
パルプを原料とした不織布を独自の製造技術によって提供する、王子キノクロス株式会社。博展は、2025年1月に開催された「新機能性材料展2025」における同社の展示ブースのデザイン・施工を担当させていただきました。
同社が展開する「エアレイド不織布」は、吸収性の高さや生分解性、リサイクル性など、サステナビリティの実現に大きく寄与する可能性のある素材です。展示ブースのデザインにおいては、同製品の新たな展示方法を提案すると同時に、空間全体の装飾として活用することで、環境負荷の少ない空間を実現しました。素材としての不織布の可能性を探求し、新たな側面の発見につながった展示制作のプロセスを、プロジェクトメンバーが振り返ります。
Index
・新たな展示ブースのデザインで、企業イメージを刷新する
・不織布の特徴を直感的に表現し、企業のものづくりの姿勢を伝える
・独自の空間づくりを通じた企業の新たな側面の発見
新たな展示ブースのデザインで、企業イメージを刷新する
ーはじめに、展示会のブース制作を博展に依頼された背景についてお聞かせください。
宮崎(王子キノクロス 開発研究所):以前、博展さんが開催されていたオンラインセミナーを拝見して、これまでに博展さんがさまざまな展示ブースでサステナビリティを表現されていることを知ったんです。ちょうど私たちも製品のサステナビリティを展示ブースで表現したいと考えていたので、目指したい方向性と一致するのではないかと、制作を依頼させていただきました。
山本(王子キノクロス 製品開発部):展示会への出展はこれまでも続けてきたのですが、まだまだニッチな領域として十分に知られていない現状があり、新しい事業の柱となるような取り組みに挑戦しなくてはならないと考えていたんです。製品を紹介するだけだった従来の展示方法ではなく、われわれのイメージを刷新するような展示に挑戦できれば、キノクロスのことをもっと多くのお客様に知ってもらえるのではないかという期待がありました。

ー王子キノクロスさんからのご依頼を受けた際に、博展チームとしてはエアレイド不織布という製品にどのような印象を持ちましたか?
高橋(博展 デザイナー):普段からCIRCULAR DESIGN ROOM(博展のサステナビリティ専門組織)のメンバーとしてサステナブルな表現方法を考えている立場からすると、エアレイド不織布には素材としての可能性をとても感じました。吸水性や生分解性といった機能について聞けば聞くほど、展示のアイデアがどんどん頭に浮かんでいきました。
王子キノクロスが目指す新しい事業の柱となるものは、おそらくまだ誰も想像ができないような領域だと思うんです。だからこそ、展示会への出展をきっかけにお客様から新しいアイデアが寄せられたり、王子キノクロスさんの中でも新たな提案が生まれたりするような、そんなブースをデザインすることが必要だと考えました。

不織布の特徴を直感的に表現し、企業のものづくりの姿勢を伝える
ーそれでは、具体的な提案プロセスについて教えてください。
堀江(博展 プロデューサー):最初の提案では、エアレイド不織布の機能性のうち、もっともキャッチーだと感じた吸水性を前面に押し出したデザイン案をお見せしました。展示ブースのデザインにはさまざまなアプローチがありますが、このブースでは迫力のあるデザインで視線をあつめるのではなく、製品そのものを特徴的に見せるショーウィンドウのようなブースのあり方を提案しています。

宮崎:とてもインパクトがある提案でしたね。実際にエアレイド不織布がどのくらいインクを吸い上げることができるのか、私たちにとっても未知数だったので、この機会に試すことができたらおもしろそうだなと、社内でも大きな反響がありました。
高橋:インクを使って実験されている様子はホームページの写真でも拝見していたので、ぜひ展示の表現にも加えたいなと思っていたんです。その後、吸水性だけではなく、エアレイド不織布が木材由来であることや、生分解性、リサイクル性についても表現したいというご要望をいただき、次の提案に反映していきました。製品にキャッチコピーを入れるアイデアは、打ち合わせの際にみなさんからいただいたもので、4種類の特徴を言葉と展示で表現する形は、最終的に実現しました。
山本:4つの特徴を不織布が垂れ下がる表現で統一できたことは、製品の魅力をシンプルに伝えることにつながったのではないかと思います。実現にあたっては、そもそもこんなに大胆に製品を使った表現ができるのか、工場のメンバーと相談しながら検討していきました。

