展示会マーケティングは、BtoB企業にとって見込み顧客との直接的な接点を創出する重要なマーケティング手法です。しかし、多くの企業が展示会出展の効果を十分に活かしきれていないのが現状です。

展示会は単なる製品紹介の場ではなく、戦略的に活用することで新規顧客獲得からブランド認知度向上まで、多面的な成果を生み出すことができます。

本記事では、展示会マーケティングの基本から効果的な実施方法、費用対効果(ROI)最大化のためにできることまで、わかりやすく解説していきます。

Index

■展示会マーケティングとは
■展示会出展で得られる5つの主要メリット
■効果的な展示会マーケティングの実施戦略
■展示会後にするべきフォローアップ
■事例1:株式会社マネーフォワード様 HR EXPO 秋
■事例2:oVice株式会社様 働き方改革EXPO
■事例3:Wovn Technologies株式会社様 CEATEC
■まとめ

■展示会マーケティングとは

展示会マーケティングとは、業界の展示会・見本市への出展を通じて、製品・サービスの認知拡大、見込み顧客の獲得、既存顧客との関係強化を図るマーケティング手法です。他のマーケティング手法と異なり、潜在顧客と直接対面でコミュニケーションを取れる貴重な機会を提供します。

展示会マーケティングの特徴

展示会マーケティングには、限られた時間と空間の中で最大限の成果を生み出すための戦略的なアプローチが求められます。従来の広告やデジタルマーケティングとは異なり、来場者との双方向のコミュニケーションが可能で、その場で商談につなげることができる即効性が大きな特徴です。また、競合他社も同じ会場にいるため、自社の差別化ポイントを明確に打ち出す必要があります。

BtoBマーケティングにおける展示会マーケティングの位置づけ

デジタル化が進む現代においても、展示会マーケティングの重要性は変わっていません。むしろ、オンラインでの情報収集が主流となった今だからこそ、リアルな場での体験価値が高まっています。多くの企業がマーケティングオートメーションやデジタル施策と組み合わせることで、展示会で獲得したリードを効率的に育成し、売上に結び付けています。

■展示会出展で得られる5つの主要メリット

展示会出展には、他のマーケティング手法では得難い独特のメリットがあります。これらのメリットを理解し、戦略的に活用することで、投資対効果を最大化できます。

多くの見込み顧客との効率的な接触

展示会では、短期間で大量の見込み顧客と接触できる効率性が最大の魅力です。通常の営業活動では1日に数件のアポイントメントしか取れませんが、展示会では数日間で数百人もの潜在顧客と面談する機会を得られます。特に、業界特化型の展示会では、ターゲット層が明確で質の高いリードを効率的に獲得できます。

購買意欲の高い顧客との出会い

展示会に足を運ぶ来場者は、すでに何らかの課題解決や新しいソリューション導入を検討している場合が多く、購買意欲が高い傾向にあります。このような「今すぐ客」との接触機会を大量に得られるのは、展示会マーケティングならではのメリットです。適切なヒアリングと提案を行うことで、短期間での受注につながる可能性が高まります。

対面営業による信頼関係の構築

デジタル化が進む中でも、対面でのコミュニケーションが持つ信頼構築力は絶大です。展示会では、担当者の人柄や企業の雰囲気を直接伝えることができ、顧客との信頼関係を短時間で築けます。特に高額商材や長期契約を前提とするBtoB取引では、この信頼関係が受注の決定的要因となることが多いです。

ブランド認知度の向上と市場での存在感強化

展示会への出展自体が、業界内での存在感を示すブランディング効果を持ちます。競合他社と並んで出展することで、市場における自社のポジションを明確に示し、業界関係者や潜在顧客に対して強い印象を残すことができます。特に新規参入企業や認知度向上を図りたい企業にとって、展示会は効果的なブランディング手段となります。

既存顧客との関係強化と新たなビジネス機会の創出

展示会は新規顧客獲得だけでなく、既存顧客との関係強化にも活用できます。新製品の紹介や事例発表を通じて、既存顧客との接点を深め、追加受注やアップセルの機会を創出できます。また、既存顧客が他の企業を紹介してくれる場合もあり、新たなビジネスネットワークの構築にもつながります。

■効果的な展示会マーケティングの実施戦略

展示会で確実に成果を上げるためには、綿密な事前準備と当日の効果的な運営が不可欠です。ここでは、展示会前・中・後の各フェーズで実施すべき具体的な施策を解説します。

展示会前の準備事項

展示会の成功は事前準備で8割が決まると言われており、明確な目標設定とターゲット分析が重要な出発点となります。まず、展示会出展の目的を「新規リード獲得数」「商談件数」「ブランド認知度向上」など具体的な数値目標で設定します。次に、想定する来場者のペルソナを詳細に設定し、彼らの課題や関心事を深く理解します。

「ブース設計においては、ターゲット層の注意を引き、自然と足を踏み入れたくなるデザインや仕掛け、そしてブース内では効率的に商談やコミュニケーションが進められるレイアウトの両立が重要です。また、展示会専用のマーケティング資料やデモンストレーション用のツールを準備し、来場者に対して一貫したメッセージを伝えられる体制を整えます。

