近年、地球規模でスタンダードになりつつあり、大企業がCSR活動で広報するだけでなく、もっと具体的で身近な生活の中にも関わってくる”サステナブル”という考え方。

Withコロナの今こそ、自分のために、社会のために、地球のために、自分らしくできることを模索してみることが重要なのではないだろうか。

時代とともに変化してきた考え方や生き方、プロモーション例や企業としてのスタンスなど最新のアンケートも用いながら、営業 / プランナー / サステナブルブランドジャパンデスクという3つの視点で紐解いていく。

Agenda
1:サステナブルブランドジャパンとは?
2:サステナビリティはビジネスになるのか
3:サステナビリティにまつわる事例
4:サステナビリティからRe:Generationへ

サステナブルブランドジャパンとは?

小松 : 博展はサステナブルブランドジャパン(以下SBJ)というコミュニティの日本事務局を保有しています。
そもそも、”サステナブルブランド(以下SB)”とは、2006年にアメリカで始まったビジネスのコミュニティー。商品 / ブランド・サービス / 働き方などに対して、サステナビリティの考え方を落とし込むことでブランド価値を上げ、社会全体を良い方向へ変えていく運動を行っています。

日本での活動としては、以下の4つがメイン。

  • SB国際会議の日本開催
  • SBJフォーラムなどのコミュニティ活動
  • 地域別のシンポジウム
  • メディアの運営

SBの取り組み自体は、13の国と地域で実施。
博展は2016年から日本での活動を担当しており、現在1.3万人を超える人々を保有するコミュニティへと成長を遂げました。

木島 : 今年で5年目となるこの運動ですが、発足当時は”サステナブル”という言葉に馴染みがありませんでした。

ここ1,2年の間、クライアントからの要望やプロモーション / コミュニケーションの中で”サステナブル”という言葉がキーワードになることが多くなってきており、サステナブルを具現化できるような施策の相談を頻繁に耳にしますね。

今回のセミナーでは実際にクライアントへ提案したサステナブル関連の施策を紹介しつつ、前編に続いて、取り組み内容についても理解を深めていきたいと思います。

サステナビリティはビジネスになるのか

小松 : 最初のトピックは、ESG投資( 非財務情報)という経済の動きについて。
環境課題 / 社会課題 / ガバナンス企業統治への取り組みの評価を投資判断に用いるということですね。

2018年には360%増加し、身近な問題だと年金もここから捻出されているのです。
このトピックについては、消費が社会に直結していく特にミレニアル世代30代以下の投資家の関心が高と言えます。
市場が変わってきているのですね。

木島 : 投資に影響があるということは、企業の資金調達などにも関わっていくるということ。
企業の経営層になればなるほど、関心が高く、サステナビリティの感度が高いということですね。
重要なテーマであるがゆえに、長期的な視点が求められます。

ビジネスに繋がってくサステナビリティ

木島 : コロナの影響を受け、目の前の経営でいっぱいいっぱいの企業は、長期的な視点を必要とするSDGs関連の取り組みを後回しにしてしまうと思うのです。
それは、プロモーション活動のように、サステナビリティ施策がすぐには売り上げに直結しないことが理由だと思うのですが、ビジネス視点から見たサステナビリティはどうなのでしょうか?

山中 : 将来的には売り上げに直結していく施策だと言えます。
経済活動が活発なミレニアル世代がいちばん問題に強く着目している事柄であるからです。
ビジネスにできるのかということは、どの層をターゲットにしていくかがキーポイントですね。

現状、男性はどの年齢層もかなり着目していますが、女性は20代などの若い世代が関心を持っていることがわかります。それは、ファッションやコスメなどからキーワードから理解が浸透していったからでしょう。
さらに、職業的には、ビジネスマンよりも学生の方が理解関心が深いということがわかります。
若い人たちの方が感度が高く、SNSを積極的に利用している層に向けて、施策に工夫をこらしながら発信していくのが重要だと言えますね。

山中 : 実際に、ヘアケアブランドのパンテーンが学生向けに施策を打ちました。

校則で髪を染めることが禁止されている学校では、地毛証明書というものが存在し、地毛がもともと茶色の人までもが、黒く染めることを強いられている現状があるそうです。
今までは、その理不尽な規則にも学生たちは素直に声をあげられなかった言います。

パンテーンはこのキャペーンを実施することで、先生と生徒の間に立って、実際に話し合える環境を提供しました。これを経て、パンテーンのブランディングも上がった上に、商品の知名度も上がったそうです。

なぜ、サステナビリティの視点がビジネスに必要なのかというと、出回っている”当たり前”に対して、それが本当に当たり前なのかということを問いているからです。

様々な女性誌でも、働き方改革の話を織り交ぜたSDGsの特集を組んだり、表紙にサステナブルの文字が登場したりしています。
実際、テレワークなどが始まって、今まで時間がなかった働いている女性たちに、少しだけ余白の時間ができました。
それにより、少し勉強してみようと思ったり、学びを得たいという女性の意思が高まっているのも事実です。
SDGsを学びながら、ソーシャルグッドや私らしさを今一度考え直しているのではないかと、私は考えます。

ビジネスの成長には、若い世代を取り込むということは欠かせないことだと思います。
この層に刺さるメッセージを考えていくにあたって、サステナビリティはもう欠かせないキーワードになっていますね。

