「顧客体験を高めたいが、DXとどう結びつけて考えればよいのかわからない」BtoBの企画・マーケティング担当者のなかには、こうした悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。顧客体験(CX)とDXは、それぞれ独立した概念でありながら、密接に関わり合っています。

本記事では、顧客体験とDXの定義や違いを整理したうえで、DX推進がCX向上に不可欠な理由、実践的な手順、さらにテクノロジーを活用した具体的な事例までを体系的に解説します。自社の顧客体験DX戦略を見直すきっかけとしてご活用ください。

Index

■顧客体験(CX)とDXの基本理解
■DX推進が顧客体験(CX)向上に重要な理由
■DXで顧客体験(CX)を向上させるための手順
■テクノロジー実装で実現する顧客体験(CX)向上事例
■まとめ

■顧客体験(CX)とDXの基本理解

顧客体験とDXは、ビジネスの現場でしばしばセットで語られますが、それぞれの定義を正しく理解しなければ施策の方向性を見誤ります。ここではまず、両者の概念を整理し、違いと関係性を明らかにします。

顧客体験(CX)とは

顧客体験(CX)とは、Customer Experienceの略で、顧客が企業やブランドと接するすべての過程で得る体験の総体を指す概念です。製品やサービスそのものの品質だけでなく、認知・検討・購入・利用・アフターサポートに至るまでの一連の接点での印象や感情が含まれます。

BtoBにおいては、営業担当者との商談、展示会やセミナーでの情報収集、導入後のカスタマーサクセスまでがCXの評価対象になります。つまり、特定の部門だけではなく、組織全体で一貫した体験を提供できるかどうかが問われるのです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して事業モデルや業務プロセス、組織文化を根本的に変革し、新たな価値を創出する取り組みです。経済産業省が2018年に公表したDXレポートをきっかけに、日本国内でも急速に注目を集めました。

単なるIT化やペーパーレス化とは異なり、デジタル技術を手段として組織そのものの在り方を変える点が特徴です。たとえば、営業活動をSFA(営業活動の記録や進捗管理をデジタル化するツール)で可視化し、データに基づく意思決定へ移行することもDXの一形態といえます。

CXとDXの違い

CXとDXは目的と手段の関係で整理すると、それぞれの位置づけが明確になります。以下の表で両者の違いを確認してみましょう。

比較項目CX(顧客体験)DX(デジタルトランスフォーメーション)
定義顧客が企業との接点で得る体験全体デジタル技術による事業や組織の変革
主な焦点顧客視点での価値向上業務プロセスやビジネスモデルの刷新
位置づけ目的(何を実現するか)手段(どう実現するか)
評価指標の例NPS(顧客推奨度)、顧客満足度、LTV(顧客生涯価値)業務効率化率、データ活用度、収益構造の変化

CXは「顧客にどのような体験を届けるか」という目的であり、DXはその目的を達成するための変革手段として機能します。この関係性を理解しないまま、ツール導入だけを先行させてしまうと、投資に見合った成果が得られないケースも少なくありません。

■DX推進が顧客体験(CX)向上に重要な理由

CXを高めるために、なぜDXの推進が不可欠なのでしょうか。その理由を3つの観点から掘り下げていきます。

デジタル化で新しい顧客接点を創出できるため

従来のBtoBマーケティングでは、展示会や対面営業が主要な顧客接点でした。しかしデジタル化が進むことで、オンラインセミナー、Webサイト上のチャットボット、バーチャル展示会など、時間や場所の制約を超えた接点を新たに生み出せるようになっています。

顧客体験DXの本質は、物理的な場とデジタルな場を組み合わせて接点を多層化し、顧客が求めるタイミングで情報や価値を届けられる仕組みをつくることにあります。たとえば、リアル展示会の前後にオンラインコンテンツを用意することで、来場前の理解度を高め、来場後のフォローも途切れなく行えるようになります。

データ活用で顧客理解とパーソナライズが的確になるため

DXを推進すると、顧客の行動データや属性データを統合的に収集・管理できる基盤が整います。MA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客関係管理ツール)を連携させれば、見込み顧客がどの資料をダウンロードし、どのセミナーに参加し、どのページを閲覧したかを一元的に把握できるようになるでしょう。

こうしたデータに基づいて顧客ごとに最適なコンテンツや提案を届けるパーソナライズが可能になります。BtoBでは意思決定に複数の関係者が関わるため、役職や関心領域に応じて情報を出し分けることが、商談の質と速度を高めるうえで極めて有効です。

