みなさんこんにちは!
博展プランナーの太田と浅井です。

【Quest ! 】は、都内を中心に新しい店舗体験やイベントについて新人プランナーが実際に体験し、レポートしていくコンテンツです。
今回は、東京 / 有明のパナソニックセンター東京で2022年3月12日-20日に開催されていた「ETERNAL Art Space」での体験をお届けします。

目次
ETERNAL Art Spaceとは?
巨大な映像空間を体験!
各作品をレポート!
おわりに

1. ETERNAL Art Spaceとは?

⚫︎ETERNAL Art Spaceとは?

「ETERNAL Art Space」とは、2022年3月12日から20日までパナソニックセンター東京にて開催されていた、デジタルクリエイティブ団体のMUTEK.JPが主催するデジタルアートのイベントです。パナソニック株式会社とdisguise Japanの協力のもと、高精細な最先端技術を駆使したプロジェクターを搭載した空間で、計8つのデジタルアートの映像を上映していました。

「創造性を誘発するイマーシブアートエクスペリエンス」と銘打たれており、その名の通り「イマーシブ=没入感のある」デジタルアートが空間全体で表現されていました。チームラボの施設が全国各地にできるなどデジタルアートに注目が集まるなか、今回のイベントはRhizomatiksとELEVENPLAYが手掛けた作品もあるということもあり、SNSを中心に話題になっていました。

「ETERNAL」とは「永久の」「永続的な」という意味の英単語です。芸術の永続性を新たなデジタル体験として提供することで、持続性のある芸術文化の発展に貢献したいという意図で名付けられたようです。


⚫︎MUTEK.JPとは?



MUTEK.JP
とは、サウンド、電子音楽、オーディオ・ビジュアルアートなどのデジタル・クリエイティビティの開発と普及を目的とした、芸術文化活動を行う団体です。カナダ・モントリオール発の「MUTEK」のグローバル展開のうちアジア唯一の団体として、2016年に設立されました。「MUTEK」は「MUSIC」と「TECHNOLOGY」を由来にしており、その中にある「MUTATION(融合)」の概念を重要視しながら、音楽とテクノロジーとが対話する世界を探求し続けています。

毎年開催されるデジタルアートと電子音楽のフェス「MUTEK.JPフェスティバル」をはじめとして、美術館やギャラリーでの展示、ライブパフォーマンス、シンポジウム、ウェブ上での作品発表など、デジタルクリエイティビティにまつわる様々な表現活動を実践しています。

⚫︎パナソニックセンター東京とは?

会場になったパナソニックセンター東京は、有明エリアの国際展示場駅からほど近い場所にあるパナソニック株式会社のショールーム・情報発信拠点です。2・3階では2021年にオープンしたクリエイティブミュージアム「AkeruE」をはじめ、様々なワークショップやイベントを開催しています。

ETERNAL Art Spaceが開催されたスタジオAは、500平米を誇るかつてテレビの収録にも使われていたほどの大きなスタジオで、現在では幅広いイベントの会場として使われています。


2. 巨大な映像空間を体験!

それでは、実際にETERNAL Art Spaceを体験していきましょう。

室内に入って受付を通ると、靴を脱ぐエリアがあります。このイベントは土足厳禁。簡易スリッパに履き替えて、通路を抜けると、巨大なスクリーンに迎えられます。

正面、右、左、そして床の4面の映像に合わせて、包み込むようなサラウンドスピーカーで今までに体験したことのないような統合感覚空間が作り出されています。天井も高く、映画館を超えるような映像設備・音響設備によって作り出された巨大空間は、まさしくイマーシブ=没入できる空間と言えます。

入場すると正面には青を基調とした有機的な映像を背景にETERNAL Art Spaceのロゴが映し出され、スピーカーからは落ち着いた音楽が流れ、期待感を醸成するような空間になっていました。

靴を脱いで素足になった来場者は、地面や椅子に思い通りに座りながらスクリーンを眺めていました。床の硬さや質感を自分の足や脚、身体全体で感じることで、触覚が刺激されてよりリッチな統合感覚で体験することができるのでしょう。

3. 各作品をレポート!

