みなさんこんにちは!HAKUTENの太田と浅井です。

【Quest ! 】は、都内を中心に話題のイベントや新しくオープンした商業施設をHAKUTENが運営するオウンドメディア『THINK EXPERIENCE』編集スタッフが実際に体験し、その様子をお届けするコンテンツです。

今回は千葉県木更津市にあるサステナブル ファーム&パーク「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」を体験してきました!

サステナブルファーム&パークとはどのような考え方なのか、今回は「自然&食」「アート」「図書館」の3カテゴリーに分けてご紹介していきます。

目次
1:サステナブルファーム&パーク「KURKKU FIELDS」とは?
2:豊かな自然環境を五感で味わえる、自然と食の体験
3:自然と一体になった現代アート作品で非日常体験を
4:洞窟のような空間で知を育む「地中図書館」
5:「自然」と「文化」を通して人間らしさを考える

1. サステナブルファーム&パーク「KURKKU FIELDS」とは?

KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)は、千葉県木更津市の緑豊かな丘陵地にあるサステナブルファーム&パークです。東京都心からは東京湾アクアラインを通って車で1時間、高速バスでも80分ほどで訪れることができます。

2019年に「農業」「食」「アート」の3つのコンテンツを軸に消費や食のあり方を提案する施設として開業してから、2022年11月には新たな宿泊施設「cocoon」が、2023年2月には思いがけない空間と本に出会える「地中図書館」がオープンと、進化を続けている注目の施設なんです。

創設者兼オーナーは小林武史さん。著名な音楽プロデューサーであるほか、2003年には持続可能な未来への想いを実現させるために一般社団法人ap bankを設立し、環境問題に関する融資などの活動を長年に渡り行っています。

そんな彼の活動の「集大成」としてオープンしたのがここKURKKU FIELDS。場づくりを通して人間としての本質的な気持ちよさを感じてほしいという思いのもと設立・運営されています。「農業から図書館まで多様性のあるこの施設をどんな会社が作ったんだろう」と初めは疑問に思いましたが、音楽活動や環境保護活動を手掛ける小林さんがオーナーであると聞き、筆者は納得しました。

博展が運営するもう一つのオウンドメディア「Sustainable Brands Japan」でもKURKKU代表・小林武史さんのインタビューを行っています。ぜひご覧ください!
持続可能性掲げる小林武史KURKKU代表の思い――体感型農場は場づくりの「集大成」

※過去の記事のため、一部事実と異なる記載がございます。詳細はKURKKU FIELDSオフィシャルサイトにてご確認ください。

2. 豊かな自然環境を五感で味わえる、自然と食の体験

KURKKU FIELDSに足を踏み入れてまず感じたのは、目の前に広がる雄大な地形に広がる緑。訪れた日は天気もよく、空の青と大地の緑のコントラストが美しい一日でした。

そんな豊かな大地・KURKKU FIELDSでは、生態系の保護や農作物の栽培、地産地消のレストランといった自然と食が直接結びついた体験が提供されており、太陽や大地の恵みを全身で体感できます。取材班は園内をぐるっと1時間ほど案内いただくツアーに参加しました。

入口の近くにある池にはオタマジャクシがいたり、カエルの声が聞こえたりと生態系も豊かです。子どものころを思い出すような感覚的で能動的な体験に胸の高鳴りが止まりません。ちなみにこの池の水は施設で出た排水を浄化したものなのですが、浄水装置などを使っているのではなく、土や石などを使った自然の濾過によるものとのこと。土壌が水を濾過するという、知識として知っているだけだったことが目の前で起こっています。

園内にいる鶏や牛の糞を使った堆肥。発酵熱でなんと内部は80度程度になり、中を掘り起こしてみると湯気が立ちのぼります。においが発生するのでは…と思うかもしれませんが、適切に発酵させると糞尿のにおいは消え、腐敗臭も発生させることなく分解されるため、堆肥として使える状態になるとにおいはほとんどなくなるのです。

丘を下った平地には畑があります。稲にしては緑で地面も乾いているな…と思ったら、育てられていたのは小麦。関東で生活していると田んぼこそ見かけることはあれど麦畑を見ることはあまりなく、新鮮な風景でした。

