展示会のブースデザインにおいて、サステナブルな視点を取り入れる企業が増えています。

しかし「環境に配慮したブースにしたいが、見栄えや集客力が落ちるのではないか」という不安を抱える担当者も少なくありません。

本記事では、サステナブルな展示会ブースを実現するための基本方針から、デザイン上のアイデア、実際の事例まで体系的に解説します。

Index

■サステナブルな展示会ブースが求められている背景
■サステナブルな展示会ブースデザインの基本方針
■サステナブルな展示会ブースのデザインアイデア
■サステナブルな展示会ブースの事例紹介
■まとめ

■サステナブルな展示会ブースが求められている背景

サステナブルな展示会ブースへの関心が急速に高まっています。その背景には、展示会産業特有の環境負荷と、企業評価の変化という2つの大きな潮流があります。

展示会での大量消費・廃棄が問題視されている

展示会は本質的に「一時的な空間」を前提としたイベントです。数日間の会期が終われば、木工造作のブースや装飾パネル、大型サインといった構造物の多くが解体・廃棄されます。ある業界調査では、展示会1回あたりに発生する廃棄物のうち、再利用やリサイクルに回る割合は全体の2〜3割程度にとどまるとされています。

こうした現状は、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の観点からも見直しが求められています。出展企業だけでなく、主催者側も廃棄物削減を推進する動きが広がりつつあり、展示会業界全体で環境意識が転換期を迎えているといえるでしょう。

グローバル企業に環境配慮が求められている

海外の大規模展示会では、出展企業に対してサステナビリティに関するガイドラインを設ける事例が増えています。たとえば、欧州の見本市ではブース素材のリサイクル率やエネルギー使用量の報告を求められるケースも珍しくありません。

日本企業がグローバル市場で展示会に出展する際には、こうした基準への対応が必須となっています。国内の展示会であっても、海外取引先やパートナーの目に触れる場である以上、ブースデザインの環境配慮は企業姿勢そのものを映す鏡になります。

環境対応が企業評価に影響を与えている

近年、投資家や取引先による企業評価の軸として、ESG(環境・社会・ガバナンスを考慮した経営・事業活動)への取り組みが重視されています。展示会ブースは多くのステークホルダーが直接目にする「企業の姿勢の可視化ポイント」です。

環境に配慮したブースを構えることは、来場者に対して自社の価値観やサステナビリティへの本気で取り組んでいるという意思表明をする機会になります。展示会ブースにサステナブルなデザインを取り入れる背景には、以下のような企業評価への影響が挙げられます。

  • ESGスコアの向上を通じた投資家評価の改善
  • 取引先からの環境対応要請への具体的な回答
  • 来場者・メディアへのブランドイメージ訴求
  • 社内の環境意識向上と社員エンゲージメントの強化

■サステナブルな展示会ブースデザインの基本方針

サステナブルなブースを実現するためには、見た目だけでなく設計段階から環境負荷を減らす考え方を組み込むことが重要です。ここでは、展示会ブースのデザインにおいて押さえておくべき3つの基本方針を紹介します。

造作物を最小化する

従来の展示会ブースでは、木工造作やスチロール造形などで空間を作り上げるのが一般的でした。しかし、これらの造作物は会期終了後に産業廃棄物となるケースがほとんどです。サステナブルなブースデザインの第一歩は、「つくるものを減らす」という発想から始まります。

具体的には、システム部材(再利用可能なアルミフレームやモジュール什器)を活用し、一回限りの造作を極力抑える方法が有効です。空間の仕切りや壁面も、レンタル可能なパネルシステムに置き換えることで、廃棄物の総量を大幅に削減できます。

再利用・転用を前提にする

ブースの設計段階から「次回以降も使える」ことを前提に素材や構造を選定することが、もう1つの重要な方針です。たとえば、ブースのグラフィックパネルを交換式にしておけば、フレーム部分はそのまま複数回の展示会に転用できます。

再利用・転用を前提としたブース設計で考慮すべきポイントは以下のとおりです。

検討項目従来のアプローチサステナブルなアプローチ
構造体木工造作(都度制作・廃棄)アルミフレームやモジュール什器(繰り返し使用)
壁面グラフィック直接貼り付け(剥がして廃棄)差し替え式パネル(フレーム再利用)
什器・家具毎回新規制作レンタルまたは倉庫保管で転用
照明白熱灯やハロゲンLED照明(低消費電力・長寿命)

