「WE ARE REGENERATION」をテーマに2月24日(水)・25日(木)に開催される「サステナブル・ブランド国際会議2021横浜」。(以下SB横浜)
パシフィコ横浜ノース会場とオンライン参加のハイブリッドで開催され、国内外から200人を超えるスピーカーが登壇する。

今回はサステナブル・ブランド国際会議 アカデミック・プロデューサー 青木茂樹氏とSustainable Brands Japan編集局デスク 小松遥香氏がSDGs / サステナブルをテーマに本イベントの見どころを紹介。

コロナウイルスの世界的大流行で混乱のこの時代に、私たちは改めてSDGsについて考える機会を設けるべきではないだろうか。

Agenda
1:2021年、これだけは押さえておきたいSDGsとサステナビリティ
2:私たちが暮らす世界の“いま”
3:企業はなぜSDGsサステナビリティに取り組むのか
4:「SB国際会議2021横浜」の見どころ紹介

2021年、これだけは押さえておきたいSDGsとサステナビリティ

SDGsは「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」という名前が付けられており、17個の目標の一つ一つにターゲットという詳細な目標が設定されている。

経済 / 社会 / 環境の在り方について国際的に議論始めたのは今から約50年ほど前。
1987年に“持続可能な開発”という言葉生まれ、2015年に持続可能な開発目標が国連全会一致で採決。以降全世界的に注力している。

SDGsは企業、そして私たち一人ひとりが意識すべき問題。
ここからは世界の現状と私たちのあるべき姿について考えていきたい。

私たちが暮らす世界の“いま”

世界は今、地質学的にも人が地球を大きく変えてしまう「人新世」の時代に入っていると言われている。
産業革命以降、工業 / 農業の爆発的成長によって森が農地に、農地が都市に変貌を遂げ、あらゆるところにプラスチックやコンクリートが介在。小惑星の衝突や火山の大噴火に匹敵する地質学的な変化を地球に刻み込んでいるといわれている。

科学的に定義される、安定した地球で人類が安全に活動できる範囲・限界を示すプラネタリー・バウンダリーの考え方に基づいても、気候 / 水環境 / 生態系が本来持つレジリエンス(回復力) の限界を超え、まさに未知のゾーンに入っている。

社会に目を向けてみても、世界中で格差が広がっていることが大きな課題である。
世界で生み出された富のうち82%は世界で最も豊かな国上位1%が独占しているというデータもあり、私たちは不確実、不安定、複雑な時代に生きているということから目を背けることはできないだろう。

だからこそ私たちは、これからをどう生きていくのか考える必要がある。
そして企業は、気候変動や生物多様性の崩壊、格差の拡大といった潜在的にある問題を考慮しながらビジネスをすることが求められている。

企業はなぜSDGsサステナビリティに取り組むのか

地球や社会が持続可能でなければ企業も持続することができない。

SDGsやサステナビリティに取り組むことで、時代や社会のニーズに応え、次の時代に生き残るイノベーションを生み出していくことが企業のメリット。
同業他社であっても手を取り合い、世界的課題に取り組みたい。この危機的な状況を機会に変えていくことこそが重要。

サステナビリティの重視度が上がるとともに、これを支えるESG投資が日本でも急速に拡大している。環境社会企業統治に配慮している非財務情報を重視して行うESG投資を公的年金、国内外の大手金融機関も導入。
長期的な利益を目標に投資していこうという動きが大きくなっている。

社会全体が今、SDGsに力を入れている。
企業がSDGsに取り組みことは今や当たり前になっている。

SDGsの特徴である、望ましい未来の視点に立ち、何をすべきかを考え、技術開発などをしていく「バックキャスティング」や、社会課題を起点に事業を創出する「アウトサイドイン」の思考が、ビジネスや地域社会はもちろん、個人においても必要となる社会になるのではないだろうか。

「SB国際会議2021横浜」の見どころ紹介

2006年に米国で始まり、毎年世界共通のグローバルテーマを掲げて各国で開催している「SB国際会議」。
世界的なトレンドを共有 / 実践しようとする姿勢に極めて独自性があり、企業や組織の垣根を越えてディスカッションできることが最大の特徴である。

今年のテーマである「REGENERATION」は、地球環境を修復しながら、そこに暮らす人の心なども含めて再生 / 発展させていく仕組みであり、今回のコロナ禍において、どのような形で社会や企業のあり方を新たに生み出していくのだろうか。
38億年もの間、互いに関係性を持ちながら持続可能な形で発展してきた生物の『生命システムデザイン』にも学びながら考えていく。

♦100年に一度の転換期 世界のトヨタは何を語る

トヨタ自動車のデピュティ・チーフ・サステナビリティ・オフィサー 大塚友美氏による「トヨタとSDGs」

100年に一度の転換期の只中にあるとされる自動車業界で、トヨタは昨年初めて、SDGsに本格的に取り組むことを豊田章男社長自らが宣言し、ミッションやバリューも改訂している。

2050年までに脱炭素社会を目指す大きな流れの中で、車自体、モビリティ自体のあり方も大きく変わっており、自動車産業の動向は、エネルギー産業のあり方とも密接に関わる。