岩田(博展 プロダクトマネジメント):実際の施工では、文字を印刷した不織布をロールに固定しているんですが、長いロールの一部が垂れ下がっているような表現にするために、接合部を見せない工夫をしています。言葉を印刷する際にも、製品ごとに表面の毛羽立ち具合が異なるため、種類によっては毛の部分にインクが載り、文字が滲んでしまうことがありました。なので、不織布を板に貼り、引き伸ばしながら印刷するなど、「T-BASE(博展の制作スタジオ)」のUV印刷機を使って試行錯誤を重ねていきました。
金刺(王子キノクロス 製品開発部):直接印刷していただいたことで、製品の特徴をスタイリッシュに表現する展示になっていると思います。通常のブースではどうしてもパネル中心の展示になってしまうのですが、通路のお客様の目を引くことができれば、ブースの奥で製品についてしっかりとコミュニケーションを取れるはずだと考えていたので、シンプルかつキャッチーな表現にしていただきとても助かりました。
山本:「何の会社なんだろう?」と足を止めていただく方がたくさんいらっしゃいましたね。製品についてダイレクトに紹介していたこれまでの展示とは異なり、まずはわれわれのことに関心を持ってもらうきっかけがつくれたと思います。
ブース右奥のコーナーでは、壁面にわれわれの製品をコンパクトに並べていただき、お客様にエアレイド不織布の種類について説明する際にとても役立ちました。展示期間終了後、パネルごと本社の会議室に持ち帰り、現在も来客の際に活用させていただいています。
宮崎:ブース全体がアイキャッチになっていましたよね。ほかにも、博展のショールームで拝見していた端材を使った什器のアイデアを、私たちのブースでも表現できないだろうかと相談させていただいき、ブース内の台座の下に巻取ロールを配置するなど、展示以外の部分でも直感的に不織布の特徴が伝わるブースに仕上げていただきました。

高橋:ブース全体の天板や装飾といった設えにも不織布を使用することで、実際に製品に触れながらお客様とコミュニケーションできる空間をデザインしています。展示ブースに工場のモチーフを取り入れることで、ものづくりの根源的な部分を表現できるのではないかと考えたんです。
独自の空間づくりを通じた企業の新たな側面の発見
ー展示期間中、来場者の方からどのような反響がありましたか?
当麻(王子キノクロス 製品開発部(当時)):すでに私たちのことをご存知のお客様からは「今回のブース、すごいですね!」とお声がけいただき、みなさん驚かれていたのが印象的でした。われわれとしても鼻高々でしたね。
宮崎:こんなものづくりができるんだという、われわれの新しい側面を既存のお客様にお見せする機会にもなり、ひいては企業全体のブランディングにもつながったのではないかと感じています。
高橋:実は今回のブースでは、企業のロゴが見える位置に一切出ていません。素材自体を企業の顔として見せることを意識して、あえてロゴを掲出するのをやめたんです。あらためてエアレイド不織布というプロダクトの魅力に触れていただくことで、既存のお客様にも新たなインスピレーションを与えることができるのではないかと考えました。
当麻:ロゴについては社内から一度だけ意見が上がったのですが、「デザインが崩れるので、変えるのは難しいです」と押し通しました(笑)。とにかく素材で惹きつけることで、ブースの奥に進んでもらうことを大事にしたかったんですね。
高橋:僕らとしても指摘された時の答えを用意していたんですが……ありがとうございます(笑)。コミュニケーションデザインの観点からも、キャッチーな表現でお客様を集めつつ、ブースの奥に進めばより具体的に会社のことが理解できる動線設計を心がけています。
堀江:社内でも一度「ロゴが入っていないですけど、大丈夫ですか?」というやり取りはありましたね(笑)。
当麻:はじめの提案からここまでガラッと変わるようなプロジェクトはなかなかないので、これまでの展示とはやり取りの回数が圧倒的に違ったと思います。 かなり密にコミュニケーションを取らせていただき、とてもありがたかったです。
堀江:しっかりとクライアントの皆さんの意見を反映してブースに落とし込んでいきたいという思いがあり、じっくりすり合わせさせていただけたので、こちらこそありがたい思いでした。実際に現場でブースができ上がっていく過程を見た時にはとても感慨深かったです。

