2025年10月下旬、空間デザインの船場と博展が共同主催する、Ethical Design Week Tokyo 2025が開催されました。本イベントは、2021年から空間デザインの船場が開催しており、昨年から船場と博展が共同共催をスタートし、今年で2年目の取り組みです。

今回のテーマは、ETHICAL CITY。

今年は、イベントディレクターに、エシカルディレクターである坂口真生さんに企画にご参画いただき、企画がスタート。
会場は、新たに森ビル様にご協力をいただき、「TOKYO ETHICAL CITY」をテーマに、エシカルな視点で都市を見つめ直し、未来のウェルビーイングを考える場として開催しました。
エリアは多岐にわたり、虎ノ門ヒルズのオーバル広場とアトリウムを中心に展示などを行い、トークセッション(エシカルカンファレンス)はGLASS ROCKで開催されました。「エシカルデザイン」に興味がある方だけでなく、虎ノ門ヒルズで働くオフィスワーカーの皆さんにも通りがかりに体験いただける企画を盛り込み、4日間でビジネス来場者1,200名にご来場いただきました。

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オープニングセレモニー

エシカルを考える夜、オープニングセレモニーに俳優の小澤征悦さんも登場

小澤征悦氏、船場 小田切潤社長と博展 原田淳社長のパネルセッション

初日の夜に開催されたオープニングセレモニーには、エシカルブランドを立ち上げた、俳優の小澤征悦さんもご登壇。小澤さんは、父 小澤征爾さんの影響で履き続けている「赤いパンツ」をエシカルな素材で自らプロデュース。エシカルブランド「AKAPAN」として、このエシカルデザインウィーク内で発表されました。AKAPANは、世界最大級のオーガニックコットン普及プロジェクト“ORGABITS(オーガビッツ)”のオーガニックコットンを採用し、売上の一部は、環境保全活動を行っている団体に寄付される仕組みになっているそうです。
会期2日目も終日ブースに立って、オーガニックコットンの魅力を発信していただきました。

多種多様な企業の取り組みが学べるエシカルデザイン展示

虎の門ヒルズ ビジネスタワー1F アトリウムには、小澤さんのAKAPANの他、エシカルデザイン実践している30社の共創パートナーが展示を行いました。

博展でも長くお付き合いがある、アクリル加工を得意とする緑川化成工業さんは、コロナ禍で大量に生産された飛沫防止用パーテーションを回収し、また新たなアクリル板に再生する取り組みを行っています。
アクリル板はどこで購入したものでも問題なく、回収可能。数年前まで全施設に導入されていたといっても過言ではない飛沫防止パネル。処分に困っている方も多いかと思います。アフターコロナにそのまま廃棄されず、資源として循環してくれる、ありがたい取り組みです。

インクロッチェさんは、里山を拠点に活動するデザイン会社。商業施設などの内装を手掛ける船場の共創パートナーです。いらなくなった衣類を“ねじって”、椅子やオブジェなどの家具に生まれ変わる「nejiru Furniture」を展示していました。家具の端からは古着のシャツの袖が覗いてみることも。デザイン性高くアップサイクルされる作品は会場でも目を引いていました。

インクロッチェ さん「nejiru Furniture」

共催の船場と博展は、それぞれが取り組む“エシカルデザイン”の考え方や資源循環型素材の紹介を行いました。

博展のブースで、特に注目を集めたのが今回の会場造作でも用いられた「モクシマ」。普段から使っているアルミニウムで出来たリユース素材 マキシマライト(通称マキシマ)とつなぎ合わせるジョイントが埋め込まれている造作パーツです。アルミニウム素材だけでは、クールでシンプルな印象になりがちなマキシマですが、モクシマを組み合わせると、木工の温かみも加わります。
今回の会場造作で初めて活用され、虎ノ門ヒルズのスタイリッシュな会場と、エシカルデザインウィークの温かみのある雰囲気を上手く融合させる役割を果たしました。

マキシマライトとモクシマで構成されたイベント造作

その他には、実際に納品した資源循環型イベントの写真や模型や、蟹の甲羅やじゃがいもの皮から新たな素材を開発する実験的プロセスをご紹介。イベント空間ならではのアイデアをご紹介し、多くの方の驚く様子を見ることができました。

マルシェ&ワークショップエリア

企業の展示スペースを抜けて、オーバル広場に抜けると、ここではオーガニックのアイス、酒粕を使った入浴剤など、つい手に取ってしまいたくなる製品を取り扱うマルシェが並びます。今回は、一般社団法人City Green Fes.さんとコラボレーションし、本エリアの企画が実現。若い世代・一般生活者を多く巻き込んで盛り上がりました。特に、福田萌子さん主宰の「100人バレトン」は、大盛り上がり。朝からたくさんの方にお集まりいただき、地球と体を癒すウェルビーイングな時間を共有しました。

100人バレトンは朝から大勢の方が参加しました

産学共創で実現 Ping-pong block project

オーバル広場の中央に目立つのは、カラフルな模様をした大きな台。
こちらは、新渡戸文化学園の中学生と、卓球ブランド バタフライ(株式会社タマス)、博展の産学連携プロジェクトの作品 “Ping-pong block project” 。
中学生の探究学習で、中学生自ら、バタフライの卓球ラケットを製造する際に生まれる余材から新たな価値を生む取り組みを考え、出来上がった余材を組み合わせた卓球台。ちょっと風変りな卓球台は、虎ノ門ヒルズのオフィスワーカーの目にも多く留まり、たくさんの方に即興でゲームを楽しんでいました。

