年度初めや新プロジェクト開始時に、全社員が一堂に会して方針を共有する「キックオフイベント」。しかし、単なる情報伝達の場で終わってしまい、期待した一体感や熱量を生み出せないケースも少なくありません。
本記事では、キックオフイベントの本質的な目的から、成功に導く具体的な企画・運営のポイント、開催までの流れまでを体系的に解説します。
Index
■キックオフイベントの主な目的
■キックオフイベントを成功させるための企画・運営のポイント
■キックオフイベント開催までの流れと注意点
■キックオフイベントの事例
■まとめ
■キックオフイベントの主な目的
キックオフイベントとは、企業が年度初めや重要プロジェクト開始時に全社員や関係者を集めて開催する、組織の方向性を共有し一体感を醸成する場です。単なる情報伝達会議とは異なり、経営陣と従業員が直接対話し、組織全体のベクトルを揃える重要な機会として位置づけられています。
成功するキックオフイベントには、明確な目的設定が不可欠です。ここでは、企業が掲げるべき5つの主要な目的について解説します。
MVVやパーパスの浸透
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やパーパス(企業の存在意義)は、組織が進む方向を示す指針となる考え方です。キックオフイベントは、これらの理念を社員一人ひとりの行動につなげていくための、有効な機会といえます。
経営陣が直接言葉を届けることで、文書やメールでは伝わりにくい「想い」や「本気度」がよりリアルに伝わります。さらに、質疑応答や対話の時間を設けることで、抽象的な理念が「自分の業務とどう関係しているのか」を理解しやすくなります。
MVVやパーパスの浸透において重要なのは、知識として理解することではなく、社員自身が自分の言葉で語れるレベルまで腹落ちさせることです。
経営戦略の共有と方向性の共通化
今期の事業計画や重点施策を全社員に伝えることで、組織全体が同じ目標に向かって進む土台を築きます。メールや社内ポータルでの通知と異なり、キックオフイベントでは、リアルタイムでの説明や質疑応答を通じて、戦略の背景や意図まで丁寧に伝えられる点が特徴です。
全員が同じ情報を同じタイミングで受け取ることで、部門ごとの認識のズレを防ぎ、組織としての意思決定スピードの向上にもつながります。また、各部門の目標が全社戦略とどう連動しているかを可視化することで、縦割り組織に起こりがちな分断を和らげる効果も期待できます。
組織の結束力と一体感の育成
日常業務では部門や拠点ごとに分かれて働く従業員が、キックオフイベントで一堂に会することで「同じ船に乗っている」という意識が生まれやすくなります。この一体感は、組織の結束力を高め、部門を超えた連携の基盤となるでしょう。
特に、経営層と現場社員が同じ空間で時間を共有することで、立場の違いによる心理的距離が縮まります。また、他部門の取り組みを知ることで、自分たちの仕事が組織全体の中でどのような位置づけにあるのかを再認識でき、仕事への意義を見出すきっかけにもなります。
従業員同士のコミュニケーション促進と風通し改善
キックオフイベントには、普段関わりの少ない部門や拠点の社員同士が交流する機会を生み出す効果があります。イベント後の懇親会やワークショップを通じて生まれた横のつながりは、日常業務における相談のしやすさや情報共有の円滑化につながるでしょう。
社内コミュニケーションが活性化することで、課題の早期発見や迅速な対応が可能になります。さらに、部門の壁を越えた自発的な協力体制が生まれやすくなり、新たなアイデアやイノベーションの創出にもつながります。
横のつながりが強化された組織では、情報の流通速度が上がり、変化への対応力が格段に向上します。
従業員のモチベーション・エンゲージメント向上
経営トップが直接メッセージを伝えることで、会社の将来像や自分に期待されている役割が明確になり、仕事への意欲向上につながります。特に、経営陣の熱意や本気度が伝わることで、従業員のエンゲージメントも高まりやすくなります。
また、優秀な成果を上げた社員の表彰やストーリー共有は、他の社員にとってのロールモデルとなります。「努力が正当に評価される」という実感を持てることは、組織全体のパフォーマンスを底上げする重要な要素です。
