2022年2月に中国 北京で冬季オリンピックが開催され、再び注目されている中国市場。
コロナ禍の今、中国のマーケティング市場の成長性や感染症対策の実態、中国と日本のビジネス慣習の違いなど、リアルな現場はどうなっているのでしょうか?

15年以上にわたり、日本企業の中国市場でのマーケティング活動を支援している中国専門広告会社「ビューティワークス」代表・陳氏に、突撃インタビューを実施。
中国という巨大マーケットについて、そのリアルな実態とこれからのビジネスチャンスについて聞きました。
(以下敬称略)

陳 果祁(ちん かち)氏
1991年大学進学と同時に初めて日本へ。慶応義塾大学経済学部卒業後、東京で就職。
12年間の東京生活後上海へ駐在を経て、2006年に広告代理店「beauty works」を上海で設立。
2015年には日本法人を立ち上げ、日本での生活を再開。

毎年中国において生み出されるビジネスチャンス、その額 東京都1都分!?

ーーまずはじめに、ビューティワークスさんの事業内容について教えて頂けますか。

陳:
弊社は中国発の広告会社として15年前に上海で創業しました。主に中国進出をしている日本企業(いわゆる日系企業)の広告やマーケティングのお手伝いをしています。

大きく分けて、
・メディアのバイイング
・創業当時から強みにしているオフラインの展示会やイベント
・中国SNSやwebといったデジタル広告 
の3つを強みとしています。

ーー博展も日本企業の顧客が中国市場でイベントなどを行う際に、トータルサポートをしていただいていますね。さて、早速本題なのですが、現在の中国の経済状況はいかがでしょうか?

陳:中国の市場は急速な成長を遂げていますが、ポテンシャルはまだまだ十分にあります。

現在中国は国内総生産(GDP)世界第二位の経済大国ではありますが、1人当たりのGDPはG7に比べて十数%しかありません。言い換えれば、中国の全人口14億人に的確な政策が行われ、1人当たりのGDPが増加すれば、中国全体のGDPは現在の数倍・数十倍にもなるわけです。

また、中国のGDPは毎年5-6%の成長を遂げています。 例えば、2020年の中国全土のGDPは約1,700兆円でした。そこから6%成長した場合の増加金額は102兆円となり、これは東京都のGDP(約107兆円)に匹敵します。

皆さん、日本国内に東京都と同規模の都市が出来たらどうしますか?
迷いなくビジネスを展開しにいきませんか?

東京から上海へは飛行機で約2時間半、東京-那覇間よりも近い距離です。
そのような近い距離で、毎年東京都と同じ規模の都市が中国のあちらこちらで生まれているのです。

コロナ禍における中国の今、人々の安全のため国がとった施策とは?

ーー東京都一都分の成長率とは驚きです!毎年100兆円以上のビジネスチャンスが生まれているのですね。改めて中国という国の大きさを感じます。

 そんな中国の人々は現在、このコロナ禍ではどのように生活をされているのでしょうか?

陳:
中国では〝ゼロコロナ〟政策がとられ、国内の感染者数は非常に少なくなりました。
入国者に対しては厳重な管理体制がとられ、国内でも感染者が1人出た時点でロックダウンが行われます。また、中国はQRコードでの感染状況を管理する仕組みもできあがっており、駅や空港でQRコードを提示し安全が確認されなければ、街から街への移動もできない状況になっています。

参照元)H.I.S『中国渡航者必見!渡航に必要な「3つの健康」と「1つのカード」より』

 市中の感染者がいない分、展示会やイベントに関しては、地区に1人でも感染者が出た場合は主催者の判断で中止・延期になる事はあります。

このような背景の中、毎年11月に開催される中国最大の展示会である中国国際輸入博覧会(通称:CIIE)では、来場者・参加社だけではなくコンパニオンや立込みの業者も全員PCR検査をし、入念な健康チェックを行った上で順調に開催・会期を終えました。

 やりすぎだと感じる部分もありますが、〝やりすぎてる〟からこそ、日本よりもイベント・展示会が開催されているとも考えられます。

▲プレミアアンチエイジング様/中国国際輸入博覧会(CIIE)

ーー厳格な政策のもとで人々の安全・安心が保たれているのですね。そのような状況で、コロナ前とコロナ後では日系クライアントのプロモーションの動きに変化はありましたか?

陳:中国の厳しい政策のおかげで、日本よりは展示会やイベントが開催されているとは言うものの、それでも日本企業はリアルを控え、少しずつデジタルに広告予算をシフトしている傾向はあります。
一方で、機械や部品製造などのBtoB業界は、デジタルに完全シフトすることは難しく、リアルでの展示会・イベントのニーズがあることは確かです。

自由な発想で、中国でのニュービジネスをスタートするチャンス!!

