イベントや展示会の開催後に大量の廃棄物が発生する問題は、BtoB領域でも見過ごせない課題になっています。ブースの装飾材、配布物、什器など、一度きりで廃棄される資源は少なくありません。こうした背景から、「資源循環型イベント」という考え方が注目されています。

資源循環型イベントの実践は、単なる環境配慮にとどまらず、企業のブランド価値向上やコスト最適化にもつながります。

本記事では、資源循環型イベントの基本的な考え方から、企画・設計・実施・終了後までの実践手順、押さえるべきポイントや注意点を体系的に解説します。

Index

■資源循環型イベントとは何か
■資源循環型イベントを実践する全体手順
■資源循環型イベントの企画・設計段階で押さえるポイント
■資源循環型イベントを行う上での注意点
■まとめ

■資源循環型イベントとは何か

資源循環型イベントとは、イベントで使用する資材や素材を「使い捨て」で終わらせず、再利用・再資源化を前提に設計・運営するイベントのことです。まず、その考え方を正しく理解するために、従来型イベントとの違いや関連する概念との関係を整理します。

従来型イベントとの違い

従来型のイベントでは、開催のたびに新しいブース装飾や什器を制作し、終了後にそのほとんどを廃棄するのが一般的でした。展示会のブース施工を例にとると、木材を加工して作るオーダーメイドの壁面や什器が、数日間の使用で処分されるケースは珍しくありません。

資源循環型イベントでは、企画の初期段階から「終了後に素材がどうなるか」を設計に組み込む点が、従来型との本質的な違いです。具体的には、分解・再利用が可能な構造設計を採用したり、リサイクル素材を選定したりします。

両者の違いを整理すると、以下のようになります。

比較項目従来型イベント資源循環型イベント
資材の設計方針1回限りの使用を前提再利用・再資源化を前提
調達方法新規のバージン素材を調達できるだけ新規素材の投入を抑制し、リユース資材や再生材を検討
終了後の処理大部分を廃棄回収・再利用・リサイクル
コスト構造毎回新規制作費が発生初期投資は増えるが長期的に最適化
環境負荷廃棄物量が多い
新規の調達資材が多い
新規の調達量を抑え、廃棄物量の削減を目指す

サステナブル・イベントとの関係

「サステナブル・イベント」は、環境面だけでなく、社会的公正やアクセシビリティ(誰もが参加しやすい環境整備)なども含む、持続可能性全般を対象にした広い概念です。ISO 20121(イベントの持続可能性に関するマネジメントシステム規格)でも、環境・社会・経済のバランスが求められています。

資源循環型イベントは、このサステナブル・イベントの中でも特に「資源の循環利用」に焦点を当てたアプローチといえます。サステナブル・イベントの一領域として資源循環型イベントを位置づけることで、取り組みの範囲を明確にし、実践しやすくなります。

まずは資源循環に絞って取り組みを始め、成果が見えてきた段階でサステナブル・イベント全体へと範囲を広げていくアプローチが現実的でしょう。

■資源循環型イベントを実践する全体手順

資源循環型イベントの実践は、企画・設計・終了後の3つのフェーズで構成されます。各段階で何を決め、どう動くかを順を追って解説します。

企画段階で循環設計を組み込む

資源循環型イベントを実践するうえで最も重要なのは、企画段階から循環の視点を持つことです。イベントの目的・テーマを決める際に、「廃棄物をどれだけ削減できるか」「使用素材をどう循環させるか」を検討項目に加えます。

企画書のテンプレートに「資源循環方針」の項目を設けることで、担当者が変わっても循環設計を標準化できます。

企画段階で検討すべき主な項目は以下のとおりです。

  • イベント全体の調達量・廃棄物削減目標の設定
  • 使用する素材カテゴリごとの循環方針(再利用・リサイクル・アップサイクル⦅廃材などに手を加えて新たな価値ある素材として生まれ変わらせること⦆など)の決定
  • 協力会社やサプライヤーへの循環要件の伝達
  • 来場者向けの啓発施策(分別回収の導入、環境配慮の可視化など)の検討

