みなさんこんにちは!HAKUTENの小宮です。

 【Quest ! 】は、都内を中心に話題のイベントや新しくオープンした商業施設をHAKUTENが運営するオウンドメディア『THINK EXPERIENCE』編集スタッフが実際に体験し、その様子をお届けするコンテンツ。
 今回は、東京は北青山に本社を構える伊藤忠商事様が運営するSDGs施設「ITOCHU SDGs STUDIO」で開催された『アートな青果展』を体験してきました!

 テーマとなる「規格外野菜」とアートがどのように展示されているのか、各ゾーンに分けてご紹介していきます。

1:『アートな青果展』とは
2:規格外野菜を目で楽しむ。「カタチを見つめる 彫刻」
3:耳から規格外野菜を味わう。「個性を奏でる 音楽」
4:まだまだある、規格外野菜の楽しみ方
5:見て感じて終わりではない。価値を決める物差しはあなたの手に。
6:『アートな青果展』を体験して
7:イベント情報

1. 『アートな青果展』とは

 『アートな青果展』は、伊藤忠商事が運営する世の中のあらゆるSDGsに関わる活動を後押しする発信拠点「ITOCHU SDGs STUDIO」にて7月21日(金)から9月18日(月)まで開催された期間限定イベント。

 テーマとなるのは「規格外野菜」。通常、農産物は円滑な取引や流通のために、大きさや重さ、色、形、熟度、品質などがランク付けされた農産品規格が設定されています。「規格外野菜」とはこの規格から外れた品のこと。これらの野菜は、出荷の手間に対して収益が見合わないこと、消費者が敬遠するため採算が合わないことを理由に、大抵の場合廃棄されてしまいます。仮に市場に出回ったとしても、その価値の低さゆえに、農産物全体の価格下落や、農業関係者の減収につながってしまうといわれています(プレスリリースサイトより)。皮肉なことに、人間が設定した規格からはみ出てしまった野菜たちの存在が、人間の首を絞める状況が生まれているのです。

 この「規格外野菜は価値が低い」という、長年の習慣によって凝り固まった固定観念に一石を投じ、現代の価値観で見直すきっかけづくりを提供することが、『アートな青果展』の目的です。来場者に規格外野菜の魅力に気付いてもらい、アート作品とコラボした野菜たちに自ら価値をつけてもらう内容になっています。イベントの販売で生まれた売り上げは、仕事がない人や働きづらさを抱えている方と、人手不足の農業をつなげる活動を行なうNPO法人「農スクール」へ寄付されます(プレスリリースサイトより)。

 スーパーでも、「ワケアリ品」として安く売られている野菜たちをよく見かけます。味も大差ないため筆者はよく購入しますが、それらが農業界において疎まれる存在になっていたとは知りませんでした。規格外の野菜たちにどんな付加価値が付けられ、そして来場した自分はその価値をどうはかるのか。早速入場してみましょう。

2. 規格外野菜を目で楽しむ。「カタチを見つめる 彫刻」

 会場に入りまず目に飛び込んでくるのは、イベント名があしらわれた暖簾。その先に広がる数々の作品と相まって、その様子はさながらマルシェです。よく見ると、収穫で使われるメッシュケースや、畑の土を模した造作が施され、会場の一体感を醸し出しています。

 その先で出迎えるのは、大きなカボチャ。本イベントのキービジュアルにもなっている作品は『かつて雄大だった世界のために』と名付けられており、会場でもひときわ大きな存在感を放っています。このゾーンは「カタチを見つめる 彫刻」と題され、大きすぎるカボチャのように、規格外野菜として市場に出回ることのなかった野菜たちがそのまま3Dスキャンされ、彫刻作品として展示されています。細かな濃淡や、その野菜にしか宿らない色味など、忠実に再現されています。そして、作品に題名をつけるのは、実際に野菜を育てた農家さん。どの作品も、まるでプロのデザイナーさんがつけたような独創的な名前が付けられています。きっと、毎日野菜に触れ、愛情を注いで育てているからこそ生まれる表現なのかもしれません。

 この「カタチを見つめる」ゾーンで体験できることは、作品の鑑賞だけではありません。自分が作品になることもできます。それがこちらの「キミも野菜彫刻」。プリントシール機のようにブース内でポーズをとって写真を撮ると、それに合わせた規格外野菜の彫刻作品がタイトルと共に生成されます。筆者が咄嗟にとったポーズは、規格外のナスになってこんな作品に。タイトルは『夢を描く者』。この機械の感受性、想像力に感謝です。規格からはみ出た野菜だからこその、型にはまらない自由さを感じ、自らの心もすっと軽くなるような気がしました。

3. 耳から規格外野菜を味わう。「個性を奏でる 音楽」

 規格外野菜たちを「見て」楽しんだ後は、「聞いて」その魅力に迫ってみましょう。「個性を奏でる 音楽」ゾーンでは、規格外野菜たちが音楽に変身しています。驚くべきはその手法。半分にカットした野菜の断面をドット図に起こし、音階に当てはめることで、不思議な音色が奏でられる楽譜が完成します。実際に出来上がった音楽は、野菜の形状と同じくとてもいびつな印象。規格を満たした、形や大きさがほとんど同じ野菜では到底奏でられない音色が、どことなく癖になります。4種類の野菜が音楽となり展示されていますが、これらをミックスしたものが、実際に会場のBGMとなっています。不協和音になっている印象はなく、どこか教育番組のBGMのような仕上がりに。異世界感のある空間を演出していました。

