INTRODUCTION

LG Holdings Japan株式会社は2022年3月1日、
LG YOKOHAMA INNOVATION CENTER(神奈川県横浜市西区)の1階に体験型施設「YUMESAKI GALLERY」をオープン。大手電子機器メーカーのLGが持つ世界観や未来像をコンセプトに、体験者が各々の夢を具現化できるエンターテイメント空間です。博展は一部意匠設計から携わり実施設計、内装施工、デジタルコンテンツ企画制作まで担当しました。

メインテーマは「5つの島を巡る『世界・未来』の旅、私たちの夢を創造する・未来の希望を想像する ダイナミックなデジタル体験ギャラリー」。

「旅立ち・色彩・音楽・天文・時間」の5つの島に見立てたエリアが各々のテーマとメッセージを発し、様々なコンテンツを展開しています。

プロデューサーの相澤、PMの熊崎、加藤、デジタル作品のクリエイティブを担当した神野、渡辺がオープンに至るまでの道のりを語ります。

<左から、神野・渡辺・相澤・熊崎・加藤>

OUTLINE

LGの技術とビジョンを表現したデジタル体験ギャラリー

相澤:今回のYUMESAKI GALLELYは、施設が位置するみなとみらい地区の取り決めもあり、企業PRではなく、みなとみらいを訪れる人々の憩いの場として企画されました。展示空間を通じて参加者たちがテーマとなる世界や未来の旅を体験し、それを支えるLGのテクノロジーや世界観を感じられるような空間を設計しました。ショールームでもなく、企業ミュージアムでもない、ある意味新しい施設になったんじゃないかなと思います。

元々は実施設計と内装施工に関する業務のお話をいただいていたのですが、提案段階でのコミュニケーションにおいて僕達のスピード感や対応力を評価していただき、デジタルコンテンツを含めてご依頼を頂くことに。

デジタル担当を中心にこれだけのメンバーがチームを組んで取り組んだ案件は、博展としては初めてでした。

13のデジタルコンテンツを同時に制作するという大型案件にも関わらず、コロナ禍のためクライアントとのやりとりはフルリモートだったんです。そのため、製作にあたっては綿密なプロジェクトマネジメントが求められました。

PLANNING

走りながら企画を練り上げ、作り込んでいった

神野:もともと先方側でやりたいことや大まかなコンセプトはざっくりと決まっていましたが、中身は決まっていない状態だったのでコンテンツ設計からご提案しました。
オープンまで時間が限られていたので、メンバーそれぞれが担当のセクションを分担して、細部を詰めていきました。

13のコンテンツ一つひとつにたくさんの仕組みが入っているんです。
一般的なデジタルコンテンツに比べて中身のボリュームが大きく、ストーリーの設計も必要なので展示というよりゲームを作っている感覚でしたね。

渡辺:そうですね。例えば、エントランスを入って最初にある「旅立ちの島」では、国にまつわるクイズに答えながら世界を旅するコンテンツがあるんですが、地球の形をした大きなモニターと、それを取り囲むタッチパネルがついた什器があり、そこではタブレットでオリジナルの飛行船を作れるんです。その飛行船が中央モニターの地球を飛び回り、各国にまつわるクイズに正解するとステッカーがもらえるというストーリーになっているんです。

旅立ちの島(「Hidden Wonders」未知の探検、学び)

モニターとタブレットの連動だけでなく、飛行船のカスタマイズからクイズの内容、ステッカーのデザインまで考えるべきポイントは山ほどあったので、それを細部まで詰めるのに苦労しましたが、博展としては挑戦的な内容でしたね。

カスタマイズ性の高いコンテンツが多かったのですが、中でも最も自由度の高いコンテンツが色彩の島です。

色彩の島(「Blooming Studio」創造、美しさ)

色彩の島は世界各国の花やスイーツ、ランドーマークの絵柄の中から3つを選び、オリジナルの万華鏡画像を作るコンテンツです。3つのカテゴリにそれぞれ48種類の絵柄があり、さらに万華鏡の種類も選べます。それらを掛け合わせると無数の組み合わせになるので、自分だけの万華鏡画像を作ることができるんです。

色彩の島(「Blooming Studio」創造、美しさ)

渡辺:このコンテンツは最後にポストカードサイズの用紙にプリントアウトして持って帰ることができるんですが、小学生の来場者が「友だちに渡すんだ」と一生懸命つくってくれていたのは嬉しかったですね。

神野:絵柄の種類だけでなく、位置やサイズの調整もできるので結果として生成できる万華鏡が何千、何億通りにもなる。そのための素材集めも結構大変でしたね。(笑)

ストーリー設計という意味では天文の島のシアターもとても思い出深いコンテンツでした。

天文の島(「Sustainable Prologue」持続可能性、ユニヴァース)