この段階で循環方針を固めておくと、後工程での手戻りが大幅に減り、スムーズに設計・制作へ移行できます。

設計・制作段階で資源を選定する

企画で定めた循環方針をもとに、具体的な素材選定と構造設計を行います。ここでのポイントは、「見栄えやブランド表現を損なわずに、循環しやすい素材と構造を選ぶこと」です。

設計・制作時に検討する素材選定の視点を以下に整理しました。

検討項目具体例期待できる効果
モジュール構造の採用システム部材による組み立て式ブース複数回の使用が可能になる
再生素材の採用再生アクリルや再生紙の採用CO₂排出量等の環境負荷の低減に寄与
単一素材化・分解可能な工法の採用複合素材を避け、紙なら紙だけで構成
接着剤を使用せず、素材別に分解が容易な工法で制作
資源として分別・リサイクルが容易になる
リユース前提の什器レンタル家具や汎用什器の活用廃棄物ゼロに近づく
デジタル代替紙カタログからデジタルコンテンツへ移行紙資源の使用量を削減できる

素材を選定する際は、リサイクル可能かどうかだけでなく、実際にリサイクルルートが存在するかまで確認することが不可欠です。理論上はリサイクル可能でも、回収先がなければ結局廃棄されてしまうためです。

終了後を見据えた回収・再利用計画を立てる

イベント終了後の撤去・回収フェーズは、資源循環型イベントの成否を左右する重要な局面です。撤去時の混乱を防ぐため、あらかじめ「どの素材を」「どこに」「どのように」回収するかを計画しておく必要があります。

回収・再利用計画に含めるべき要素は以下のとおりです。

  • 素材ごとの分別ルールと回収動線の設計
  • リユース品の保管場所・保管方法の確保
  • リサイクル業者や回収パートナーとの事前契約
  • 廃棄量・リサイクル量の計測と記録

終了後のデータ計測を怠ると、次回以降の改善につなげられなくなるため、数値の記録は必ず実施しましょう。回収率やリサイクル率をデータとして蓄積することで、取り組みの説得力が増し、社内外への報告にも活用できます。

■資源循環型イベントの企画・設計段階で押さえるポイント

全体手順を理解したうえで、特に企画・設計段階で意識すべきポイントを3つに絞って解説します。この段階での判断が、イベント全体の循環性を大きく左右します。

再利用・再資源化を前提にする

資源循環型イベントを実践するうえでの出発点は、すべての資材について「使用後にどうするか」を先に決めることです。多くの場合、制作時にはデザインや演出効果が優先され、終了後の処理は後回しになりがちでしょう。しかしこの順序を逆転させることが、循環型設計の核心となります。

「捨てることを前提に作る」のではなく「戻すことを前提に作る」という発想の転換が、資源循環型イベントの実践における最も重要な第一歩です。

具体的なアプローチとして、以下の優先順位で資材の処理方針を検討するとよいでしょう。

  • リユース(Reuse):製品または部品の、元の目的のままリユースする
  • 修理(Repair):製品の機能を維持・修復する
  • リファービッシュ(Refurbish):使用済み製品や部品を再生整備する
  • 再製造(Remanufacture):製品の機能性と性能を復元する
  • 再目的化(Repurpose):既存の製品や部品に新たな機能を持たせる
  • リサイクル(Recycle):使用済みの素材を新たな投入原料として再利用する
  • リカバリー(Recover):廃棄物からエネルギーや素材をリカバリーする

この優先順位を設計チーム全体で共有し、素材選定の判断基準として活用することが大切です。

素材のライフサイクルを可視化する

ライフサイクルとは、素材が「調達→加工→使用→回収→再利用または廃棄」までの「素材の一生」を指します。資源循環型イベントの実践では、使用するすべての素材について、このライフサイクルを可視化することが効果的といえます。

可視化の手法として、使用するすべての素材の流れを一覧で管理する表(マテリアルマップ)の作成が有効です。

  • 素材名:再生段ボール、アルミフレーム、布バナーなど
  • 調達先:素材メーカー名、レンタル会社名
  • 使用箇所:壁面パネル、受付カウンター、天井装飾など
  • 使用後の処理方針:リユース・リサイクル・廃棄のいずれか
  • 回収先:自社倉庫、リサイクル業者名