園内にはダイニング(レストラン)、シフォン(ケーキ製造・販売所)、ベーカリー、チーズ工房、宿泊施設などの建物が点在しており、どれも素敵な建築だったことも印象的です。こちらは「シャルキュトリー」。フランス語で肉屋や食肉加工所、またそこで作られる加工品を意味しており、所在地である木更津市内で捕れたイノシシやシカの肉を使った自家製ソーセージやハムなどが製造・販売されています。

畑があれば遊具もあり、素敵な建築があれば広場もあり、丘があれば平地もあり、全てが有機的につながって構成されています。本当に天気が良く、すがすがしい心地です。植物も虫も動物も、そして人間もこの大地の恵みを謳歌しているようでした。

今回の取材班は農学部出身のAと小学生のころ昆虫博士だったOの2人なので久々の自然に大はしゃぎ。大地の起伏や自然の魅力を身体で体感して、おなかはペコペコです。ダイニングに移動して、昼食をいただきました。

こちらは「鹿肉と人参のハンバーグ」。ハンバーグに入っている人参やサラダには園内で育てられた有機野菜が使われているほか、鹿肉はここ房総半島で捕獲された新鮮なジビエ肉です。臭みもなく、ジューシーでありながら肉肉しさもあるとても美味しいハンバーグでした。

デザートに「農場ティラミス」もいただきました。自家製のマスカルポーネチーズを使っており、とても濃厚な味わい。植木鉢に入っているのが農場らしい遊び心ですね。

ダイニングで出た生ゴミはコンポストになったり、洗剤は環境に配慮したものになっていたりと、ダイニングの営み自体も自然環境の循環の一部として心がけられているとのこと。普段は外食や惣菜など出来合いのものを食べたり、自炊をするにしてもスーパーで加工された食材を買っているとあまり意識することも少ないですが、食べることと自然・環境は密接に繋がりあい、循環を通して成り立っている、ということが体感できます。自然と食の体験を通して、舌先で味わうだけではない、より深い体験としての味わいを感じました。

3. 自然と一体になった現代アート作品で非日常体験を

草間彌生《新たなる空間への道標》
鋳造アルミニウム / 2016年

自然、食にならぶKURKKU FIELDSの重要な体験の一つが、現代アートの体験です。草間彌生や増田セバスチャン、Chim↑Pom from Smappa!Groupなどの作品がこちらも園内に点在しており、美術館のホワイトキューブで見るのとはまた異なる鑑賞体験ができます。

メインの順路から窪んだ土地に目を向けると、鏡張りの不思議なキューブに出会います。「ミラールーム」の名称で親しまれているこちらは、草間彌生の作品です。

草間彌生《無限の鏡の間- 心の中の幻》
ミクスト・メディア / 2018年

キューブの中に入ると扉が閉じられ、完全に鏡張りの空間に閉じ込められます。「無限の鏡の間」の名の通り、無限に空間が広がっているように錯覚し、自分の身体や感覚がどこまでも増幅されるような神秘的な感覚に陥ります。この「ミラールーム」は他にも多くの美術館に置かれていますが、ここKURKKU FIELDSの作品は、唯一屋外に設置されていることが特徴。好天に恵まれたこともあり、太陽光が色とりどりの光として飛び込んでくるこの幻想的な空間では、光が思い思いにダンスしているようにも見えました。

斜面を下ったところにある池「マザーポンド」のほとりにあるのが増田セバスチャン《ぽっかりあいた穴の秘密》。地中から飛び出してきたような筒の中に入って上を見上げると、キラキラ、ピカピカとした世界が広がっています。

増田セバスチャン《Gaping Hole Secret》
2019年 – 2020年

「キラキラで可愛い」とも、「グロテスクで不気味」とも言えるようなビビッドな空間で、上部には円形の穴が開いており空の表情を見つめることができます。木や火山のようにも見える外見ですが、中身は生命力を感じさせる鮮やかな色合いで、地球という生き物の内蔵に入り込んだかのような感覚に陥りました。

普段あまり自然に触れることのない都市生活を送っている取材班にとって、雄大な自然に触れることと現代アートの空間に入り込むことは、自分自身が自然の一部、芸術の一部になれるようで、どこか似たような感覚を覚えました。日常で使っている感覚や考え方から離れ、身体全体で体験できる懐かしくも新しい世界は、子どものころに触れていたカラフルな世界を思い出すような体験でした。