4. まだまだある、規格外野菜の楽しみ方

 このほかにも、様々なアートと規格外野菜のコラボが生まれています。「色を感じる 絵画」ゾーンでは、規格外野菜から作られた絵の具やクレヨンを使い、材料となった規格外野菜をモチーフに描かれた作品が展示されています。

 このような、廃棄予定のものを新しい製品にすることは「アップサイクル」と呼ばれるそうです。実際に作品を間近で鑑賞すると、色彩の中に、野菜の細かい繊維や実の成分がところどころ見受けられます。市販の画材と違い、同じ色でも一筆ごとに微妙なニュアンスの違いが生まれていました。

 「魅力を紡ぐ 物語」ゾーンは、規格外野菜がショートストーリーに生まれ変わっています。そのいびつさゆえに疎まれる存在になった規格外野菜を擬人化させ、形やサイズだけが正解ではないことを、ポップに描いています。どの作品の内容も、幼い子でも楽しめるものに。飛躍しすぎず、だれにでもあるような経験を切り口に「こんな気持ちになることあるなぁ」と共感しながら読み進めることができます。

 「視点を新しく 言葉」ゾーンは、規格外野菜をテーマにつくられたことわざが、カルタとして展示されています。「こ」のカルタの文句は「こしのひくいアスパラ」。頭を垂れているように曲がっているアスパラも味は特段変わらないように、実力があるのに控えめな人のたとえなのだそう。そのほかにも、いびつな野菜が生まれ変われる意外な調理法など、くすっと笑えるようなユーモアと共に作成されています。

5. 見て感じて終わりではない。価値を決める物差しはあなたの手に。

 一通り作品を見終えた後に待つ最後のゾーンでは、実際に「アート」に生まれ変わった規格外野菜たちが販売されています。その値段を決めるのは来場者自身です。規格外野菜に触れた人を、単に「すごかったなぁ」「おもしろかったなぁ」という感想で帰らせるのではなく、野菜たちに抱いた感動や驚き、はたまた疑問や悲しみを数値化することで、規格外野菜と人間がより密接に寄り添える一手が仕込まれていました。

6. 『アートな青果展』を体験して

 本イベントでは至る所で、規格外野菜と人間の文化が「フュージョン」されています。美術、音楽、言葉遊び。これまで人間が長い年月をかけて育んできた文化を、規格外の野菜たちと掛け合わせることで、どんなものにでも幾多の可能性が秘められていることに気づかせてくれます。

 この会場で最初に出迎えてくれる巨大カボチャを目にした時、鹿児島県出身の筆者は「桜島大根」という郷土の野菜を思い出しました。名前こそ大根ですが、その見た目は実写版「おおきなカブ」。通常でも10kgの大きさがあり、世界一重たい大根としてギネスブックに登録されています。語弊があるかもしれませんが、大きいだけで世界に知られるような野菜もあるのなら、彫刻になって、音楽になって、物語になってその価値が証明される野菜があってもいい。自らまいた種に、どのようなソリューションを掛け合わせて付加価値をつけるか。固定観念に縛られず目を背けなければ、その組み合わせはいくらでもあることを痛感しました。近年叫ばれるSDGsに込められた人間の「責任」とは、このように可能性を探り続けることに集約される気がしました。

 「出る杭は打たれる」のではなく、出過ぎた杭をどのようにして立派な柱にするか。そのアイデアたちに触れたとき、自分自身の可能性までも「まだまだ捨てたものじゃないな」と肯定されているような気になる、不思議な空間でした。

7. イベント情報

 『アートな青果展』の会期はすでに終了していますが、9月26日(火)から11月26日(日)までは新しいイベント『TIME CAPSULE DEPARTMENT』が開催されます。2015年9月25日にSDGsが採択されてから8年が経った中で、「ずっと残したい。愛しき生活、集めました。」というコンセプトの下、衣食住遊様々な切り口でに集められたモノ、コト、オモイがデパートのように展示されます(プレスリリースより)。こちらのイベントも要チェックです。

 今回訪れた「ITOCHU SDGs STUDIO」は、人と商いをつなぎながら、自分に合ったSDGsとの関わり方に出会える場として、様々な催しを行っています。期間限定の催しだけでなく、サステナブル食材を取り扱った『星のキッチン』や子供たちも遊びながらSDGsに触れられる『KIDS PARK』など、魅力的な施設が多数並びます。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

施設情報
名称:ITOCHU SDGs STUDIO GALLERY
住所:東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden B1)
休館日:月曜日(※月曜日が休日の場合、翌営業日が休館) 
アクセス:
東京メトロ 銀座線『外苑前』駅 出口 4a より 徒歩2分
東京メトロ 銀座線・半蔵門線・都営地下鉄 大江戸線『青山一丁目』駅出口 1(北青山方面) より徒歩5分

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