市場環境の変化やサステナビリティへの要求が高まる中、企業の存在意義を示すパーパスが注目されています。しかし、パーパスは策定しただけでは現場に浸透せず、「どこか他人事」として受け止められやすいという課題があります。
本記事では、パーパス浸透がもたらす効果、認知から体現までの4つのステップ、具体的な社内イベントの例、そして成功のポイントを解説します。
Index
■パーパス浸透がもたらす効果
■パーパスを効果的に浸透させるための4つのステップ
■パーパス浸透を促進する社内イベント例
■パーパス浸透を成功させる企画・運営のポイント
■パーパス浸透イベントの実践事例
■まとめ
■パーパス浸透がもたらす効果
パーパス浸透は、単なる理念の共有にとどまらず、組織・従業員・事業・社会の4つの視点で具体的な価値を生み出します。ここでは、なぜパーパス浸透に取り組むべきかを整理します。
企業全体の一体感・組織力が強化される
パーパスが共通言語として機能することで、部署や職種を超えた一体感とコラボレーションが生まれます。「何のためにこの会社で働くのか」を共有することで、部署間連携が少ない組織にも横串のつながりが生まれやすくなるのです。
社内イベントを部署混合チームで実施し、パーパスを軸に対話できる場を設計すると、普段は接点のない社員同士が連携する機会が増え、組織力の強化につながります。特にBtoB企業では、営業・開発・マーケティングなどの部門間連携が重要であり、パーパスという共通軸が意思疎通を円滑にします。
従業員のモチベーションが向上する
パーパスが仕事の意味づけを変え、日々の業務が社会的な価値と結びつくことで、やりがいやエンゲージメントが高まります。売上やKPIだけでなく、「社会にどんな良い変化を生むのか」を感じられることが、従業員のモチベーション向上につながります。
パーパスに紐づいた表彰や称賛の仕組みを導入することで、前向きな行動を増やし、組織全体のエネルギーを高めることができます。例えば、顧客の課題解決に貢献したエピソードをパーパスと結びつけて共有することで、自分の仕事が持つ意味を再認識でき、継続的なモチベーションにつながるでしょう。
事業戦略や意思決定の軸が明確になる
パーパスは「やること・やらないこと」の判断基準となり、戦略や投資判断の一貫性が高まります。新規事業やコラボレーションの是非をパーパスに照らして判断することで、社内の納得感が高まり、意思決定のスピードも向上します。
全社キックオフなどでパーパスと年度方針をセットで語ることが効果的です。経営層がパーパスを基点に方針を説明すると、現場の社員は自部署の役割や優先順位を理解しやすくなります。その結果、戦略の実行力が高まり、組織全体が同じ方向を向いて進むことができます。
顧客・社会からの共感や支持の獲得につながる
従業員の行動や体験が変わることで、結果として顧客や社会からの共感・支持を得ることができます。パーパスに沿った提案やサービス提供が積み重なることで、ブランドへの信頼が醸成されます。
オウンドメディア、イベント、VIなど外部向けのタッチポイントにもパーパスを反映することが重要です。社内でパーパスが浸透している企業は、対外的なコミュニケーションにも一貫性が生まれ、顧客や取引先から「この会社は何を大切にしているのか」が明確に伝わります。
パーパス浸透によってどのような効果が期待できるのかを、組織・従業員・事業・社会の4つの視点から整理したものが次の表です。
| 視点 | パーパス浸透の効果 | 具体例 |
|---|---|---|
| 組織 | 一体感・組織力の強化 | 部署横断の対話、連携強化 |
| 従業員 | モチベーション・エンゲージメント向上 | パーパス表彰、称賛の仕組み |
| 事業 | 戦略・意思決定の軸明確化 | 新規事業の判断基準、方針共有 |
| 社会 | 顧客・社会からの共感獲得 | ブランド信頼、一貫したコミュニケーション |
■パーパスを効果的に浸透させるための4つのステップ
パーパス浸透は、「認知→理解→共感→体現」の4つのステップで進めることが効果的です。各フェーズで何をすべきかを明確にし、段階的に取り組むことで、現場での定着を実現できます。
