みなさんこんにちは!THINK EXPERIENCE編集部の太田です。

【Quest ! 】は、都内を中心に話題のイベントや新しくオープンした商業施設をTHINK EXPERIENCE編集スタッフが実際に体験し、レポートしていくコンテンツです。

今回は、東京を飛び出してなんと大阪での取材!大阪府吹田市・万博記念公園内にあるレジャー施設、「ニフレル」での体験をお届けします。生きものとアート、空間デザインが混ざり合う、ここでしかできない体験が味わえる施設ということで、訪問させていただきました!

目次

1. 「生きているミュージアム」ニフレルとは?

ニフレルは、水族館と動物園、美術館が融合した、「生きているミュージアム」です。コンセプトは、「感性にふれる」。生きものたちの生き方や個性を通して、生きものの魅力に触れ、見る者の感性を豊かにするミュージアムとなっています。プロデュースは大阪港にある水族館「海遊館」を運営する株式会社海遊館がおこなっています。

クマノミやチンアナゴなど、飼育・展示されている生きものから考えると「水族館」と捉えられがちなのですが、ニフレルはその一言でくくることができません。ホワイトタイガーやワオキツネザルなどの哺乳類も展示されているほか、その見せ方や展示空間はインスタレーションや空間デザインの観点から考えられており、生きものを飼育せず、映像コンテンツを中心とする展示エリアも存在しているのです。「生きものを展示する」ことを目的とするのではなく、「感性を豊かにする」ことを目的としているからこそ、様々な展示が行われているんですね。また、そうしたユニークな空間になっているため、子供連れだけではなく、20代-30代の女性をはじめ幅広い来場者層に愛されているのも特徴です。

展示テーマは「多様性」。一般的な水族館では「アジアの生きもの」「南極の生きもの」というように生きものたちを生息区域で分けることが多いですが、ニフレルでは「いろにふれる(=色の多様性)」、「わざにふれる(=行動の多様性)」というように、それぞれの生きものの多様な魅力をテーマにして展示エリアを分けています。

ちなみにニフレルという特徴的な名前は、「感性にふれる」の「にふれる」から来ているそう。当時20代の女性広報社員の方による発案ということですが、キャッチーで一度耳にしたら忘れませんね。

ニフレルがあるのは、大阪梅田から40分・新大阪から30分ほど、万博記念公園内のエキスポシティという複合商業施設内です。

エキスポシティは、1970年に大阪万博の一エリアとして開業した遊園地「エキスポランド」の跡地に2015年に開業した複合商業施設で、「ららぽーとEXPOCITY」や日本最大の観覧車「REDHORSE OSAKA WHEEL」などの施設があります。

かの有名な「太陽の塔」もある万博記念公園は、大阪でも指折りの観光スポット。訪問時は平日でしたが、辺りは学生や親子連れで賑わっていました!

ニフレルにどのような生きものがいるか、については他のメディアでも多数紹介されているので、今回TEXでは「体験」を軸に、コミュニケーションの仕方や空間デザインについて考察し、紹介していきます。

展示空間は2階建てで、8つのゾーンに分かれており、順路に沿って周遊できます。各ゾーンは基本的に「○○にふれる」と名付けられており、各テーマごとに生きものの魅力を伝えています。

今回TEXでは、8つのゾーンのうち、取材メンバーが特に感動した5つのゾーンについてご紹介していきます!

2. 色とりどりの生きものの魅力に出会える!「いろにふれる」

入場して最初のゾーンが、「いろにふれる」です。

ドレープカーテンで柔らかく区切られた控えめな照明の空間に、円柱状の水槽。「いろにふれる」ということで、ライトアップされたそれぞれの水槽には赤や黄色、ピンクなど色とりどりの生物が展示され、まるで宝石を見ているかのようです。

一般の水族館では、壁に埋め込まれた水槽が多いですが、このゾーンの水槽は円柱状のためぐるっと見回して生物を探すことができます。一歩踏み入れた時点で、一般的な水族館とは異なる展示方法、視線誘導がなされていると感じました。

