BtoBマーケティングにおいて、「リードを獲得したものの、なかなか商談や成約につながらない」という悩みを抱える企業は多いのではないでしょうか。リードジェネレーションとリードナーチャリングは、どちらも重要なマーケティング活動ですが、その役割や目的は大きく異なります。
この記事では、リードジェネレーションとリードナーチャリングの本質的な違いを明確にし、それぞれの効果を最大化するための具体的な手法とコツを解説します。両者を戦略的に連携させることで、見込み顧客の獲得から成約まで、一貫した顧客体験を提供できる仕組みを構築できるでしょう。
Index
■リードジェネレーションとは
■リードナーチャリングとは
■リードジェネレーションとリードナーチャリングの違い
■それぞれの効果を最大化する秘訣
■まとめ
■リードジェネレーションとは
リードジェネレーションとは、自社の商品やサービスに興味を持つ可能性のある見込み顧客を発見し、その連絡先情報を獲得するマーケティング活動です。マーケティングファネルの入口にあたる重要なプロセスであり、ビジネスの成長を支える基盤となります。
1:リードジェネレーションの目的
リードジェネレーションとは、将来の顧客となる可能性がある見込み顧客の連絡先情報を獲得し、継続的なコミュニケーションのキッカケを作る一連の活動を指します。単に多くの人を集めるのではなく、自社の商品やサービスに関心を示した質の高いリードを効率的に獲得することが求められます。
最終的な目的は売上と事業成長ですが、そのためには段階的なアプローチが必要です。直接的には見込み顧客情報の獲得、中期的にはセールスファネルへの誘導とブランド認知度向上を目指し、これらが統合されて最終的なビジネス成果につながります。
2:リードジェネレーションの対象
リードジェネレーションが主に対象とするのは、潜在顧客です。潜在顧客とは、自社の商品やサービスをまだ知らない、あるいは自身の課題やニーズを明確に認識していない層を指します。彼らは市場の大部分を占める未開拓の領域であり、B2Bマーケティングにおける成長の源泉です。
効果的なアプローチのためには、この広範な潜在顧客をさらに戦略的にセグメント化する必要があります。
そして、あらゆるセグメンテーションとアプローチの土台となるのが、深くリサーチされたペルソナの存在です。ペルソナとは、理想的な顧客像を具体的に定義したものです。これにより、マーケターは「製造業の企業」といった抽象的なターゲティングから脱却し、「特定の役職にある個人が、どのような課題に直面し、どのような情報を、どのチャネルで収集するのか」という具体的なレベルで顧客を理解できます。
このペルソナに対する深い理解こそが、潜在顧客の心に響くメッセージを作り、最初の接点を生み出すことを可能にするのです。
このペルソナを基に、潜在顧客を「課題認識レベル」で分類し、それぞれの段階に合わせた情報提供を行うことが、リードジェネレーションの精度を高めます。ここでは、代表的な3つの顧客セグメントについて見ていきましょう。
未認識層
このセグメントは、自社のビジネスにおける具体的な課題をまだ言語化できていません。そのため、解決策を能動的に探す行動も起こしていません。彼らに対するアプローチは、教育的かつ示唆に富むコンテンツを通じて、自身が抱える潜在的な問題や機会に「気づかせる」ことを目的とします。
情報収集初期層
このセグメントは、何らかの業務上の課題を感じ始め、具体的な製品名ではなく、一般的なキーワードで情報収集を開始した段階にあります。彼らが求めているのは特定の製品情報ではなく、課題を理解し、解決の方向性を探るための指針です。
比較検討層
このセグメントは、自社の課題を明確に把握し、具体的な解決策の比較検討へと進んだ段階にあります。彼らは製品カテゴリー名やサービス名で検索を行い、導入を決定するための判断材料を探しています。そのため、提供すべきは詳細な導入事例や競合製品との比較資料、顧客の声、無料トライアルの案内など、より直接的で説得力のある情報です。信頼を醸成し、自社製品を選んでもらうための最後の一押しをすることが、この層へのアプローチの目的となります。
3:リードジェネレーションの主な手法
リードジェネレーションの手法は、オンラインとオフラインに大別されます。現代ではデジタル施策が中心となっていますが、業界や商材によってはオフライン手法も効果的です。