ETERNAL Art Spaceは50分間で計8作品を鑑賞するプログラムです。各映像の間には転換もなく、まるで一連の作品であるかのように没入感のある映像体験を楽しめました。各作品バリエーション豊かで、あっという間の50分間でした。それでは、各作品について紹介していきます。

●中山晃子・澤渡英一 [泡沫の形]

最初に上映されたのは、TOKYO 2020オリンピックでの閉会式の演出を担当した画家・中山晃子とピアニストの澤渡英一による[泡沫の形]。落ち着いたピアノの音色のなか、極彩色の水面に泡沫が消えつ結びつ流動的に映し出されています。水面にできる泡や気泡などのミクロなものを巨大に見ることで、普段の自らの視覚がヒューマンスケールに則したものになりすぎていると感じました。人間は視覚にその感覚の多くを頼っていますが、その拡張はまだまだ可能であると感じ、初めて顕微鏡を見たときのような新しい閃きと、水族館の大水槽を目の前にしたときのようなスケール感に圧倒されました。

●Monet from Immersive Museum™ [IMPRESSIONISM]

続いては、絵画の世界に入り込む体験型美術館「Immersive Museum」より、近日開催が予定されている同イベント初のコンテンツより、モネの《睡蓮》をテーマに特別編集された作品[IMPRESSIONISM]。タイトルは「印象派」という意味です。モネの描いた美しい空間に入り込むような映像演出に魅了され、「空間としての絵画」を体験することができました。印象派の成立にはカメラや写真などの技術が一般化したという19世紀の時代背景が影響していますが、高精細のプロジェクターを使って描き出す生き生きとした光の動きは、印象派が求めた「光の効果を色彩によって描き出す」という考え方の現代的解釈とも言えるかもしれません。

Immersive Museumは本来2020年に開催予定だったものの、コロナウイルス感染症の影響で延期となりました。今後の開催時期は調整中ということで、開催の暁にはぜひ読者の皆さんも足を運んでみてはいかがでしょうか。

●Maotik [FLOW]

次に上映されたのは、フランス出身のデジタルアーティスト、Maotikによる[FLOW]。波のリアルタイムデータから自然を表現した作品で、2016年のアルス・エレクトロニカで初公開されたそうです。画面をメッシュ状に分割し流動的に変化させることで波を表現しているのですが、質感表現や奥行きがとてもリアルに感じられ、二次元の映像ではないような感覚に陥りました。目の前に物理的な波の空間が生じたようにも感じることができ、ヘッドセットを使わずとも映像のみでVRのような空間を作り出すことが可能であるということに驚きを覚えました。

●Sabrina Ratté[FLORALIA]

続いての作品は、カナダのSabrina Rattéによる[FLORALIA]です。その名の通り花や植物をテーマにした作品となっており、テクノロジーと有機物の融合から生まれた生態系をシミュレーションしているのだそうです。テクノロジーで作られた箱庭のような空間に、色鮮やかな植物がその葉や花を生い茂らせます。巨大な重低音が鳴り響いており、まるで環境が刻一刻と変わりながらも大地に根ざし生きながらえていく植物の力強さを表現しているかのようでした。

●THINK AND SENSE & Intercity-Express[Stillness]

次に上映されたのは、日本のTHINK AND SENSE & Intercity-Expressが手掛ける、[Stillness]という作品。こちらは禅をテーマにした作品となっており、京都・建仁寺の塔頭である両足院副住職の伊藤東凌氏による監修のもと制作されています。寺の境内の風景や、枯山水のような石の映像などが目まぐるしく変化し、空間の中に入り込めるような映像でありながら、ところどころで鐘の音や葉擦れの音などもあり、緩急の絶妙なバランスを楽しめる作品でした。空間が歪む感覚は京都・龍安寺の石庭の空間づくりとも関連があると感じ、空間を作る仕事をする人間として、禅と空間との関連性に興味が湧きました。

●Cao Yuxi & Lau Hiu Kong[Dimensional Sampling]