これらを整理すると、キックオフイベントには以下のような効果が期待できます。
- 経営層の熱意・想いが伝わることで、従業員の当事者意識が高まる
- 同僚の成功事例を知ることで、自分も挑戦したいという意欲が刺激される
- 組織の未来が明確に描かれることで、キャリアパスへの期待感が生まれる
- 自分の貢献が会社の成長につながっていると実感できる
■キックオフイベントを成功させるための企画・運営のポイント
キックオフイベントの効果を最大化するには、戦略的な企画と綿密な運営準備が欠かせません。ここでは、実践的な5つのポイントを具体的に解説します。
開催目的をMVV・パーパスに紐づけて言語化する
「とりあえず毎年やっているから」という曖昧な理由では、参加者の心に響くイベントは作れません。まずは、なぜ今このタイミングでキックオフイベントを開催するのか、それが自社のMVVやパーパスとどう結びつくのかを明確に言語化することが重要です。
目的の言語化プロセスでは、経営層と企画担当者が対話を重ね、「今年のキックオフで達成したい状態」を具体的に定義します。たとえば、「新ビジョンを70%以上の社員が自分の言葉で説明できる状態」や「部門間の連携案件が前年比30%増加する土台を作る」など、測定可能な形で目標を設定することが効果的です。
開催目的が明確に言語化されていれば、プログラム内容やコンテンツの選定基準がぶれることなく、一貫性のあるメッセージを参加者に届けられます。
スケジュール・タイムテーブルを工夫する
参加者の集中力と熱量を維持するには、メリハリのあるタイムテーブル設計が不可欠です。一般的なキックオフイベントは、オープニングから懇親パーティーまで4〜6時間程度で構成されますが、各セグメントの時間配分と内容の工夫によって、参加者の満足度は大きく変わります。
特に重要なのは、インプット(情報提供)とアウトプット(対話・ワーク)のバランスです。一方的な講演が続くと集中力が低下するため、60〜90分ごとに参加型のセッションを挟むことで、参加者の能動性を引き出せます。
以下は、標準的なキックオフイベントのタイムテーブルの一例です。
| 時間帯 | プログラム内容 | 所要時間 | 工夫のポイント |
|---|---|---|---|
| 10:00-10:20 | オープニング・経営トップ挨拶 | 20分 | 冒頭で一日の流れと目的を明示、期待感を醸成 |
| 10:20-11:20 | 経営方針・事業戦略発表 | 60分 | 一方的な説明に留めず、質疑応答の時間を確保 |
| 11:20-12:00 | 部門別目標共有 | 40分 | 各部門の連携ポイントを可視化 |
| 12:00-13:00 | 昼食休憩 | 60分 | 部門横断のテーブル配置で交流促進 |
| 13:00-14:30 | 参加型ワークショップ | 90分 | 午後の眠気対策に体を動かす要素を入れる |
| 14:30-15:30 | 表彰式・成功事例共有 | 60分 | 受賞者のストーリーを映像や本人の言葉で伝える |
| 15:30-16:00 | クロージング・決意表明 | 30分 | 参加者全員で唱和や宣言を行い、一体感でフィニッシュ |
| 16:00-18:00 | 懇親パーティー | 120分 | 立食形式で自由な交流を促進 |
イベント全体に「キーワード」を散りばめる
キックオフイベントで最も伝えたいメッセージを「キーワード」として設定し、プログラム全体に一貫して散りばめることで、参加者の記憶に深く刻まれます。たとえば、「挑戦」「共創」「顧客第一」など、その年の組織の行動指針となる言葉を選定すると良いでしょう。
このキーワードは、経営トップの挨拶、各部門の目標発表、ワークショップのテーマ、表彰制度の評価軸、さらには会場装飾やスライドデザインに至るまで、あらゆる場面で繰り返し用いると効果的です。心理学の「単純接触効果」により、繰り返し接触することで自然と親近感と記憶定着が進みます。
効果測定として、イベント後のアンケートで「今日最も印象に残った言葉」を自由記述で尋ね、キーワードの想起率を確認するのも有効です。
表彰制度の評価軸を「MVVの体現度」にする
従来の売上や業績だけでなく、MVVをどれだけ体現したかを評価軸に加えることで、理念を実践することの価値を組織全体に示せます。たとえば、「挑戦賞」「共創賞」「顧客感動賞」など、価値観に紐づいた複数のカテゴリを設置することで、多様な貢献を可視化できます。