天文の島はLGが考えるサステナブルな社会を表現したシアターコンテンツ。壁面のスクリーンだけではなく、足元にも投影されていて、そこに立つ人の動きに連動します。例えば、森のシーンであれば、ここを歩くと妖精がついてきたり、海のシーンであれば波紋が起きたり。小さいお子様も楽しみながら環境課題について学べます。

12分尺の映像で3つのクイズが出題されるのですが、その正答率に応じて天井の星座の光り方が変化したり、正面のスクリーンと足元のエフェクトが連動したりと、賑やかさが演出される仕組みをで完成させました。

このようにコンテンツの中身の仕組みを自分たちでつくりあげていったので、コンテンツ一つひとつへの思い入れが強いですね。

渡辺:また、今回自分のなかでも勉強になったことの一つに、本国と日本でのデザインの感覚の違いがあります。
日本の “かっこいい”と韓国の“かっこいい”が違ったり、「日本らしさ」の認識も異なりました。
例えば、「時間と空間をテクノロジーでつなぐ」というコンセプトの時間の島には未来の暮らしを疑似体験するコンテンツがあります。

時間の島(「Hi! Mirai!」コネクト、未来、希望)

渡辺:家のようなものが写っているタッチパネル式モニターでは、LGが考える未来の暮らしを3Dを交えた映像で表現しており、ドアをノックして次の空間やシーンへと展開するんですが、「未来感のある日本らしさ」の表現にとても苦労しましたね。
私たちは令和の日本を過ごしていますが、韓国側の「日本らしさ」が昔ながらの昭和の町並みに近いイメージを持っていたり、まだ誰も知らない「未来」のイメージをすり合わせなければならなかったり。今回は未来の空間をつくっているプロジェクトだったので、そこのすりあわせが大変でした。


熊崎:今までに経験のない仕組みを自分たちで考えるのは大変でした。
例えば、時間の島では「時間と空間をテクノロジーでつなぐ」という全体のコンセプトがあり、4つのコンテンツが組まれました。
まず、島の手前には、目の前に立つとデジタル時計が点灯し、時間と空間をつなぐというコンセプトを表現した映像が流れるインスタレーションがあるんですが、このデジタル時計も単純そうで複雑でした。

写真では真っ白の壁に見えますが、前に立つとそのときの時間が浮かびあがるんです。ただ時間を浮かびあがらせるだけに見えるんですが、そのときの時間を、前に立ったときに、周りの光にも邪魔されずに表示させなくてはならないので案外難しいんですよね。
この仕組みは自分で考えて納品したので特に思い入れがありますし、今回習得した技術はほかの案件でもどんどん活用できると思います。

渡辺:右奥の柔らかい光を発したインスタレーションは、「つなぐ未来」と名付けられたもので、カードに未来へのメッセージを書いて什器に差し込むと、メッセージがスキャンされて隣のモニターに映し出されます。例えば、メッセージが葉っぱに乗って流れてきたりします。

時間の島 「つなぐ未来」

家のようなものが写っているタッチパネル式モニターでは、LGが考える未来の暮らしを3Dを交えた映像で表現しており、ドアをノックして次の空間へ進んだりしながら未来の暮らしを疑似体験することができます。

熊崎:博展のなかで初めての挑戦だったと思ったのは、Kinetic Art Wallですね。これは会場中央の、旅立ちの島の地球のモニターの背面にある目玉コンテンツなんですが、55インチの16台のモニターが音楽と映像と連動して動き、未来への希望のメッセージを伝えていくというものです。

Kinetic Art Wall

最初にクライアントから、「モニターを左右に動かしたい」という依頼をいただきました。
これまでモニターを動かす事例は無かったなかで、製作チーム、DIYチームと連携してなんとか成功に至りました。
もちろん簡単に成功したわけではなく、何度も仮組みをおこないましたよ。どうやったらモニターを動かすことができるか?それも、社内のスタジオがあったおかげですね。細かい調整をすぐにできたことが成功への鍵です。

これは大きな挑戦だったので、大きな自信がつきましたし、今後も同じようなチャレンジに踏み出せる気持ちです。

神野:そうですね。左右に稼働するモニターだけでなく、その動きに合わせて映し出される映像も博展が制作しています。技術的にもチャレンジングなコンテンツとなりました。

加藤:制作期間は一年弱。コンテンツのボリュームを考えるとかなりタイトで「走りながら考える」という感じでしたね。内装への落とし込みができているところや、部分的に作り込めるところを熊崎さんと私が進め、デジタルチーム(神野、渡辺)の進行と連動しながら対応していったことで、なんとかオープンに間に合わせることができました。

熊崎:コンテンツがかなり多かったので、それぞれがどんな作業をしていたのかを詳細には聞いていなかったのですが、納品後にこうして振り返ってみて「そんな仕組みになっていたんだ」と驚かされることもありましたね(笑)。

