デジタルコンテンツが日常に溢れ、AIが生成する映像や画像が瞬時に消費されていく現代。デジタルエンターテインメントがインフレ化し、ある種のコモディティ化が進む中で、そのカウンターカルチャーとして「物理的な現実」や「リアルな場でのプレミアムな体験」の価値がかつてないほどに高まっています。
ファンはもはや、画面越しに作品を眺めるだけでは満足せず、自分の愛するキャラクターや物語の世界に直接足を踏み入れ、五感でその息遣いを感じるような深い没入体験を求めています。
このような体験型エンタメ市場(イマーシブ、ポップアップ等)の急速な拡大を受けて、私たち博展は「IP(知的財産)×エンターテイメント×体験デザイン」という領域に本格参入するため、新たにBtoC事業部内に「IPエンターテインメント部」を新設し、活動を本格化させました。
本記事では、この新しい挑戦を牽引するキーマンであるIPエンターテインメント部長の楯と、クリエイティブを担うプランナーの真崎にインタビューを実施。新部署立ち上げの裏側に秘められた戦略から、彼らが徹底してこだわる「IPへのリスペクト」、そして体験型エンタメの未来のビジョンをお届けします。

Index
・なぜ今、IPエンタメ専門チームなのか?
・博展だからこそできる「IPの具現化」
・チームが描く「体験型エンタメ」の未来
・結び
なぜ今、IPエンタメ専門チームなのか?
─今回「IPエンターテインメント部」という専門の「部」が新設された背景を教えてください。
楯: 一言で言えば、市場のパラダイムシフトに対する博展としての戦略的な回答です。博展のBtoC事業部ではここ数年、業界別の戦略を取り入れて大きな成長を遂げてきましたが、いくつかの業界ではこれまでのやり方では大きな成長の継続が難しい局面に入りつつありました。 そこで昨年の春頃から次に注力すべき新しい市場の探索を開始し、様々な領域を分析・比較した結果、国も投資を推進し、今後も確実な成長が期待されている「IPエンターテイメント領域」に白羽の矢が立ちました。単に問い合わせが増えたからチームを作ったわけではなく、「ここに張れば伸びるだろう」というデータと実績に基づき、可能性への投資として、先に『部』という独立した箱を作ったのです。
─現場レベルでも、ファンの求める価値が「単なる展示」から「没入する体験」へとシフトしている実感はありましたか?
真崎: はい、近年は「デジタルの世界観をそのままリアルに持ってくる」という需要が急増しています。例えば、あるゲームIPのファンは、愛するキャラクターたちが「この現実世界に確かに存在している」と実感できること、それをリアルな空間でいかに体現するかが求められます。 また、人気のスマートフォン向け箱庭ゲームのように、アプリ内で十分に完結している世界であっても、あえてその世界観をリアルな空間で体験したいという熱狂的なニーズがあるのです。
楯: IPに深く精通し、IP側から同じ方向を見て作り込むプロダクションは多く存在しています。一方で、「場における体験」を起点に、空間全体からIPの世界観をどう体験させるかを設計するアプローチは、まだ多くありません。博展はこれまで、企業プロモーションにおいて「人がなぜその場所を訪れるのか」「そこに滞在する価値は何か」を常に問い続け、体験を設計してきました。この「人の心を動かす体験設計」の知見こそが、現代のIPファンに対して強烈なシナジーを生み出すと確信しています。

博展だからこそできる「IPの具現化」
─後発参入となる博展が提供できる、独自の強みやアプローチとは何でしょうか?
真崎: 大切にしているのは、まずIPを「受け入れる」ことから始める姿勢です。扱うIPのすべてを、チームメンバーが最初から深く知っているとは限りません。 だからこそ、「なぜこれだけ多くの人が熱狂しているのか」を自分なりに腹落ちさせるところから始めます。リサーチやヒアリングを重ねながら、IPホルダーの方々と同じ熱量と愛着を持って、コンテンツに向き合う。その上で、途中段階から実際に触れられるプロトタイプをつくり、同じ方向を向いて一緒に作っていく -このプロセスにしっかりと工数をかけているのが特徴かもしれません。
楯: その姿勢を物理的な空間に落とし込むうえで効いているのが、企画・デザイン・制作施工・デジタル開発までを社内で連携できる体制、そして実物大の造形物で検証できる「プロトタイピング」の力です。CGのパースを見ていただくだけでなく、実際にスタジオで実物に触れていただくことで、IPホルダーやIPを活用したいと考えている企業の方々と私たちが同じ方向を向いて作り込めているかをすり合わせる。その積み重ねが、深い信頼関係に繋がっていきます。