パーパスを認知してもらう
まずは従業員にパーパスの存在と内容を知ってもらう段階です。多様な社内チャネルで繰り返し伝えることが重要です。全社集会、動画メッセージ、社内ポータル、オフィス内のポスターなど、同じメッセージを形を変えて届けることで、認知が広がります。
一度伝えたら終わりではなく、継続的に発信し続けることが、パーパスを組織に定着させるための第一歩です。特に新入社員や中途入社者には、入社時研修でパーパスを伝える機会を設けることで、早期に会社の価値観を理解してもらうことができます。
パーパスを自分ごと化する
認知から一歩進めて、自分の業務とのつながりを考えられる状態を目指すフェーズです。小グループで「自部署の仕事とパーパスの接点」を話し合うワークショップを実施すると、パーパスが抽象的な言葉から、自分の日常業務と結びついた具体的なものに変わります。
管理職が自部署のストーリーに落とし込んで説明する役割を持つことも効果的です。上司が自らの言葉でパーパスと業務の関係を語ることで、メンバーは「自分の仕事がどのように会社の目的に貢献しているのか」を実感しやすくなります。
パーパスに共感してもらい、貢献意欲を生む
パーパスの背景や具体的なエピソードを通じて、感情レベルでの納得・共感を生み出す段階です。パーパスが生まれた背景や顧客の声などのストーリーを共有することが、共感を生むきっかけになります。
パーパスに沿ったプロジェクト事例を社内イベントや社内メディアで発信すると、「自分もこんな貢献をしたい」という意欲が高まります。成功事例だけでなく、試行錯誤のプロセスも共有することで、リアリティのある共感が生まれ、行動につながりやすくなります。
パーパスを体現する人が増える仕組みを作る
最終的に、日々の行動や意思決定がパーパスに沿って行われる状態を目指すフェーズです。評価、表彰、業務プロセスなどの仕組みにパーパスを組み込む必要があります。パーパスに沿った行動を評価基準に反映することで、従業員は自然とパーパスを意識した行動をとるようになります。
オフィス空間や共創スペース、ツールなどを通じて、パーパスを「自然と感じられる環境」にすることも重要です。例えば、パーパスを反映したビジュアルや空間づくり、ロゴやVIの更新などを行うことで、従業員が日常的にパーパスに触れる機会が増え、体現につながります。
ここまで紹介した「認知→理解→共感→体現」の流れを整理すると、以下の表のように各ステップの目的と主な施策例がまとめられます。自社の取り組みの現状を把握し、次の一手を検討する際の参考にしてください。
| ステップ | 目的 | 主な施策例 |
|---|---|---|
| 1. 認知 | パーパスの存在を知ってもらう | 全社集会、動画、ポータル、ポスター |
| 2. 理解 | 自分の業務とのつながりを考える | 部署別ワークショップ、管理職による説明 |
| 3. 共感 | 感情レベルで納得し、貢献意欲を持つ | ストーリー共有、事例発信、イベント |
| 4. 体現 | 日々の行動や意思決定に反映させる | 評価制度、表彰、オフィス環境、VI更新 |
■パーパス浸透を促進する社内イベント例
ここでは、4つのパターンの社内イベントを取り上げ、それぞれがどのステップを強化するのかを意識しながら、実践のポイントを紹介します。
共創型ワークショップ・グループディスカッション
参加者同士の対話を通じて、パーパスを自分ごと化する場として活用できるイベントです。少人数グループでパーパスと自部署の関係を話し合うワークを実施すると、「理解」と「共感」のフェーズを同時に促進できます。
外部パートナーや顧客も招いた共創ワークショップにすることで、社外視点も取り入れることができます。外部の声を聞くことで、自社のパーパスがどのように受け止められているかを知り、従業員が改めてパーパスの意義を実感する機会になります。
パーパス体現型オフィスイベント・共創スペース活用
