2022年2月に開催されたサステナブル・ブランド国際会議 2022 横浜に、Z世代を中心とした博展社員で構成されるサステナビリティ・アンバサダー9名が参加し、3回にわたってセッションをレポートする企画の第2弾です。
 今、世の中で起きている様々な出来事を通して、少しずつ浸透しつつある「サステナビリティ」や「ダイバーシティ」という考え方。これは今後私たちが企業やコミュニティのあり方を語る上でも欠かせないものとなりました。
 Vol.01の「ビジネスと環境問題編」に続いて、Vol.02は「社会課題編」。今回は「#D&I」、「#SX」、「#まちづくり」というキーワードに着目し、3つのセッションをレポートします!

「サステナブル・ブランド国際会議 2022 横浜(SB2022横浜) 」とは


 世界的なサステナビリティの潮流や取り組みを共有し、各業界の最前線で活躍する企業と情報交換できる日本最大規模のサステナビリティに関するコミュニティイベントです。
 米SLM社(サステナブル・ライフ・メディア社)が展開する国際会議で12カ国で開催(2020 年度)され、来場者数はグローバルで1.3 万人を超える規模となっています。
 国内では2017年から博展が展開し、第6回目となる今回は2022年2月24日~25日に、パシフィコ横浜ノースで開催し、その様子をオンラインでも同時に配信。
 地球や社会をより健全でレジリエント(回復力のある)にするためのカギとなる『REGENERATION(リジェネレーション=再生)』をテーマに、200名を超えるスピーカー、のべ4,500人を超える参加者が集まり、ビジネスを変革し企業ブランドを再構築することで、地球上に住む人たちが豊かになる環境や社会、経済をどうつくり出すことができるかを共に探求しました。

▼ライター紹介

橋本
2019年新卒入社の4年目。toC顧客企業の営業を担当。
趣味はサステナブル素材でハンドメイドをすること。普段からサステナビリティに関心を持つ。

池端
2018年新卒入社の5年目。制作部に所属。
主にイベントの基礎施工や個展などの案件を担当。サスティナビリティ・アンバサダーを経験して、「つくる責任・つかう責任」について考えるように。

藤原
2019年新卒入社の4年目。UNIT1のデザイナー。
サステナビリティ・アンバサダーの活動で、モノの見方が変わっていくのを日々楽しんでいる。

目次
・「ジェンダー平等を加速する真の女性活躍推進とは」

「サステナビリティ ・トランスフォーメーション(SX)は組織・社会をどう活性化するのか?」
「地球、人、文化が再生するまちのデザイン 〜自然と人との関係性から変革を生み出すリーダーたち〜」
まとめ

#1「ジェンダー平等を加速する真の女性活躍推進とは」

レポーター:橋本

 サステナブル・ブランド国際会議 D&Iプロデューサー/(株)グロウスカンパニー 山岡氏をファシリテーターに、豊島(株) 大沢氏、(株)コーセー 小椋氏、公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ 小林氏が登壇。「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の真の目的」をテーマに、D&Iがなぜ重要でどんな効果を生み出したかを具体的な事例と交えて話されていました。

<セッションサマリー>
(1)豊島の大沢氏「女性社員が立ち上げたフェムテック商品のプロジェクト」
(2)コーセーの小椋氏は「女性活躍が推進している会社の体制強化」
(3)日本女子プロサッカーリーグ 小林氏「女子サッカーを盛り上げ、そして女性の活躍促進」

 共通して語られたのは、最近よく耳にする「日本のジェンダーギャップ指数 121位(156か国中)の課題」、「アンコンシャス・バイアスの問題」など、ジェンダーの垣根を取り払うべく、女性のエンパワーメントを促進していることでした。
 大沢氏は、繊維商社である豊島がオーガニックコットン普及プロジェクトprojectとして女性社員が中心となって立ち上げた「Hogara」について発表。プロジェクトのきっかけは、海外出張に行った女性社員が、現地での長距離移動の際に生理中で困った経験から、吸水のサニタリーショーツを制作したこと。このプロジェクトをきっかけに、男性社員の生理への理解も深まり、社員社内のエンゲージメントも高まったそうです。
 小椋氏からは、コーセーはもともと男性社員が多い会社だったが「自社の成長のためには女性の活躍が必須」ということを掲げ、ステップ1では「制度の設計」、ステップ2では「風土の改革」に取り組まれたと話されました。
 具体的には、在宅ワークやマネージャー層への研修、モチベーションアップの研修という内部的な変革とともに、外部にも積極的に発信していくことで、循環が生まれ、企業成長にも繋がったとのことでした。
 小林氏は、スポーツ業界では選手は男女半々になってきているものの、指導者の75%が男性であるという課題について言及。その状況を変えて女子サッカーを盛り上げるために、ジャンダーに関する課題ブックの作成や、クラブ役員の50%は女性にする、託児所をつくるなどの取り組みが紹介されました。