ー最後に、本プロジェクトを振り返った上で感じていることをお聞かせください。
高橋:普段から素材の魅力をいかに引き出せるのかを考えながらブースをデザインしているんですが、今回は特にエアレイド不織布という素材の力を感じることができたプロジェクトだったと思います。CIRCULAR DESIGN ROOMとしても代表的な仕事になったと思いますし、ここまで製品と空間が密接に結びついたブースのデザインはなかなかできないので、自分にとっても挑戦の機会になりました。
サステナビリティを意識した展示は、循環性に考慮してもともと博展が使用している素材などを活用することが多いのですが、今回はアピールしたい製品そのものがサステナブルだったので、それを活かして、王子キノクロスにしかできない独自の空間を実現できたと思っています。これからも新しい表現を追求しながら、クライアントのサステナビリティを体現するデザインに取り組んでいきたいと考えています。
岩田:さきほど展示コーナーの一部をいまでも保管していただいていると聞き、とても嬉しく思っています。実際の施工では採用できなかったんですが、ブース全体を囲うリース部材にも不織布を貼れないだろうかと、お借りした製品で、さまざま検証をさせていただきました。博展の制作メンバーと相談しながら検証を重ねられたことは、とてもいい経験になりましたし、自身の代表作となるようなプロジェクトだったと思います。

堀江:博展のWORKSに掲載されたことで、一緒に働いているメンバーからも高い関心を寄せてもらっており、サステナビリティの実現に注力している博展のメンバーとして、こういったプロジェクトを担当することができてあらためてよかったなと感じています。私自身、学生時代からサステナビリティに関心があり、素材の可能性を表現する、メッセージ性のあるプロジェクトを担当できることの意義をあらためて感じることができました。今後も自分なりの挑戦を続けながら、クライアントのみなさんのお手伝いができるような仕事をしていきたいと思います。
金刺:今回の展示は自社のWebサイト(LPサイト)でもメインビジュアルとして使わせていただいており、今後の王子キノクロスにとって名刺代わりになるような、継続的にお客様にアピールできるプロジェクトになったのではないかと感じています。こちらからのたびたびのリクエストに真摯に答えていただき、あらためて感謝を申し上げます。
山本:無事に最終案に辿り着いた時には達成感がありましたし、コミュニケーションの面でも学びの多いプロジェクトでした。もともと製品開発に携わっていた身としては、ふたたび開発意欲が沸くような経験ができたので、今後新しい製品の機能性をアピールする必要がある場面でも、今回の展示のあり方を参考にしていきたいと思います。
宮崎:これまでこういった考え方で展示会のブースをつくってこなかったため、最初は戸惑いましたが、博展のみなさんと一緒に試行錯誤ができたことで、自分たちの商材の新しい使い方や見せ方を学ぶことができました。
今回の経験は、これからももっと挑戦していきたいと、私たち自身が考えるきっかけとなる出来事だったと思います。素敵なブースに仕上げていただいたことに感謝していますし、博展のみなさんからたくさんの刺激を受けることができたプロジェクトでした。
当麻:展示期間中、これまで接点がなかったようなお客様がたくさんお越しいただき、従来とは異なるリードを獲得できたのではないかと手応えを感じています。当社の場合、お客様からの数年越しのお問い合わせをきっかけに開発がスタートすることも度々あるため、短期的な成果よりも、新しいなにかが数年後に花開くような、潜在的なお客様にアプローチできたことがなによりの達成だと考えています。とても貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。

WORKS
https://www.hakuten.co.jp/works/ojikinocloth_tenjikai2025
OVERVIEW
| CLIENT | 王子キノクロス株式会社 |
|---|---|
| PROJECT | 新機能性材料展2025 |
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パルプを原料とした不織布を独自の製造技術によって提供する、王子キノクロス株式会社。博展は、2025年1月に開催された「新機能性材料展2025」における同社の展示ブースのデザイン・施工を担当させていただきました。 |
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