ーーBtoC企業とBtoB企業では、マーケティングの手法は変えなければいけないということですね。
では、日本の企業が中国でビジネスをするにあたって、慣習の違いや規制的な部分など、良い部分と難しい部分があるかと思いますが、その点はいかがでしょうか?

:日本には〝お上〟という言葉が表すように、上司の指示に従う習慣があります。

 中国におけるビジネスの場で、『どうすればいいでしょうか』と詳細を尋ねる日本人に対して、『あなたはどうしたいのですか?』と中国人が逆に質問を返して、話が嚙み合わない場面がしばしば見受けられます。
日本の皆さんは、中国ではもっと自由な発想でやってみて頂きたいなと思います。

 中国のビジネスの特徴でもあるのですが、中国は何事にも『やってみなさい』という習慣があり、あまり厳しいことは言いません。それは〝お上〟に、『いつでも厳しいことを言えば、必ず回収できる』という絶対的な自信があるからです。

 法規が整っており、法令や条例を遵守する日本人にとっては、中国の社会主義や人治国家的な部分はやりにくさを感じるかもしれません。しかし、『どうぞ好きにやってみなさい』という放任主義的な習慣は、逆に最大のメリットでもあるのです。
ニュービジネスは日本よりもスタートしやすいのではないでしょうか。

ーーなるほど、中国は新しい試みに挑戦しやすい環境なのですね。


日系企業が中国市場で成功するには?

ーーそれでは、日系企業が中国市場で成功するに、どのような点に気を付けたらよいでしょうか?

陳:日系企業が中国市場で成功するには、『企業が伝えたいものが、本当に中国市場のニーズやベネフィットに沿っているか』を検証することが大変重要です。
購買者は中国人であるため、日本らしい手法を押し通すよりも、時には中国人の好みに合ったデザインと融合することも大切ですね。

▲中国市場に必要なコミュニケーション戦略

 我々が日系企業のプロモーションのサポートをする際には、中国市場の情報や購買者のベネフィットをお伝えするようにしています。
誰をターゲットにするのか・どこで売ればいいのか・どのような価格にするのか等のコンサル的な立場から、その成功のお手伝いをしています。

ーーなるほど。目的を明確化して、ターゲットに合わせた施策を選択することがやはり重要ですね。そのほか、注意する点はありますか?

陳:実は、日本にある親会社(又は本社)が、中国でのイベントや展示会に出展する際に、中国にある子会社(又は販売会社)に全ての手続き関係を委託することは、法律上問題になる場合があります。

▲ブランド認知の浸透にはいまだに大きな効果をおよぼす屋外広告(OOH)は、複雑な行政の手続きが必要となる。

ーーそうなんですね!

陳:その場合、親会社(又は本社)が複雑な行政手続きを直接行わないといけず、トラブルになりかねません。
手続き関係は、我々のような現地の警察・消防・税務・保険等の手続きノウハウがある専門会社に委託することをオススメします。

ーーところで、博展とビューティワークスさんは2021年6月に業務提携を行ない、更なる連携を深めています。両社が組むことで、日系企業にとって、どんなメリットがあると思いますか?

陳:私が考える1番のメリットは、“ブランドのデザインを、日本品質を保ちながら、現地の適正価格で実現できる”という点です。

企業ブランドの世界観を捉えた体験デザインは、博展さんの強みとする部分です。

そのデザインを“日本における品質のように、中国でも実現できるのか”という点は、各企業様が気にされるところです。その点、ビューティワークスは、上海に日本人の経営者・営業・施工管理者を配置していますので、ご安心いただけます。
一方で、大工等の人件費や施工費においては、中国での手配となるため、適正な現地価格でのご提供できます。

ーー我々が思い描くデザインを、中国でも日本品質で実現してもらえるのはとても心強いですね。

▲ポーラ様/B.A Shanghai POP-UP EVENT

ーー最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

陳:日本から見ると、社会主義国である中国の市場は異質なものです。
しかし、世界全体で見ると異質な市場は中国だけではありません。国は引っ越すことはできません。
海外展開に少しでも目を向ける企業様であれば、お隣の中国にマーケティングの目を向ける価値はあるのではないでしょうか。

その際のパートナーとして、私たちは十二分に力を発揮できると自負しています。
毎年、東京都一都分のマーケットが生まれる中国で、一緒に国際ビジネスをやりましょう!

ーーありがとうございました。

▲インタビュアー(写真左)

榮木 荒野(さかえぎ こうや)
2018年4月に博展に入社。自動車メーカーのプロモーションイベントなどを担当後、現在はマーケティング部に所属。BtoB~BtoC系企業まで幅広い業界に向け、マーケティングサポートの提案営業活動を行っている。