「共創が重要なのはわかるが、結局どう進めればいいのか分からない」こうした声は、多くの企業で共通しています。

実際、事業共創は“正解のない取り組み”であるがゆえに、

  • パートナーはどう選ぶべきか
  • どこまで社内で固めるべきか
  • どうすれば実装までたどり着くのか

といったポイントで立ち止まってしまうケースが少なくありません。

本記事では、事業共創を「構想で終わらせない」ために、現場で実際に機能する進め方を具体例とともに解説します。

Index

■事業共創とは何か
■事業共創を進める基本ステップ
■「共創」が停滞する理由
■事業共創を進めたい企業が最初にすべきこと
■共創を成功させるパートナーの条件
■具体例で見る事業共創の進め方
■まとめ

■事業共創とは何か

事業共創という言葉は、ビジネスメディアや企業の中期経営計画などで目にする機会が増えています。しかし、その意味するところを正確に理解している方は意外と多くありません。ここでは、よく似た概念との違いを整理しながら、事業共創の本質を確認していきます。

企業連携との違い

事業共創は、業務提携やアウトソーシングといった従来の企業連携とは本質的に異なります。従来型の連携は、すでに決まった業務やサービスを効率化・補完するために行われるものです。「何をするか」が明確で、それぞれの役割分担もあらかじめ決まっています。

一方、事業共創は「まだ存在しない価値を、立場の異なる者同士が一緒に探り、つくり出すプロセス」です。ゴールが最初から明確でないケースも多く、対話を重ねるなかでテーマや方向性が定まっていきます。受発注の関係ではなく、対等なパートナーシップが前提となる点が大きな違いです。

比較項目従来の企業連携事業共創
目的既存業務の効率化・補完新たな価値の創出
関係性受発注・委託関係対等なパートナー
ゴールの明確さ事前に決まっている対話のなかで形成される
進め方計画に沿って実行試行錯誤を繰り返す

事業共創が注目されている理由

事業共創が注目を集める背景には、先が読みにくい時代になっているということが挙げられます。市場環境の変化が速く、従来のビジネスモデルだけでは成長が難しくなっています。加えて、顧客のニーズが多様化するなかで、自社の技術やノウハウだけでは新たな価値を提供しきれないという課題を抱える企業が増えました。

こうした状況で求められるのが、異業種や顧客、さらには社会全体を巻き込みながら、新しい答えを模索する姿勢です。事業共創は単に企業同士が手を組むだけでなく、顧客や地域社会など、かかわるすべての人たちとともに価値を生み出すアプローチとして、多くの企業の経営戦略に組み込まれるようになっています。

■事業共創を進める基本ステップ

事業共創を進めるには、思いつきのアイデアベースではなく、段階を踏んだプロセスが欠かせません。ここでは、課題の整理からパートナー探索、アイデア検証、実装までの流れを4つのステップに分けて解説します。

課題・目的の整理

事業共創の出発点は、「なぜ共創に取り組むのか」を明確にすることです。社内で漠然と「新しいことをやりたい」という声が上がっていても、その背景にある経営課題や顧客の課題が整理されていなければ、共創は空回りしてしまいます。

まず取り組むべきは、「解きたい問い」を言葉にする作業です。たとえば「既存事業の延長では開拓できない市場がある」「技術はあるが、顧客体験としてどう届けるかが見えていない」といった具体的な課題を書き出すだけでも、その後の方向性が大きく変わります。曖昧なままにせず、言語化する一歩が重要です。

パートナー探索

課題が整理できたら、次はそれを一緒に解決できるパートナーを探すフェーズに入ります。ここでのポイントは、自社に足りない能力や視点を補ってくれる相手を見つけることです。同業種に限る必要はなく、異業種やスタートアップ、研究機関なども候補に含まれます。

パートナー探索においては、「何を一緒にやるか」だけでなく「どんな対話ができるか」を重視することが成否を分けます。共創は正解のない取り組みだからこそ、率直に意見を交わせる関係性が不可欠です。展示会やカンファレンス、共創を目的としたイベントの場は、こうしたパートナーとの出会いの機会として活用できます。