>Ping-pong block project についてはこちら 🏓

“ごみ捨て”の考え方を変える

その奥には、ごみの学校、RECOTECHと、博展 で連携した「ごみを資源に変える」スポット“CITY RESOURCE HUB”( シティリソースハブ)があり、イベントで出た廃棄物をこちらに持っていくと、スタッフが細かく分別してくれます。

溜まったごみは、RECOTECHの廃棄物の計量管理システム「pool」で測定され、その場でイベントで出る廃棄物のサーキュラリティが計算されます。
普段、なにも考えずごみ箱に入れてしまうものを、スタッフに手渡しすることで「ものを手放す」ことに意識的になれます。さらに、ごみだと思っていたものが分別次第では「資源」に変えられると気づけると、これからのごみ捨ての感覚も変わってくるのではないでしょうか。

ちなみに、シティリソースハブでは、ロスフードの回収も可能です。
こちらのコンポストには、なんと数千の「アメリカミズアブ」の幼虫が中に入っております。通常の微生物のコンポストと違い、例えばバナナなら数時間であっという間に消滅します。このアメリカミズアブは、成虫になる前に適切に処理され、タンパク質豊富な肥料になるそうです。ロスフードを入れると、いっきに動き出し食べ尽くす姿は、鳥肌モノです。

イベント最終日、日が暮れたころには、TRASH PARTY(通称:ゴミパ)がスタート。オーバル広場に展示されていたユニークな自転車のようなものが音を奏で始めます。
これは、一般社団法人CHIMERA Unionと博展が共同開発したコミュニケーションコンテンツ。ごみを捨てる動作から、リアルタイムで音を取り出し、DJがパフォーマンスに昇華していくことで「楽しく分別」することができます。

ごみ箱にペットボトルを入れるとセンサーで光る仕掛けも

空のペットボトルを捨てる「ゴトっ」という音、空き缶を捨てる「カランっ」という軽い音、そんな音の重なりから、音楽が生まれていきます。つい気が付けば体を揺らしながら、身の回りに「音」が落ちていないか探して、楽しくごみを集めて分別してしまう、というごみ捨てのアップデート体験を感じながら、イベントは終わりを迎えました。

資源循環型イベントを目指して

資源循環率の可視化により、サーキュラーデザインの実現に向けた課題を明確に

エシカルをうたうイベントだからこそ、イベント自体も資源循環に配慮した設計・運営にこだわっています。また、自社主催だからこそ、サーキュラーデザインに関する新たな施策の実証実験の場として本イベントを活用しています。

具体的には、以下の内容を実施しました。
・リユース部材のデザイン拡張(モクシマの開発)
・端材や規格外資源の体験化
・資源循環ハブステーション
・資源循環率の可視化・評価(サーキュラリティ評価※)

資源循環率の可視化については、2024年に初めて実施し、2025年の空間設計の際の参考にしました。

<2024年の結果>
・投入された資源の「サーキュラー・インフロー率」:54%
・イベント運営を通じて排出された資源の「サーキュラー・アウトフロー率」:99%
・「マテリアル・サーキュラリティ率」:77%

という結果に対して、アウトフロー率はほぼ100%という結果を得られたものの、インフローに関しては、まだまだ課題があるということが分かりました。そこで、今回は、バージン材の調達量を削減する等を行った結果、サーキュラー・インフロー率が54%から86%に大きく向上し、マテリアル・サーキュラリティ率も91%となりました。

※「サーキュラリティ評価」は、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)に加盟する30のグローバル企業により策定された「CTI」(Circular Transition Indicators: サーキュラー移行指数)をもとにした、企業の取り組みにおける資源の循環性を測定するための評価方法です。

調達した資源全体に対し再生可能な資源の割合を示す「サーキュラー・インフロー率」と、排出した資源全体に対し再生可能な資源が実際に回収された割合を示す「サーキュラー・アウトフロー率」を算出するとともに、これらの加重平均により、全体の循環性を数値化した「マテリアル・サーキュラリティ率」を算出しています。

今後は、自社の実施するイベントだけではなく、クライアントのイベントでの資源循環率可視化を基本的なサービスとして体制を整えていくとともに、データを蓄積することで課題の抽出とその解決に取り組んでいきたいと考えています。

エシカルデザインは知ることから始まる

さまざまな形でエシカルデザインを体現する方たちと、共創し、新たな繋がりを生んだエシカルデザインウィーク2025。
多くがBtoB企業の展示で、普段生活をする中で知ることのない会社だったり、直接かかわらないエシカルなサービスが多く展示されていました。それでも、たくさんの方が興味を持ち、初めて知る取り組みに関心してうなずく姿が多くみられました。直接的に、自分が商品を買ったり、サービスを受けることがなくてもエシカルな取り組みを知ることから、日々の生活のきづきやアクションにつながる、そんなことに改めて実感した3日間でした。

エシカルデザインウィーク東京2025

https://www.semba1008.co.jp/lp/ethicaldesignweek_2025