株式会社SmartHRは2022年5月に東京ビッグサイトで開催されたHR EXPOに出展。
博展はブースにおけるコミュニケーション設計からデザイン、施工まで担当しました。

クラウド型人事・労務ソフトのリーディングカンパニーであり、同領域で圧倒的な実績を持つSmartHRが、新たに人材マネジメントサービスへと事業を拡張していくにあたり、展示会ブースにおいてもデザインのアップデートを求めていました。そこで、これまでのブランドイメージや拡張していくサービスを整理し、「展示会において来場者とどのようにコミュニケーションをとるべきか」を議論し、プランニングしていきました。

今回はプロデューサーの山口とプランナーの福坂が、SmartHR マーケティンググループ小西様とコミュニケーションデザイングループ金森様と共にプロジェクトを振り返ります。

左から、㈱SmartHR 金森様、小西様、㈱博展 プロデューサー 山口、プランナー 福坂

Index

“企業の現在地”を丁寧にヒアリングし、どう「変化」するべきかをすり合わせていきました。


ー 2018年から継続して展示会出展をサポートさせていただいておりましたが、今回は弊社にどのような点を期待し、お声がけいただけたのでしょうか?

小西:弊社は主力サービスである「人事労務効率化」に寄与するサービスに加え、「人材マネジメント」に資するサービスへ領域を拡大したんです。サービスの拡張に伴い、展示会では2つのサービスの要素を1つのブースで表現する必要がありました。

両サービスには元々重なる部分もあったんですが、正式にリリースしたタイミングで明確に打ち出したい。そう考えたときに、表面上ではない、デザインの抜本的な変化が必要だったんです。来場者にはすでにデザインとブランドイメージが定着しつつありましたが、今回はそのイメージを変える必要があったこともあり、ブランドデザインのガイドラインを一新させようと考えました。

金森:そこで、SmartHRらしさを展示会という場所においてどう表現するか、空間デザインのプロフェッショナルである博展さんに相談したいと思ったんです。
私たちが博展さんに依頼した時点では、「デザインを一新させたい。けれど、何が不満の要素なのかわからない。何をどう変えればいいのかわからない。」という状態でした。

福坂:2年前にもブースデザインのガイドライン作成を担当させて頂いたのですが、ブラッシュアップを繰り返しながら、これまで使い続けてくださっていたのは嬉しかったです。

SmartHRさんは2年前と比較して事業が拡大し、企業体としてのフェーズも変化していますよね。となると、当時と今とでは向き合っている課題も当然異なるはずです。
ですから、今回また新しいガイドラインをつくる前に、まず、「SmartHRが現在どういう状態か」をプロセスを含めて整理する必要がありました。特にプロデューサーである山口は、この2年間のSmartHRさんの変化と現状を知っているわけですから、山口とも一緒に整理していきましたね。
それを踏まえて、どのような変化を望んでいるのかという目線を揃えるための議論をさせていただきました。

金森:新たな分野に足を踏み出すため「リブランディング」という言葉を使用していましたが、ブランドイメージをガラッと変えようということではなく、事業が転換点を迎えるにあたって足元を見つめ直そうという意識でしたね。

福坂:新しいデザインのガイドラインを考える前に、「変化」という言葉の捉え方のすり合わせは慎重に、そして丁寧に何度もおこないました。
たしかに2年前と今とでは状況が変わっていますが、それを「変容」ではなく、“進化”や“拡張”と捉え、デザインのトンマナもそこに合わせていきましたね。

小西:企業としてその意味合いをしっかりと伝えていきたいという思いがあったので、ニュアンスのすり合わせはとても重要でしたね。

福坂:これまで大事に守ってきたブランドがあるなかで、大きく変えることはマイナスに働いてしまう可能性もあります。守り続けるイメージと進化する部分の線引きをどうするか、それをどう表現するか。そこからプランを組み立てていきましたね。

金森:最初にこの企画書を共有してくださったときは驚きました。こんなに丁寧に整理していただけるんだって。

小西:今回変化させるにあたり、解決していくための道筋が明確に示されていて、とても安心感がありました。デザインの変化のポイントも丁寧に説明してくださっていて「そうそう、これが言いたかったんだよ!」と気づかせてもらいましたね。(笑)

金森:私が所属しているコミュニケーションデザイングループは常に制作中の案件をチーム内で共有しているのですが、デザイントンマナの変更意図が明確に示されていたので社内のメンバーにも非常に話しやすかったですし、デザインチームの中でも大好評でした。言葉やアプローチ方法も含め、デザイナーとしてもとても勉強になりました。

福坂:そこまで喜んでいただけて嬉しいです。(笑)

担当のおふたりはもちろんですが、展示会の現場に立つみなさまにはデザインの意図をしっかり理解して使っていただきたかったので、課題にどう向き合うかという「デザインの手前」の部分をしっかり伝えることを意識していました。

また、デザインに精通したおふたりがフロントに立っていただけていたことで、とても助けられましたね。マーケティングとクリエイティブは重なっているものなので、意思の疎通が取れていなければ十分にクリエイティブを機能させることはできませんから。

見せる情報を階層化するのは、展示会ならではのメッセージ設計でしたね。


ー 実際に完成したブースをご覧になってどのような印象を持たれましたか?

