製薬会社として、人々の命と健康に深く関わる中外製薬。最先端の研究拠点である中外ライフサイエンスパーク横浜には、彼らの揺るぎない企業理念と、研究員たちの挑戦を象徴するモニュメントが佇んでいます。
「ライフサイエンスコード」。
その名が示す通り、生命科学の神秘と未来を表現したこの作品は、中外製薬の皆さんと想いを深く理解した博展が、ともに考え、つくりあげました。単なる「オブジェ(物体)」や「アート作品」ではなく、想いを後世に伝える「モニュメント(記念碑)」として完成した本作品は、世界最大級のデザイン賞「A’ Design Award」にて、部門最高賞PLATINUMを受賞し、世界からも絶賛を受けました。今回は、プロジェクトを推進した中外製薬の大木様と、モニュメントを制作したアーティストの高橋にインタビュー。コンセプトの核心から制作の裏側、そして完成したモニュメントがもたらす価値まで、その全容を紐解きます。

Index
・生命の根源を辿る、モニュメントに込めた想い
・想いを形にする、中外製薬とアーティストの共創
・光を放つ「生命のシンボル」がもたらすもの
・過去から未来へ。モニュメントが示す道しるべ
生命の根源を辿る、モニュメントに込めた想い

―モニュメントを設置するきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
大木(中外製薬 研究本部 研究業務推進部): 横浜研究所という大きな施設を建設するにあたり、単なる研究の場ではなく、中外製薬の精神性を表現する場にしたいと考えていました。海外の研究所では、アート作品やモニュメントを積極的に設置している企業が多く、研究とアートには共通の価値観があると考えていたことも背景にあります。どちらも正解のない探求に真摯に向き合い続ける点で共通しており、アートが研究員の勇気につながることもあるのではないかと、当時の経営メンバーからエントランスに何かシンボルを置きたいとの提案がありました。同時に、創薬研究という深遠で厳しい道に向き合う研究員たちの決意を鼓舞するような存在が欲しいという想いが強固になり、モニュメント設置のアイデアが固まっていきました。
―モニュメント「ライフサイエンスコード」のコンセプトと、そこに込めた想いを教えてください。
高橋(博展 デザイナー): 中外製薬様を深く知る中で見えてきたのは、創薬の根幹にある「DNAを解き明かし、個人に最適な治療法を創り出す」という創薬の未来でした。モニュメントでは、この研究の根底にある「ライフサイエンス(生命科学)」をどう表現するかが大きなテーマでした。人の遺伝情報を図式化したゲノムマップに着目し、モニュメントのモチーフとして採用しました。

―デザインのインスピレーションはどこから得たのでしょうか?
高橋: 経営メンバーの皆様や大木様とのお話を通して、生命を解き明かす「ゲノム」の科学的な表記そのものが持つ美しさに感銘を受けました。また、最近になってようやくヒトゲノムが完全に解読されたというニュースを聞き、その模様に神秘性を感じたこともデザインの大きなインスピレーションになりました。さらに、地球最初の生物から現代に至るまで脈々と受け継がれてきた生命の記憶を表現するため、97億年前の石や、日本の伝統工芸、薬草など自然の素材を組み合わせることにこだわりました。


想いを形にする、中外製薬とアーティストの共創

―モニュメント制作のパートナーとして、博展を選んだ理由を教えていただけますか?
大木: 著名なアーティストに依頼するという選択肢もありましたが、私たちはあえてコンペ形式で依頼しました。その理由は、中外製薬の想いを深く理解し、それをどこまで形にできるかという点で評価したかったからです。多くのご提案をいただきましたが、博展さんのご提案が、研究所に込められた思いを最も深く汲み取ってくれたと感じました。私たちが目指すものや、そこで働く研究者への敬意が、高橋さんの作品に込められていたことが一番の理由です。
―このプロジェクトならではの特別な進め方はありましたか?
高橋: 通常のプロジェクトとは違い、私が一方的に作品を創るのではなく、中外製薬の皆様と一緒に創り上げていく「共創」の形でした。コンペ後も、会長様を含め多くの社員の方々と議論を重ね、一つひとつコンセプトを形にしていきました。特にお披露目の2ヶ月前からは、ほぼ毎日のようにディスカッションを重ねたのは、このプロジェクトならではの経験です。