▲ アカシマシラヒゲエビの案内板に登るシロボシアカモエビ。

また、ニフレルに展示されている生物には「ガラスかと 見紛うばかりの キチン質」(シロボシアカモエビ)「オスの群れ 強い個体が メスになる」(カクレクマノミ)「瑠璃色は 虹色素胞の 反射です」(ルリスズメダイ)のように五七五のリズムで生態や生息地、特徴について説明されています。五七五だからとっつきやすい、と思いきや、かなりマニアックな情報も書かれているのがおもしろいですね。キチン質?虹色素胞?とついつい調べたくなってしまいます。

他にはプロジェクターを使った展示台も。こちらではRGB値を使って魚の色を分析し、似た色のもの(オレンジならニンジンや夕焼け空など)を紹介しており、色というものを改めて捉え直す展示になっていました。ディスプレイではどんな色でも表現できますが、こんなに色鮮やかな色が自然に存在しているということに改めて驚かされますね。

3. 幻想的でアーティスティックな空間!「およぎにふれる」

続いて、「わざにふれる」ゾーンを通り抜けると、「およぎにふれる」ゾーンに入ります。ここはこれまでとは印象が変わり、照明が落とされた空間となっています。

中央の平たい水槽では、水面が下からライトアップされる形で、壁と天井に水の波紋が投影されています。ライトの上を魚が通るとその影が映し出されるしくみになっていて、なんとも幻想的な空間です。魚自体は暗くてあまり良く見えないので、ここの展示では波紋、つまり「およぎ」という動作そのものが主役になっているのです。水の中を生きる魚であるからこその展示手法に、取材班一同、感動しました。

天井には水滴が一定間隔で落ちるノズルも設置されており、より複雑な波紋を作り出しています。細かいところにまでこだわったこの空間構成により、ここ「およぎにふれる」ゾーンは、2020年の日本空間デザイン賞を受賞しています。

周りの水槽でも光と影を生かした展示が行われており、ライトアップによって魚の泳ぐ影とおなじみの五七五の説明文が映し出されていました。切り抜いた鏡文字を水槽に貼りつけるというシンプルなアイデアではありますが、魚の影がその上を横切り、姿がゆらめくということで、ついついじっくり眺めてしまいますね。

4. ニフレルならではの光と音のアートを浴びよう!「WONDER MOMENTS」

次の空間は「WONDER MOMENTS(ワンダーモーメンツ)」。今までとは打って変わって、「感性にふれる」というコンセプトを体現したインタラクティブな体感型アートコンテンツになっています。

直径5mの球体と足元に広がる8mの円形スクリーンにより構成されているこのWONDER MOMENTSは、LUCENT Inc.の代表を務めるアーティストの松尾高弘さんがプロデュースしたニフレル独自の幻想的な空間になっており、水や自然、宇宙などをテーマにした壮大なストーリーを映像や音楽で表現しています。

WONDER MOMENTSは2階まで吹き抜けになっている空間で、1階からも2階からも見ることができます。「普通の水族館なら大水槽があるような場所に、あえて水槽を置かずにWONDER MOMENTSを置いている」と担当者の方も仰っていましたが、それも頷けるほどのスケール感でした。

足元のスクリーン部分に乗ったり歩いたりすると映像も変化するため、歩きながらインタラクティブな展示を体感するもよし、1階に座って光に包まれながら球体を見上げるもよし、2階から床の映像と球体の映像を同時に見下ろすもよしと、様々な楽しみ方ができるコンテンツになっています。ニフレルが水族館や動物園、美術館といった枠組みに縛られているのではなく、「感性にふれる」というコンセプトで成り立っている場所である、ということがよく伝わるゾーンでした。

5. 目の前で生きものの動きを体感!「うごきにふれる」

2Fに上がり、「かくれるにふれる」「みずべにふれる」を通り過ぎたゾーンが、「うごきにふれる」です。

このゾーンは、なんと仕切りや壁なしにワオキツネザルやペンギン、カピバラなどの生きものを間近に見れるゾーンとなっています!特にワオキツネザルは動きが豊かで、木のアスレチックを飛び回ったり、餌を食べたり、目の前でおとなしくポーズをとったり(!)していました。取材班一同も童心に帰ったように生きものとのふれあいを楽しんでいました。