<ライターの感想>

「無理にでもまずはルールをつくらないと女性の比率は変わらない」という小林氏のお話には、はっとしました。
 もちろん、女性活躍推進の本来の目的は昇進することではありませんが、重要なのはルールを作らない限り女性の道は深刻なままであるいうことです。
 誰もがジェンダーに限らず、自然と平等に評価されたいと思っているはずです。いま、私たちは「無理にでも」変えなければならない状況にあるのだと、今回のセッションを通して改めて実感しました。
 WEリーグの選手たちが、ガラスの天井に見立てたガラスをサッカーボールで割っていく動画は胸に刺さるものがありました。
Yogibo WEリーグ 優勝トロフィー「ガラスの天井」を壊す WE LEAGUE trophy breaking “Glass ceiling”
この問題は私ひとりでは解決できません。目では見えないガラスの天井に気づけたことが第一歩だと考え、皆で協力し合いながら女性活躍を促進していければと思います。

#2「サステナビリティ ・トランスフォーメーション(SX)は組織・社会をどう活性化するのか?」

レポーター:池端

関東学院大学学長・経営学部教授 小山氏をファシリテーターに、KTMGコンサルティング 足立氏、フィリップ・モリス・ジャパン合同株式会社 濱中氏、富士通(株) 森川氏、(株)大川印刷 大川氏が登壇。人材・組織の変革という軸でこれから先の持続可能な会社のあり方について考えていきました。

<セッションサマリー>

テーマは「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」(=サステナビリティの観点からイノベーションを起こすこと)です。
 現在、日本の企業は低成長で伸び悩んでいます。それを打開するには、広い意味でのリーダー育成や、既存の人材や風土も変化を受け入れ、イノベーションを起こす土台をつくる必要があります。その意味でSXの概念は、『やらなければいけないもの』以前に、会社のあり方を考える大きなきっかけになるものです。
 議論のキーワードは【PURPOSE】(=事業の継続と社会における存在意義の関連性を説明する文書)。

(1)自分たちの商材を見直していくことは、自分たちの存在意義を問い直していくこと

 世界最大のたばこ製造メーカーであるフィリップ・モリス・ジャパンは、2020年3月に「紙巻たばこからの撤退」を宣言しました。
 紙巻たばこのない社会の実現には、規制当局の適切な後押し・市民社会の理解が不可欠です。2016年から事業変革の指標を発表し、煙の出ない製品の開発にどのように資源を配分しているか、どの程度促進しているかを公開しました。日本では加熱式たばこ(IQOS)を2016年にリリース、徐々にそのシェアを伸ばしているそうです。
 喫煙の問題はいまや社会課題の一つであり、決して一社でだけで解決できるものではありませんが、製造会社の自分たちが担える役割があるからこそ、様々な障壁を超えて知恵を絞って会社として取り組めるはずと語られました。

(2)とにかくイノベーションにつながる取り組み

富士通の森川氏は、多様な価値観を受け入れ、サステナビリティの方向に前進させることを目的に事業ブランド『Fujitsu UVANCE(Universal+Avanace)』の一環として、PURPOSE CARVING(=PURPOSEを個人で言語化する取り組み)を社内で開始。
 具体的には、個人のPURPOSEを言語化し、社内システムに登録、それが近い人を検索してマッチングすることができるシステムです。これを通して、実際にお酒好き同志が集まり、様々な意見を出し合い、クライアントの酒造メーカーにアプローチする、といった事例があったそうです。
 PURPOSEを共有し、それを楽しい方向へと活用することで、イノベーションを起こしていくきっかけにつながると話されていました。