スタッフ教育と役割分担の最適化

展示会当日のスタッフは企業の顔となるため、適切な教育と明確な役割分担が必要です。各スタッフには、来場者への初期対応、詳細説明、商談進行、情報収集など、それぞれの得意分野に応じた役割を割り当てます。

特に、短時間で来場者の課題を把握し、自社ソリューションとのマッチングを行うヒアリングスキルが重要です。BANTなどのフレームを用い、誰が担当しても一定のヒアリングができるような仕組みを整えることも有効です。

来場者集客のための事前プロモーション

展示会の効果を最大化するには、自社ブースへの来場者数を増やす事前プロモーションが欠かせません。既にリードを獲得している企業からの来場を誘致したい場合は、メルマガ購読者への招待状送付やSNSでの出展告知など、ターゲットに絞った情報発信が有効です。一方、展示会来場者全体からのブース来場を促すためには、会場内や配布物での広告プランの活用や、会場までの交通広告といった広範囲へのアプローチが効果的です。さらに、展示会限定の特典や新製品発表などのインセンティブを用意することで、来場動機を高めることができます。

展示会当日の効果的な運営方法

展示会当日は、準備した戦略を確実に実行することが重要です。来場者との接触においては、まず相手の課題や関心事を的確に把握し、それに対する自社ソリューションの価値を分かりやすく説明します。デモンストレーションや実際の導入事例を交えることで、説得力のあるプレゼンテーションを行うことができます。

また、商談の進行状況や来場者の関心度に応じて、その場でアポイントメントを設定したり、詳細資料の送付を約束したりするなど、次のアクションを明確にします。同時に、来場者の連絡先や課題、関心度などの情報を漏れなく記録し、後日のフォローアップに活用できるよう準備します。

■展示会後にするべきフォローアップ

展示会の真の成果は、出展後のフォローアップ活動で決まります。適切なリード管理と継続的なコミュニケーションによって、展示会で獲得した見込み顧客を確実に売上につなげることが重要です。

リード管理と優先順位付けの方法

展示会で獲得したリードは、関心度や決裁権の有無、想定される売上規模などに応じて適切に分類し、優先順位を付けて管理することが重要です。一般的には、「今すぐ客」「そのうち客」「情報収集段階」といったカテゴリーに分類し、それぞれに適したアプローチ方法を選択します。CRMシステムを活用して、各リードの詳細情報と商談進捗状況を一元管理し、営業チーム全体で情報共有を行います。

効果的なフォローアップ戦略

展示会後のフォローアップは、タイミングと方法が成功の鍵となります。展示会終了後の早いうちに、展示会での会話内容を踏まえたパーソナライズされたメッセージを送付します。その後は、相手の関心度に応じて、詳細資料の送付、導入事例の紹介、デモンストレーションの提案など、段階的にアプローチを深めていきます。

ROI向上のための効果測定指標

展示会マーケティングの効果を正確に評価するためには、適切なKPIの設定と継続的な測定が必要です。主要な測定指標として、来場者数、リード獲得数、商談化率、受注率、顧客獲得単価などがあります。これらの指標を総合的に分析することで、展示会投資の回収状況と改善点を明確に把握できます。業界内の知名度、商材特性、出展規模などによって大きく変動するため、1回の出展で評価することは難しく、複数回出展することで自社の傾向が見え評価がしやすくなりますます。

測定指標計算方法目安となる数値
リード獲得数名刺交換数+アンケート回答数100-300件/出展1小間
商談化率商談件数÷リード獲得数×10020-40%
受注率受注件数÷商談件数×10010-25%
ROI(売上-投資額)÷投資額×100200%以上

中長期的なコミュニケーション戦略

展示会で獲得したリードの中には、すぐに購買に至らない見込み顧客も多く含まれています。これらの長期的な見込み顧客に対しては、継続的なナーチャリング活動を通じて関係を維持し、購買タイミングが来た際に確実に選択してもらえるよう働きかけます。定期的なメルマガ配信、ウェビナーへの招待、業界レポートの提供など、価値ある情報を継続的に提供することで、長期的な関係構築を図ります。

■事例1:株式会社マネーフォワード様 HR EXPO 秋

株式会社マネーフォワード様は、HR EXPO 秋に出展されました。博展では2019年から同社の年間を通じた展示会におけるイベントマーケティングをトータルサポートしており、本出展でもデザインから運営まで支援しました。

イベント概要

マネーフォワードビジネスカンパニーのHRソリューション本部では、人事労務領域のニーズを掘り起こし、ホットリードを獲得することを目的に展示会へ出展されています。また、WEB広告やCMよりも、ブース内で直接お客様とお話しすることでサービスへの関心度などを肌で感じられることも出展の重要な目的とされています。