▲ ちなみにワオキツネザルは一匹ずつ名前がついていて、それぞれ見た目や性格も違うそうです。
(「ニフレルメイクス」エリアにて撮影)

さまざまな生きものが身近に見られる、というだけでも珍しいこのゾーンですが、「うごきにふれる」という名前を通して考えてみると、生きものたちと同じ目線になるように展示空間が設計されていることに気づきました。つぶさに観察してみると、あらためて生きものたちは動きや仕草、表情が豊かだなと感じられますね。

▲ 水の中を高速で泳ぐビーバー。水中の足の様子もわかります。

▲ 木のアスレチックを楽しむワオキツネザル。
ゆらゆら揺れる構造になっており動きがダイナミックに見えるだけではなく、しっぽでバランスを取るという生態も観察できます。
▲犬のように器用に足で顔をかくペンギン。こんな仕草もするんだ…と驚きました。
▲ カピバラ、ワオキツネザル、オウギバトなど、多くの生きものが共存・共生しています。

ゆったりだったり、機敏だったりと、さまざまな哺乳類・鳥類の多彩な動きを身近に体験できるこのゾーン。その動きには個性があふれていて、いつまでも観察していたくなるような空間でした。

6. 立体音響を取り入れた新たな展示!「ひびきにふれる」

最後のゾーンは、「ひびきにふれる」。

こちらはWONDER MOMENTS同様に生きものの展示がないゾーンとなっており、生きものが奏でる音や生息域の自然環境の音=「ひびき」を全身で体験できるメディアアート作品が設置されています。2021年11月にオープンしたゾーンで、2022年9月までの期間限定となっています。

プロジェクターによって幻想的な映像が映し出されている「映像のトンネル」の中に入ると、360度囲まれたスピーカーによる立体音響で体が包み込まれるような感覚におちいります。「多様性」をテーマに、森、里山、海、都会のそれぞれのシーンで音響空間が構成されており、人間を含むさまざまな生きものの「ひびき」を立体的に楽しめます。特に印象的だったのはクジラやイルカの鳴き声で、まるで広い海の中でコミュニケーションを取っているような感覚を得られました。

こちらはソニーマーケティング株式会社とニフレルとの連携によって生まれたゾーンになっています。水族館や動物園という枠組みを超えて、企業とのコラボレーションがあるのもニフレルのおもしろいところですね。

以上、計8つのゾーンで展示エリアは終了となり、「つながりにふれる」などのコンテンツがある体験型交流スペース「ニフレルメイクス」や、ミュージアムショップ「NIFREL×NIFREL」などを通ってニフレルでの体験は終了となります。

取材班は時間の都合もあり1時間強の滞在でしたが、もっと楽しみたかった…!というのが本心です。エリア全体は広くはありませんが、多様性にあふれる一つ一つの生物をしっかり見ていくと、少なくとも1時間半くらいは滞在できるボリュームであると感じました。空間構成や展示手法にもさまざまな工夫や思いが感じられて、そしてなにより生きものの魅力に触れる時間が貴重で、とても楽しい体験になりました。

▲「みずべにふれる」には巨大なイリエワニも!

また、「わざにふれる」「かくれるにふれる」「みずべにふれる」の3つのゾーンや、カフェ「EAT EAT EAT」など、この記事では紹介できなかったエリアもあるため、ぜひそちらは実際に足を運んで確認してみてください!

7. ニフレルのコミュニケーション施策にも注目!

