INTRODUCTION

2022年7月から東京都江東区にある「パナソニックセンター東京」で開催した「Shareing the Passion」をテーマとした展示において、博展は体験と空間のデザイン、および展示物の実施製作を担当しました。

パナソニックのものづくりの歴史と、商品一つ一つに込められた作り手の想いに触れられる展示会は、来場者からもクライアントからも好評をいただきました。また、本プロジェクトで製作した360°映像体験ができる什器「immersion」は、新たな映像体験を生み出すプロダクトとして評価をいただき、共創プロジェクトとして今後も提案を実施。博展としても初めての事例となりました。

今回は、プロデューサーの蛭川、デザイナーの高橋、そして製作を担当したディレクターの樋口、PMの渡邉が、挑戦の連続だったプロジェクトの裏側について語ります。

蛭川 加奈子
2018年入社。外資系ラグジュアリーブランドや化粧品ブランドのプロモーションを経て、ショールームなどの常設の内装案件を担当。「最後までやり遂げること」との両親の教えから、ライブのバックダンサーや、書道では雅号(天花)を受けるなど、動と静、どちらも手にしたガッツが取柄。

高橋 匠
2010年入社。体験を中心とした空間デザインに従事し、近年アーティストとして空間から領域を広げて活動。主な賞歴:SDA AWARD 大賞・経済産業大臣賞,日本空間デザイン賞 金賞,iF Design Award (独) 金賞,Architecture MasterPrize(米) Best of Best,Frame Awards(蘭) Best Use of Light。

樋口 拓史
1992年博展に入社後、制作一筋で造作の制作から現場施工・管理を担当。展示会イベントや常設・半常設案件にも携わる。最近は、大型物件を受けた時は気合を入れる意味で少し高級な物を購入するのがルーティン。実は新しいガジェットがとても好き。

渡邉 芳博
2018年博展に入社。前職は内装会社にてリゾート開発のコテージの新築やマンションの大規模修繕工事を主に携わる。博展では商環境のPMとして、主に常設案件の企業ミュージアムやオフィス、店舗、モニュメントの施工管理を担当。山形県出身、スノーボードが趣味で冬休みは雪山で過ごす。

OUTLINE

パナソニックの挑戦の軌跡と最新技術を、若い世代へ発信する展示会

蛭川:テクノロジーを使ったクリエイティブを多く手がける、パノラマティクスさんからお声がけいただいたことが、このプロジェクトのきっかけでした。

「パナソニックのものづくりに対するパッションを、もっと世の中に広められる場を作りたい」というクライアントの想いを具現化するために、博展では展示の設計から、空間デザイン、什器のデザインと施工を担当しています。

高橋:パナソニックはこれまで、生活者に寄り添う様々な商品を開発してきた歴史があります。その歴史を形にすることで、同社のパッションがダイレクトに伝わるのではないか。パノラマティクスさんのそうした考えを下敷きに、展示テーマである“Sharing the Passion” をデザインに落とし込んでいきました。

また、「Share your passion」の展示はHistoryで感じた来場者の方のパッションを可視化してもらうための仕掛けとなっています。


高橋:展示の流れとしては、まず一階の “History”でパナソニックの歴史を知ってもらい、その次に奥の “immersion”でパナソニックの今を知ることができるといった構成になっています。

“History”では、時代の転機となったパナソニックの商品を展示し、それぞれの展示台にスピーカーを設置。洗濯機が回る音やラジオの音など、様々な商品の音をオーケストレーションすることで、一つの音楽として聞こえる空間になっています。

また、商品に込められた想いをキャッチコピー化し、それも一緒に展示しました。

“immersion”では、VRのような装置を介さないので、直接視界いっぱいに飛び込んでくるような新しい体験ができます。空間や什器の動作が「体験してみたい」と感じるトリガーに繋がるように工夫しました。

蛭川:什器はimmersion1200/1500/1800の3種類を製作しており、数字はそれぞれの什器の直径を表しています。immersion1800では“Beautiful Japan”をコンセプトに日本の四季とスポーツ選手の映像を織り交ぜた映像で彼らのパッションを伝える映像に。immersion1500では“Power of Connect”をコンセプトとした抽象的な映像を通して“つながる”ことで新たな力が生まれるという可能性を表現した作品。そして、immersion1200はPanasonicの語源にもなっている「sonic= 音」を用いて、“Passion”というテーマを表現しており、時代の流れとともに各年代を彩ったサウンドを高音質で体験できる什器になっています。

蛭川:また展示会場の奥には、展示を通して感じたことをシェアできるメッセージボードを設置しました。コロナ禍でなかなか人が集まれない状況でしたが、来場者の思いが可視化されたことによって、そこにはいない人々の存在も感じられる空間を演出しました。