このように、要素ごとに「使い捨て」から「繰り返し使う」への切り替えを検討すること
が、結果的にコスト削減にもつながります。

配布物・消耗品を減らす

展示会ブースでは、紙のカタログやノベルティグッズを大量に配布するのが通例です。しかし、来場者が持ち帰った資料の多くが未読のまま処分されている実態も指摘されています。

サステナブルな方針として、紙の配布物をデジタル化する取り組みが広がっています。QRコードを活用したPDF資料のダウンロードや、タブレット端末によるデモンストレーションは、紙資源の削減だけでなくリード情報の取得にも効果的です。ノベルティも「量より質」の考え方にシフトし、実用性が高く長く使ってもらえるアイテムに絞ることで、廃棄率を下げられます。

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■サステナブルな展示会ブースのデザインアイデア

基本方針を理解した上で、実際のブースデザインにどう落とし込むかが担当者にとっての最大の関心事でしょう。ここでは、環境配慮と視覚的な魅力を両立する5つのデザインアイデアを紹介します。

装飾を足さず「構造の美しさ」で外観をデザインする

サステナブルなブースデザインでは、過度な装飾を加えるのではなく、構造そのものの造形美を活かすアプローチが有効です。アルミフレームの直線的なラインや、モジュール什器の幾何学的な配置は、無駄のない洗練された印象を来場者に与えます。

「装飾を引く」ことで生まれる余白が、結果としてブランドの信頼感を際立たせる効果を持ちます。展示会場では情報量の多いブースが並ぶため、シンプルな構造美はかえって来場者の目を引きやすくなるのです。

自然素材の質感が伝わるナチュラルな見た目にする

木材、竹、リネンといった自然素材を取り入れることで、視覚・触覚の両面でサステナブルな印象を演出できます。自然素材の選定にあたっては、以下のような基準を参考にするとよいでしょう。

  • 認証を受けた持続可能な供給源から調達された木材や竹
  • 廃材を加工してアップサイクルした建材パネル
  • 化学処理を最小限にしたリネンやコットンの布素材
  • 使用後に土に還る生分解性の装飾素材

これらの素材は、塗装やラッピングを施さずに素地のまま見せることで、環境への配慮を来場者に自然と伝えることができます。

単一素材・分解可能な工法を採用する

サステナブルなブースデザインにおいては、使用する素材や構造設計が環境負荷低減の鍵となります。単一素材で構成された設計は、解体後の分別工程を簡素化し、マテリアルリサイクルを円滑にします。

また、工具や工程を最小限に抑えて分解できる構造や、パーツごとに再利用しやすいモジュール設計を採用することで、施工・撤去時の廃棄物削減にもつながります。こうした素材選定と構造設計の工夫により、ブース全体としての循環性を高めることが可能になります。

仮設感を出さない「長く使える」佇まいを意識する

展示会ブースは仮設空間でありながら、来場者に「一時的に組み立てただけ」という印象を与えてしまうと、ブランドの信頼感を損なう恐れがあります。サステナブルなブースでは、あえて仮設感を排除し、常設のショールームのような落ち着いた佇まいを目指す手法が注目されています。

レンタル品やショールーム等でも使用できるような什器を制作することで、会期後も別の場面で再利用できる汎用性の高い空間が完成します。このアプローチは、展示会のたびにゼロから空間を作り直す従来の発想とは対照的です。

サステナブルな姿勢が一目で伝わるビジュアル表現を取り入れる

ブースそのもののデザインに加えて、企業のサステナビリティへの取り組みを来場者に伝えるビジュアル要素を戦略的に配置することも重要です。以下の表に、代表的なビジュアル表現とその効果を整理しました。

ビジュアル表現具体的な手法期待される効果
素材の見える化使用素材の産地やリサイクル率をパネルで掲示透明性のアピール・信頼感の醸成
数値の訴求CO2削減量や廃棄物削減率をインフォグラフィックで表示取り組みの具体性と説得力の向上
ストーリーテリングブース制作の過程や素材選定の理由を映像で紹介共感の獲得・会話のきっかけ創出
認証マークの提示カーボンオフセット(CO2の排出量を他の手段で相殺する取り組み)証明を掲示第三者評価による客観的な裏付け

こうしたビジュアル要素は、展示会ブースのデザインそのものと一体化させることで、サステナブルな企業姿勢をより強く印象づけることが可能です。

サステナブルなブースづくりにおいて最も難しいのは、環境負荷を減らしながらも、展示会としての「集客力」や「ブランド訴求力」を損なわないバランス設計です。

博展では、サステナブルイベントの専門知識を持つチームが、再利用可能な独自システムの活用や、資源循環に配慮したクリエイティブな空間設計をご提案します。「自社のブランドに合った環境対応」をお探しなら、ぜひ一度ご相談ください。