(3)『浸透』させるのではなく、『共感』『共有』が大事

 明治14年から続く印刷会社を経営する大川氏曰く、サステナビリティは『浸透』させるのではなく、『共感』『共有』が大事、とのことです。

 大川印刷では「自分たちは何のために誰のために働いているのか」を見直すワークショップを毎年開催し、個人の持っている「働く意味」を会社と共有する取り組みをしているそうです。やってみると当たり前ですが、個人の課題はそれぞれ違っていました。それをPURPOSEに落とし込んだときに、どう企業としてすり合わせて取り組んでいけるのか、ということが重要だと実感したそうです。
 また、定期的にサルベージパーティ(=家で持てあましている食材をみんなで持ち寄り、料理をつくりみんなでシェアする)を始めました。ポイントはパーティ前に世界の飢餓の問題や食品ロスの講義を受け、理解を深めたところで行うことです。最初は皆面倒くさいと思っていながらやっていましたが、徐々に主体的に取り組むように変わってきたそうです。
 『環境にやさしい』という抽象的なものではなく『環境に正しい』そして『楽しい』へ変えていきたい、ということが印象的でした。

<ライターの感想>

 まず初めに僕が感じたのは『SX』という聞き馴染みのない難しそうな題材が、最終的に個人や一人ひとりの主体性・熱量の話に帰着した点です。
 サステナビリティの取り組みは持続可能な社会を形成するものであって、安易な手段ではありません。それが事業を見直して方向転換したり、会社の中でシステムを形成したり、ワークショップを開いたり、大きなことから身近なことまで、あらゆることにつながっているのだと実感しました。
 後半のディスカッションでは、どの企業の方も『多様性』が大事とおっしゃられていたことが印象的でした。富士通の森川氏曰く「多様性のある組織はある意味で非効率かもしれないが、多様性のある人たちが集まって様々な意見がでることがイノベーションにつながる。だからチーム構成もできるだけ多様性を重視している。」とのことでした。
 「多様性」は、この先企業が100年、200年続くことへつながる一つのキーワードなのかもしれません。

#3「地球、人、文化が再生するまちのデザイン 〜自然と人との関係性から変革を生み出すリーダーたち〜」 

レポーター:藤原

 今年のSBの全体テーマにもなっている「REGENERATION(リジェネレーション=再生)」。
 循環・再生型社会に向けて私たちの経済活動と地球環境への影響を再設計するには何が鍵になるのかという議題をもとに、(株) SYSTEMIC CHANGE 東氏をファシリテーターに、(株)竹中工務店 高浜氏、(株)fog 大山氏、(株)ソウワ・ディライト 渡邉氏の3人が登壇。
 ”まち”や”地域”のリジェネレーションに取り組む、リジェネラティブ・リーダーとして、地球、人、文化が再生するまちのデザインについて語り合いました。
 一方的な活動事例のプレゼンというスタイルではなく、3人の登壇者が自由に会話を交わし、それぞれが日々大切にされているキーワードにフォーカスしながら「REGENERATION(リジェネレーション=再生)」を紐解いていきました。

<セミナーサマリー>
そもそも、「リジェネレーション(=再生)」という言葉を、ちゃんと理解できているのか?
単なるバズワードで終わらせずに、改めて意味を考える。

リジェネレーション(Regeneration)は、「再生」「繰り返し生み出す」といった意味を持つ言葉です。人口増加に伴う地球資源の枯渇や、気候変動といった危機に直面する中、このままの環境を維持する、という意味での「持続可能」では地球資源の枯渇に間に合わないとして、環境を良い状態に「再生」する概念として生まれました。
 サステナビリティは、自然を持続可能な形で管理・開発していくという発想に基づいており、そこには「人間と自然を分ける」前提があります。一方のリジェネレーションは、人間の活動を通じて環境を破壊し、社会に分断を生むのではなく、環境を再生し、コミュニティを再生していくという概念です。人間を「自然の一部」として捉え、システムの内側から共に繁栄できるよう働きかけていく点が、サステナビリティとは対照的になっています。

コミュニティを介して物事を「リジェネレイト」していくには?