アイデア創出と検証

パートナーが見つかったら、いよいよアイデアを出し、検証するプロセスに進みます。この段階で大切なのは、議論を「会議室の中」だけで完結させないことです。ワークショップやプロトタイプの制作、ユーザーへのヒアリングなど、手を動かしながら考えるアプローチが有効に機能します。

とくに近年では、共創専用の空間や場をつくり、参加者が自然と対話や発想を深められる環境設計が重視されている点が特徴的です。ホワイトボードや付箋を使ったフレームワークにとどまらず、五感に訴える体験的な空間のなかで議論を行うことで、通常の会議では出てこなかったアイデアが生まれるケースも少なくありません。

  • ワークショップ形式で多様な視点を引き出す
  • 簡易的なプロトタイプで仮説を素早く検証する
  • ユーザーや第三者の声を早期に取り入れる
  • 空間や場の設計で対話の質を高める

実装・展開への接続

アイデアが一定の形になったら、それを実際の事業やサービスとして展開するフェーズです。しかし、多くの共創プロジェクトはここで止まってしまうという現実があります。アイデアが良くても、社内稟議が通らない、実行体制が整わないといった壁にぶつかるケースは珍しくありません。

共創を実装へとつなげるには、アイデア段階から「誰にどう届けるか」を同時に考えておく必要があります。展示やイベントを通じて社内外の関係者に共創の成果を体験してもらい、賛同者を増やしていく方法は実効性のある進め方です。成果の見せ方まで設計することが、実装への橋渡しになります。

■「共創」が停滞する理由

事業共創の重要性は理解していても、実際に動き出せない企業は多く存在します。その背景にはいくつかの共通した壁があり、それらを事前に把握しておくことが、停滞を避ける第一歩になります。

何から始めればいいかわからない

事業共創に取り組みたいと思っても、最初の一歩でつまずく企業は少なくありません。「共創」という言葉自体が広い意味を持つため、具体的なアクションに落とし込みにくいのです。ネット検索をしてもコンセプト的な話が多く、「明日から自分たちが何をすればいいか」がイメージしづらいと感じる方もいるでしょう。

この問題の本質は、事業共創が「決まった型のない取り組み」であることです。だからこそ、まずは小さなテーマでワークショップを開催する、社外の共創拠点を訪れるなど、体験ベースで始めることが突破口になります。頭で考えるよりも、動きながら方向性を探るほうが前に進みやすいのです。

目的やテーマが曖昧なまま進んでしまう

もうひとつのよくある壁は、目的が曖昧なまま共創の枠組みだけを走らせてしまうケースです。「とにかくオープンイノベーションをやろう」「他社との協業を進めよう」という号令のもと動き始めたものの、何を目指しているのか関係者の間で共有されていないと、議論が空転しやすくなります。

事業共創を成功させるには、曖昧さを許容しつつも、節目で「今、自分たちはどこに向かっているのか」を確認する仕組みが必要です。定期的に振り返りの場を設けたり、目に見える形でアウトプットを共有したりすることで、プロジェクト全体の方向性がぶれにくくなります。

社内で言語化できていない

「新しいことを始めたい」「共創に興味がある」という想いはあっても、それを社内で説明できる言葉にできていないケースもよく見られます。上層部への説明、他部署への協力依頼、プロジェクトの企画書づくりなど、社内を動かすためには言語化が欠かせません。

共創を推進する担当者にとって最大の課題は、「社内を巻き込む言葉」を持っているかどうかです。自分たちだけで言語化が難しい場合は、外部の伴走者に壁打ち相手になってもらうのも有効な方法です。曖昧な構想を対話のなかで整理し、組織が動く言葉に変えていくプロセスそのものが、共創の第一歩と言えます。

■事業共創を進めたい企業が最初にすべきこと

共創の壁を乗り越えるために、まず意識を変えるべきポイントがあります。完璧な計画を立ててから始めるのではなく、早い段階で外の力を活用する姿勢が、共創を前に動かす鍵になります。

社内で完結させようとしない

事業共創を検討する際、まず社内でじっくり検討してから外部に声をかけようとする企業は多いでしょう。しかし、この「社内で固めてから」というアプローチが、かえって共創を遠ざけてしまうことがあります。なぜなら、社内だけで議論を重ねると、どうしても自社の既存の枠組みや前提条件のなかでしか発想できなくなるからです。