受賞者本人がどのような思いで行動したのか、そのストーリーを映像や本人のスピーチで紹介することで、他の従業員にとっての具体的なロールモデルとなります。
表彰制度の効果を最大化するために、以下のポイントを意識して設計しましょう。
- 評価基準を事前に明確化し、全社員に周知することで透明性を確保する
- 数値化できない貢献も積極的に評価し、多様な価値観を尊重する姿勢を示す
- 受賞者の背景や苦労したポイントを丁寧に伝え、共感を生む
- 表彰の場を経営層が直接賞賛する機会とし、組織の価値観を体現する
「参加型ワークショップ」で理解を深める
一方的な情報提供だけでは、従業員の深い理解や行動変容にはつながりません。参加型ワークショップを組み込むことで、自分事として考え、対話を通じて理解を深める機会を作ることができます。
ワークショップを効果的に進めるアイデアとしては、以下のようなものがあります。
- グループディスカッション:5〜6名のチームで「自分たちの部門でMVVを実践するには何をすべきか」といったテーマで対話
- アイスブレイク:他己紹介や共通点探しなど、初対面同士でも話しやすい仕掛けを冒頭に設ける
- リアルタイム投票システム:経営層への質問や意見などを匿名で集め、普段は声を上げにくい従業員の本音を引き出す
- ワールドカフェ形式:複数のテーマを設定し、参加者が自由に移動しながら多様な視点に触れる機会を作る
■キックオフイベント開催までの流れと注意点
キックオフイベントを成功させるには、開催の3〜6ヶ月前から計画的に準備を進める必要があります。ここでは、開催までの具体的なステップと各段階での注意点を解説します。
参加者数・開催形式の決定
最初に決定すべきは、誰を対象にどのような形式で開催するかです。参加者の規模や地理的分散、予算などを考慮して、集合型・ハイブリッド型・オンライン型の中から最適な形式を選びます。
主な開催形式の特徴と、それぞれのメリット・デメリットを整理すると以下のようになります。
| 開催形式 | 適した状況 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 集合型(リアル会場) | 参加者が同一地域、100〜500名規模 | 一体感が最大、熱量が伝わりやすい、懇親が深まる | 会場費・交通費が高額、遠隔地の参加者に負担 |
| ハイブリッド型 | 拠点が分散、一部はリアル参加希望 | 柔軟な参加方法、コスト抑制と一体感の両立 | 運営が複雑、配信トラブルのリスク、温度差が生じやすい |
| オンライン型 | 全国・海外に分散、感染症対策が必要 | コスト最小、全員参加しやすい、録画で後日視聴可能 | 一体感が弱い、集中力維持が難しい、懇親が限定的 |
判断のポイントとしては、まず開催目的を振り返ります。一体感醸成を最優先するなら集合型、情報共有が主目的ならオンライン型でも実現可能です。また、参加者の移動時間や業務への影響、予算の制約なども総合的に考慮して決定します。
実行委員会の組成と役割分担
イベントを一過性の行事で終わらせないためには、実行委員会の「構成メンバー」に徹底的にこだわるべきです。
管理部門主導の運営に陥ることなく、各部門のキーマンや、社内フォロワーの多い現場リーダーを積極的に登用しましょう。彼らが持つ「現場のリアルな視点」をプログラムに反映させることで、参加者の共感度を高め、組織の一体感を醸成することが可能になります。
チーム内では、全体の意思決定を行うリーダー、現場の熱量を引き出すコンテンツ企画、円滑なオペレーションを支える運営といった役割を配置します。特に、過去の成功事例を知る経験者のノウハウと、現場社員の巻き込み力を掛け合わせることで、想定外のトラブルを未然に防ぎ、期待を超える成果を生み出す体制が整います。
参加者への告知とスケジュール確保
参加率を高めるには、早期の告知と複数回のリマインドが重要です。開催の2〜3ヶ月前には第一報を発信し、参加者のスケジュール確保を促します。告知方法としては、社内メール、イントラネット掲示、部門長からの口頭案内、ティーザー動画の配信などを組み合わせます。