データ活用がCX向上に寄与する代表的な領域は以下のとおりです。

  • リードスコアリングによる優先度の高い見込み顧客の特定
  • Webサイトの閲覧履歴に基づくコンテンツのレコメンド
  • 過去の商談データを活用した最適な提案タイミングの予測
  • アンケートやNPSデータによるサービス改善点の早期発見

一貫した顧客体験を提供でき、競合と差別化できるため

BtoBの購買プロセスは長期化しやすく、マーケティング部門・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスなど、複数の部門が順に顧客と接します。部門間で情報が分断されていると、顧客は同じ説明を繰り返し求められたり、前回の会話内容が引き継がれていなかったりする不満を感じがちです。

DXによって部門横断でデータを共有できる仕組みを構築すれば、どの部門が対応しても一貫した顧客体験を提供でき、それ自体が強力な差別化要因になります。実際に、CRMと名刺管理ツール、イベント管理システムなどを連携させることで「この顧客は先月の展示会で○○に関心を示していた」という情報を営業が即座に活用できる企業は、商談化率が向上している傾向にあります。

■DXで顧客体験(CX)を向上させるための手順

顧客体験DXを具体的に進めるには、闇雲にツールを導入するのではなく、段階的なアプローチが求められます。ここでは実践しやすい3つのステップを解説します。

カスタマージャーニーマップで顧客接点を可視化する

最初に取り組むべきは、自社の顧客がどのようなプロセスを経て認知・検討・購入・利用に至るのかを「カスタマージャーニーマップ」として可視化することです。カスタマージャーニーマップとは、顧客の行動・思考・感情を時系列で整理した図のことで、接点ごとの課題発見に役立ちます。

マップを作成する際に整理すべき主な項目は以下のとおりです。

  • 各フェーズにおける顧客の行動(情報検索、資料請求、商談参加など)
  • 各接点で顧客が抱く期待や感情
  • 現状の対応方法と使用しているツール
  • 顧客が不満やストレスを感じているポイント

マップをチーム全体で共有することで、「どこにデジタル技術を導入すれば最も効果が高いか」を客観的に判断できるようになります。営業やマーケティングだけでなく、カスタマーサクセスや技術部門も巻き込んで作成すると、より精度の高いジャーニーが描けるでしょう。

課題領域を特定しデジタル技術を実装する

カスタマージャーニーマップで洗い出した課題のなかから、優先度の高い領域を選定し、適切なデジタル技術を導入します。すべての課題を一度に解決しようとするのではなく、効果が見えやすい領域から着手するのが成功のコツです。

課題と導入技術の組み合わせ例を以下の表で示します。

顧客接点の課題導入するデジタル技術期待される効果
見込み顧客へのフォローが遅いMA(マーケティングオートメーション)自動ナーチャリングで接触頻度を最適化
部門間で顧客情報が共有されないCRM(顧客関係管理ツール)商談履歴の一元管理と引き継ぎの円滑化
展示会後の成果が可視化できないイベント管理プラットフォーム来場者の行動データ取得とROI測定
問い合わせ対応に時間がかかるチャットボット・FAQシステム即時回答による顧客満足度の向上

重要なのは、テクノロジー導入を目的化しないことです。あくまで「この課題を解決すると、顧客のどの体験がどう改善されるのか」を起点に判断しましょう。

データ収集・分析によるPDCAで継続的に改善する

デジタル技術を実装して終わりではなく、そこから得られるデータを継続的に分析し、施策を改善し続けることが顧客体験DXの成否を分けます。たとえば、MAで配信したメールの開封率やクリック率、CRMに蓄積された商談の進捗データ、イベント参加後のアンケート結果など、複数のデータソースを掛け合わせて評価することが大切です。

PDCAを回す際は、定量指標と定性指標の両方を設定するのが望ましいでしょう。NPS(顧客推奨度)やCSAT(顧客満足度スコア)のような数値だけでなく、顧客インタビューや自由回答のフィードバックから「なぜその体験が良かった・悪かったのか」を掘り下げることで、次の打ち手がより具体的になります。

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PDCAサイクルを効果的に回すために意識したいポイントは以下のとおりです。

  • KPIは「売上」だけでなく「顧客体験の質」に紐づく指標を設定する
  • 月次・四半期ごとにデータレビューの場を設け、部門横断で振り返る
  • 小さな改善を素早く繰り返す運用を取り入れる