KEY FACTOR

フルリモートのなか、密なコミュニケーションで信頼を獲得

相澤:プロジェクト進行中はちょうどコロナ禍だったため、クライアントと一度も対面することなく、最初から最後までリモートでのやり取りで納品まで漕ぎ着けました。制作そのものはもちろん、海外クライアントとフルリモートで制作するというのも大きなチャレンジでしたね。

神野:体験型のプロジェクトにもかかわらず、クライントはそれぞれのコンテンツを実際に体験することができない。ZOOMの画面共有と動画で全て伝えなくてはならず、その点は苦戦しましたね。現場に来れないクライアントに安心してもらうため、開発者としてフィジビリティを確認し伝えることを重視していました。

熊崎:制作の様子を逐一オンライン会議でレポートし、コミュニケーションのスピード感を落とさないようには気を配っていましたね。

実制作が始まってからはクライアントとは毎日必ず1時間の定例MTGを行っていました。合理的に考えると、毎日やる必要はなかったかもしれない。けれども、距離が離れている中で円滑にコミュニケーションをするためには必要なことだったと思います。

相澤:現場の什器などは日々進捗があって形としての成果をお見せすることができる一方で、デジタル領域の開発や調整は一週間ほど作業しても進展が見えづらかったのですが、日々のやり取りで信頼していただけました。クライアント担当者とはじめてお会いしたのは施設のオープン後だったのですが、クオリティにも満足いただけたようで、泣いて喜んでくれました。また、とてもありがたいことにLGさんから感謝状もいただき、僕らとしても大変光栄です。

NEXT TRY

複数のデジタルコンテンツを実現した経験を今後に活かしたい

渡辺:フルリモートであってもここまでのものが作れたことは自信になりましたね。「リアルな体験」を提供する私たちの仕事はコロナ禍では逆境に置かれてしまうこととなりましたが、厳しい環境下であっても、制作環境に依存せずに仕事のクオリティを高めていくことができる。それは今後の糧になるはずです。

相澤:そうですね。そもそも博展としてもこれだけの規模の空間の内装工事を請け負いながら、13のインタラクティブなデジタルコンテンツを制作したのは初の試みでした。それに加えて、フルリモート、一年という短期間。こうしたプロジェクトを進行すること自体がチャレンジでした。

今日この場にいるメンバーに限らず、約20名の社員が協力して納品まで走り切れたこと、そして無事にオープンを迎えられたこと自体が大きな成果です。これを今後の案件にも活かしていけたらと思います。




【プロフィール】

相澤俊輔
2020年博展に中途入社。前職は内装会社で店舗、オフィス、クリニック等の常設案件に携わる。現在は、常設を中心にディレクター業務を担当。マイブームは観葉植物。最近買った「リュウビンタイ」がお気に入り。

神野祐介 
2019年博展に入社。テクニカルディレクターとして、インタラクティブコンテンツや、センシングをトリガーにした空間演出制御など、デジタルにまつわる企画立案やシステム開発の進行管理を担当。最近の趣味は読書、恩田陸が好き。

熊崎耕平​
プロダクトマネジメント部チーフディレクター
1981年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。(株)博展に入社後、製作部勤務を経てプロダクトマネジメント部に所属。イベント施工、インスタレーション制作、店舗什器製作などのプロジェクトに携わる。デジタル手法を用いた表現から自然素材を使ったプロダクト制作まで多岐にわたりものづくりに取り組む。趣味は裏街歩きと流木と石を集めること。

加藤大貴
2013年に中途入社。前職は店舗内装の仕事をしていました。現在は商環境のPMとして常設案件を担当。好きな歴史上の人物はビンス・カーター。最近は「カタン」というボードゲームにハマり子供と一緒に遊んでいる。

渡辺実莉
2021年博展に入社。展示会や常設空間におけるデジタルコンテンツの企画立案、システム開発の進行管理など担当。趣味は映画鑑賞。最近良かった作品は「ドライブ・マイ・カー」。

OVERVIEW

CLIENTLG Holdings Japan株式会社
PROJECTYUMESAKI GALLERY
VENUELG YOKOHAMA INNOVATION CENTER
LOCATION〒220-0011 神奈川県横浜市西区高島1丁目2-13 LG YOKOHAMA INNOVATION CENTER 1F
WEBhttps://yumesaki-g.com/

CREDIT

プロデューサー 相澤俊輔 / 三澤幸由 / 小野寺悠太
プロダクトマネジメント 熊崎耕平​ / 加藤大貴 / 助成健二
制作 宮嶋聡
デジタルチーム Kim Taeyeon / 石田将也 / 古田克 / 加藤亮 / 繁田大輝 / 佐藤恭子 / 石川空 / 石曽根奏子 / 神野祐介 / 臼井奎太 / 三谷悠人 / 渡辺実莉 / 藤本遼太郎