ここまで、ニフレルでの体験を一連の流れでお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか? 体験レポートを通して、行ってみたいと思われた方も多いのではないでしょうか。

ニフレルの最大の魅力は、もちろんコンセプトや展示空間そのものですが、ニフレルはその他にもさまざまなコミュニケーション戦略を通して、「行ってみたい」「また行きたい」を作り出しています。Think Experienceで捉える「顧客体験」は空間の作り方だけではありません。簡単にではありますが、ニフレルのユニークなコミュニケーション施策について見ていきましょう。

キュレーター制度&毎日更新のブログ

ニフレルでは、生きものに触れるスタッフのことを、飼育員ではなく「キュレーター」と呼んでいます。生きものを通して感性にふれるお手伝いをするためのスタッフであるということで、実際に取材班が見学したときも生きものの生態についてなど質問をしたところ、気さくにお答えいただきました。

また、HPではそれぞれのキュレーターの似顔絵やメッセージも掲載されており、こんなところでも個性を大事にするニフレルの思いを感じられますね。

また、キュレーターによる飼育日誌「キュレーターブログ」やInstagramも毎日更新されています。毎日生きものに接しているキュレーターの目線を通して、ニフレルに行かなくともニフレルの生きものの魅力に触れることができるのが特徴です。

展示ゾーンのリニューアル

2015年に開館したニフレルですが、なんと2022年までにすでに3回も展示ゾーンをリニューアルしています。2019年に「かくれるにふれる」、2020年に「およぎにふれる」が誕生し、2021年にはお伝えしたとおり期間限定の「ひびきにふれる」が生まれました。水族館や動物園という枠に縛られずに、時代に合わせて進化し続け、新たな体験を提供する姿勢は、美術館の企画展や展示替えとも通ずるものがあると感じました。

▲ ミュージアムショップ「NIFREL × NIFREL

そのほか、CMがユニークだったり、ミュージアムショップで売られているグッズの種類が豊富だったり、割引で入場できるだけではなく入館料が生きもののサポートに使われる「ニフレルファミリークラブ」という制度があったりと、ニフレルではユニークなコミュニケーション施策を幅広く展開しています。世界観を表現したCMなどで一度「行ってみたい」と思わせ、生きものの魅力を伝えるブログやリニューアルなどを通して「また行きたい」と思わせる、こうした幅広いコミュニケーション施策も、ニフレルのユニークな魅力の一つであると言えるでしょう。

8. 驚きとワクワクの生まれる唯一無二のミュージアム

以上、大阪の”生きているミュージアム”、「ニフレル」での体験をお届けしました。

ニフレルでは、”生きものをどう見せるか”、あるいは”人にどう映るか”のどちらか一方だけではなく、”生き物の特性・多様性をどのように引き出し、来場者に魅せるか“という展示がなされていると感じました。

そのため、生き物に詳しくない取材班メンバーにもその魅力が伝わってきて、結果として「水族館」として想像していたものを上回る、驚きとワクワクを生み出している空間となっていました。

近年、水族館とデジタルアートを組み合わせた施設やイベントは増えてきていますが、あくまでそうした空間は”異なるもののコラボレーション”という感覚が否めません。ニフレルの場合は、海遊館の持つ生きものへの真摯なまなざしをベースに、アーティストの知見や空間デザインの考えを取り入れながら唯一無二の展示空間を作り上げています。つまり、より深いところで水族館の考え方と体験価値の考え方とが共存しているため、このような体験を作り出せているのだと感じました。

また、”生きているミュージアム”というコンセプトを体現すべく、限られた面積のなかで工夫やコンテンツを考え抜いた空間となっているため、空間を作る会社である博展での仕事でも活かせる学びを多数見つけることができました。新たに多数の取り組みが進んでいるというニフレル自体の姿勢からも、”生きているミュージアム”らしさを感じ、統合的な顧客体験のつくり方としても勉強になりました。

ニフレルは大阪にあるということで、関東に住んでいる方には馴染みの薄い施設かもしれませんが、大阪でしか、ここでしか味わえない生きものとの出会いが楽しめる空間です。ぜひ、大阪に行った場合には時間を作って訪れてみてください!

<概要>
名称:ニフレル
所在地:大阪府吹田市千里万博公園2-1
開催期間:月によって変動( 2022年6月は【平日】10:00-18:00【土・日】9:30-19:00 )
休館日:なし
URL:https://www.nifrel.jp/

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