オフィスや共創スタジオを、パーパスを体験できる場として位置づけるイベントです。パーパスを反映した展示やプロジェクト紹介をオフィス内に設け、来訪者・社員が自由に見られるようにすることで、日常的にパーパスに触れる機会を増やします。
社内外向けのトークセッションやオープンスタジオなど、空間を活かしたコミュニケーションの場づくりを行うことで、パーパスを体験として感じてもらうことができます。例えば、パーパスに紐づくプロジェクトの成果物や顧客の声を展示することで、従業員が自社の取り組みを誇りに思える環境を整えることができます。
社内表彰・サンクスカード制度による行動定着イベント
パーパスに沿った行動を可視化し、称賛を通じて再現性を高める仕組みです。パーパスに紐づく行動指針をもとに、エピソードを集めて表彰する「パーパスアワード」のようなイベントを実施すると、良い行動が組織全体に共有され、真似したいと思う従業員が増えます。
サンクスカードやオンライン表彰を定期イベント化し、良い行動を共有する場にすることも効果的です。称賛される体験が増えることで、従業員は自然とパーパスに沿った行動を意識するようになり、組織全体の行動変容につながります。
オウンドメディア、社内SNS連動イベントによる情報発信と共感形成
イベントをコンテンツ化し、オウンドメディアや社内SNSで発信することで、共感の輪を広げる方法です。イベントレポートやインタビューを記事・動画にして、社内外に共有すると、参加できなかった人にもイベントの雰囲気や学びが伝わります。
社内SNSでハッシュタグを設け、感想や写真を投稿してもらうことで、イベントの熱量を持続させることができます。従業員自身が発信者になることで、パーパスへの共感が深まり、組織全体に浸透しやすくなります。
以下の表では、4種類のイベントがそれぞれパーパス浸透プロセスのどのステップを強化するのかを整理しています。
| イベント種類 | 強化するステップ | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 共創型ワークショップ | 理解・共感 | 対話を通じた自分ごと化 |
| オフィスイベント・共創スペース | 共感・体現 | 空間を活かした体験型 |
| 社内表彰・サンクスカード | 体現 | 行動可視化と称賛の仕組み |
| オウンドメディア・社内SNS連動 | 共感・体現 | コンテンツ化と発信 |
■パーパス浸透を成功させる企画・運営のポイント
単発のイベントで終わらせず、中長期的な浸透につなげるために押さえておきたい6つのポイントを整理します。
パーパス浸透には3年スパンで取り組む
文化や行動の変化には時間がかかるため、少なくとも3年スパンで取り組む前提が必要です。短期の成果指標(認知度・参加率など)と中長期の指標(エンゲージメント・離職率など)を分けて考えることが重要です。
初年度は認知と理解、2年目は共感と小さな体現、3年目以降は全社的な体現と定着を目指すという、段階的な目標設定を行うことで、焦らず着実に浸透を進めることができます。
ロードマップを作成する
「いつ・誰に・何を・どう届けるか」を見える化したロードマップや施策マップを作ることが重要です。認知から体現までの各フェーズごとに、イベント、研修、コンテンツをざっくり配置することで、全体像が把握しやすくなります。
ロードマップがあることで、関係部署との連携がスムーズになり、施策の重複や抜け漏れを防ぐことができます。また、経営層や現場への説明材料としても活用でき、社内の理解と協力を得やすくなります。
KGIとKPIを策定する
感覚値だけでなく、定性的・定量的な指標でパーパス浸透の進捗を確認できるようにする必要があります。例えば、KGIとして「パーパス体現行動の実践率」「エンゲージメントスコア」、KPIとして「イベント参加率」「社内SNS投稿数」などを設定します。
無理のない範囲で測定し、定期的に振り返ることで、施策の改善点が見えてきます。数値だけでなく、従業員の声やエピソードも併せて収集すると、より実態に即した評価ができます。
多様なチャネル・ツールで繰り返し伝える