日本の高度成長をけん引してきたトヨタは、日本の、世界の自動車産業を代表する企業として、今、どんな発信をするのか。

♦マーク・バークレイ氏にとって「REGENERATION」とは

クライメートチェンジ(気候変動)の活動家として世界を牽引しているマーク・バークレイ氏によるオンライン講演「REGENERATION」。

気候変動問題のみならず、社会変革や農業、食料などさまざまな分野でエキスパートとして活躍するバークレイ氏は、リジェネレーションをどう捉えているのか。

その発信を通して世界は今、何を考え、どう動こうとしているのかを知り、参加者のみなさんもぜひ共有していただきたい。

♦企業価値を創るサステナビリティ

「CXOが語る、企業価値を創るサステナビリティ」と題した、富士通CMO 山本多絵子氏と、資生堂チーフブランドイノベーションオフィサー 岡部義昭氏によるセッション。

サステナビリティを企業の中でどう実行していくのか、またブランディングとサステナビリティをどうつなげていくのか、という大きなテーマに対する解決の糸口を、マーケティングとブランディングの執行役員である両氏の対談を通じて新しい観点から探る。

多くのビジネスパーソンにとってヒント満載の事例が語られるに違いない。

♦トップ企業のパーパス経営に学ぶ

「パーパスが作るブレない経営」は、ネスレ日本 コーポレートアフェアーズ統括部執行役員 嘉納未来氏と、フィリップモリスジャパンからエクスターナルアフェアーズコーポレートサステナビリティエグゼクティブ 濱中祥子氏の2氏が登壇。パーパスを重視した経営の力を議論する。

コロナ禍において、社会における企業の意義が増した。
ESG経営の中でのS(社会)が注目される時代にあって、持続可能な社会の実現のために今、企業は何ができるのか。

言わずと知れた世界的な企業であるネスレと、変革を迫られるたばこ産業の中で新事業を展開するフィリップモリスの姿勢に学ぶ。
企業理念やミッションという言葉に比べ、より広い視点に立って語られるパーパス。このセッションを「社会の公器として企業はどうあるべきか」という企業の大義を今一度確認するきっかけとしてほしい。

♦輝く未来を拓く〝人物〟を育む教育とは?

「輝く未来を拓く“人物”を育む教育とは?」は、日本ファンドレイジング協会代表理事 鵜尾雅隆氏をファシリテーターに、3人の教育関係者が登壇。

これからのサステナビリティを考える上でどういう人材を育てるか、社会のリソースを集め、それをどう教育に転換していくかを議論する。

横浜創英中学 / 高等学校校長 工藤勇一氏は山形で中学校の数学の教諭を務めた後、東京に移り、千代田区の麹町中学校の校長時代には子どもの自律を重視して宿題や定期テストを廃止するなど、学校教育を中から改革してきたベテラン教育者。

一方、スマイルバトン代表取締役 三原菜央氏と、タクトピア株式会社共同創業者 / 代表取締役 長井悠氏は、教育メディアコミュニティの運営や学校向け教育事業を手がける若き経営者。

その3人が顔を合わせたらどんな教育談義に花が咲くのか、三者三様に描かれるであろう教育の未来の話を楽しみにしたい。

♦最新のサステナブル・ファッション

「ファッションはエシカルを欠いては生きていけない」は、環境 / 社会問題やサステナビリティについて発信し、モデルやブランドディレクターとして活躍する長谷川ミラ氏がファシリテーターを務める。

常に時代の先端を走るファッション業界は、サステナビリティに関する取り組みも比較的進んでいる一方で、大量廃棄など大きな課題を抱えている。
Enter the Eの植月友美CEOが、アップサイクル素材を再利用した商品など人や環境に配慮した商品だけを販売するセレクトショップをSNSなどを通じた新たな方法で展開しており、「ファッション性を追求しながらもエシカルである」という、これまでのエシカルのを範疇超えた新しいエシカルが語られることが予想される。

ファッションの常識は、エシカルをテーマにどう打ち破られるのか。
業界の最先端をいく登壇者らが描くサステナブル・ファッションの新しい形に期待が高まる。

農業から社会を変える、食のあり方を問うセッション

最後に紹介する「持続可能で競争力ある農業をいかに構築し、魅力あるブランド価値を創造できるか」は、青木氏がファシリテーターを務め、サラダボウル代表取締役 田中進氏と、カルビー社会貢献委員会委員長 二宮薫氏が登壇。

サステナビリティの中でも今最も注目されているリジェネラティブな農業について議論。

かつての農業は米国の大規模プランテーションに代表されるように、農薬散布などによって環境や土壌に極めて負荷をかけるものだった。
これに対してリジェネラティブな農業は、土の中の微生物を活用するなど自然環境を生かした農法で行うほか、科学の力で農業をさらに近代化していく方法をとる場合もある。

田中氏は金融機関勤務を経て自ら農業に飛び込んだ、“農業の革命児”で、露地野菜も作れば、大手の三井物産と組み、なるべく農薬を使わない形での工場型の農業にも果敢に挑む。
一方、ポテトチップスで有名なカルビーは、ジャガイモの研究を進めながら農業生産者を支援し、生産から加工し、消費者に届くまでの仕組みに高負荷価値を付ける、いわゆるバリューチェーンの改革に取り組んでいる。

この2者の対話を通じて、農業から社会を変えていく、そしてわれわれの食生活のあり方を問うようなセッションになるのではないか。

SDGsに取り組むことは今やスタンダード
持続可能な世界を目指して

SDGs / サステナビリティは今、国や政府だけが考えるべき内容ではなく、私たち一人ひとりが意識すべき問題。

長期的視点で、地球を、人間を大切にする世界を目指すべきではないだろうか。

そして、各々がSDGs / サステナビリティについて知識を身につけ、発信する時代へ。

全員が手を取り合い、持続可能な世界実現を目指したい。