─デジタルとリアルの融合という点でも、博展の技術力が活かされているのでしょうか。
楯: はい。私たちの大きな強みは、映像・音響・照明・システム開発といったテクニカル演出と、空間施工などのフィジカルな技術を一体化し、ひとつの体験として設計・実装できる高度な開発力です。
これにより、ソフトとハードの垣根を越えながら、本来は目に見えないIPの魅力や世界観を、リアルな体験として具現化し、その価値を最大化することができます。
真崎:その開発力は、社内のR&Dの取り組みである「100+prototypes」として常に実証実験を行い、新しい技術的な強みや、競争優位性をもたらす独自のソリューションを生み出し続ける文化によって支えられています。例えば、ソニーの空間再現ディスプレイを用いた「ウサギの住み家」のように、来場者が3Dのウサギが実在するかのように感じられる技術や、複雑な投票システムの構築など、最新のアイデアを迅速に具現化することで、具体的な価値を提示しています。

─「IP」と「ファシリティ(商業施設やテーマパークなどの施設)」領域の掛け合わせによるシナジーも狙えるわけですね。
真崎:はい。IPイベントにおいて、コアファンだけでなく一般層までを巻き込むためには、「キャズム(深い溝)」と呼ばれる障壁を超える必要があります。その一般層を呼び込むために必要なのが、「なんとなく面白そう」「空間として純粋に没入できる」と思わせる圧倒的な空間の引力です。
博展はこれまで、都内大型複合施設での大規模なクリスマスマーケットや、体験型インスタレーションなどを手掛け、そうした場所を単なる空間ではなく「集客装置」として機能させてきました。アーティストの展覧会や没入型ホラーイベントなどの実績も含め、このファシリティ領域で培った「空間全体を支配するノウハウ」をIPに掛け合わせることで、新たなファン層を開拓することが可能になります。

チームが描く「体験型エンタメ」の未来
──すでに大型案件が進行中とのことですが、今後はどのような案件に注力し、チームとしてどう進化していきたいですか?
楯: 現在は、世界的キャラクターの大型案件や国民的カードゲームの周年記念展、人気のスマートフォンゲームのリアル体験イベントなど、数々のプロジェクトが進行しています。ただ私たちが中長期的に見据えているのは、「請負」から「共創」へ、そしてその先の「自社クリエイション」へという段階的な進化です。ここから2〜3年かけて、IPホルダーや施設運営者と共にゼロから企画を立ち上げる「共創」のパートナーへと進化していきます。例えば、私たちが持つファシリティのネットワークを活かし、「この商業施設のこのタイミングに、御社のIPを掛け合わせれば最大の効果が出ますよ」といった、場所とコンテンツを結びつけるプロデュースを積極的に仕掛けていきたいと考えています。
真崎: そして最終的に目指すのは、博展自らがリスクを取り、新しいエンターテインメントを生み出す「自社クリエイション(自主事業)」の確立です。クライアントからの依頼という枠組みを超え、自分たちが信じる体験を自らの手で生み出し、収益化までを一貫して担う。そこまで到達して初めて、真の意味で体験型エンタメ市場を牽引する存在になれると信じています。

─最後に、読者であるIPホルダーや施設運営者など、未来のパートナーとなる皆様へメッセージをお願いします。
楯: 私たちは、体験設計におけるプロフェッショナルです。IPホルダーの皆様、IPを活用したいと考えている企業の皆様、そして商業施設やテーマパークの運営者の皆様と共に、これまでにない新しい熱狂を生み出し、同じ方向を向いて歩んでいけるパートナーでありたいと願っています。
真崎: 昨年12月に初めて一般公開で開催した「HAKUTEN OPEN STUDIO」では、4日間で約1500名の方にご来場いただきました。ここでは、プロトタイピングの現場や職人たちのクラフトマンシップを直接ご覧いただくことはもちろん、直接対話と実験を重ねる共創の重要性を発信しています。私たちがどのように体験と向き合い、デザインしてきたのか、ぜひ一度、その空気を感じに来てください。新たな共創の機会につなげるため、皆様のご来社を心よりお待ちしております。
─本日はありがとうございました。
IPの世界観を、リアルな熱狂へ。皆様が大切に育ててきたIPコンテンツを、誰も見たことのないリアルな体験へと昇華させたいとお考えの企業様、あるいは施設を強力なエンターテインメントのハブへと進化させたいご担当者様は、ぜひ博展の「IPエンターテインメント部」にご相談ください。
また、博展は2026年6月17日(水)〜19日(金)に東京ビッグサイトで開催される「第19回 コンテンツ東京」内の特設エリア CONTENT Hubにて、触覚・空間再現映像・AIを統合した体験型自社ブース「Invisible Dog House|見えない犬と暮らす家」を出展いたします。本ブースでは、「IPと体験者の間に本来生まれるべき関係性の縮図」というテーマのもと、IP・コンテンツビジネスにおける関係性の新しいかたちを提示します。ぜひ会場にもお越しください。

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