■サステナブルな展示会ブースの事例紹介

実際にサステナブルな展示会ブースに取り組んでいる博展の事例を見ることで、環境配慮と訴求力の両立が具体的にどのように実現されるのかをつかんでいただけます。異なるアプローチで環境配慮を実現した3つの事例を紹介します。

事例1:王子キノクロス株式会社様|新機能性材料展2025

東京ビッグサイトで開催された「新機能性材料展2025」における、王子キノクロスブースの事例です。木を原料とした自然に還る不織布という製品の素材特性そのものをブース空間の装飾として全面的に活用することで、展示物とブースデザインが一体となったサステナブルな空間を実現しました。

不織布を壁面・装飾を含む空間全体に使用し、生産工場を彷彿とさせる実験的な見せ方で素材の機能を直感的に伝える構成としています。「素材そのものがブースになる」という発想は、過剰な装飾を加えない「引き算のデザイン」の好例といえます。ブースの主要造作にはリユース部材を採用し、使用後の素材も再利用する工法を採ることで、廃棄物を最小化しながら高い意匠性を両立しました。本ブースは日本空間デザイン賞2025のロングリストにも選出されています。

事例2:株式会社豊田自動織機様|メッセナゴヤ2024

ポートメッセナゴヤで開催された「メッセナゴヤ2024」における豊田自動織機ブースの事例です。環境保全への積極的な取り組みで知られる同社が、カーボン製品など環境配慮型製品の展示とあわせて、ブースの構造・装飾・体験設計のすべてにサステナブルな思想を貫いた事例です。

造作の中核に採用したのは、蛇腹構造のリユース部材です。廃材の削減に貢献するだけでなく、蛇腹構造により折りたたんで運搬できるため、輸送時のCO2排出量削減にも寄与しています。装飾面では、同社が実際に推進している鳥類保護活動で使用するデコイ(鳥型模型)をブースに取り込み、来場者が会期中にデコイへ色を塗り加えていく参加型コンテンツを実施。

会期の始めには真っ白だったブースが、来場者の手で徐々に彩られていく仕掛けは、環境への姿勢をストーリーとして体感させる演出として高い評価を獲得しました。本ブースはEXHIBITOR Magazine’s 39th Annual Exhibit Design Awardsにてシルバーアワードを受賞しています。

事例3:日立建機株式会社様|CSPI-EXPO 2024

幕張メッセで開催された「第6回建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2024)」における日立建機ブースの事例です。建設現場で実際に使われる素材をそのまま造作に転用することで、環境負荷を抑えながら「現場の実直さ」が伝わる構造美を実現した事例です。

ブースの構成素材として選ばれたのは、トラスや単管、木素地、エキスパンドメタルなど、いずれもマテリアルリサイクルおよびリユースが可能な部材です。特殊な表面加工や塗装を施すことなく素地のまま用いることで、装飾を足さずに素材の表情だけで空間をデザインするアプローチを実現しています。

単管の重なりと光のラインが螺旋状に広がる造形は、日立建機の「どんな現場にも柔軟に対応する」という企業姿勢を空間として体現したものでもあり、環境配慮と訴求力の両立という点で高い評価を受けました。本ブースは日本空間デザイン賞2025のショートリスト・ヤングタレント賞(エキシビション・イベント空間)に選出されています。

■まとめ

サステナブルな展示会ブースのデザインは、単なる環境対応ではなく、企業の姿勢やブランド価値を来場者に伝えるための戦略的な選択です。造作物の最小化、再利用前提の設計、配布物のデジタル化といった基本方針を押さえた上で、構造の美しさや自然素材の活用など、環境配慮と訴求力を両立するデザインアイデアを取り入れることがポイントになります。

重要なのは、すべてを一度に完璧にする必要はないという点です。まずは取り組みやすい領域からスタートし、出展を重ねるごとに改善を積み上げていくことが、持続可能なブース運営への近道となります。

博展は、日本におけるサステナブルイベントの先駆者として、数多くの企業の環境対応ブースを手掛けてきました。「環境に優しい」ことはもちろん、来場者の心を動かし、ビジネス成果を生み出す空間体験をデザインします。

業界トップクラスの知見と実績を活かし、貴社のサステナビリティへの取り組みを具現化するお手伝いをいたします。具体的なご相談から資料請求まで、お気軽にお問い合わせください。

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