木島 : これからの購買層の中心、経済を回していく立場になって行くであろう感度が高い若い世代。
それだけのために設けるというよりは、継続的にマストで取り組んでいく課題であると感じます。
改めて、サステナビリティというワードは、エコや環境だけでなく、人間らしさ全てに関わってくる領域ですね。

実際にクライアントもメーカーも、プロダクト自体がサステナブル関連が多くあり、プロモーションやイベントでもそういったサステナビリティに対する施策が多くなってきたように思います。

サステナビリティにまつわる事例

山中 : 弊社の事例としては、2020年の夏から秋にかけて実施を検討していたイベントについて話しますね。
ちょうどビニール袋の有料化が始まって、人々がマイバッグを持つようになるタイミングを控えていたので、マイバッグのワークショップを考えていました。

“Bag for Hpponess”をキーワードに、毎日使う袋から幸せを考えるというテーマでマイバッグを通じて環境や地球のことを考えるワークショップです。

単純に、”ただマイバッグ使いましょう”ということではなく、マイバッグ一つを取っても課題があるということを伝える運動を企画していました。本来、コットンバッグ1枚でプラバッグ同様の価値を見いだすこと考えると、実は131回使わないといけないのですね。つまり、丁寧に使わないと、マイバッグの価値が見出せない。本当にそこまでのことを考えながら使えてるだろうかという問いかけをしたかったというわけです。

サステナブルに生きるということは、”マイバッグを使わなくてはいけない”という強制的なことではなくて、きちんと自分が進んで愛せるようなマイバッグを作ってみるなど、自分ごと化できるから成り立つことなのです。
例えば、おうちにある紙袋で手紙の封筒を作るような、いわゆるアップサイクルもできます。
楽しみながら行動できることでサステナビリティに繋がるということを女性に伝えてあげるという試みでした。

実際ここをワークショップすることで、街にそういった女性を増やしていく、ゆくゆくはそれがスタンダードな街の風景を作り上げるという企業のスタンスや取り組みが大事だと感じました。

他にも、クライアントさんと会話している中で、アイデアを出していくのが大変だと感じています。

これは某お菓子メーカーに出したものなのですが、5つにテーマ分けをしてアイデア出しのヒントにしました。

ゴミを減らす”ゴミロス”という観点では、食ロスをテーマにしたクッキングバトルを配信してみるという案も出ました。

他にもお菓子のパッケージを使って、日常生活で使えるグッズを作ってみるワークショップや、親子で学べるように、お菓子で折り紙を作ってみるプロモーションも企画しました。

生活用品と同じように、ゴミを巻いて捨てるということで1日に出すゴミの量を減らせるという目的もあります。

他にも、サステナビリティは、環境やゴミ問題だけではないトークやイベントの題材テーマにも繋がります。
ライフ・ワーク・バランスEXPOという働き方改革のイベントでは、”個人”というキーワードをテーマにしたトークセッションも行いました。

登壇者も、サステナビリティの取り組みで有名な企業の方などにお願いしました。それぞれの企業の取り組みを語り合ってもらったり、スペシャリストをモデレーターにお招きして、持続的に長く働くにはどういった企業がいいのか、企業側も柔軟的にどのように変化していけばいいかなどをトークしていただきました。

小松 : 一方で、2月に第4回のSBJ国際会議が実施されました。
“グッドライフ”という3年間行われてきテーマが、今年からグローバルでテーマが変わりました。

今までは、”今の時代に置けるグッドライフとは何か”というポイントで考えてきたものをいかに届けられるかに争点がありました。
しかし今年から”WE ARE REGENERATOIN”ということで、再生がテーマに。
サステナビリティが終わったということではなく、さらにその先を見ていこうという意図です。

サステナビリティからリジェネレーション(再生)へ

ネガティブな要素を解決しながら、それを持続していこうという動きですね。
さらに一歩先を見据え、さらに現状切迫している環境課題があるということを踏まえて、自然という循環、我々生命のシステムのデザインに合わせた社会 / サービスも含め作っていくことで、発展し拡散していくことがリジェネレーションという考え方です。

これは、もちろん海外だけの考え方ではなく、特別な自然観もある日本人にも考えてもらいたいこと。
OMRONの創業者が1970年代に出した未来予測理論上では、2005年からは最適化社会というテーマで進んできました。

2025年に移っていく頃には、個人がもっと自己実現をしていったり、自立分散型社会 / テレワークのような”個”が大切にされる時代くるということも踏まえて、人と自然 / 環境がより調和していく社会を目指します。
そして、2033年からは自然社会という、生命メカニズムが埋め込まれた持続可能な社会になっていくという見通しがあります。

人と自然が、今まで以上に高度に調和していく社会経済を目指していくという流れになっていくこと自体が自然なのかなと思います。
それに乗ることで、持続可能に生きていけるはずです。

木島 : 現状維持ではなく、よりよくしていくというMORE GOOD考え方ですね。

このタイミングだからこそ、アフターコロナの世界をこれまでと同じように戻す / 維持していくという現状維持というマインドセットを超えて、新たな未来や生き方をつくっていくというタイミング。

実際にイベントやプロモーション領域にも、リジェネレーションの考え方をインストールしていくことができれば、一歩先に行く企業の取り組みやメッセージを顧客に伝えることができますね。