カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入・利用に至るまでの一連のプロセスを「旅(ジャーニー)」に見立てて可視化する考え方です。BtoBマーケティングにおいては、検討期間が長く意思決定に複数の関係者が関わるため、各段階での接点設計が成果を大きく左右します。

本記事では、カスタマージャーニーの基本的な意味から目的、主なタッチポイントの種類、具体的なマップの型、そして実際の作り方までを順を追って解説します。

Index

■カスタマージャーニーとは
■カスタマージャーニーの目的
■カスタマージャーニーにおける主なタッチポイントの種類
■カスタマージャーニーの具体例
■カスタマージャーニーの作り方
■まとめ

■カスタマージャーニーとは

まずはカスタマージャーニーの基本的な意味と、なぜ今多くの企業が注目しているのかを確認しましょう。

カスタマージャーニーの意味

カスタマージャーニーとは、顧客が自社の商品やサービスと出会い、興味を持ち、比較検討を経て購入や契約に至り、さらにその後のリピートや推奨に至るまでの全体像を時系列で描いたものです。この流れを図や表にまとめたものを「カスタマージャーニーマップ」と呼びます。

BtoBにおいては、認知から成約まで数ヶ月から1年以上かかることも珍しくなく、各段階で顧客がどのような情報を求め、どのような感情を抱いているかを把握することが欠かせません。カスタマージャーニーマップを作成すれば、抜け漏れのある施策や、顧客が離脱しやすいポイントを客観的に発見できるようになります。

たとえば展示会で自社ブースを訪れた来場者が、後日Webサイトを閲覧し、資料請求を経て営業担当との商談に進む、といった流れもカスタマージャーニーの一例です。オンラインとオフラインの接点を横断的に捉えることが、現代のマーケティングでは重要になっています。

なぜ今、カスタマージャーニーが重要なのか

顧客の情報収集手段が多様化した現在、購買行動は直線的ではなくなりました。Web検索、SNS、業界メディア、展示会、セミナーなど複数のチャネルを行き来しながら意思決定を行うのが一般的です。

このような購買行動の複雑化に加え、BtoBでは「決裁者」「利用者」「情報収集担当者」など、意思決定にかかわる人が複数存在します。個々の関係者がどの段階でどのような体験を求めているのかを可視化しなければ、的外れなアプローチを繰り返してしまう恐れがあります。

さらに、リアルイベントや体験型プロモーションの価値が再評価されている点も見逃せません。デジタル施策だけでは得られない「五感に訴える体験」を、ジャーニーの中にどう位置づけるかが差別化のカギを握っています。

■カスタマージャーニーの目的

カスタマージャーニーを作成する目的は大きく3つに整理できます。それぞれを理解しておくことで、マップ作成の方向性が明確になります。

顧客理解を向上させるため

最も基本的な目的は、顧客の行動・思考・感情を段階ごとに深く理解することです。売り手目線で「こう動いてほしい」と想定するのではなく、実際に顧客がどのような課題を感じ、どこで迷い、何をきっかけに次の行動へ進むのかを明らかにします。

とりわけBtoBでは、顧客が抱える課題や検討条件が業種・職種によって大きく異なるため、ペルソナごとに、より具体的で詳細なジャーニーを描くことが重要です。たとえば、展示会を頻繁に訪れる情報収集担当者と、最終的に決裁を行う経営層では、重視する情報も接触チャネルもまったく異なります。

顧客理解が深まると、適切なタイミングで適切な情報を届けられるようになり、結果として問い合わせや商談につながる確率向上が期待できます。

マーケティング戦略を最適化させるため

カスタマージャーニーを可視化すると、現状の施策がどのフェーズに集中しており、どこに空白があるかが一目で分かるようになります。Web広告やSEOに注力しているものの、認知フェーズのリアル接点が不足している、あるいは商談後のフォロー施策が手薄であるなど、改善すべきポイントが明確に浮かび上がるのです。