博展では、デザイン・造作といったハード面だけでなく、運営計画というソフト面も重視したサポートを行っています。コロナ禍を経て、以前のような派手な装飾に戻すのではなく、リード獲得という本来の目的に立ち戻り、必要な要素を整理しました。

運営面の強化や、コンパニオンを含めた運営ディレクターの配置などを提案・実施しました。東京だけでなく大阪や名古屋の展示会にも出展されるマネーフォワード様に対し、来場者数や会場の広さといった規模に合わせてブースの装飾や運営への予算配分を変える提案も行っています。

成果に繋がった取り組み

目標KPIを大幅に達成した要因として、運営面の強化が挙げられます。コンパニオンの配置を含め運営面を改め、可能な限り前回と同じ運営パートナーをアサインすることで、場慣れによるスムーズな名刺獲得を目指しました。

また、運営ディレクターを配置することで、社員の負担を軽減し、お客様対応に集中できる環境を整備できたことも貢献しました。ブースのデザイン・造作といったハードの部分も重要ですが、運営計画というソフト面もかなり重要であり、展示会によってお金のかけ方を見極める必要がありました。

造作面のコストを抑えつつ運営面を補強するという、出展目的に合わせた優先順位の整理が効果的でした。展示会をテストマーケティングの場として活用し、来場者の反応を見ながらプロダクトが最も伝わるキーワードや、より伝わりやすいブース表現、来場者に寄り添うコミュニケーション設計を模索・アップデートし続けたことも成果に繋がりました。

■事例2:oVice株式会社様 働き方改革EXPO

ハイブリッドワークやオンラインイベントに活用できるバーチャル空間を提供するoVice株式会社は、更なるグロースを目的に働き方改革EXPO 2022に出展されました。博展では本出展において、ブースデザインから運営計画・スタッフィングまでを支援しました。

イベント概要

oVice様は2020年に設立され、導入企業数が急増している中で「働き方改革EXPO」への出展を通じて事業の更なる成長を目指されました。物理的制約のない働き方を来場者に訴求することが目的でした。

博展では、oVice様が大切にされているブランドイメージやこれまでのクリエイティブの世界観を丁寧にヒアリングしました。その上で、ブランドの世界観を反映したブースデザインを制作・施工しました。

また、運営面では目標達成に向けた入念な運営計画と、「oViceらしい」カジュアルさを大切にしたスタッフィングを実施しました。

成果に繋がった取り組み

「OFFICE」「CAFE」「HOME」「HOTEL」など、様々な働き方や利用シーンをアイコニックに表現したブースデザインを採用し、物理的制約のない働き方を視覚的に訴求したことが、来場者の関心を引きつけ、賑わいを生み出す要因の一つとなりました。

oVice様が大切にするブランドイメージやクリエイティブの世界観を反映したデザインが、ブースの魅力を高めたほか、カジュアルながらも入念に計画された「oViceらしい運営」を目指した運営計画とスタッフィングもブースの賑わいを創出することに貢献しました。

■事例3:Wovn Technologies株式会社様 CEATEC

ウェブサイト・アプリの多言語化サービスを提供するWovn Technologies株式会社様のCEATEC 2022のご出展にあたり、博展はブースのデザインから施工までトータルサポートしました。

イベント概要

CEATECにおける出展の目的は、「多言語化された世界の可能性」を来場者に感じていただくことでした。単にサービスを訴求するだけでなく、多言語化によって世界を繋げ豊かにするというWovn Technologies様が見据える未来を体感できる空間を創出することを目指しました。

インパクトと個性が求められるCEATECという場で、視覚的にも特徴のある「異質」なブースを目指しデザインしました。会期中は立体文字の存在感に人が呼び寄せられコミュニケーションが生まれることが多くあり、多言語化を通して人と人が繋がるシーンが体現された空間になりました。

成果に繋がった取り組み

「多言語化された世界の可能性」を視覚的に表現するため、「あ!」を意味する多言語の文字をブースに散りばめたデザインは、今回の成果につながる大きな要因です。ブースに視覚的なインパクトと多様性を持たせ、「異質」な存在感を創出したことが、来場者の目を引きつけ、ブースに呼び寄せるきっかけとなりました。

CEATECという場の特性を踏まえ、視覚的な特徴を際立たせた「異質」なブースを目指した戦略が功を奏したと言えます。

■まとめ

展示会マーケティングは、BtoB企業にとって多面的な効果を生み出す重要なマーケティング手法です。見込み顧客との直接的な接触機会の創出から、ブランド認知度の向上、既存顧客との関係強化まで、戦略的に活用することで大きな成果を期待できます。

成功の鍵は、明確な目標設定と綿密な事前準備、効果的な当日運営、そして継続的なフォローアップにあります。また、適切な効果測定を行い、得られたデータを次回の出展に活かすことで、継続的な改善と成果の向上を図ることができます。

博展では、これまで数多くの企業の展示会出展をサポートしてきた実績と知見を活かし、展示会マーケティングの成功をお手伝いしております。展示会出展を検討されている方、より効果的な出展方法をお探しの方は、お気軽にご相談ください。