みなさんこんにちは!
博展の太田です。

【Quest ! 】は、都内を中心に話題のイベントや新しくオープンした商業施設をTHINK EXPERIENCE編集スタッフが実際に体験し、レポートしていくコンテンツです。

今回は、渋谷にあるMIYASHITA PARKに2022年9月にオープンしたアパレルストア「KAPOK KNOT MIYASHITA PARK STORE」を体験してきました!「KAPOK KNOT」という名前の由来は?サステナブルな新素材とは?ファッションの未来を紡ぎ出す新たなブランドによるコンセプトストアでの体験をご紹介いたします!

目次
1:日本発のファッションブランド KAPOK KNOT MIYASHITA PARK STORE
2:木の実由来の新素材「カポック」を見て、触って体感する
3:ファッション業界の変革に挑戦
4:つくり手とつかい手の境界をなくす取り組み「Farm to Fashion」
5:ブランドストーリーを体験できる店舗

1. 日本発のファッションブランド KAPOK KNOT MIYASHITA PARK STORE

Quest読者の皆さんは、「カポック」という素材をご存知でしょうか?ファッションに興味のある方、サステナビリティ感度の高い方ならご存知かもしれません。

カポックは、インドネシアなど東南アジア地域に自生している同名の木の実から採れる繊維のこと。繊維が短い、燃えやすいなどのデメリットもありながら、撥水性や保温性が高いといった機能性や、木の実由来であるがゆえの環境負荷の少なさといった観点から近年注目されている新たな素材です。

そんなカポックを使ったサステナブルな服作りをしているのが、日本発のファッションブランド「KAPOK KNOT(カポック ノット)」。カポックの繊維としての課題を技術力で乗り越え、製品化に成功。オーガニックコットンや植物性の新素材が脚光を浴びるなか、ファッションの世界を変えると注目されているブランドです。

オープンしたてなので、胡蝶蘭がたくさん。

そんなKAPOK KNOTは、これまでECやポップアップストア、期間限定ショップで製品を展開してきましたが、2022年9月、渋谷・MIYASHITA PARKに初の常設店舗をオープン。空間の至るところでKAPOK KNOTの想いを体現しているコンセプトストアとなっているほか、「KNOT LAB」というワークショップにも参加できる体験型店舗になっています。

“「つくる」と「つかう」をつなぐラボ”と銘打った「KNOT LAB」では、マンツーマンで接客を受けることができ、その名の通り研究員になったような気分で服づくりのストーリーを体感できます。それでは、「KNOT LAB」での流れに沿って、カポックという素材やKAPOK KNOTというブランドについて、どのような体験を通して伝えているのかをご紹介していきましょう。

2. 木の実由来の新素材「カポック」を見て、触って体感する

1つ目のパートは、「Kapok Material- 素材を知る」。

「早速ですが、クイズです。どれがカポックの繊維でしょうか?」と取り出されたのは、3つのビーカー。

「軽い素材である」ということをヒントに、ふわふわの素材を実際に触りながら選びます。無事正解。他の2つは、ウールとコットン。実際に触ってみるとたしかにカポックはとても軽く、また繊維が短いということがわかります。

更に感動したのが、繊維を手に取って握りしめたときの違い。他の2つの繊維と比べてもカポックは温かさがすぐに手のひらに伝わり、保温性が実感できます。

その軽さと保温性の秘密は、顕微鏡の中を覗くと分かります。カポックは一本一本の繊維がパイプのような「中空構造」になっており、空気や水蒸気を中に取り込むため、軽さ、保温性、撥水性、調湿性といった機能性に優れているとのこと。顕微鏡を覗いた様子は実際に体験してのお楽しみとさせていただきます。

ところで筆者は顕微鏡なんて触るのは高校生の理科の授業以来。服の中綿を触って比較することもあまりありませんよね。たしかに研究員になったような気分で、とてもワクワクできる体験でした。

水に浮かべたカポック繊維もお見せいただきました。
なんと2週間前にビーカーに入れたそうですが、全く水を吸わずにふわふわな状態でした。

3. ファッション業界の変革に挑戦

続いてのパートは、「Brand Story – ブランドを知る」。

石油・エネルギー産業に次いで第2位の「汚染産業」と言われているファッション産業。そんなファッション産業を変革し、地球環境を救うために立ち上がったのがKAPOK KNOTというブランドなのです。

優れた機能性を持つカポックですが、主に寝具の中綿として、またかつては救命胴衣や浮き輪の素材として使われており、これまでファッション業界では有効活用されていませんでした。なぜなら、繊維が短く、糸や布にするのが難しいため。この課題を、KAPOK KNOTはシート状に加工することで克服しました。

左がカポックの実、真ん中が取り出した素材、右がシート状に加工したもの。

製品化に至るまで、カポックという素材にピンと来た創業者の深井さんが実際にインドネシアに訪れては素材として使えないかと試行錯誤を重ねたそうで、このシート状の加工も紡績業の四代目という経験を生かして、独自で開発した技術なんです。

しかも、インドネシアではカポックは普通に街路樹のように自生している一般的な木なのだとか。ご案内いただいた方によると「イチョウのように普通に生えている」木らしく、わざわざ栽培して土地や水を新たに使う必要がないという点、また木の実なのでそのまま育てていればまた次の年に実がなるという点で、とても環境負荷の低い素材なのです。

他にサステナブルなファッション素材というとオーガニックコットンなどが思い浮かびますが、コットンは栽培時に大量の水を使う必要があり、実は環境に負荷がかかっている素材の一つ。カポックは他の材料と比べても、サステナビリティと機能性をともに高いレベルで叶える素材なのです。現在では繊維からシートに加工する際にリサイクルのポリエステルを入れることで強度を上げているそうで、この割合を減らしていき、最終的にはカポック100%にするのが目標とのことでした。