顧客体験の最適化には、デジタルツールの活用だけでなく、リアルな接点(展示会やショールームなど)を含めた一貫したストーリー設計が不可欠です。

博展では、最新のデジタル技術と空間デザインを掛け合わせ、データに基づいた「心が動く体験」をプロデュースします。

自社の顧客接点にどのようなDXが必要か、企画段階からのご相談も承っております。まずはお気軽にご相談ください。

■テクノロジー実装で実現する顧客体験(CX)向上事例

ここでは、デジタル技術を活用して顧客体験の向上に成功した事例を3つ紹介します。いずれも顧客体験DXの考え方を実践に落とし込んだケースとして参考になるでしょう。

事例1:タカラベルモント株式会社様|アジアビューティーエキスポ(ABEX2025)

インテックス大阪で開催された「アジアビューティーエキスポ2025」における、タカラベルモントブースの事例です。若手理美容師のキャリア形成への不安という業界課題に向き合い、展示会というリアルな顧客接点にデジタル技術を組み合わせることで、会期後も継続するコミュニケーション設計を実現しました。

コンテンツの核となったのは、LINEと連動した謎解き形式の体験です。来場者がスマートフォンを介してデジタルコンテンツと連携しながらブース内を回遊し、「物語の主人公」として自らの将来像を考えるプロセスを設計しています。各章に「問い」と「気づき」を設けることで、製品説明にとどまらずブランドメッセージが体験を通じて自然に浸透する構成としました。展示会という一時的な接点をLINEでつなぎ留め、来場者との関係が会期終了後も継続する仕組みを構築。

さらに会期中に得られた操作・行動データは、その後のコミュニケーション設計にも活用されており、リアルとデジタルを組み合わせた顧客接点の多層化と継続的なCX向上を体現した事例です。

事例2:株式会社豊田自動織機様|Japan Mobility Show 2025

東京ビッグサイトで開催された「Japan Mobility Show 2025」における、豊田自動織機ブースの事例です。企画・空間デザイン・展示デザイン・コンテンツ制作までを一貫して担当し、生成AIをリアルタイムで活用した体験コンテンツによって、来場者一人ひとりに固有の顧客体験を届けることを実現しました。

メインコンテンツとして設計したのは、来場者の選択に応じてAIが即時に映像を生成するインタラクティブな体験です。「何を運ぶか」「どこの誰へ届けるか」「どのパワーユニットを使うか」の3つをその場で選ぶと、AIが「未来のモノの移動」をテーマにしたモビリティのイラストをリアルタイムで生成します。生成された絵はブース正面の3面大型モニターに表示され、他の来場者が生成した線とつながりながら、会期を通じてひとつの大きなビジュアルへと積み上がる仕組みです。

来場者の選択という行動データがそのままコンテンツに変換され、共同制作体験として空間に蓄積されていく設計は、テクノロジーを目的化せず顧客体験の質向上を起点に実装した好例といえます。

事例3:リコージャパン株式会社様|RICOH Value Presentation 2025

リコージャパン株式会社が主催するプライベートショーの事例です。従来のイベントではお客様が認識している課題に対してソリューションを提案してきましたが、過去のアンケート分析から、企業が自覚していない潜在課題の発見こそが重要であることが見えてきました。そこで本イベントでは、「本当に向き合うべき課題探しに伴走すること」を目的としたコミュニケーション設計を行っています。

イベントのコンセプトはパーソナルトレーニングです。リコージャパンが企業のDX推進を支援するパーソナルトレーナーとなり、来場前のヒアリングから会場内の体験までを一貫して伴走。事前に把握したお客様の課題や現状をもとに、営業担当が各展示ゾーンを案内しながら対話を重ねることで、課題を深掘りし、新たな気づきや改善の方向性を導き出す体験を実現しました。会場入口では同社のAIエージェントによるパーソナライズ体験も導入し、お客様一人ひとりに合わせたサービスを提供しています。

本プロセスは、過去のデータ分析に基づき論理的なコミュニケーションフローを構築し、感性を刺激するクリエイティブを通じて、お客様に記憶に残る体験を提供した事例です。

■まとめ

顧客体験(CX)とDXは、「目的」と「手段」の関係にあります。DXを推進することで新しい顧客接点の創出、データに基づくパーソナライズ、部門横断での一貫した体験提供が可能になり、結果としてCXが向上します。重要なのは、テクノロジーの導入そのものを目的にしないことです。

まずはカスタマージャーニーマップで自社の顧客体験を可視化し、課題の優先順位を明確にしたうえで、適切なデジタル技術を段階的に実装していきましょう。そしてデータを活用したPDCAを継続的に回すことで、顧客体験DXの取り組みは着実に成果へとつながっていきます。

博展は、デジタル変革(DX)を通じて企業の顧客体験(CX)を最大化するパートナーです。展示会、イベント、常設ショールームなど、あらゆるチャネルにおけるデータ活用と体験設計をワンストップで支援します。

「顧客体験をどうデジタルで進化させるべきか」とお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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