
2025年4月18日〜20日の3日間、幕張メッセにて開催された「スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン2025」にて、博展は日本の音響機器メーカー・オーディオテクニカと『スター・ウォーズ』をモチーフにした製品を販売する展示ブースのデザインを担当しました。黒澤明などの日本映画や日本文化の影響を受けたシリーズとして知られている『スター・ウォーズ』の世界観を表現する上で、博展チームは「日本庭園」をモチーフとする展示ブースを提案。前編に続く本記事では、「茶室」をモチーフとする空間演出と、博展内で一気通貫して制作したデジタルコンテンツの制作プロセスについて振り返ります。
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Index

「茶室」モチーフの空間とブース全体の演出を連動させる体験デザイン
ー今回のプロジェクトでは、博展のデジタルインテグレーションチームが参加し、デジタルコンテンツを一気通貫で手がけています。具体的な制作内容について教えてください。
阿部(博展 プランナー):今回の製品の特徴についておうかがいした際に、オーディオテクニカを代表するヘッドホンの一つでもある、ウッドヘッドホンの高音質な音を、体験者にも集中して感じてもらいたいと考えました。
そこで、音に集中して体験してもらうために、茶室を模した空間を試聴空間として提案させていただきました。

森尾(博展 テクニカルディレクター):体験者が茶室内でヘッドホンをつけて視聴体験を始めると、周りのライトセーバーの色が青から赤に変わるようにしています。これは「アナキン・スカイウォーカー」が、「ダース・ベイダー」に闇堕ちすることを表現しています。
茶室の障子には、ヘッドホンを装着したシルエットのイラストを投影し、茶室内で起こっている体験もブース外の来場者にも伝わるようにしました。ヘッドホンを装着する姿を、「ダース・ベイダー」がヘルメットを被る姿に見立てることで、ブース全体の照明の切り替えの演出と連動させていました。

神岡(博展 プロデューサー):茶室のデザインには、劇中に登場する「ダース・ベイダー」の瞑想室の要素も取り入れているので、そのことに気づいてくれたファンの方もいらっしゃいましたね。
中村(オーディオテクニカ 商品企画担当):これはもう、100点のアイデアでしたね(笑)。商品企画目線のリクエストとしては、高級ヘッドホンに触れたことがない方に対して「こんないい音がするんだ」ということを感じていただける体験をお客様に提供したいという思いがあったんです。賑やかな会場の中で、しっかりと音にフォーカスできる空間をつくり出していただきました。


『スター・ウォーズ』ファンの心を掴む、デジタルコンテンツのUIデザイン
永山(オーディオテクニカ 商品企画担当):完全ワイヤレスイヤホンでは、起動音や、イヤホンの機能に付随した確認音の全てに、ルーカスフィルム公認の、劇中に使用した音声データをそのまま搭載しています。映画の感動をそのまま詰め込んだ製品にするため、ルーカスフィルムの膨大なデータベースの中から、キャラクターごとに異なった音声を時間をかけて選んでいます。多分マニアの方ならどのエピソードのどの場面の音なのかがわかると思うので、来場者の方々に音声ガイダンスを楽しんでいただけるコンテンツも博展さんにリクエストしました。

湯浅(オーディオテクニカ 宣伝PR担当):コンテンツで流す楽曲は、ファンの方々なら誰しも喜んでいただける、メインテーマや「ダース・ベイダー」のテーマといった楽曲はもちろん、今回制作した「グローグー」と「マンダロリアン」モデルのイヤホンに合わせた楽曲や、セレブレーションのゲストとして来日されている俳優の方々が出演されている作品の楽曲を使用させていただきました。

阿部:期間中に目標販売台数を達成するため、また効率よく多くの方に視聴体験をしていただけるように、一つのイヤホンで全キャラクターの音声ガイダンスが試せるデジタルコンテンツを提案しました。5台分しか視聴スペースを確保できなかったので、森尾には、一人ひとりの体験価値を高めるコンテンツのUIデザインをお願いしました。
森尾:キャラクターごとに用意されていた8種類の音声を、迷うことなく体験できる動線設計を考えていきました。体験者のほとんどが外国人の方なので、誰が体験しても目的の音声に辿り着けるUIデザインを意識しています。『スター・ウォーズ』のサントラが視聴できる画面では、アナログレコードのようなデザインにこだわると同時に、通常のミュージックプレーヤーに表示されるような要素をできるだけ削り、音楽の再生と、音量の調節だけができるシンプルなUIデザインを心がけました。