ここで、いったんLABの体験から離れて、ブランドを体現している店舗の空間や洋服自体に目を向けてみましょう。

店内はコンクリートで仕上げられた壁がとてもスタイリッシュ。また、床、背景、店員さんのユニフォームと「青」が印象的な空間です。この色は日本の伝統色である「紺青」で、大地を駆け巡る水をイメージしているのだそう。日本生まれのブランドだからこそのセレクトですね。また、ブランド全体のコンセプトは「Blur the Line」。世の中にある様々な境界線をぼかし、それぞれの良さをつないでいくという思いが込められています。ユニセックスの商品が多いことも印象的でした。

個人的に驚いたのは、店舗の空間からいわゆる「サステナブル感」があまり感じられないこと。どうしてもサステナブルな空間というと、植栽が置かれていたり、木などのナチュラルな素材で作られていたり、という印象を持ってしまいますが、この店舗はどちらかというと無機質な空間。お話を聞いてみると、サステナブルであることをファッション業界の当たり前にしたいという考えによるものだそう。サステナブルやSDGsという言葉が叫ばれる昨今ですが、確かにそれが当たり前にならないと明るい未来は作り出せません。ブランドとしての固い意志と、未来を見据える力強い視線を感じました。

また、KAPOK KNOTの洋服は、カポックを中綿として使うだけではなく、表地にもサステナブルな素材を使っているのだとか。廃棄予定の生地を活用したブランケットだったり、ポリウレタンを混ぜることでCO2の排出量を70%削減したレザーの帽子だったりと、至るところまでサステナブル素材にこだわったものが並んでいます。そしてもちろん、機能性やデザイン性にもこだわった製品であるため、こうした点からも「サステナブルは当たり前」という思いが感じられます。

コートやジャケットなど、アウターが中心のラインナップ。帽子やバッグなどの小物も展開しています。

4. つくり手とつかい手をつなぐ「Farm to Fashion」

さて、ここまでは素材についてのサステナビリティを中心に紹介してきましたが、KAPOK KNOTのサステナビリティはそれだけではありません。

最後のパートは、「Farm to Fashion -生産背景を知る」。

KAPOK KNOTでは服づくりのプロセスにおいて「Farm to Fashion」というポリシーを掲げ、現地でカポックの実を採取するところからシートに加工して洋服として縫製するまで、「消費者」と「生産者」と「地球環境」、三者すべてを大事にするサプライチェーンを築いています。近年では「Bean to Bar」のカフェやチョコレートショップなども増えてきていますが、アパレルショップでは珍しいのではないでしょうか。

LABでの体験では、こちらの動画をご紹介いただいたあとに、服づくりに携わる方々のより詳しいパーソナリティの紹介がありました。なんと、顔写真からお名前、趣味、好きな食べ物まで! インドネシアの素材工場で働く方々は「コーンご飯」がお好きな方が多く、「コーンご飯とは…?」と思いましたが、どうやら朝ごはんの定番メニューなんだそうです。みなさんの笑顔が印象的で、見ているこちらまで顔がほころんでしまいます。

「顔が見える野菜」のように「現地ではこのように作っていて…」と紹介する取り組みはよく目にしますが、実際に個人のプロフィールや人となりまで知ると、急にブランドや製品との距離が近くなったように感じられました。

ところで、お伝えしたようにカポックはとても軽い素材で、生産工場では繊維が舞ってしまうため、お昼ご飯を食べるときにはブランケットを掛けて繊維が舞うのを防いでいるそう(上記の動画でも繊維が舞っている様子が分かりますね)。そんなインドネシアの方々のために、この店舗では端切れをつないでブランケットを作るという企画が行われていました。

筆者も参加させていただきました。顕微鏡に続いて、今度は高校の家庭科ぶりのミシンの体験となりました(笑)。

こちらは完成したらインドネシアに送り、実際に使っていただけるということで、まさに“「つくる」と「つかう」を「つなぐ」”というコンセプトが感じられる体験でした。

5. ブランドストーリーを体験できる店舗

以上、渋谷のMIYASHITA PARK内にある「KAPOK KNOT MIYASHITA PARK STORE」での体験をお届けしました。「KNOT LAB」での研究員のような体験から、実際にミシンを触ってブランケットを作るところまで、「つくるとつかうをつなぐ」というコンセプトを実際に頭と身体で体感できました。

サステナブルでありつつも、ファッショナブルで機能性も追求した洋服や、ブランドアイデンティティを体現するような店舗の空間と、全体を通してものづくりへの強い意志が感じられる店舗でした。良いプロダクトを作っていて、ブランドに自信があるからこそ、良い空間、良い体験が作り出せるのだろうな、と感じました。

筆者が普段服を買うときはEC中心で、あまり接客を受けることがない(というかどちらかというと苦手…)なのですが、いざこの店舗に足を運んでみると、会話をしながら様々なことを学ぶことができ、とても楽しい時間でした。こうして素材から作られ方、そして作り手の顔まで知ることができると、ブランドとの心の距離が近くなったように感じられ、製品を買わずとも「ファン」になったような気分です。

「KNOT LAB」は金土日祝限定、予約制で実施していますが、空きがある場合は当日参加も可能とのこと。ファミリーや子供連れを含むいろいろな方にぜひお気軽に来店いただきたい、とのことでしたので、サステナビリティを学びたい方、ファッションの新素材に興味がある方、シンプルでおしゃれな服が好きな方はぜひ訪れてみてください!

店舗情報

店舗名
KAPOK KNOT MIYASHITA PARK STORE
住所
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 2
営業時間
11:00~21:00
※KNOT LABの体験は金土日祝のみ・予約制

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