| カテゴリ | 手法 | 特徴 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| オンライン | コンテンツマーケティング | ホワイトペーパーや資料ダウンロード | 専門性の高い商材を扱う企業 |
| オンライン | SEO | 検索エンジンからの自然流入 | 継続的なリード獲得を目指す企業 |
| オンライン | Web広告 | 即効性が高い | 短期間でリード数を増やしたい企業 |
| オフライン | 展示会・イベント | 直接対話による質の高いリード獲得 | BtoB企業、高単価商材企業 |
オンライン手法では、ウェビナーやSNSマーケティングも注目されています。特にウェビナーは、参加者の関心度が高く、質の良いリード獲得が期待できる手法として多くの企業が活用しています。
4:リードジェネレーションのポイント
効果的なリードジェネレーションを実現するために最も重要なのは、明確なターゲット設定とペルソナの構築です。
ペルソナ設定では、単なる属性だけでなく、抱える課題や情報収集方法、購買行動のプロセスまで詳細に定義します。これにより、ターゲットの心に響くメッセージと、彼らが接触しやすいチャネルを選択できるようになります。
ペルソナ設定以外も含めて、見るべきポイントを下記にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
- 明確な目的とターゲット設定
- 質の高いリードの定義づけ
- 適切なコンバージョンポイント(CTA)の設計
- 個人情報取り扱いへの配慮
特にリードジェネレーションの成功は、量よりも質を重視し、最終的な成約につながる可能性の高い見込み顧客を効率的に獲得することにあります。そのためには、営業部門との事前すり合わせによる「質の良いリード」の定義づけが欠かせません。
■リードナーチャリングとは
リードナーチャリングとは、リードジェネレーションで獲得した見込み顧客との関係を継続的に深め、購買意欲を高めていく顧客育成プロセスです。単なる情報提供ではなく、顧客の課題解決を支援しながら信頼関係を築き、最終的な成約へと導く戦略的な活動です。
1:リードナーチャリングの目的
リードナーチャリングの本質は、見込み顧客に対する「教育」と「信頼構築」にあります。獲得したリードの多くは、すぐには購入しません。特にBtoB商材では、検討期間が半年から1年以上と長期化するケースが多く、この期間中の継続的なフォローが極めて重要になります。
リードナーチャリングの目的は、購買意欲の促進と信頼関係の構築、機会損失の防止、そして営業効率の向上などの要素を同時に実現することです。これにより、確度の高いリードのみを営業部門に引き渡すことができ、組織全体の生産性向上につながります。
2:リードナーチャリングの対象
リードジェネレーションが広大な市場に存在する「潜在顧客」を対象とするのに対し、リードナーチャリングが対象とするのは、自社のデータベース内に存在する「獲得済みリード」です。
多くの企業が陥る間違いは、獲得した全てのリードを一つの塊として扱い、画一的なアプローチをしてしまうことです。例えば、入門的なホワイトペーパーをダウンロードしたばかりのリードと、何度も価格ページを訪れているリードに同じメールを送ることは非効率的であるだけでなく、後者のような購買意欲の高いリードの興味を削いでしまう危険性すらあります。
したがって、リードナーチャリングはリード全体ではなく、リードの状態や行動に基づいて定義されたセグメントごとに分けて行うのが重要です。効果的なナーチャリングは、このセグメンテーションから始まります。
セグメンテーションは、単なるマーケティング活動にとどまりません。マーケティング部門と営業部門の連携を具体的に実践するための第一歩でもあります。特に、「比較検討段階リード」の中から、どのリードを営業部門に引き渡すべきかという基準は、両部門が共同で定義し、合意する必要があります。
例えば、「価格ページを3回以上閲覧し、かつ導入事例ウェビナーに参加したリード」といった具体的な行動基準をサービスレベルアグリーメントとして明文化するのです。このように、ナーチャリングの対象を定義する行為は、両部門の連携を促進し、組織全体の成果を最大化するための極めて戦略的な活動と言えます。
3:リードナーチャリングの主な手法
リードナーチャリングでは、見込み顧客の検討段階や興味関心に合わせて、複数の手法を戦略的に組み合わせることが重要です。メールマーケティングが最も代表的な手法ですが、それ以外にも様々なアプローチがあります。