施策の偏りを発見して予算や人手を使う場所を見直せる点が、カスタマージャーニーをマーケティング戦略に活用する最大のメリットといえます。

フェーズよくある施策の偏り見直しの方向性
認知Web広告のみに依存展示会・業界イベントの活用を検討
比較検討製品ページの情報が不足導入事例やホワイトペーパーを拡充
意思決定営業任せでフォローが属人化CRM連携による仕組み化を推進

関係者間の認識を共有するため

BtoBマーケティングでは、マーケティング部門・営業部門・製品開発部門・経営層など多くの関係者が施策に関与します。それぞれが異なる顧客像を持ったまま動いてしまうと、メッセージやアプローチに一貫性が失われ、顧客体験の質が低下してしまいます。

カスタマージャーニーマップは、こうした関係者間の「共通言語」として機能します。1枚のマップを基に議論することで、部門間の認識がそろい、施策の優先順位付けや役割分担がスムーズに進むようになるのです。

特にイベントプロモーションのように、企画・制作・運営・フォローアップまで多くの担当者が関わるプロジェクトでは、全体像を共有しておくことがプロジェクト成功の前提条件となります。

■カスタマージャーニーにおける主なタッチポイントの種類

タッチポイントとは、顧客と企業が接触するすべてのポイントを指します。ここでは主要な5つのタッチポイントを、それぞれの役割とあわせて紹介します。

イベント・展示会

展示会やカンファレンス、セミナーといったリアルイベントは、カスタマージャーニーの中でも特に強い印象を残せるタッチポイントです。来場者は実際に製品やサービスに触れ、担当者と直接対話できるため、Webだけでは伝えきれない企業の世界観や技術力を体感してもらえます。

BtoBにおいてイベントは「認知」と「比較検討」の両フェーズを一度に進められる数少ないタッチポイントであり、質の高いリード獲得にもつながります。

空間設計やブース内の動線、スタッフの接客シナリオまでジャーニーに沿って設計することで、来場者体験の質を大きく高められます。

たとえば「入口で課題意識を刺激する展示を配置し、中央で製品を体験してもらい、出口付近でスタッフと対話して名刺交換に至る」という動線設計は、来場者の自然な行動をリードに変えるための空間づくりそのものです。

Web・デジタル広告

リスティング広告、ディスプレイ広告、SNS広告などのデジタル広告は、認知拡大やWebサイトへの集客を担う代表的なタッチポイントです。ターゲットの職種や業界を絞った配信ができるため、BtoBとの相性が高い手法といえます。

ただし、広告単体で商談まで完結することはほとんどなく、ジャーニーの中で「次のステップへ引き上げる役割」として位置づけることが大切です。広告で興味を持った見込み顧客をセミナーや資料ダウンロードへ誘導するなど、後続施策との連携を前提に設計しましょう。

コンテンツ・SEO

ブログ記事、ホワイトペーパー、導入事例などのコンテンツは、顧客が自ら情報を検索して接触するタッチポイントです。検索エンジン経由の自然流入を獲得するSEO施策と組み合わせることで、長期的かつ安定的なリード獲得が見込めます。

カスタマージャーニーの各フェーズに対応したコンテンツを用意することで、顧客が「今ほしい情報」にたどり着ける状態を作れます。認知段階では課題啓発型の記事、比較検討段階では競合との違いを整理した資料、意思決定段階では具体的な導入事例が効果的です。

営業活動(訪問・商談)

BtoBでは、最終的な意思決定において営業担当者との直接的なやり取りが欠かせません。訪問、オンライン商談、提案書の提出など、対人の接点は「比較検討」から「意思決定」へ顧客を後押しする重要な役割を果たします。

カスタマージャーニーを営業チームと共有しておけば、顧客が商談時点でどの程度の情報を持ち、どのような不安を抱えているかを事前に把握でき、提案の精度が高まります。展示会で名刺交換した見込み顧客に対して、来場時の会話内容を踏まえたフォローができれば、信頼関係の構築が一気に進むでしょう。

メール・CRMツール

メールマガジンやMA(マーケティングオートメーション)、CRM(顧客関係管理)ツールを活用したコミュニケーションは、見込み顧客との関係を継続的に維持するタッチポイントです。イベント参加後のサンクスメール、定期的な情報提供、行動履歴に基づいて一人ひとりに合わせた内容を届けるパーソナライズ配信など、ジャーニーのあらゆるフェーズで活用できます。