特に効果的な施策が、経営トップからの直接のメッセージ動画を配信することです。なぜこのイベントが重要なのか、何を期待しているのかをトップ自身の言葉で語ることで、参加者の期待値と重要性の認識が高まります。
告知のタイミングについては、次のようなステップで進めるとスムーズです。
- 開催2〜3ヶ月前に第一報を発信し、スケジュール確保を依頼する
- 開催1ヶ月前に詳細プログラムと参加方法を案内する
- 開催1週間前にリマインドと事前準備事項を通知する
- 開催前日に最終確認と当日の注意事項を送信する
また、参加を促進する工夫として、事前アンケートで「経営層に聞きたいこと」を募集し、当日のQ&Aセッションで回答することで、参加者の当事者意識を高めることができます。
イベント後の振り返りと次回改善のためのフィードバック収集
キックオフイベントの価値は、開催して終わりではありません。参加者の声を丁寧に収集し、次回の改善につなげるサイクルを回すことで、年々質の高いイベントに進化させられます。
アンケートは、イベント終了直後にオンラインで実施し、記憶が鮮明なうちに回答してもらいましょう。設問例としては、以下のような項目を設定します。
| 設問カテゴリ | 具体的な設問例 |
|---|---|
| 全体満足度 | イベント全体の満足度を5段階で評価してください |
| 目的達成度 | 経営方針や今期の目標を理解できましたか |
| コンテンツ評価 | 最も印象に残ったプログラムは何ですか(複数選択可) |
| 一体感醸成 | 組織への一体感や帰属意識は高まりましたか |
| 行動変容 | 明日から実践したいと思ったことを自由に記述してください |
| 改善提案 | 次回のイベントで改善してほしい点があれば教えてください |
収集したフィードバックは、単に数値を集計するだけでなく、自由記述のコメントから参加者の本音を読み取ることが重要です。ポジティブな意見からは成功要因を特定し、ネガティブな意見からは具体的な改善ポイントを抽出します。これらの分析結果は、実行委員会で共有し、次回の企画に反映させます。
■キックオフイベントの事例
理論だけでなく、実際の企業事例を知ることで、自社でのキックオフイベント企画のヒントが得られます。ここでは、私たち博展が実際に行った規模や目的の異なる2つの事例を紹介します。
事例:博展 57期キックオフイベント
2025年1月に開催された第57期上期の全社キックオフイベントは、単なる経営方針の共有にとどまらず、社員のエンゲージメント向上と組織の一体感醸成を深く意識したプログラム構成が特徴です。
具体的な取り組みとして、まずMVVと連動した表彰制度「HAKUTEN AWARD」が挙げられます。永年勤続に加え、クリエイティブ賞やベストプロジェクト賞、企業のバリューを体現したMVPなど多角的な評価軸を設け、受賞者のストーリーを共有することで社員にとってのロールモデルを提示しました。
また、表彰トロフィーには事業活動から出た廃材や端材を再利用した素材を採用しており、クライアントへの提供価値である「資源循環」を社内イベントでも体現することで、社員の意識を高める工夫がなされています。
さらに、第二部の懇親会では縦割り組織の壁を解消するために、部門混合のチーム対抗クイズや社員によるパフォーマンスを実施しました。これにより役職や部署の垣根を超えた活発なコミュニケーションが生まれ、組織全体の風通しを良くする場として機能しています。
■まとめ
キックオフイベントは、組織の方向性を揃え、一体感を醸成する重要な機会です。キックオフイベントの目的を明確にし、参加型プログラムや一貫したメッセージ発信を通じて、参加者の深い理解と行動変容を促すことが成功の鍵です。
開催形式や実行体制を戦略的に設計し、イベント後のフィードバックを次回に活かすサイクルを回すことで、年々進化する組織文化の礎を築けます。自社の状況に合わせた最適なキックオフイベントを企画し、組織の成長を後押ししていきましょう。
博展では、記事内でご紹介したような「組織の熱量を高めるキックオフイベント」の企画から実施までをワンストップで支援しています。
「毎年の恒例行事から脱却したい」「理念浸透につながる場を作りたい」とお考えの担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。貴社の課題や想いに寄り添い、最適なイベント体験をご提案いたします。