同じ熱量でひとつのものづくりに向き合うこと
ー最後に、今回のプロジェクトを振り返ってみていかがですか?
栗田:ウォルト・ディズニー・ジャパン社からは、セレブレーションの中でもこのブースが一番だとおっしゃっていただけたので、我々としても自信につながりました。なによりイベント期間中の売り上げ目標をクリアできたことが大きな成果だったと思います。
オーディオテクニカのブランドガイドラインを読み込み、しっかりと紐解いていただいた内容がアウトプットに昇華されているのがわかったので、博展さんの心強さを感じたプロジェクトでしたね。あらためて、今回ご一緒できてよかったなと感じています。
中村:スター・ウォーズ セレブレーション公式YouTubeチャンネルでも今回のブースを取り上げていただきました。贔屓目なしでも、これだけしっかりつくり込んだブースはほかになかったので、とにかく来場者の目を引いていたと思います。
何度も打ち合わせをする中で、製品や私たちのアナログに対する価値観についてとても勉強してくださっていることが伝わりましたし、われわれと同じ熱量で取り組んでくださっているのを感じました。コミュニケーションの面でもとても仕事がやりやすく、とにかく楽しく進めることができたことに感謝しています。

湯浅:ここまでブースのコンセプトを突き詰めた上で提案してくださる企業はなかなかないと思っていて、きっといいものができるに違いないと、打ち合わせの度に感じることができました。オーディオテクニカのロゴを掲示していたエリアでは、会期中記念撮影されるお客様がたくさんいらっしゃって、まだまだ海外の認知度が低いわれわれとしては、撮影スポットになるようなビジュアルをご提案いただけたことがありがたかったですね。また、ちゃんと製品を売らなくてはならない大事なイベントでしたが、ウォルト・ディズニー・ジャパン社からの評価はもちろん、お客様が楽しんで体験している様子を見ることができて、あらためて博展さんにお願いしてよかったなと感じています。

永山:私自身、『スター・ウォーズ』が大好きなので、最初のご提案からわくわく感がとまらないプロジェクトでした。プロダクトの魅力についても深く理解してくださいましたし、どうやってお客様にお届けするべきなのかを一緒に考えていただけたのが嬉しかったですね。こちらのこだわりが強いあまり、無理難題をいろいろと言ってしまったと思いますが、常に100%以上の解を返してくださるみなさんの姿勢が素晴らしかったと思います。
阿部:製品担当の方がこれだけ毎回ミーティングに参加してくださることはなかなかないですし、みなさんの熱量が伝わってくるプロジェクトでした。私たちも同じ熱量でお客様に製品を届けるにはどうすればいいのかを考えながら、ブランドをブースで表現することにチャレンジできたと思います。みなさんから適宜いただける率直なフィードバックやご意見、ご感想も、仕事のモチベーションにつながりました。
岡田:『スター・ウォーズ』という圧倒的なポジションを持つコンテンツと、オーディオテクニカのブランドをかけ合わせていくことの新鮮さを感じながらお仕事をさせていただきました。クリエイティブの提案において費用対効果が重視されることが多い中、ここまでデザインを突き詰めることができたのは、オーディオテクニカのみなさんの熱量があったからこそだと思います。深く入り込んでコンセプトワークをすることができたのは貴重な経験でしたし、いいものづくりのための話し合いができたプロジェクトでした。
森尾:同じ熱量を持って、同じベクトルに進んでいることが感じられるプロジェクトでしたね。やりたいと思うことをすべて詰め込むことができたと思いますし、詳細にいたるまで話し合いを詰めることができたことが、結果的にブースのクオリティにつながったのではないかと感じています。こういったプロジェクトはなかなかないので、参加できてよかったです。
神岡:いつかはディズニーに関連する案件をやってみたいというのが私の夢だったので、このプロジェクトに関われたことがなにより嬉しかったです。毎回の打ち合わせにて、製品に込めた思いや、どんなブースをつくりたいのかをしっかり言語化して伝えていただけたのがありがたかったですね。博展のプランナー、デザイナー、それからDIチームと制作チームのみんなが同じ気持ちでひとつのものをつくることができ、とても達成感が得られたプロジェクトでした。
現在、オーディオテクニカの他の部署の方々からもお声がけいただき、まさにこのメンバーで提案内容をまとめているところです。今回のプロジェクトを通じてオーディオテクニカさんのブランドへの理解を深めることができたからこそ、共通認識を持った上で話を進めることができているので、今後ご一緒させていただく際にも、今回の経験を活かしていきたいと思っています。
OVERVIEW
CLIENT | 株式会社オーディオテクニカ |
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PROJECT | スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン2025 |
VENUE | 幕張メッセ |
2025年4月18日〜20日の3日間、幕張メッセにて開催された「スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン2025」にて、博展は日本の音響機器メーカー・オーディオテクニカと『スター・ウォーズ』をモチーフにした製品を販売する展示ブースのデザインを担当しました。黒澤明などの日本映画や日本文化の影響を受けたシリーズとして知られている『スター・ウォーズ』の世界観を表現する上で、博展チームは「日本庭園」をモチーフとする展示ブースを提案。前編に続く本記事では、「茶室」をモチーフとする空間演出と、博展内で一気通貫して制作したデジタルコンテンツの制作プロセスについて振り返ります。 |