者数が2,000人超えました。

配信だけでなく、アーカイブ動画やブログも掲載するメディアとして自社で運営しています。
自走するためのノウハウとこれから続けていくにあたってプランニングという面でもサポートさせていただきます。

原口 : コンテンツはこのマトリクスにゾーニングすることで役割や目的を整理できます。
一概にコンテンツといっても、目的を見定めて全体像としてプランニングしていくことがキーポイントですね。

今まではライブ配信だけをメインしていましたが、セミナーブログなどライトにタッチできるコンテンツも作成しています。

また、各コンテンツのジャーニーの設計も必要になってきます。
それぞれ、どの時期にどれくらいの状態であるべきかというフェーズを5つのゾーンごとに分けます。
最終的に相談したいと思っていただくためには、ジャーニーに紐づいてKPI / KGIのような数値目標も設定するなど、細かくゴールを作って一つ一つクリアしていく地道な作業が必要です。

拡張オプションの紹介

弊社では、オンライン配信とそれに伴う様々なサポートだけでなく、さらに効果的なアップデートを目指すことができる拡張オプションもご用意しております。

イベントDX化を推進する”イベシル”は、beaconやWi-Fiなど複数のセンシング機能を搭載した独自のIoTセンサーをイベントに設置し、任意の範囲内で反応した端末を検知することで来場者の推計を行うサービスです。
また、過去に実施したイベントの来場者を位置情報から抽出し、広告配信ができるという有効的なターゲティングができます。

ーCM STUDIO
広告のような短い映像であれば、目的に合わせて映像テンプレートを選択し、必要な情報を入れ込むだけ映像が制作できるサービスもご提供させていただきます。
映像コンテンツは、素材のクオリティがとても大事。
その都度外注していくと金額もコミュニケーションもコストがかかるため、手軽にできるこのサービスは大変おすすめです。

ーEXPO LINE

配信する際にもお客様と密に関わるようなコミュニティ作りも大切であり、それには事務局としての機能も必要。事前登録から視聴ログ管理までオールインワンということでサポートさせていただきます。

矢島 : 以前までユーザーとの接点作りは、大型の展示会などリアルイベントというプラットフォームに乗せるしかありませんでした。

これからは、選択肢が増えていくことで、ユーザー⇄企業の関係性が、今まで以上にダイレクトなものになっていくはずです。

原口 : コロナの影響によって稼働率が下がっているショールームや店舗は、その機能を拡張することで、ハイブリッドに発信できる拠点になる。そのような場所こそがコミュニケーションの拠点になっていくと思います。

そのコミュニケーションをいかに豊かにするか、それが重要。
今こそ、リアルな場所を有効活用し、サービスの魅力をオンラインでも伝えられる場所にすることをご検討いただきたいと思っています。