みなさんこんにちは。
博展 プランナーの川津と渡邉です。

【Quest ! 】は、都内を中心に話題のイベントや新しくオープンした商業施設をTHINK EXPERIENCE編集スタッフが実際に体験し、レポートしていくコンテンツです。

第15回目は、今年9月に西武渋谷店パーキング館1階にオープンした、新業態となるOMOストア「CHOOSEBASE SHIBUYA」での店舗体験をお届けします。

目次
1:CHOOSEBASE SHIBUYAとは?
2:メディア型OMOストアを体験!
3:過ごすことで伝えるメッセージ

「CHOOSEBASE SHIBUYA」とは?

CHOOSEBASE SHIBUYAは、そごう・西武が手掛ける新業態のメディア型OMO(Online Merges with Offline)ストアです。 モノを手に入れるだけではなく、「気付き」や「賛同」・「応援」を入り口に、“意味に出会い、意志を買う”ような新しい出会いや学びのある購買が体験できる次世代の店舗のあり方を提案しています。

百貨店の課題として訪れるお客様の固定化、そしてテナントブランドの固定化が進んでいる中で、CHOOSEBASE SHIBUYAではOMO形態での購買体験の提供や、時代にあったテーマ設定とその展開を通して2つの課題を打破していく狙いがあるそうです。

異色の立ち上げメンバー

CHOOSEBASE SHIBUYAの立ち上げメンバーは、そごう・西武の責任者も他業界からの転職者、クリエイティブチームにarcaの辻愛沙子氏やホテルプロデューサーの龍崎翔子氏を起用、その他実業家の意見を積極的に反映するなど、百貨店の定石を覆しやすいようなチーム編成で進んでいきました。その結果、百貨店として培ってきたノウハウや体験の丁寧さを残しながらも新しい視点が入り、現在のCHOOSEBASE SHIBUYAのバランスが生み出されました。

「CHOOSEBASE SHIBUYA」の仕組み

購入をECサイトに限定したショールーミングストアとは違い、「CHOOSEBASE SHIBUYA」では店頭 / ECのシステムやオペレーションを融合させ、オンラインとオフラインを自由に行き来できるOMOストアの仕組みを導入しているため、全ての商品が店舗とECどちらからでも購入できます。

また、CHOOSEBASEはそごう・西武初のRaaS業態を採用しています。販売商品のシステム登録と商品の店舗への納品以外の業務をすべて代行することで、実店舗への出店実績が少ないブランドでも簡単に出店できる仕組みを構築しています。様々なサポートの提供によって、D2Cブランドの持つ「リアルな声も知りたい」という声を出店という形で叶えながらCHOOSEBASEに最適なブランドの誘致を実現しています。

※RaaS(ラース):「Retail as a Service」の略称。企業がこれまで蓄積してきた顧客情報やノウハウを活用し、テクノロジー企業の持つ技術と掛け合わせてサービス化すること。

商品に最も詳しいのはスマートフォン?

CHOOSEBASEでは商品説明など販売員の役割の一部にQRコードを利用するなど、従来の百貨店のイメージに囚われない商品との出会いの形を提供しています。渋谷という街や、ターゲットである20代などの若年層にとっては迷いなく受け入れられるシステムだと思います。

定期的にブランドや商品が入れ替わる中で、様々な信念のもと展開されるD2Cブランドの思いを少数精鋭のスタッフだけで伝えていくのは難しいものもあります。そのためQRコードを活用し、それぞれのブランドの世界観を完璧に伝えられるような環境になっているのです。

QRコードの活用は正しい情報を伝えるだけでなく、来店者行動の把握にも一役買っています。QRコードの読み取り回数や、店内に設置されたAIカメラによる来店者属性と照らし合わせて分析を行うなど、店舗作りにも活用されています。