4. 洞窟のような空間で知を育む「地中図書館」

続いてご紹介するのは「地中図書館」。

まさか建物が、ましてや図書館があるとは思わない小さな丘の下に、地中図書館はあります。名前の由来はその名の通り地中にあるため。

木や草花が生い茂る土の下に、ひっそりと隠されたように存在し、洞窟のように横たわる地中図書館。土の中の微生物と共生して植物や野菜が成長するように、地中に潜り込んで本と出会い、知を蓄え、想像する力を養う。再び大地を踏みしめ、未来へと進むために。

HPより引用
設計は東急プラザ表参道原宿や上勝町ゼロウェイストセンターの設計を手掛けた中村拓志(NAP 建築設計事務所)。

中に入ると、弧を描くかたちで天井まで本棚が並んでおり、多種多様な本が並んでいます。床、壁、天井は土で仕上げられており、本当に地中の洞窟に入り込んだような感覚に陥ります。窓の上には芝がひさしのように張り出していて、本に直射日光が当たらないような工夫も。広い空間ではありませんが、事前予約制となっており、人口密度はかなり低く抑えられています。

奥に入るとドーム状の空間に本が一面並べられており、見上げると円形の穴が開いていて空が見えます。先ほどの増田セバスチャンの作品が地球のビビッドな脈動だとすると、こちらは大地のゆるやかな胎動といったところでしょうか。ここは読み聞かせのためのホールとして設計されたとのことで、実際に子供向けのイベントもときおり開催されています。

レシピ本、料理エッセイ、柚木沙弥郎、そしてミヒャエル・エンデ『モモ』が並ぶ本棚。

地中図書館の蔵書は、選書家・川上洋平を中心に選定されたもので、約3000冊が並んでいます。農業や自然を中心としながらも料理、哲学、芸術、詩歌、歴史、物語、絵本など幅広いジャンルに渡るラインナップは「晴耕雨読」のライフスタイルをイメージして選ばれたのだとか。並べ方もカテゴリーや分類番号ごとではなくテーマやトピックをもとに並べられていて、新たな本との出会いも楽しめます。個人的に本屋や図書館に行っては本棚を眺めるのが趣味なのですが、「この本とこの本を一緒に並べるんだ…!」と新たな驚きを感じる楽しい本の並びでした。

中にはゆっくり読書のできるソファーも点在しています。ソファーの背の壁にくぼみがあり、『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』がはめ込まれていました。図書館内にはいくつかこのようなくぼみがあり、それぞれ本を抜き取るとその棚の中にも遊び心のある演出がされていたりもするのですが、それは実際に訪れた方へのお楽しみとしてとっておきたいと思います。

5. 「自然」と「文化」を通して人間らしさを考える

以上、「自然&食」「アート」「図書館」の3つの観点から、KURKKU FIELDSをご紹介してきました。

当初この施設を知ったとき、農業とアートと図書館がどのように連関するのだろう、と疑問に思っていましたが、実際に足を運んでみて、どれもがとても人間らしい営みであるという点で共通している、と感じました。童心に帰って野原を駆けずり回り、食べるものの由緒や行く先を想い、芸術を浴びて感覚を開き、書を紐解いて人類の紡ぎし知を摂取する。都心からすこし離れた里山の中で、ふだんは肌の奥深くに押し込めているような感覚や知が活性化され、一人の人間としてこの環境を、この世界を生きていることを実感できる。そんな非日常的かつ有意義な体験のできる場所でした。

巨大な竹のブランコに乗る、という非日常体験もできました。

今回は体験という幅広い観点でKURKKU FIELDSについてレポートをしてきましたが、「自然」だけでも、「食」だけでも、あるいは「建築」だけでも語れる、そしてきっと一人ひとり異なる感想が生まれるような、そんな奥深く、かつ懐の深い施設であると感じました。次は宿泊もしてみたい、と素直に思える一日でした。

食・アート・読書が好きな方はもちろん、日常とは少し異なる体験をしたい方、サステナブルで人間らしい暮らしに興味のある方、ぜひ今度のお休みにでも、KURKKU FIELDSに訪れてみてはいかがでしょうか。

施設概要

店舗名
KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)
住所
〒292−0812 千葉県木更津市矢那2503
営業時間
10:00~17:00
料金
メンバー…保全料 中学生以上300円 
ビジター…保全料 中学生以上300円+ビジター料500円 
(メンバーシップ年会費…一般 中学生以上1000円、地中図書館への入館にはメンバーシップ登録が必要)
※詳細は公式サイト参照
定休日
火・水曜(祝日は営業)

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