1つのチャネルに依存せず、オンライン・オフラインを組み合わせて繰り返し発信することが重要です。全社集会、部署別ミーティング、オフィス展示、社内ポータルなど、接点を分散させることで、従業員が自分に合った形でパーパスに触れる機会が増えます。
特にリモートワークが増えている環境では、オンラインツールを活用した情報発信が不可欠です。動画、記事、チャットツールなど、複数の形式でコンテンツを用意することで、受け取りやすさが向上します。
経営トップや管理層自ら体現する
トップや管理職の言動の一貫性が、パーパス浸透の信頼性を左右します。社内イベントで自らの言葉でパーパスを語り、具体的なエピソードを共有することが効果的です。
経営層がパーパスを体現する姿を見せることで、従業員は「本気で取り組んでいる」と感じ、自分も行動しようという意欲が高まります。日常のコミュニケーションでもパーパスに触れることで、組織全体にパーパスが自然と浸透していきます。
パーパスが「自分ごと化」するよう仕掛ける
施策ごとに、参加者の翌日以降の行動につながる仕掛けを組み込む視点が重要です。イベントの最後に個人・チームの「小さな一歩」を宣言してもらうなど、行動に落とす工夫を行います。
宣言した内容を後日フォローアップすることで、行動の定着率が高まります。また、実践した内容を共有する場を設けることで、良い行動が組織全体に広がり、パーパス浸透が加速します。
■パーパス浸透イベントの実践事例
博展では、2023年に新たなパーパスを策定し、その浸透に向けた最初の大きな取り組みとして、同年のキックオフイベントを実施しました。このイベントは、単なる方針発表の場ではなく、新パーパスを「理解する」だけでなく、「体験を通じて自分ごと化する」ための重要な機会と位置づけられています。

55期の節目に開催されたこのキックオフイベントでは、策定されたばかりの新パーパスの浸透を明確な軸に据え、従業員一人ひとりが「自分はこの組織で、何を大切にし、どう在りたいのか」を再確認できるよう、イベント全体を重層的に設計しました。
その中核となったのが、新パーパスや5つのバリューを体現した行動やプロセスを可視化する仕掛けです。社内表彰「HAKUTEN AWARD」では、数値的な成果だけでなく、日々の仕事の中で価値観をどのように実践してきたかに焦点を当て、他薦によるMVP選定や永年勤続表彰を実施しました。これにより、個人の行動が新パーパスとどう結びついているのかを、参加者全員が具体的にイメージできる場となっています。
さらに、新パーパスの共有においては、一方的なインプットに終始するのではなく、自身の「原動力」をテーマにした双方向のワークショップを導入しました。経営層と現場社員が同じ目線で対話することで、組織の志と個人の価値観を接続し、理解と共感を深めることを狙っています。
また、イベントの企画・運営そのものも部署横断の実行委員会が担い、「チーム博展」を体現するプロセスとして設計されています。2023年に策定された新パーパスを、言葉ではなく行動として体感する――準備段階から本番、懇親会に至るまでの一連の体験すべてが、博展らしい「体温のあるコミュニケーション」を実感する機会となり、結果としてパーパス浸透を多面的に支える実践の場として機能しました。
■まとめ
パーパス浸透は、短期施策ではなく中長期で文化を育てていく取り組みです。社内イベントはその起点となり、「認知→理解→共感→体現」の流れを後押しします。多様なチャネルで繰り返し体験の機会をつくることで、従業員の行動にパーパスが自然と反映されるようになります。
まずは既存の全社集会や部署ミーティングに小さな対話の時間を取り入れるなど、始めやすい施策から着手することが効果的です。継続した取り組みこそが、組織の一体感や行動変容につながります。
博展では、パーパスの社内浸透における全体設計から、共創ワークショップ、社内イベントの企画・演出、オフィス空間のデザインまで、「体験」を通じたコミュニケーション設計を一気通貫でサポートいたします。「何から手をつければよいか分からない」「既存の施策を見直したい」など、組織の活性化にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