次に上映されるのは、中国のデジタルアーティスト Cao Yuxiと香港のサウンドアーティスト Lau Hiu Kongによるコラボレーションプロジェクトである[Dimensional Sampling]。これまでの色彩豊かな作品とは打って変わって、QRコードや1と0を表すビットをモチーフにした白黒の映像空間が作り出され、サウンドについても電話の着信音やAppleの支払い音などテクノロジーにまつわる音がサンプリングされていました。ビット(=一次元的なもの)やQRコード(=二次元的なもの)が空間(=多次元なもの)にインテグレートされているこの作品を通して、普段の我々の生活も本来ならば多次元的であるはずなのに、実際のところ一次元・二次元的な情報によって支配されてしまっている、ということを改めて感じました。

●Refik Anadol Studio[Machine Hallucination − Space, ISS, Hubble]

続いての作品は、トルコ出身のメディアアーティストが主催するRefik Anadol Studioによる[Machine Hallucination − Space, ISS, Hubble]という作品。「Hallucination」とは「幻想」という意味です。映像としては、機械学習のプロセスを表しているのであろう膨大な数の映像が配置されたサイバー空間的な部分と、機械学習の結果として現れた架空の景色の部分とが交互に展開され、「幻想」のような不思議な景色がAIによって構築される様子を体験することができます。とはいえ、「Hallucination=幻想」というタイトルにはなっているものの、機械学習を重ねたAIにとってはおそらくこの景色は一つの結果であると同時に、「現実」なのでしょう。それはきっと、人間が行う知識や経験による世界把握も同様です。AIという人工物を介して、人間による空間の把握や記憶の生成を問い直すというメッセージ性が感じられる作品でした。

●ELEVENPLAY × Rhizomatiks[Infinity flow 2022]

最後の作品は、演出振付家のMIKIKOが率いるダンスカンパニーのELEVENPLAYと日本を代表するデジタルアート集団であるRhizomatiksによる[Infinity flow 2022]。計8作品のうち唯一人間の姿が登場する作品で、ELEVENPLAYによる躍動的なダンスと、Rhizomatiksによる鮮烈な光や音の情景が精密なコンピュテーションを通して完璧に重なり合うするそのさまは、まさにデジタルと身体との融合と言えます。複雑で有機的な人の動きに合わせて緻密かつ大胆に放出される光や音の奔流は、人間の思考や筋肉が電気信号で動いているということを再認識させ、逆説的に人間の身体というものの電気信号による拡張可能性をも感じさせます。

以上8作品、どの作品も個性豊かで迫力があり、あっという間の50分間でした。

4. おわりに

今回は、「ETERNAL Art Space」での体験をお届けしました。
巨大な空間、美しい映像、迫力のある音楽によって、作品の中に入り込むことができ、何も考えずとも楽しめる体験でした!壮大かつリッチな体験を空間の力で作り出せるということは、空間デザイン・体験デザインを行う弊社としても大きな一つの知見になったと考えています。

一方で、イルミネーションなどとは違い、やはりアート作品なので、社会的な文脈へのアプローチや、人間と機械との関係性について問い直すような作品も多いと感じました。ただ迫力のある体験を楽しむもよし、芸術作品として鑑賞するもよし、様々な楽しみ方に開かれている体験だったのではないでしょうか。

こういった巨大な空間かつ映像と音に囲まれる体験は、比較的若い方向けであると考えていましたが、来場者の方の様子を見ると、幅広い年代の方がご来場されていました。SNSに投稿することを来場動機とするのではなく、芸術やレジャーの一環としてデジタルアートが一般的になり、楽しむ人が増えてきたということが感じられました。

ETERNAL Art Spaceはすでに終了してしまっていますが、MUTEK.JPが主催するイベントは毎年開催されています。情報技術や映像技術が進歩を重ねていくことで、デジタルアートのイベントは芸術としてもレジャーとしても今後も開催され、注目を集め続けることでしょう。ぜひ皆さんも新たな体験、新たな芸術としてのデジタルアートに触れられる機会に足を運んでみてはいかがでしょうか?

<概要>
名称:ETERNAL Art Space(エターナルアートスペース)
会場:パナソニックセンター東京 Aスタジオ
所在地:東京都江東区有明3-5-1
開催期間:2022/3/12〜3/20(会期終了)
URL:https://eternalart.space/