CRMにイベントでの接触履歴やWeb行動データを集約しておくと、一人ひとりの顧客がジャーニーのどの段階にいるかを可視化でき、最適なタイミングでの接触が可能になります。

  • イベント・展示会は認知と検討を同時に進められるリアル接点
  • デジタル広告は次のステップへ引き上げる起点として機能する
  • コンテンツ・SEOはフェーズに応じた情報提供で長期的にリードを獲得する
  • 営業活動は比較検討から意思決定への後押しを担う
  • メール・CRMは継続的な関係維持とパーソナライズ配信を実現する

博展は1967年の創業以来、情報・製造・医療・自動車など幅広い業種の展示会・カンファレンス・ショールームを手がけてきました。「ブースをどう設計するか」だけでなく、「ジャーニーのどこにどう位置づけるか」という上流の設計から一緒に考えることが可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

■カスタマージャーニーの具体例

カスタマージャーニーマップにはいくつかの代表的な型があります。自社の商材や顧客の購買プロセスに合った型を選ぶことで、より実用的なマップを作成できます。

タイムライン型

タイムライン型は、カスタマージャーニーマップの中で最も一般的なフォーマットです。横軸に時間の流れ(認知→興味→比較検討→意思決定→購入後)を、縦軸に顧客の行動・思考・感情・タッチポイントなどの項目を配置し、一覧表のように整理します。

BtoBの長い検討プロセスを段階的に整理しやすく、各フェーズでの施策の過不足をチェックするのに最適です。たとえば「展示会来場」から「商談成立」まで3ヶ月かかるプロセスを、週単位・月単位で区切って可視化する使い方が代表的です。

フェーズ顧客の行動例主なタッチポイント
認知業界メディアで記事を読むSEO記事、SNS広告
興味展示会ブースを訪問する展示会、セミナー
比較検討資料をダウンロードし社内共有するホワイトペーパー、メール
意思決定営業担当と商談を行う訪問商談、提案書

ホイール型

ホイール型は、顧客との関係を「終わりのない循環」として捉えるフォーマットです。円の中心に顧客を置き、周囲に「認知→検討→購入→利用→推奨→再認知」のサイクルを配置します。SaaS(クラウド型ソフトウェア)のようにサブスクリプションモデルを採用するビジネスや、リピート利用を前提としたサービスとの相性が良い形式です。

購入後のフォローや既存顧客向けイベントも重要なタッチポイントとして組み込めるため、顧客との関係を長く維持することで得られる価値(LTV)を高める設計に向いています。ユーザーカンファレンスや既存顧客限定セミナーなど、リアルイベントを「推奨」フェーズに位置づけることで、口コミや紹介による新規獲得も促進できます。

スペース型

スペース型は、展示会やショールームのように「その場に来た人をどう動かすか」を設計したい企業にとって、最も実践的なジャーニーの型です。展示会のブース内やポップアップストアなど、特定の場所での体験を時系列ではなく、「空間の移動」として可視化します。

来場者がブースに入ってから退出するまでの導線上に、どのような情報提供や体験を配置するかを設計できるため、イベントプロモーションの現場で特に実用性が高い型です。入口での興味喚起、中央エリアでの製品デモ体験、出口付近でのアンケート回収と名刺交換といった具合に、空間と顧客行動を結びつけて設計できます。

  • タイムライン型は長期の検討プロセスを段階的に整理する定番フォーマット
  • ホイール型は購入後の循環も含めたLTV重視の設計に向く
  • スペース型は展示会やショールームなどリアル空間の体験設計に最適

■カスタマージャーニーの作り方

ここからは、実際にカスタマージャーニーマップを作成する手順を5つのステップで紹介します。初めて取り組む場合でも、順番に進めれば実用的なマップを完成させられます。

1.ペルソナを設定する

最初に、ジャーニーの主人公となるペルソナ(典型的な顧客像)を設定します。ペルソナとは、ターゲットとなる顧客の属性や行動パターン、課題を具体的に人物像として描いたものです。BtoBの場合は、業種・企業規模・役職・担当領域・情報収集の傾向などを明確に定義しましょう。

