1:”安心”と”安全”を叶える距離感
2:”BEAUTIFUL DISTANCE”という新しい価値観
3:”安心”と”安全”
4:これからのスタンダードになる、体験としてのデザイン
5:これからの”ポジティブな距離感”

“安全”と”安心”を叶える距離感

5月末に全国的に緊急事態宣言が解除されたことによって、新たな制約のもと、段階的に対面コミュニケーションが再開された。
ソーシャルディスタンスという概念が日常に組み込まれ、様々な制約は、”安全”を守る上で欠かせないものであると同時に、おもてなしや顧客の満足度と言った文脈では違和感を感じるのではないだろうか。今求められる顧客体験の在り方とは一体どういった形なのだろうか。

“安全”という機能的価値を前提としながらも、人の心に豊かさを生む”心地よい安全”=美しい距離感をもった”安心”の実現を目指し、HAKUTEN CREATIVEが考えるデザインとその取り組みを、弊社デザイナー歌代・中榮よりご紹介。

“BEAUTIFUL DISTANCE”という新しい価値観

 

歌代:“ソーシャルディスタンス”という行動 / 所作 / 言葉そのものが、コロナウィルスの蔓延とともに、突然浸透していったものであり、誰も慣れていないため、あまりポジティブな捉え方ができていない。
手袋 / マスク / マネートレーなどを使用して、ただただ”距離をとりましょう”ではなく、このような一見ネガティブに感じる社会問題をクリエイティブの力で解決していくことが、”EXPERIENCE MARKETING”を軸としている私たちの使命なのではないか。

そこで、弊社クリエイティブでは、”BEAUTIFUL DISTANCE “をキーワードに新しい価値観を醸成していくことを始めた。

直訳すると”美しい距離”。

しかし、直接的な美しさと捉えるというよりは、人と人 / 人と物 / 人とウィルスの関係性や距離感を生み出すキーワードと考えている。
いわゆる”ソーシャルディスタンス”のような突貫工事的なものではなく、”心地よい距離感”を創りあげていくことが、我々博展が目指しているところ。

中榮:ディスタンスというものが、物理的 / 視覚的な距離ということだけではない。

“とりあえず距離を置こう”ということではないので、距離をおくことが単純なオペレーションになってしまってはダメで、美しい所作のような見せ方ができたらいいなと考えている。

”安心”と”安全”

緊急事態宣言が解除され、小売が再びオープンしていくときには、#安全 と #安心 がキーワードになっていくと考えている。

一見似ている2つの言葉だが、リスクマネージメントの観点からすると、意味が絶妙に違う。
“安全”は科学的根拠に基づく、ガイドラインに従った物理的な概念。
“安心”は人の心 / 感情を表している情緒的なもの
つまり、物理的な”安全”が完全になされていても、人が”安心”になるということでもない。

店舗やイベントで重要視すべきは、”安全”を作ることはもちろん、消費者にその”安全”がしっかりと伝わっていて、”安心”できる状態を作り出せるかということ。
人の気持ちとして、ちゃんと”安全”が信じられるか / ほっと安心できる感情になれるかが大切になっていくだろう。
人間が生活していく中でのことなので、やはり情緒的な側面がすごく大事。


これからのスタンダードになる、体験としてのデザイン

ーALCOHOL HAND CLEANER

建物の入り口にあるアルコールディスペンサー。
ただ単にアルコールが置かれているというものではなく、製品や情報を同時に展示することによって、無理やり置かれている不自然な存在にならないようにする。

ーALCOHOL DISPENSER

建物の入り口にあるアルコールディスペンサー。
衛生上、手で押すという行為自体が避けられている中、その存在感を環境と馴染ませるのではなく、デジタル要素を加えたハンドプロジェクションを活用することで、エンタメ性をもたせている。

ーWIND AID

換気できているかということも大切なキーワードとなった今。
普段は目に見えない換気を美しく可視化することで、安心と安全の両方を快適に感じられる仕組みに。
この状況では、余白や遊び心をなかなか表現しづらいが、人の心にゆとりを与えていくことを狙いとして制作していく。
実際に弊社のオフィス設置したところ、社員からも自然の風の流れでもくるくる回っていて、楽しみながら見ていられるという感想も。

ーFLOW PLANNING

新しく何か創り上げるというよりは、今すでにあるものにプラスアルファしていくスタンス。
花やオブジェクトを広場の導線に置き、人の道筋をあえて邪魔することで、人々が直接すれ違わないような空間に。
コロナの影響で、多くの花が破棄されているという”フラワーロス”への対策でもある。
これからのスタンダードになる、体験としてのデザインにおいては、“距離をとってください”という2Dのビジュアルサインではなく、立体のオブジェクトになることで、心地よく自然と離れていけるような勝手なコミュニケーションが主流になってくるだろう。

これからの”ポジティブな距離感”

日本では、ビジネスや生活の中での遊びが少ないように感じる。
世界中で起きているネガティブな状況を、いかにポジティブに楽しんでいくか。
不特定多数の人間の生活を考えた上では、機能面だけをフィーチャーしすぎてもいけない時もある。

紹介した実例も、”楽しむ”という観点でいくと、まだまだアップデートのしようがあるのは事実。
ルールや制約を守りながら、自由度の高さと心地よさを担保していく仕組みを作っていきたい。

弊社でインナーのアンケート調査をしたところ、物理的に担保されている”安全”の見せ方が不十分だと不安になってしまうという意見が多くみられた。
どういう”安全”がそこにあって、どのような”安心”があるのかわかりづらいので、よりメッセージや姿勢を表現し、”安全”な状態が見せてあげること、コンシューマーたちに安心を提供するということで、環境 / 関わる人の安全を可視化するしていくことが大切である。