小西:公園のような開放感があって想像以上に入りやすいブースに仕上がっているなと思いましたね。他のブースと比較してオープンな雰囲気でしたし、展示会場内でもインパクトがありました。

福坂:これまで以上に、ブランドカラー・イメージを細かなところまで大切に落とし込んだブースデザインであるとともに、会場(=業界)と一体感を感じさせるようなオープンな設計で、他社とは異なる印象のブースになったかなと思います。

金森:人材マネジメントという新たなサービスを展開するにあたり、あくまで労務の延長線上にあるということを伝えたかったので、連動した見せ方をしたいと考えていました。こちらに関しても素晴らしいコピーを提案いただきました。

福坂:両者の関係性を考えると人事・労務サービスのキャッチコピーである「人事・労務を、ラクラクに」という言葉と地続きな表現がいいだろうなと。どういう言葉で繋いでいくかというのはデザイン上のポイントにもなると思いました。

小西:空間に沿った形で情報を階層化していくというのは展示会のブースならではの設計だと思いましたね。これはwebや映像の広告ではできない表現だなと感じました。

福坂:来場者の目線に立つと、空間の中で目に入るものは当然変化していきますよね。例えば遠くから見える言葉と、近くで見える言葉に変化をつけて、「このタイミングではこのフレーズ」というようにメッセージに深度をつけていきました。

金森:ブースのどこで何を伝えるべきかを導いてくれる設計ですよね。情報を削ぎ落として絞っていくためのガイドラインになったと思います。 

マテリアルの質感でSmartHR“らしさ”を表現したかったんです。


小西:ブース全体の造作も洗練された雰囲気でしたね。

福坂:ディテールでは“SmartHRらしさ”をより意識しました。SmartHRさんの普段からの丁寧な対応やコミュニケーションを表現するにあたって、質感の高さは重要でした。特に手に触れる素材にはこだわりましたね。

小西:ソファや展示の什器が特に質感が高く大好評でした。通常のブースではあまり使われないような素材も使用されていましたよね。

福坂:具体的にはメープル材を造作に使ったり、什器もインスタントなものではなく、長く使える家具のようなレベルの品質で制作しています。ディティールの積み重ねから全体のイメージを作り上げていきました。

山口:ご一緒する中で、御社の「色」へのこだわりを強く感じました。ブランドとして色に大きな役割を持たせていますよね。展示会ブースにおいて色にここまでこだわっている企業はあまりないのではないでしょうか。

金森:弊社では「SmartHR Design System」としてデザインのガイドラインを定めているのですが、カラーに関しても当然基準があります。特にブランドカラーである「SmartHR Blue」は大切にしていますね。

小西:「SmartHRといえばこの色」と認知していただいているので、「これだ!」と納得できるまで調整していきました。

今後も企業の成長速度と同じスピードで取り組んでいきたい。


山口:最後に、今回のプロジェクトを振り返って、改めて弊社へのフィードバックを頂けますでしょうか。

小西:私たちの思いを丁寧にすくい上げ、達成したいゴールに向かって真摯に取り組んで頂きました。

金森:今回はブースデザインだけでなく、コピーなど「言葉」まわりのデザインも依頼させていただきました。垣根を超えて展示会での魅せ方をもっと一緒に考えていけたらと思っています。

例えばテレビCMなど広告の世界では地域によって表現をチューニングしていますよね。展示会でもそういったローカリティのある表現を取り入れていくことは可能だろうか?なんて考えを巡らせています。

小西:オペレーションを含め、SmartHRという企業自体がものすごいスピードで変化しています。その都度大きなアップデートがあるので大変な部分もあるとは思いますが、ぜひ今後も同じ速度でやっていけたら嬉しいですね。

山口:そうですね。ITweekやHR EXPOなどの展示会の来場者は、ほとんどの方がSmartHRを知っています。それでもまだ未開拓地があるので、SmartHRさんと一緒にブルーオーシャンを探していきたいと思っています。

OVERVIEW

CLIENT株式会社SmartHR
PROJECT第10回 HR EXPO【春】
VENUE東京ビッグサイト

CREDIT

プロデューサー 山口 華歩
プランナー 福坂 済
プロダクト・マネジメント 山本 聖
制作 新宮 海生