「精神的・物理的分断を減らしていくことが再生への糸口なのではないか」

 竹中工務店の高浜氏と奈良井宿のプロジェクトは、森林とまちをつなぎ、私たちの社会生活に森を取り込む、「森林グランドサイクル」の創出のもとに行われています。
 元々、奈良井宿は、たくさんの自然に囲まれているにもかかわらず、近くにある木を使うシステムが整っておらず、地域の建築には遠い地域の高価な木材が使われてしまっていました。
 リジェネレーション(Regeneration)の概念には、こういった地域の「人間と自然の分断」をなくしていこうという意図が含まれます。近くにある木材を利用するために、木材を製材する環境を整える。そうすることで森林とまちをつなぎ、森林資源の循環と木材を活用した地域経済の循環が構築されていきます。
 また、fogの大山氏は「15 minutes city」というキーワードをあげています。
 「15 minutes city」とは、「電車に乗らなければいけない範囲で生活を作るのではなく、徒歩15分圏内で完結する生活を作る」ということ。例えば、国外から輸入しなければならないアボカドを、近くの農園で作ってそれを食べてみる、など。
 こういった活動を積極的に行うことで、まずは電車や自動車の利用量が減少するので、環境負荷が少なくなります。そして私たち自身の意識は、遠くの物事から近くの物事にシフトしていき、それによって新たなコミュニティが生まれていく。
 インターネットやさまざまな交通網が発展してマクロになってしまった私たちの意識を、今一度ミクロな場所に戻すことが、周りとの繋がりを生み、循環を作り出すという考え方はとても新鮮でした。

コミュニティの中で人と人との関係はどうあるべきか。

「街の人たち(=内部)と、自分(外部の人間)との関係性」
 古い街は売らない、貸さない、渡さないという意識があり、高浜氏は奈良井宿プロジェクトが始まった当初、街になかなか入り込むことができず、縮まらない地元の人々との関係性に悩んだそうです。これもいわば「分断」。高浜氏の場合は、納品を重ねるたびに街の中に外との繋がりを考える場所が自然にできていき、街の人の意識の変化が見られたそう。自分の所属や役割で関係性を分断するのではなく、その環境に思いっきり入り込むことが「リジェネレイト」するためのヒントになるかもしれません。


「リーダーって必要なのか?リーダーとリーダーシップの違い」


 大山氏は、コミュニティの中に”リーダー”は必要ないのではないかと思っているそうです。
 ”リーダー”がいることで、”リーダー”と”その他”、という関係ができてしまい、アクションに様々な制限が出てきてしまいます。リーダーができるのは自分の存在を消すことで、それによってみんなの目線が合う。みんなが率先して動けば、文字通りみんながリーダーになりうる、という大山さんの言葉は、これからの時代のチームのあり方を物語っていました。
「会社じゃなくて部族だから」

 渡邉氏のこの言葉は、自身の会社のあり方を社員の方に語ったときのものです。
 「会社」というと、システムが整っていて画一的な印象を受けますが、「部族」というと、ガラパゴス島のように、独自の発展を遂げているような印象を受けます。
 型にはまらずに、その人自身だからできること、そのコミュニティだからできることを生み出していこうという意思が、ソウワ・ディライトのユニークな事業を生み出していることが分かります。

<ライターの感想>

このセッションでの一番の気づきは、「再生」を目指すためには「繋がり」が不可欠だということ。
 自分と人々、人間と自然や生物たちの間に明確な線引きをせず、互いにつながって生きているのだという認識を持つことは、サステナブル、リジェネラティブな生活や社会を目指していくための大きな軸になると感じました。

#4まとめ


 富士通が取り組んでいるPURPOSE CARVING(=PURPOSEを個人で言語化する取り組み)は、他の企業でも多く行われており、一人ひとりがPURPOSEを言語化している点が興味深く感じました。
 また、お互いのコミュニケーションを活性化させることが、PURPOSEのテーマとも、リジェネレーションのテーマとも重なりました。
 自社の活動に繋げるとしたら、私たちがいま行っているサステナビリティ・アンバサダー活動も、新しいコミュニケーションのあり方にも貢献しているのかもしれません。例えば、現在社内のごみ分別方法を見直し、ごみ箱のリニューアルも活動の一環として進めていますが、そのような身近なごみの分別というミクロな点に目を向けると、事業としてのイベントのごみ問題にも意識が高まってくると感じています。
 今回、SB国際会議にサステナビリティ・アンバサダーとして初めて参加してみて、セッションはどれも有意義で、興味を注がれるものが多かったと思います。最も良かったのは、気軽にSDGsなどについて話し合える環境があり、色々な人たちと意見交換をすることができたことです。
 また、サステナビリティに関しては深刻な問題でありつつ、身近な話だと実感しました。アンバサダーとして1年間活動してきて、自分事化することができたので、これからは更に行動に繋げていきたいと思っています。

>>次回は最終回。「ステークホルダーとの共感・共創が次の世代をつくる ーSB2022横浜 サステナビリティ・アンバサダー 現地レポート Vol.3 コミュニケーション・マーケティング編ー」をお送りします!