事業共創は、異なる視点が交わることで初めて新しい価値が生まれる取り組みです。社内で100%まとめてから動くのではなく、6割程度の段階で外部との対話を始めるほうが、結果的にプロジェクトの質は上がります。不完全な状態で見せることへの抵抗を手放すことが、最初の重要な判断です。

事業共創を成功させるためには、「どのタイミングで外部を巻き込むか」という戦略的な判断が求められます。自社でどこまで準備すべきか、それぞれの進め方のメリットとデメリットを整理しました。

アプローチメリットデメリット
社内で十分に固めてから外部に相談方向性が明確な状態で動ける視点が自社に偏りやすい
早い段階で外部と対話を始める多様な視点を取り入れられる社内合意形成の手間が増える場合がある
共創拠点や外部の場を活用する対話の質が上がり、発想が広がりやすい適切な場の選定が必要

早い段階で外部に相談する

「まだ構想がまとまっていないから相談するのは早い」と考える方は多いかもしれません。しかし、事業共創においてはむしろ、構想が固まりきっていない段階こそ外部と対話すべきタイミングです。アイデアが形になる前の「モヤモヤした状態」を一緒に整理してくれるパートナーこそ、共創を前に進めてくれる存在です。

早期の相談は、構想の質を高めるだけでなく、社内の推進力を生み出す効果もあります。外部から得た気づきや考え方の軸を社内に持ち帰ることで、「これなら進められそうだ」という手応えが生まれ、関係者を巻き込みやすくなるのです。完璧を待たず、まず対話を始めてみることを強くおすすめします。

博展は1967年の創業以来、情報・製造・医療・自動車など幅広い業種の企業と空間・体験をともに設計してきました。対話を通じてその構想を言葉に整理し、空間・体験・イベントという「場の設計」によって共創を実際に動かすことを得意としています。「まだ構想がまとまっていない」という段階からのご相談を歓迎しています。まずはお気軽にお問い合わせください。

■共創を成功させるパートナーの条件

事業共創の成否は、誰と組むかに大きく左右されます。単にスキルや実績があるだけでなく、共創ならではの、先が見えない状況にも一緒に向き合えるパートナーかどうかを見極めることが大切です。

場づくり・体験設計まで担える

共創パートナーを選ぶ際に見落とされがちな観点が、「場づくり」の力です。事業共創は、アイデアの良し悪しだけでなく、そのアイデアが生まれる環境や、関係者が体験するプロセスの質によって成果が大きく変わります。議論の内容を戦略的に設計できるだけでなく、物理的な空間や体験の場まで含めてデザインできるパートナーは、共創において非常に心強い存在です。

対話が自然に深まる空間設計や、参加者の感覚を刺激する体験の場づくりまで一貫して担えるパートナーは、共創のプロセスそのものを豊かにしてくれます。ワークショップの運営ひとつとっても、どんな場所で、どんな動線で、どんな素材に触れながら議論するかによって、生まれるアウトプットの質は変わります。

  • ワークショップやイベントの企画・運営ができる
  • 参加者の対話を促す空間設計の知見がある
  • プロトタイプや展示を通じた体験の場をつくれる
  • 戦略面と実行面の両方を一貫して支援できる

モヤモヤを言語化してくれる存在

先述のとおり、事業共創の初期段階では課題もテーマも曖昧なことが多いものです。その曖昧さに対して「もう少し整理してから来てください」と言うのではなく、一緒に考えながら言葉にしてくれるパートナーが理想です。

良い共創パートナーとは、答えを持っている人ではなく、問いを一緒に見つけてくれる人です。ヒアリングや対話を通じて、クライアント自身も気づいていなかった本質的な課題を引き出し、それを共創のテーマとして設定できる力が求められます。コンサルティングのように分析結果を渡すだけでなく、伴走しながら形にしていく姿勢が、事業共創においては何よりも重要です。