光を放つ「生命のシンボル」がもたらすもの
―完成したモニュメントを初めて見た時、どのような印象でしたか?
高橋: お披露目のアンベール前のカーテンに包まれたモニュメントを前にした時の、あの達成感は忘れられません。中外製薬の皆様と積み重ねてきた時間が形になったのだと、心から嬉しく思いました。
大木: まずは、光を当ててみたいと思いました。刻まれた素材たちがどのような輝きを放ち、光が混ざり合ってどんなシルエットを生み出すのか。光と影が織りなす表情を見たかったですね。

―完成したモニュメントは、社員や来訪者にどのような影響を与えていると感じますか?
大木: 「美しい」「素晴らしい」といった言葉を多くいただいています。コンセプトにも共感してくださる方が多く、写真を撮りたいというご要望も多数寄せられています。
高橋: このモニュメントは、研究員の方たちに向けて作ったものでもあります。日々、厳しい研究に向き合う中で、時には気分転換にこのモニュメントを見て、生命科学の根源的な部分に立ち返るきっかけになればと願っています。
―海外からも高い評価を受けたそうですが、そのことについてどう感じていますか?
大木: このモニュメントが海外からも評価されたことは、中外製薬の精神性や想いが形として伝わった証だと感じています。親会社であるロシュともこの想いを共有できたことは、私たちにとって大きな喜びです。
高橋: モニュメントは機能的なものではありませんが、企業の想いを表現する力を持っています。それが評価の文章からも伝わってきたことがとても嬉しかったです。「ライフサイエンスの世界の魅力や可能性を表現できた」と言われたのが特に印象的でした。

https://www.hakuten.co.jp/news/post_12147
過去から未来へ。モニュメントが示す道しるべ
―このモニュメントが、研究者の方々にとってどのような意味を持つとお考えですか?
大木: 新薬開発には、長い年月と多くの失敗が伴います。研究者にとっては孤独な作業の連続です。そんな時、このモニュメントを見ることで、失敗は失敗ではなく「その道ではない」という道しるべを示し、再び研究に向き合う勇気を与えてくれる存在になるのではないでしょうか。
―今後の展望について教えてください。
大木: 弊社のミッションは、革新的な新薬を世界中の患者さんにお届けすることです。このモニュメントは、過去の先人たちの努力や技術が結集して今の研究の場があることを示し、感謝の気持ちを再認識させてくれます。鎌倉・御殿場から受け継いできたDNAを大切にしながら、「ネイチャーと技術をフュージョン(融合)させて高みを目指す」という想いを、日々の活動の中で表現していきたいと考えています。

WORKS
https://www.hakuten.co.jp/works/chugai-pharmaceutical_life-science-code
OVERVIEW
| CLIENT | 中外製薬株式会社 |
|---|---|
| PROJECT | Life Science Code |ライフサイエンスの記憶 |
| LOCATION | 中外ライフサイエンスパーク横浜 |
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製薬会社として、人々の命と健康に深く関わる中外製薬。最先端の研究拠点である中外ライフサイエンスパーク横浜には、彼らの揺るぎない企業理念と、研究員たちの挑戦を象徴するモニュメントが佇んでいます。 「ライフサイエンスコード」。 その名が示す通り、生命科学の神秘と未来を表現したこの作品は、中外製薬の皆さんと想いを深く理解した博展が、ともに考え、つくりあげました。単なる「オブジェ(物体)」や「アート作品」ではなく、想いを後世に伝える「モニュメント(記念碑)」として完成した本作品は、世界最大級のデザイン賞「A’ Design Award」にて、部門最高賞PLATINUMを受賞し、世界からも絶賛を受けました。今回は、プロジェクトを推進した中外製薬の大木様と、モニュメントを制作したアーティストの高橋にインタビュー。コンセプトの核心から制作の裏側、そして完成したモニュメントがもたらす価値まで、その全容を紐解きます。 |
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