みなさんこんにちは!HAKUTENの中と成川です。
【Quest ! 】は、都内を中心に話題のイベントや新しくオープンした商業施設をHAKUTENが運営するオウンドメディア THINK EXPERIENCE編集スタッフが実際に体験し、レポートしていくコンテンツです。

今回は、東京 / 新宿にあるNTTインターコミュニケーション・センター(以下ICC)にて2月27日まで開催されていた「多層世界の歩き方」展での体験をお届けします。

目次
1. 多層世界の歩き方展とは?
2. 初体験!!多層世界を歩いてみた!
3. リアルとデジタルの融合した世界
4. 多層世界の無限の可能性

1. 多層世界の歩き方展とは?

<展覧会ポスタービジュアル-表>    <裏> デザイン:寺井恵司

新しい世界を、多層世界の散歩者として考える

この展示は、2020年度ICC企画展「多層世界の中のもうひとつのミュージアム」から続く、オンラインでのコミュニケーションがより多様な形で生活に浸透した現在の情報環境をテーマにした展覧会です。

現実世界と情報世界、さらにその媒介となる「コモングラウンド」を多層的な世界としてとらえ、この情報環境をどのように「歩く」ことができるのかをアート作品や情報環境状況の解説などを通じて提示されています。コロナ禍以後、ミラーワールド時代の到来、といった時代状況に影響を受けた、現実世界と情報世界の間を往き来する、これからのリアリティを表現した作品を紹介する展示となっています。

NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]とは?

ICCの基本構想の検討は日本の電話事業100周年を記念した事業として1990年にスタートしており、施設オープンまで8年近い歳月を要しています。この間、ICCはアート&サイエンスに関わる多くのイベントを行なってきたほか、情報発信のための機関誌「InterCommunication」を発行し、それらの成果と蓄積を踏まえ、施設のオープンに至りました。

オープン以来、展覧会活動では、バーチャル・リアリティやインタラクティブ技術などの最先端テクノロジーを使ったメディア・アート作品を紹介してきたほか、従来の形式や分類を超えた企画展を開催してきました。

また、作品展示にとどまらず、ワークショップ、パフォーマンス、シンポジウムあるいは出版といった様々なプログラムを通じ、従来の枠組みにとらわれない実験的な試みや新しい表現、コミュニケーションの可能性について紹介しています。

コロナ禍以後、オンライン会議ツールやVRチャットなど、オンライン上でのコミュニケーションがより多様な形で生活に浸透し、メタヴァース、ミラーワールドが、オンラインゲームでのライヴ・イべントなど、コミュニケーションや経済活動の「場」として注目を集めています。また、ウェブサイトで開催される展覧会など、以前とは異なる作品発表が行なわれるようになり、鑑賞や体験の方法が変わりつつある状況下で、表現や作品自体もまた変化しています。

この情報環境で私たちに起きている変化が、どのようにこれからの私たちを変えていくのでしょうか。そのような現在の多層世界をどのように歩き、どのようにとらえることができるのか。この多層世界からインスパイアされた表現と、テクノロジーが実現するかもしれない未来像を重ね合わせ、この新しい世界を、多層世界の散歩者として考えてみたいと思います。


2. 初体験!!多層世界を歩いてみた!

ホズニ・アウジ《Airplane Mode》

《Airplane Mode》は、プレイヤーがパイロットではなく乗客となるフライト・シミュレーター・ゲームです。発着地はニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港で、もう一方の発着地としてハリファックス・ロバート・L・スタンフィールド国際空港(カナダ:飛行時間2時間45分)とケプラヴィーク国際空港(アイスランド:飛行時間5時間45分)のどちらかを選ぶことができます。民間の旅客機に乗り込み、フライトを待つ間、プレイヤーは窓際の席でどのように過ごすかを決め、あとは現代の航空技術に委ねます。ユーザーは何をしても、またしなくても、所定の飛行時間を過ぎると、飛行機は目的地に到着します。

撮影:木奥恵三

体験の気づき:飛行機に乗るといつもあるソワソワする感覚は旅行の醍醐味だったのかもしれない。

コロナ禍において、旅行はもちろん外出の機会が制限される日々が続いていました。飛行機に乗って海外へ移動することは夢のようなことになってしまった。また、過去の飛行機で海外旅行をした時の記憶も夢の中にある感覚でした。しかし、飛行機に乗るといつもあるソワソワ感が不思議と蘇る感覚はいつもありました。それは旅行の醍醐味だったのかもしれないと思わされつつ、現実でもない、海外に降り立ったわけでもないこの体験時間は、現実逃避ではない何か人が求めた空白の時間だった、そんな感覚になりました。

作品映像を見る https://vimeo.com/664771666

臼井達也 《amazon basics 68,329 》《 Unattended delivery 2021》(左から順に)

撮影:木奥恵三

《amazon basics 68,329》は、世界最大手のECサイトAmazonのプライベート・ブランドであるAmazonベーシックの商品を実際に購入し、それらを組み合わせて空間的に構成したインスタレーションです。「68,329」は本作を制作するにあたって購入した商品の総購入額を表しています。一方で、68,329円を支払いさえすれば、本作を再現することができます。臼井氏はこの作品で、美術品とはなにか、インターネット・ショッピングから生まれる現代における既製品芸術(レディメイド)や、作品の複製性について問いかけています。