■具体例で見る事業共創の進め方

ここまで、事業共創のステップやパートナーの条件について解説してきました。最後に、博展が実際に関わった2つの事例を通じて、共創がどのように形になるかを見ていきましょう。

事例1:ソニー株式会社様 × 博展|体験における空間再現ディスプレイ「ウサギの住み家」

ソニーが開発した裸眼で立体映像を視聴できるディスプレイと、博展の空間設計・体験デザインの技術を掛け合わせた共創プロジェクトです。「体験デザインの未来を模索する」という共通のテーマのもと、両社が対等なパートナーとしてプロトタイプ作品を制作しました。

木製のボックスが重なる空間の中にディスプレイを仕込み、来場者が近づくと立体のウサギが現れる仕掛けです。箱を叩くと振り向く、動きを真似する、手を入れると触覚で存在を感じるなど、行為を重ねるごとに没入が深まる体験設計になっています。モニターの存在感を消し、「本当にそこにいる」と感じさせるところまで、空間・インタラクション・触覚を一体でデザインしました。

受発注の関係ではなく、「まだ答えが見えないテーマを一緒に探る」という事業共創の本質が、このプロジェクトには凝縮されています。

事例2:サステナブル・ブランド ジャパン様|展覧会「あわいのゆくえ – 自然と人が結び直してきた関係のかたち」

「第10回 サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内」に合わせ、GOOD DESIGN Marunouchiにて開催された展覧会です。「共創」というテーマそのものを、空間・展示・体験として可視化した事例です。

本展が問いかけたのは、「持続可能性とは仕組みや数値だけではなく、関係性のあり方ではないか」ということです。人と自然の関係を「共存」「共生」「共創」という変遷で捉え直し、その流れを来場者が体験として追えるように空間設計しました。

博展は空間デザイン・グラフィック・制作・運営を一貫して担当し、クライアントが伝えたい世界観を、言葉だけでなく「場の体験」として届けました。曖昧な概念を空間に落とし込み、訪れた人の中に問いを生み出すこの仕事は、博展が「言語化」と「体験設計」を組み合わせて共創を具現化した事例と言えます。

事例3:株式会社博展 × we+ × セメダイン株式会社|LOOPGLUE

コンテンポラリーデザインスタジオwe+およびセメダイン株式会社と共同で開発した、海藻由来の接着剤『LOOPGLUE(ループグルー)』です。海藻特有のヌメリ成分を主成分とし、高い接着性能と水による容易な剥離性を両立しています。

展示会業界では木工壁面への紙貼り工事が一般的ですが、剥がし残りによる素材の劣化や作業工数が課題でした。LOOPGLUEを用いることで、水をかけるだけで紙が剥離でき、木工パネルを傷めずに再利用が可能です。木材調達費・施工人件費それぞれ約15%の削減も見込まれます。また自然由来のため、教育現場など幅広いシーンで安心して使用できます。

LOOPGLUEは、資源循環と安全性の両面から、サステナブルな空間づくりに貢献する接着剤です。

■まとめ

事業共創は、変化の激しい時代において新しい価値を生み出すための有効なアプローチです。しかし、その進め方には「決まった正解」がないからこそ、多くの企業が最初の一歩で立ち止まってしまいます。本記事で紹介したように、課題の言語化から始め、早い段階で外部との対話を取り入れ、空間や体験を活かした場づくりのなかでアイデアを育てていくことが、共創を前に動かすための実践的な進め方です。

完璧な計画を用意する必要はありません。まずは自社の「モヤモヤ」を言葉にし、それを受け止めてくれるパートナーと出会うことから始めてみてください。共創の第一歩は、対話の場に足を踏み入れることです。

「新しい価値を生み出したいが、社内だけでは言葉にしきれない」「共創を加速させるための『場』や『体験』をどう設計すべきかわからない」。そんな悩みをお持ちの方は、ぜひ博展にご相談ください。

博展は、企業の想いや潜在的な課題を対話を通じて「言語化」し、戦略的な「体験設計」と「空間デザイン」によって共創のプロセスを具現化します。ワークショップの企画・運営から、アイデアを形にするプロトタイプ制作、そして成果を社内外へ効果的に発信する展示会やイベントまで、一気通貫で伴走いたします。

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