主な手法とメリット等を下記にまとめましたので、参考にしてみてください。
| 手法 | 内容 | メリット | 有効なセグメント |
|---|---|---|---|
| メールマーケティング | セグメント別の情報配信 | 自動化が可能、コスト効率が良い | 中長期的な育成が必要な顧客 |
| コンテンツ提供 | ブログ、事例、ホワイトペーパー | 専門性をアピール、信頼構築 | 情報収集段階の見込み顧客 |
| ウェビナー | オンラインセミナーの開催 | 直接対話、疑問解消 | 比較検討段階の見込み顧客 |
| インサイドセールス | 電話による個別フォロー | パーソナライズ、即時対応 | 購買意欲の高い顧客 |
また、SNSでの情報発信や一度WebサイトやSNSを見た人に対して配信するリターゲティング広告も効果的な手法です。これらを組み合わせることで、見込み顧客との接点を多面的に保ち、エンゲージメントを維持・向上させることができます。
4:リードナーチャリングのポイント
繰り返しになりますが、成功するリードナーチャリングで特に重要なのが、ターゲットの理解とセグメンテーションです。
全てのリードに画一的なアプローチをするのではなく、属性や行動履歴に基づいてリードを細かくグループ分けし、それぞれのニーズに合わせたパーソナライズされたコンテンツを提供することで、アプローチの精度を格段に向上させることができます。
リードナーチャリングは、短期的な売り込みを避け、顧客の成功を支援する良き相談相手としての立場を確立することに注力すべきです。この信頼関係こそが、長期的な顧客ロイヤルティの強固な基盤となります。
■リードジェネレーションとリードナーチャリングの違い
すでにお分かりかと思いますが、リードジェネレーションとリードナーチャリングは、マーケティングプロセスにおいて密接に関連し合う、連続したステップですが、その役割と目的は明確に異なります。この違いを改めて正しく理解することで、それぞれの活動を最適化し、全体的なマーケティング効果を最大化することができます。
マーケティングファネルにおける位置付け
リードジェネレーションはファネルの最も広い入口部分である「認知」や「興味・関心」の段階を担い、まだ自社を知らない潜在顧客をファネルに引き入れる役割を果たします。
一方、リードナーチャリングはファネルの中間部分である「比較・検討」から下部の「意思決定」段階を担当し、一度ファネルに入ったリードとの関係を維持・深化させ、購入への不安や疑問を解消して次の段階へ進むのを後押しします。
| 項目 | リードジェネレーション | リードナーチャリング |
|---|---|---|
| ファネル位置 | 入口(認知・関心) | 中間〜下部(検討・決定) |
| 主な役割 | 新しい接点の創出 | 既存接点との関係深化 |
| 重視する効果 | 見込み顧客の「量」を増やす | 見込み顧客の「質」を高める |
| 活動の焦点 | 多くの質の高い潜在顧客へのリーチ | 個別の状況理解と適切なコミュニケーション |
成功の基準や意識すべきポイント
活動の目的が異なるため、成功と見なされる基準や、活動を進める上で意識すべきポイントも大きく異なります。リードジェネレーションは「広く、効率的に」、リードナーチャリングは「深く、個別的に」アプローチすることが成功の鍵です。
リードジェネレーションでは、いかに効率良く質の高い「新しい接点」を獲得できるかが成功の基準となります。一方、リードナーチャリングでは、獲得したリードとの「関係性をいかに深められるか」が問われます。
見るべき指標とKPI設定
それぞれの成功基準に基づき、注目すべき指標(KPI)も変わります。リードジェネレーションでは活動の「量」や「効率」を測る指標が中心となり、リードナーチャリングではリードの「質」の変化や「エンゲージメント」を測る指標が重要になります。
適切なKPIを設定し、定期的に効果測定を行うことで、施策の有効性を客観的に評価し、継続的な改善につなげることができます。例えば下記のようなものです。
・リードジェネレーション:リード獲得数、リード獲得単価(CPL)、コンバージョン率、サイト訪問数
・リードナーチャリング:メール開封率、クリック率、商談化率、ホットリード数
特にリードナーチャリングにおいては、最終的な商談化率(MQLからSQLへの転換率)が最も重要なKPIとなり、育成活動がビジネス成果にどれだけ貢献したかを直接的に示します。
■それぞれの効果を最大化する秘訣