マテリアルマップを作成しておくことで、どの素材がボトルネックになっているかが一目でわかり、改善の優先順位を判断しやすくなります。初回は手間がかかりますが、一度作れば次回以降のイベントでもテンプレートとして再利用できるでしょう。

関係者間で循環型イベントの認識を共有する

資源循環型イベントは、主催企業だけで完結するものではありません。施工会社、デザイン会社、運営スタッフ、会場管理者など、複数の関係者が同じ方針で動く必要があります。関係者間で循環に対する認識がずれていると、せっかく循環設計をしても現場で実行されないリスクが高まります。

認識共有のために実施すべきアクションは以下のとおりです。

  • キックオフ時に循環方針と廃棄物削減目標を全関係者に説明する
  • 施工会社への発注仕様書に循環要件を明記する
  • 撤去時の分別ルールをマニュアル化し、現場スタッフに事前配布する
  • 終了後に振り返りミーティングを実施し、改善点を共有する

特に施工会社との連携は重要で、発注段階から循環を前提とした仕様を伝えなければ、従来どおりの廃棄前提で制作が進んでしまいます。仕様書や契約書に明文化することで、関係者全員が同じゴールに向かって動ける体制を整えましょう。

資源循環の実践には、素材の選定から回収ルートの確保まで、専門的な知見とパートナー企業との強固な連携が欠かせません。

博展では、サステナブルなイベント運営の豊富なノウハウを活かし、ブランド表現と環境負荷低減を両立させる「循環型体験設計」を企画から施工、撤去後のリサイクルまでトータルでサポートします。まずはお気軽にご相談ください。

■資源循環型イベントを行う上での注意点

資源循環型イベントの実践を始めると、想定外の課題に直面することがあります。ここでは、取り組みを持続可能なものにするために注意すべき3つのポイントを取り上げます。

コストと循環性のバランスをとる

資源循環型イベントを実践する際に多くの担当者が直面するのが、コストの問題です。再利用可能な素材やモジュール構造の什器は、従来の使い捨て型と比べて初期費用が高くなる傾向があります。しかし、複数回の使用を前提にすれば、1回あたりのコストは下がっていくため、中長期の視点で判断することが重要です。

コストと循環性のバランスを検討する際の考え方を以下に示します。

視点従来型の場合循環型の場合
初期制作費比較的安価やや高額
3回使用時のトータルコスト初期費×3回分初期費+保管費+メンテナンス費
廃棄処理費毎回発生大幅に削減
ブランド価値への寄与限定的環境配慮企業としての信頼向上

すべてを一度に循環型へ切り替えるのではなく、年間の出展回数や予算規模に応じて段階的に移行するアプローチが現実的です。まずは什器のレンタル化や配布物のデジタル化など、効果が見えやすい施策から着手するとよいでしょう。

形骸化しないよう評価指標を決める

資源循環型イベントの取り組みが「やっているつもり」で終わってしまうケースは少なくありません。実効性のある取り組みにするためには、定量的な評価指標(KPI)を設定し、毎回のイベントごとに測定・評価することが欠かせないでしょう。

設定すべき評価指標の例を以下に挙げます。

  • 廃棄物総量(kg単位で計測)
  • リサイクル率(リサイクルされた素材の重量÷使用素材の総重量×100)
  • リユース什器の使用比率
  • 前回イベントとの廃棄物量の比較
  • 循環に関する来場者アンケートの回答結果
  • 資源循環率の可視化(資源調達から廃棄までの流れを、再生可能な素材の重量比率を数値化し、ビジュアル化)

評価指標は「測定可能」であることを条件に設定し、感覚的な判断に頼らない仕組みを構築することが形骸化防止の鍵となります。計測結果はレポートにまとめ、次回の企画書に反映させることで、PDCAサイクルを回せる体制が整います。

継続的にイベントを回すための体制を作る

資源循環型イベントの実践は、単発の取り組みではなく、継続的に改善を重ねてこそ意味があります。しかし、担当者の異動や組織変更によってノウハウが途切れてしまうリスクは常に存在します。属人化を防ぎ、組織として継続するための仕組みづくりが必要です。

