みなさん初めまして、beauty worksプランナーの長谷川です。
私は博展と中国市場における業務提携をおこなっている中国市場に特化した広告会社「beauty works」にてプランナーをしており、現在は中国上海市に在住しています。

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これまでの【Quest!】に続き、今回から新たに、中国の最新の店舗やイベント情報をレポートしていくスピンオフコンテンツ【China Quest!】をお届けしていきます。

【China Quest!】第1回目となる今回は、2021年11月に上海市で開催された世界最大規模の総合貿易博覧会「中国国際輸入博覧会」の様子をレポートします。

目次
中国国際輸入博覧会(輸入博/CIIE)とは
何もかもが世界最大級
会場の様子
第4回輸入博のトレンド
恐るべき中国の購買力と消費者の渇望
編集後記:全てにおいて世界をリードしていく存在に

中国国際輸入博覧会(中国輸入博/CIIE)とは

中国国際輸入博覧会(中国輸入博/CIIE)とは、中国の国内市場を世界に広く開放し、依然発展を続ける中国の経済需要、国民の生活需要の多様化に応えるとともに、開放型世界経済を構築するためのプラットフォームとして機能すべく、中国商務部と上海市政府が主体となって毎年開催している大規模な輸入テーマ博覧会です。また輸入博は中国の提唱する「一帯一路」も当然視野に含んでおり、ユーラシアを中心とした広域経済圏の構築を見据えた、国を挙げた一大イベントとなっています。

2018年の第1回開催から着実に規模を拡大し、第4回目となる2021年は新型コロナウイルスの影響で出展社数、来場者数などは前年に比べ減少したものの、それでも2021年11月5日〜10日の6日間、過去最大となる展示面積で開催されました。

輸入博は一般に開かれたイベントではなく、中国国外のメーカーと中国国内のバイヤーたちが一堂に会するクローズドなイベントです。出展できるのは中国国外(香港、マカオ、台湾を含む)の企業のみ、出品できるのは中国でまだ販売されていない(そしてそれがMade in Chinaであってもいけない)商品のみです。バイヤーである来訪者がただ展示品を見て回るのではなく、様々な商品やサービスについての商談や契約ができるほか、その場で買い付けもできる即売会としての側面も持っています。また輸入博会場内での売買においては一定の税制優遇制度が設けられており、関税や消費税の減免など、売る側にも買う側にもメリットのあるイベントになっています。

何もかもが世界最大級

そんな輸入博の会場となるのは、中国上海市にある「上海国家会展中心」です。
その広さは総床面積147万m2、総展示面積50万m2という世界最大の展示・イベントホール。日本最大である東京ビッグサイトの総床面積が25万m2、総展示面積9.5万m2であることを考えるとその巨大さに驚きます。今回の輸入博では50万m2のうち36.6万m2が展示スペースとして使用され、総合貿易博覧会としても世界最大級とのこと。

輸入博会場の上海国家会展中心

185カ国と地域が出展、約2,700社(※実際の社数は非公開、公式ウェブサイトでの検索結果より算出)の企業が出展した総出展品目カテゴリー数は10,599種、クローズドなイベントにも関わらず中国各地から来場したバイヤーは48万人、そして6日間の会期中に契約、合意など何らかの成約に至った金額は実に約8兆円と、4回目の開催にして既に全てのスケールが世界最大級となっています(それでもコロナ禍の影響で前年より減少傾向です)。フォーチュングローバル500企業の半数以上も出展しており、中国の購買力、そして世界の企業の中国市場への期待がいかに大きいかが、これらの数字からだけでも理解いただけるかと思います。

会場の様子

今回の輸入博はコロナ禍での最大警戒中の開催だったこともあり、出展者、来訪者や関係スタッフ全員(もちろん外国人も)に例外なく入国時の合計21日間の隔離(外国からの渡航者)、事前のワクチン接種と来場直前のPCR検査が義務付けられており、事前審査を通過した人だけが入場できるという徹底した防疫管理がなされていました。中国は割と早期に深刻なコロナ禍を抜け出していることもあり、私自身はワクチンの接種は特にしないつもりでいましたが、結果的にこの輸入博会場入場のためにワクチンを打つことになりました。

会場への入場自体は2020年同様、事前の参加登録時に送付した顔写真を元に、入場ゲートで顔認証、検温の上入場する仕組みとなっていました。会場内での常時マスク着用も当然必須です。

今回の輸入博では、「食品・農産物」、「自動車」、「技術・IT」、「消費財」「医療機器・ヘルスケア」、「サービス貿易」という6つの大きなカテゴリで世界中のさまざまな製品やサービスが展示されました。ただ前述の通りその展示物は品目カテゴリーだけで1万を超えており、巨大な産業用機械からスナック菓子まで、さながら果てしなく広い会場に「世界のすべての商品」がぎっしり詰まっているような感覚です。

もはやここに住んだら、自分の人生に必要な全てがこの会場の中だけでまかなえると確信してしまうほどの充実ぶり。当然バイヤーの人たちは自分の専門領域のエリアだけを見れば良いわけですが、興味本位で全てを見て回ろうとすると到底1日では回れません。

輸入博はこの大型ホールを13ユニット使用!