️ 半期ごとにテーマを設定

展示エリアでは、半年ごとにテーマが設定され、そのテーマに沿った商品が展開されています。初回テーマは「タイムリミット」。サステナビリティを渋谷を訪れる人々がより身近に自分ゴト化できる「タイムリミット」という言葉に変換し、売り場を通して訴求しています。ミレニアム世代は学校教育でも触れてきたテーマなので、店舗を通しての表現がより伝わりやすいそうです。

出店ブランドは「タイムリミット」を多角的に捉え、具体的なアクションを起こしているブランドがセレクトされています。例えば、環境破壊が進み地球や文化の「タイムリミット」が近づいていることに問題意識を持ち、プラスチックフリー、オーガニック、リユース、ロングライフ・プロダクトなどに取り組み商品を生み出しているブランドです。

※プレスリリース 

また、メディア型店舗として、オープンに合わせて公開されるECサイト上のオウンドメディアでも、「タイムリミット」というテーマに沿ったさまざまなオリジナルコンテンツを公開されています。

※公式サイトより

また、キービジュアルは渋谷の街に絶滅危惧種の生物がいる印象的なイメージに。

サステナビリティというテーマを扱うにあたり、うつくしく整ったビジュアルで正しいメッセージを訴求するのではなく、見た人それぞれがサステナブルについて考えるきっかけを見つけられるような違和感を残したビジュアルになったそうです。

CHOOSEBASEはそれぞれが未来を選んでいけるような「課題提起」の場にも成長し、モノを売るだけでなくメッセージを提供していきたいという展望があるそうです。購買体験だけでなく、買わなくとも新しい商品に触れること、もっと手前にはCHOOSEBASEの空間に来ることだけでも来店者に気付きがあるなど、違和感を残すことが大切だと考えているそうです。

メディア型OMOストアを体験!

CHOOSEBASE SHIBUYAは製品カテゴリーごとに4つのエリアに分かれています。 カテゴリーの説明と私たちが実際店舗で見て気になった商品も紹介します!

BASE A:​​D2Cブランドを中心に、今話題のアイテムを集積した展示室エリア

【エチュード|気仙沼ニッティングニット】

1つ1つ手編みで作られたセーターです。手仕事で作るので工場で作られるものと違って廃棄の毛糸が出ないことがとても魅力的だと感じました!

https://choosebase.jp/collections/base_a/products/kesennuma

【中古iPhone |にこスマ】

外国で廃棄される予定だったスマートフォンが中古販売されています。今まではネットでの販売のみでしたが、よりお客様に安心して購入していただくために現品展示を行っているそうです。

https://choosebase.jp/collections/base_a/products/nicosuma-1

BASE B:コスメからフードまで幅広いカテゴリーのアイテムを気軽に試せる展示室エリア

BASE Bのエリアにはたくさんのチェックボックスが設置されています。チェックマークは日々の生活で使われている15の素材でできていて、1つ1つの素材を守るためにできる行動がパンフレットに記載されています。パンフレットは廃棄予定だった紙で作られているのはもちろん、インクも期限切れのものを再利用して作られているそうです。

パンフレット
例)05:PET bottles
<代わりにマイボトルを持ち歩く>

BASE C:最新テクノロジーを使った購買体験を提供するショールームエリア

オーダーメイドのビジネスウェアブランド「FABRIC TOKYO」の新店舗ならびに、働く女性のためのオーダーウェアブランド「INCEIN」が展開されています。「INCEIN」は「Every choice, always proud.」をコンセプトに、ジェンダーやバックグラウンドに関係なく、ファッションを通じてあらゆる人が活躍できる社会の実現をミッションとして展開しているブランドです。

https://choosebase.jp/collections/base_c

BASE D:五感を刺激する体験を提供するラウンジエリア

【TAILORED CAFE】
全自動ハンドドリップコーヒーマシン”ポアステディ”を導入した完全キャッシュレスのカフェ。
専用アプリでの事前注文・決済によって、待ち時間なくスムーズな受け取りが可能になっています。