継続的な取り組みを支えるために整備すべき体制は以下のとおりです。

  • 循環設計のガイドラインやチェックリストを文書化する
  • 過去のイベントで使用した素材・什器の管理台帳を作成する
  • 協力会社との継続的なパートナーシップを構築する
  • 年次で循環実績を振り返るレビューの場を設ける

個人の熱意に依存せず、ガイドラインや管理台帳といった「仕組み」に落とし込むことで、担当者が変わっても取り組みを継続できる体制が実現します。最初から完璧な体制を目指す必要はなく、まずは記録を残すことから始めるだけでも大きな一歩となるでしょう。

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■まとめ

資源循環型イベントの実践は、企画段階での循環設計の組み込みから始まり、素材選定、回収・再利用計画の策定、そして終了後のデータ計測まで、一貫したプロセスで進めることが重要です。「使い捨て」から「循環」への転換は、環境負荷の低減だけでなく、中長期的なコスト最適化や企業ブランドの向上にも寄与します。

取り組みを形骸化させないためには、定量的な評価指標の設定と、組織としての継続体制の構築が不可欠です。まずは自社のイベントのうち1つを対象に、素材のマテリアルマップ作成や什器のレンタル化といった小さな施策から着手してみてください。一歩ずつ改善を積み重ねることで、資源循環型イベントの実践は確実に前進していきます。

イベントにおける廃棄物削減や資源循環は、今や企業の社会的信頼を左右する重要な要素・判断基準です。博展は、クリエイティブの力で環境課題を解決し、来場者の心に響く体験価値を創造します。

具体的な実践方法やコスト面での不安など、貴社の課題に合わせた最適なプランをご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。

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最後に、博展がこれまでに手がけた資源循環型イベントの事例をご紹介します。リユース・再資源化を前提とした循環型ブース設計により、廃棄物の削減と来場者への環境メッセージ発信を両立させた取り組みです。ぜひ自社の取り組みを検討する際の参考にしてみてください。

事例1:株式会社博展 × 株式会社船場 共催|ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2025

博展と船場が共同開催した「エシカルデザインウィーク」。「TOKYO ETHICAL CITY」をテーマに虎ノ門ヒルズを舞台とし、都市における資源循環と未来のウェルビーイングを考える参加型イベントを実施しました。2024年に引き続き資源循環型イベントの実現を目指し、リユース可能なシステム部材と木製構造体を接続する木製システム部材を採用。高いクリエイティビティと環境負荷低減を両立した空間を構築しました。また、業界の枠を超えた共創パートナーとともに、カンファレンスや展示、マルシェを展開し、都市全体でのエシカルな循環を体感できる場を創出しました。

イベントレポート&アーカイブはこちら

事例2:興和株式会社様|サステナブルファッションEXPO 春

興和株式会社のサステナブルファッションEXPO 春への出展事例。オーガニックコットンのプロジェクト訴求にあたり、表具を使わず木工素地へのUVダイレクト印刷を採用し、会期後の什器保管まで一貫してサポートすることで、環境配慮を体現したブースを実現しました。

事例3:キーン・ジャパン合同会社様|KEEN RE・CORD:KS86

スニーカーコレクション「KS86」の発売を記念したポップアップイベント事例。Z世代に向けて「ノスタルジー」と「レトロ」をテーマに、“レコード”をコンセプトとした空間を展開しました。パレットをラッシングで固定した什器を採用したほか、キーン・ジャパン合同会社の倉庫に保管されていた備品を再利用するなど、環境負荷を抑えながらブランドの世界観を表現。新作スニーカーの試し履きや体験型ワークショップを通じて、商品の魅力を体感できる場を創出しました。

事例4:日本製紙クレシア株式会社様|第23回 JAPANドラッグストアショー

日本製紙クレシア株式会社の第23回JAPANドラッグストアショー出展事例。「クレシア サステナビリティ」を伝えるブースとして、装飾のすべてをリユースもしくは再資源化する設計を採用し、廃棄物ゼロの「ゼロ・ウェイスト」ブースを実現しました。