蛭川:「Panasonicの歴史に改めて驚きました」「360°の映像と音の臨場感がすごかった」「技術の進化を体験できた」などメッセージボードには私たちが想像していたよりも多くの方から声を寄せていただきました。

高橋:ここではコンテンツを見るという「受動」の体験だけでなく、感情を共有する「能動」の体験を組み込むことで、シェアする側になる意味を感じてもらいたいと考えていたので、こうしたコメントは非常に嬉しかったですね。

DESIGN

博展ならではの技術と経験値を生かし、難易度の高いデザインを実現

高橋: このプロジェクトの一番の難題は、やはり360°映像体験の什器の製作でした。近未来的な筒状のデザインで、浮遊感のある見え方になるよう設計していていたため、天井から吊り下げたり扉をスライド式にしたりと、実製作では苦戦の連続でした。

外からは什器の中にいる人の足元が見え、扉が閉まると接合面が際立って光る仕様になっています。また人が体験している時の佇まいが美しく見えるように、足の見える高さや全体のバランスを細かく調整していきました。誰かが什器に入っていくところを他の来場者さんが見たときに「自分もやってみたい!」と思ってもらえるような、意匠的なデザインを心がけました。

immersionに関しては、他のプロジェクトで関わっている空間デザインとは違って、プロダクトデザインに近かったので、そこの意識をいつもと変えて取り組みました。

渡邉:吊り下げられる重さに抑えるために、本来なら金物のところを、今回は木材を使っています。他にも、体験中に気が散らないよう左右の扉をしっかり密着させるなど、端々に細かな工夫を凝らしました。

樋口: 製作の現場では設計図通りにいかないことも少なくないのですが、今回は特に実現が難しいデザインでしたね。図面上で考えてばかりいても机上の空論になってしまうので、すぐに作業場にこもって構造の検証を繰り返し、自社製作スタジオであるT-BASEにてモックを完成させました。

また、木製で複雑な構造の什器のため、組み上げた際にどうしても誤差による歪みができてしまうのですが、この点は展示会の装飾で培った加工技術によって実現できました。また、一般的には困難な木工の三次元曲面加工など、博展の技術力が発揮できた造作だったと思います。

高橋:正直なところ実現できるかどうか最後まで不安がありましたが、デザインを受け取るやいなや樋口さんが「やってみるよ」と引き受けてくれたのが本当に心強かったです。

数ある制約の中でスピーディーに、理想のデザインを実現できたのは、展示会を多く手がけてきた経験があったからだと思います。

KEY FACTOR

360°映像体験は、今後共創プロジェクトとして提案へ

蛭川:コロナ禍では、展示物に触ることすらもネガティブなものとして捉えられてしまう風潮があります。しかし、今回の展示はパノラマティクスの斎藤さんがおっしゃられていたように「テクノロジーは人を遠ざけるものではなく近づけるもの」だということを改めて感じられる機会になったと思います。展示は来場者さんからとても好評で、クライアントも新しい取り組みができたことを喜んでくださりました。

映像のプロフェッショナルであるパナソニック、そして体験を提供する弊社の共創によって世の中にプロダクトとして提案できるものが生まれたのは感慨深いですね。

高橋:アミューズメントパークやポップアップショップなど、あらゆる場所で活躍できると思います。大人数で集まりにくい今の時代でも、この什器なら没入空間の中で一人でコンテンツを体験できるので、公共の場にも導入しやすいです。誰にとっても新しい360°映像を、これからもたくさんの人に体験してもらいたいです。

※2022年2月4日よりスタートした企画展『TOUCH』にて初披露された

NEXT TRY

博展ならではの強みを生かし、新たな挑戦へ

蛭川:パナソニックの商品と弊社の技術、それぞれの強みと “Passion”が詰まった展示会になりました。パナソニックのものづくりへの想いに弊社メンバーも突き動かされ、その想いに応えようと、こちらも良い提案で返すことができたと思います。

実はコロナの影響で、展示会の開催自体が危ぶまれた時期があったのですが「多くの人のパッションが詰まっているのに、やらないわけにはいかない」と、クライアントから開催を決断してくださいました。

開催後はお客さんからの反響が良かったのはもちろん、担当者さんの喜ぶ顔が見られたのも嬉しかったですね。

高橋:今回は、地道にものづくりを続けてきた歴史を持つ博展の強みを、十分に発揮できたプロジェクトだったと思います。このチームならどんな新しい取り組みでも乗り越えていけると思うので、これからも挑戦を続けていきたいです。

OVERVIEW

CLIENTパナソニックオペレーショナルエクセレンス社 パナソニックセンター東京
VENUEパナソニックセンター東京
LOCATION〒135-0063 東京都江東区有明3丁目5−1

CREDIT

プロデューサー 蛭川 加奈子
空間デザイナー 高橋 匠
製作 樋口 拓史
プロダクトマネジメント 渡邉 芳博