【コラボエリア】
エリアの一角は、オフラインならではのイベントや、多様なブランドとのコラボが楽しめるエリアに。 現在はGoogleとのコラボで、Googleが提供する様々なデバイスとYouTube を組み合わせ、音楽視聴の新しい楽しみ方を提案するプロジェクト ”I DISPLAY music.” の国内唯一の特別ブースが設置されています。このプロジェクトで制作されたAdo「夜のピエロ(Teddy Loid Remix)」のMVの世界観を、Googleの最新ガジェットや非接触ディスプレイを搭載した装置とともに体感でき、Adoコラボカフェラテや特別カフェブースも用意されています。

細部まで拘った店内デザイン

半地下という立地も活かし、空間全体は赤みを抑えた色調でありつつも塗り壁などのテクスチャーも使用され、未来感と違和感が共存するような空間です。店内の色はディレクションを担当された辻愛沙子さんがこだわったポイントの1つでもあるそう。

通路の照明は、有機的なライン状になっていて、奥へと誘うような空間をより印象的に演出しています。ライン状の照明は店舗の中心でクロスしていて、渋谷の交差点をイメージしているそうです。

また、ブラウン管を使用した破砕ガラスなどエコマテリアルが各所に使用されており、施工での端材もPOPスタンドなどにアレンジされて活用されています。

独特な色調でまとまった店内では写真を撮る来店者も多くいて、フォトスポットとして若者の間では話題になっています。今後は、空間に注目して来店した方に対して、どのようにメッセージを届けるかが課題だそうです。

未来のお買い物体験!

展示エリアの商品はすべてその場で購入可能で、商品の隣にはQRコードが設置されています。

【店頭での購買フロー】
❶商品横にあるQRコードを読み取り、”お買い物バックにいれる”を選択
❷”店頭で支払う”を選択→支払いに必要なコードをLINE or メールで受信。
❸レジカウンターでスタッフがコードを読み取る。支払いは完全キャッシュレスです。
❹支払後、バックヤードから商品がピックアップされ、カウンターで商品を受け取る。

商品は店舗以外でもECサイトを通して購入でき、店舗での受け取りか配送を選択できます。

CHOOSEBASEは店舗とECサイトが完全連携しているため、どの方法でもタイムラグなく商品を手に入れられます。また、在庫はバックヤードでブランドを跨いでCHOOSEBASEとして一括管理しているため、配送も購入も1つの窓口から受け取れます。

現在は完全キャッシュレスの有人レジで運用されていますが、将来的には無人レジなどの導入も構想にあるそうです。

過ごすことで伝えるメッセージ

CHOOSEBASEは、新しい観点や情報を届けているだけでなく、メッセージの届け方や取り扱うブランドに対しての配慮が隅々までなされた「伝え方」がデザインされた空間だったと感じました。それは購買者との関係だけに限らず店舗と生産者(ブランド)との関係においても同じことが言え、商品に込めた想いを余すことなく伝える仕組みなど、作り手にも寄り添った空間でした。

また、若い世代が思わず入りたくなる空間デザインやカフェなどを通して、サステナビリティのような様々なテーマに触れてもらいつつも、過ごしやすい空間になっていたこともポイントです。「とにかく行ってみたくなる!」といった純粋な好奇心から伝えたいコアの部分に自然とつながるジャーニーが設計されており、それは百貨店という源流の元、丁寧さを残しながらも新たな魅せ方と融合して実現したものでした。

店内にはQRコードから情報を読み込んで商品に深く興味を持つ方もいれば、友人との会話の中で商品について話す方、空間自体に興味を持って場を楽しんでいる方など、CHOOSEBASEは目的や関心度に応じて多様な楽しみ方があります。CHOOSEBASEが新しく人の流れを生む場所になり、若年層との接点として活性化し続ける限り、メッセージはじわじわと伝わっていくのではないかと思います。空間を通してメッセージを伝えるということは、その空間で時間を過ごした分だけ少しずつ、少しずつメッセージを伝えていくことだと思いますが、まさにそれが叶うような空間だったと感じました。