《Unattended delivery 2021》は、配達員から直接荷物を受け取ることなく、玄関に荷物を置いてもらうことで、荷物の配達を完了とするサービスである「置き配」を利用した際、荷物を配達したことの証明として、ユーザーの購入ページにアップロードされる、配達員が玄関の荷物を撮影した写真による作品です。これらの写真はどれも、似てはいるが撮影者の身体的感覚から生じる微妙な差異を持っており、不在の撮影者=配達者という存在や、写真の唯一性を顕在化させ、そこに新しい美的価値を見出そうとしています。

体験の気づき:脳に到達した情報をどう処理するかにオリジナリティがある

私自身芸術を大学で学び、そしてクリエイティブな仕事を勤めている現在において、オリジナリティとはなんなのか?と問いただすことがあります。この作品を見ると私が見ている世界は、自分の脳に情報が到達するまでに何人の人を通して生まれた情報なのか。プロセスを考えるとオリジナルのものは存在しないのかもしれないと感じました。一方で、脳に到達した情報をどう処理するかにオリジナリティがあるのかなと感じました。オリジナリティの連鎖によっていつの間にか複製性を持つもののようになりますが、切り取り方でモノゴトの価値は変わるのではないでしょうか。

谷口暁彦《やわらかなあそび》

撮影:木奥恵三

《やわらかなあそび》は、クッション素材で作られた子供のための遊び場「ソフトプレイ」をモチーフに、現実のシミュレーションとしてのバーチャル空間と現実との関係をテーマに制作、上映されたパフォーマンス作品です。谷口氏本人が、舞台上で作者自身のアヴァターを操作しながら上演され、部分的に似ていて、部分的に似ていない、バーチャルな空間と現実空間との関係性について考察します。

体験の気づき:分身で構成されたプライベートなバーチャル空間が未来で広がると”自分の国”が生まれる。

谷口さんのこの世界に起こりうる現象の切り取り方や残し方に新鮮な考え方がありました。プライベートでもご本人のお子様の成長過程を3Dスキャンし、バーチャル空間の中で保管していく。谷口さん本人にとっても、お子様が成長した後に見ても、また孫が見ても面白いコンテンツになるんじゃないのかなと思いました。自分ではないが、自分の一部を受けとった生物(子供達)はまるで自分の分身で、その分身で構成されたプライベートなバーチャル空間が未来で広がると、私でいう「成川の国」が生まれる。そこで過去の自分に会える未来がくるならば、私はとても待ち遠しい。

撮影:木奥恵三

左上から順に 相川勝《マッターホルンを登る》 ほか セマーン・ペトラ《モノミス:外伝》 谷口暁彦《やわらかなあそび》 海野林太郎《Eyes from the Ionosphere》より,《HOUSE》

撮影:木奥恵三

左上から順に うしお鶏《かえり道》 青柳菜摘+佐藤朋子《TWO PRIVATE ROOMS—往復朗読》
文中写真提供:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

3. リアルとデジタルの融合した世界

多様なアプローチでデジタル世界に触れる

コロナ禍において、アーティストそれぞれが日々の生活から感じたデジタルの位置付けを拡張し、アート作品として展示。中には実際にコントローラーで操作しながらバーチャル空間を散歩体験できるものもあります。

それらの作品を包み込むように、壁面や床にはリアル世界とデジタル世界がマージしたようなグラフィックが施され、テキストのラインに囲まれた空間からはデジタルな世界が覗けるような、まさにこの展示会場自体が多層世界の一つのユニットような表現がされている。(noiz:豊田啓介)

公式オープニングトーク動画はこちら。

4. 多層世界の可能性

今回は東京 / 新宿にあるNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]にて開催されていた「多層世界の歩き方」展での体験をお届けしました。

コロナ禍において日々の生活の中で自分と向き合い、社会と向き合い考える時間が増え、ライフスタイルも大きく変わりました。自分の居場所はどこにあるのだろうか。それは家なのかデジタルの世界にあるのか。自由度が広がった分、本展のように「多層世界を歩くこと」をしていかなければならないのであろうと感じました。

一方で、右も左も分からないまま多層世界を歩きながら壁に当たり、転んだり、まだ見ぬ世界に出会ったり。そういう意味では現実と仮想の世界は違うようで、人生としてはなんら変わらないのかもしれません。

将来は本展のように、日常的にバーチャルの世界に触れるような機会が街中に溢れているのだろう、そこで人は学びながら生きていくのだろうと思います。

リアル開催は終了いたしましたが、オンライン上での展示は開催中ですので、気になる方はこちらにアクセスしてみてください!

多層世界の歩き方オンライン展:https://hyper.ntticc.or.jp/random-walk/index.html

施設概要
名称:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC](東日本電信電話株式会社)
所在地:〒163-1404 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
アクセス:京王新線初台駅東口から徒歩2分
Tel:フリーダイヤル 0120-1444199(11:00-18:00)
Fax:03-5353-0990
URL:https://www.ntticc.or.jp/ja/

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