リードジェネレーションとリードナーチャリングの効果を最大化するためには、両者を個別の活動として捉えるのではなく、統合された一連の戦略として設計することが不可欠です。顧客の視点に立った一貫性のあるアプローチにより、見込み顧客から顧客への転換率を大幅に向上させることができます。
一貫性のある戦略を設計する
効果的なマーケティングを実現するためには、入口から出口までを見通した戦略設計が必要です。リードジェネレーションの段階で「どのような質のリードを、どのような情報と共に獲得するか」が、その後のリードナーチャリングの施策や成果を大きく左右します。
戦略設計の基盤となるのが、理想的なターゲット顧客像である「ペルソナ」と、そのペルソナが製品やサービスを認知してから購買に至るまでの思考、感情、行動のプロセスを描いた「カスタマージャーニーマップ」です。
カスタマージャーニーの各段階で顧客が必要とする情報を予測し、適切なコンテンツを戦略的に配置することで、リードジェネレーションで接点を持ったリードを、スムーズにナーチャリングのプロセスへと導くことができます。
カスタマージャーニーごとの施策例は、下記を参考にしてみてください。
・認知/課題認識段階:課題解決に関するブログ記事、基礎知識のコンテンツ
・情報収集段階:詳細なホワイトペーパー、業界トレンド情報
・比較検討段階:導入事例、他社との比較資料
・購買決定段階:デモンストレーション、個別相談会
関連部署との連携を強化する
優れた戦略も、実行する組織が連携していなければ成果につながりません。特にマーケティング部門と営業部門の連携は、効果最大化の生命線となります。
「スマーケティング」と呼ばれる、マーケティング部門と営業(セールス)部門が連携する体制の構築が不可欠です。連携不足により、「質の低いリードばかり渡される」「せっかくのリードが適切にフォローされない」といった部門間の対立が生まれがちです。
では、具体的にどのようにしてマーケティングと営業の連携、すなわち「スマーケティング」を構築すればよいのでしょうか。部門間の壁を取り払い、共通の目標に向かうための具体的な連携施策には、以下のようなものがあります。
| 連携施策 | 内容 | 期待効果 |
|---|---|---|
| 共通KPI設定 | 売上目標や商談化率の共有 | 部門を超えた目標達成意識 |
| SLA策定 | 役割分担と約束事の明文化 | 期待値のズレ防止 |
| 定期ミーティング | 進捗とフィードバックの共有 | 迅速な軌道修正 |
| ペルソナ共同作成 | 市場データと現場の声の統合 | 精度の高いターゲット設定 |
テクノロジーを活用する
戦略と組織連携を円滑に実行するための助けとなるのがテクノロジーです。例えば、マーケティングオートメーション(MA)とCRM(顧客関係管理)/SFA(営業支援システム)の活用は、現代のマーケティング活動において重要な役割を担っています。
MAの活用により、リード情報の一元管理、ナーチャリングの自動化、リードスコアリングによる購買意欲の可視化が可能になります。設計したシナリオに基づき、適切なタイミングで適切な情報を自動配信することで、手間をかけずに効果的なアプローチを実現できます。
また、MAで育成・抽出されたホットリードの情報をCRM/SFAにシームレスに連携することで、営業担当は見込み顧客の過去の接点履歴を全て把握した上で、的確なアプローチを開始できます。
この統合されたアプローチにより、顧客がどの部門と接していても、過去の文脈を踏まえたスムーズでパーソナライズされたコミュニケーションが可能になり、顧客体験の一貫性を保つことができます。
■まとめ
リードジェネレーションとリードナーチャリングは、それぞれ異なる役割を持つ重要なマーケティング活動です。
両者の効果を最大化するためには、一貫性のある戦略設計、部門間の密な連携、そしてテクノロジーを活用したプロセス最適化が不可欠です。実践においては、継続的な効果測定と改善を通じて、マーケティング活動全体のROIを向上させることが重要です。
ただし、知識をして理解することと、現場で実践できるかには大きな壁があります。
もしもこのようなマーケティング活動の設計や実行にお悩みでしたら、ぜひ博展にご相談ください。BtoBマーケティングに関する豊富な知見を活かし、リードジェネレーションからナーチャリングまで、貴社のビジネス成長を加速させるお手伝いをいたします。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。