ペルソナが曖昧なままジャーニーを描くと、施策が「誰にも刺さらない」汎用的なものになりがちです。既存顧客へのインタビューや営業担当からのヒアリングを通じて、リアリティのあるペルソナを作ることがマップの精度を左右します。

2.ゴールとフェーズを定義する

次に、カスタマージャーニーの最終ゴール(商談獲得、契約締結、追加提案など)を決め、そこに至るまでのフェーズを区切ります。一般的なBtoBのフェーズは「認知→興味→比較検討→意思決定→購入後」ですが、自社のビジネスモデルに合わせてカスタマイズすることが大切です。

フェーズごとに「顧客が次のステップへ進む条件は何か」を定義しておくと、施策の設計がしやすくなります。たとえば「展示会来場→資料請求」を認知から興味への移行条件とするなど、具体的な行動ベースで設定しましょう。

3.顧客情報を収集する

フェーズが決まったら、各段階における顧客の行動・思考・感情に関する情報を集めます。情報源としては、既存顧客へのインタビュー、営業担当の商談記録、Webサイトのアクセスログ、展示会でのアンケート結果などが挙げられます。

社内の「思い込み」だけでマップを作らないことが最も重要なポイントです。数字で計れるデータ(アクセス数、メール開封率など)と、言葉で得られる情報(インタビュー内容、現場の声など)の両面から情報を集めることで、現実に即したジャーニーが描けます。

  • 既存顧客へのインタビューやアンケート
  • 営業担当へのヒアリングや商談メモ
  • Webアクセスログ、広告の反応データ
  • 展示会やセミナーでのアンケート結果
  • カスタマーサポートへの問い合わせ内容

4.マップを図表化する

収集した情報を基に、マップを実際に図や表に落とし込みます。横軸にフェーズ、縦軸に「顧客の行動」「思考・感情」「タッチポイント」「自社の施策」「課題・改善点」などの項目を設定し、表形式に整理するのが定番の手法です。

最初から完璧を目指す必要はなく、まずは大枠を作り、関係者からフィードバックを得ながら改善・磨き上げていくアプローチが効果的です。ExcelやGoogleスプレッドシートで作成しても十分ですが、ホワイトボードや付箋を使ったワークショップ形式で進めると、部門横断の議論が活性化しやすくなります。

5.不足施策をリスト化し改善する

マップが完成したら、各フェーズでの施策の過不足を確認し、改善すべき項目をリスト化します。たとえば「認知フェーズではWeb施策は充実しているが、リアルの接点がない」「比較検討フェーズで顧客の不安を解消するコンテンツが不足している」といった課題が可視化されるはずです。

リストアップした課題に対して優先順位をつけ、短期で着手できるものと中長期で取り組むものに分類することで、実行計画に落とし込みやすくなります。

カスタマージャーニーマップは一度作って終わりではなく、定期的に見直すことが不可欠です。市場環境や顧客ニーズの変化に合わせて、少なくとも半年から1年に一度はアップデートすることをおすすめします。

■まとめ

カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスと出会い、購入・利用に至るまでの一連の体験を可視化するフレームワークです。特にBtoBでは、複数の意思決定者が関わり検討期間が長いからこそ、各フェーズでの接点を戦略的に設計する必要があります。

Web施策だけでなく、展示会やセミナーといったリアルな体験もタッチポイントとして組み込むことで、顧客の記憶に残る独自の体験を提供できます。まずは1つのペルソナに絞り、簡易的なマップを作成するところから始めてみてください。関係者と一緒にマップを見ながら議論するだけでも、施策の改善ポイントが数多く見つかるはずです。

博展では、デジタルとリアルを融合させたカスタマージャーニーの設計から、展示会やイベントでの体験価値最大化まで、幅広くサポートしています。

「自社の施策にリアルの接点をどう組み込めばいいか分からない」「一貫した顧客体験を構築したい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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