出展している企業も、主催者発表では自動車、電気工業、医療、化粧品、ファッション、穀物など各業界のグローバルメジャーはほぼ出展、また過去に出展した業界リーディング企業の再出展率は8割を超えるそうで、中国市場に対する鼻息の荒さに圧倒されます。

日本からも多くの企業が出展しており、2,700社の全出展社中、約290社が日本企業だったようです(実際の数値は非公開、公式ウェブサイトの検索結果より算出)。日系グローバル企業も数多く出展、今後の中国展開を睨む中小企業も、単独ブース、ジェトロ(日本貿易振興機構)の出展支援によりジェトロが開設した「ジャパン・パビリオン」、もしくは地方自治体が設置したブースなどを通じて数多く出展していました。

出展規模や出展形態はさまざま

また新型コロナウイルスの世界的蔓延を受けて、今回の輸入博から新たに公衆衛生・防疫に特化した商品やサービスの展示エリアが設けられ、大型展示ブース1ユニット全てを使って、医療機器や医療サービス、衛生対策製品などが数多く展示されました。
会場にはバイヤーの方々だけでなく、中国国家衛生健康委員会や各省市からの視察団も訪れ、皆さん熱心に説明に耳を傾けていました。

新たに新設された公衆衛生、防疫展示エリアには国家機関、各省市からの視察団の姿も


第4回輸入博のトレンド

今回の輸入博の展示エリアを見ていて特に目についたのは、非常に多くの企業が「サステナビリティ」をはじめとする環境への取り組みをテーマに出展していたことです。
その理由には、SDGsをはじめとする世界的な取り組みもありますが、中国でも独自に打ち出している非常に厳しい環境政策も関係しているかも知れません。中国政府は急激な経済成長に伴い、これまでおざなりにされがちだった環境問題を国策として厳しく管理、具体的な数値をもって改善することを必達目標としており、中国国内の地方や企業にも厳しいノルマが課されています。もちろんそこには、中国がただの資源浪費型経済大国ではない、環境先進国としてのプレゼンスを今後世界に向けて示していく狙いもあるはずです。

そしてその政策は中国で投資をする企業にも当然関係してきます。そこで、中国展開をしたい企業は環境に対する取り組みを大きくアピールすることで、中国市場により受け入れてもらえるための印象を作る狙いが、今回の展示に影響しているのかも知れません。

各ブースでは「サステナビリティ」を前面に打ち出した展示が目立った

他には、多くの企業がブース内にスタジオを設営しライブ配信を行なったり、会場にいるインフルエンサー(中国では「KOL−Key Opinion Leader」と呼ばれる)たちが会場やブースの様子をSNSなどでリアルタイムに映像レポートしたりするなど、企業が会場の外に向けて情報発信をする様子も目立ちました。

これはクローズドなイベントでただバイヤーに向けて商品をアピールするだけでなく、国内にいる消費者に向けていち早く新しい商品の存在を知ってもらうのが狙いだと思われます。

企業ブース内に設置されたスタジオ

そして恐るべき中国の購買力と消費者の渇望

輸入博の主役は出展企業だけではありません。輸入品を買う人がいてこその輸入博であって、バイヤーの方々の存在なくして輸入博は成立しません。

中国国内での報道によると、今回の輸入博に来場した中国国内バイヤーのうち、年間の輸入額が1億ドル(約114億円)を超える商社の数は1,200社以上にのぼるそうです。つまり、これらの大型バイヤーが仮に1億ドルの商品を全て輸入博で買い付けた場合、それだけで1,200億ドル、13.6兆円分の商品が世界から中国国内に流れ込むことになります。

中国でモーターショーと言えば展示会ではなく即売会である、という話を聞いたことがあるかも知れません。実際過去にはモーターショーに訪れると、会期終盤にはあのお目当てのブースになんと車がない!なんてことが本当にあったりしました。まだ中国に少数しかないレアな車、高級車などが、誰よりも先に手にしたい富裕層やバイヤーによってその場で買われていってしまうのだそうです。

そのモラルや良し悪しは別として、中国の購買力、そしてそのスピード感には目を見張るものがあります。バイヤーたちは常に世界の商品に目を光らせており、チャンスと見れば我先に飛び付きます。その理由は、その先により新しいもの、より良いものを常に渇望している14億の消費者がいるからに他なりません。

特に美容、化粧品のエリアでは中国未発売商品のサンプリングもあり長い行列や人混みも見られた

全てにおいて世界をリードしていく存在に

2021年は中国共産党建党100周年、WTO参加20周年などの周年記念が重なったほか、2022年2月に開幕する北京オリンピックも控えています。
中国としては今回の輸入博を単なる経済イベントとしてではなく、中国の国際的な影響力を国内外に大きくアピールする機会としても活用したいという狙いもあると思っています。これまで「世界の工場」として長く国内独自の産業成長が低迷していた中国は、これからは生産も消費も環境も含め、全てにおいて世界をリードしていく存在になっていくのだ、という強い意気込みを会場の様子を通じてひしひしと感じました。

一方中国の外から見れば、当然そこには政治的な思惑、国民感情や、いわゆるチャイナリスクという懸念材料もあり、世界にとっては盲目的に中国市場に入り込むわけにはいかないことも確かです。
ただそれでもあくまで客観的、現実的な視点から見れば、中国にはその「リスク」を背負ってでも入り込みたいと思わせる巨大な市場が存在し、その先にはそれらを必要としている大量の消費者の存在があることも事実です。特に資本主義経済で利益を生み、経済を生み出す企業としては、それが政治や感情によって阻害されることは好ましくなく、ましてや可能性のある市場を自ら避けることは出来ない、というのが本心ではないかと思います。

こうした双方の思惑が一致した結果こそが、この中国輸入博の活況なのではないかと思います。

併設された中国展示エリアでは主要国初となる中央銀行発行電子通貨「デジタル人民元」の紹介も


WTO参加20周年記念と「力を合わせWin-Winの新たな一章へ」のスローガン

既に多くのグローバル企業が2022年第5回輸入博への出展契約を完了させている