合成繊維や樹脂をはじめとする化学製品や産業資材、医薬医療関連素材等を扱う東レ株式会社は、静岡県三島市にある東レ総合研修センターの展示スペースを改修しました。
改修にあたり、東レグループが掲げる4つのサステナビリティ・ビジョンと社会貢献活動を背景に、社員のモチベーション向上につながる空間を設計しました。博展は、プロデュース、企画、デザイン、施工を担当。
今回は、東レ 鈴木さん、奥井さんとともに、博展 プロデューサー広瀬さん、藤原さん、デザイナー 高橋さん、松井さんが本プロジェクトの背景を語ります。
Index
- 自分たちが社会にどうやって貢献できるかをイメージしてもらう場。
- 情報をそぎ落とし、能動的に知りたいと思ってもらえる設計にしました。
- 資料のクオリティが高かったので社内にも齟齬なくイメージを伝えられました。
- クリエイティブの幅広さと技量の高さがありますね。
自分たちが社会にどうやって貢献できるかをイメージしてもらう場。
鈴木:この東レ総合研修センターは、主に東レグループ社員向けの様々な研修プログラムが行われる施設です。新入社員から役員まで様々な社員に使用されますが、他企業や地域の方もお越しいただくことがあります。
今回リニューアルした展示スペースは「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」にある課題に関連した4つの展示エリアと「東レの社会貢献活動」という合わせて5つのエリアで構成されています。
主に新入社員の研修の場として活用するので、これから始まる自分たちの仕事が社会にどうやって貢献できるかをイメージしてもらい、モチベーションのアップにつながる場所にしたいと思ってリニューアルしました。
高橋:このリニューアルではサステナビリティ・ビジョンにある東レグループが取り組む4つの課題を新入社員にもわかりやすく伝えること、そして全体を10分程度で見て回れるような体験設計にすることが求められていました。
「新入社員にも伝わること」はデザイナーの松井くんが各エリアのコンセプトを決めて進めてくれましたね。
松井:そうですね。わかりやすくするために、4つのエリアをそれぞれ「大」「図」「層」「人」のコンセプトで展示しました。
例えば、ロケットなど大きい製品を展示している「気候変動対策を加速させる」のエリアでは「大」というコンセプトを設定し、大判のイラストやグラフィックなどをダイナミックに表現しました。
松井:また、最後の「東レグループの社会貢献活動」エリアでは、社会貢献活動を1枚のタペストリーを使ってカテゴリーごとに展示しました。来場者と共に想いを創造できる空間にしたかったので、最後のボードにはサステナブルな社会の実現のためにできることや想いを書いて貼り付けていただくようなコンテンツにしました。
このように新入社員の方々により伝わるよう、すべてのエリアに適した表現手法を用いながら設計していきました。
広瀬:BtoB企業だと、業界や技術に知見のある顧客がターゲットになるんですが、今回は「新入社員にも伝わること」が基準になっていたので、むしろ私たちにとっては伝える情報の順番や内容を判断しやすかったです。
藤原:東レさんは、人体の中の小さな医療器具からロケットのように大きなものまで幅広くつくっているんですが、「こんなところまでやっているんだ」と私が最初に感じた感覚と、東レさんの新入社員の方々が初めに持つ感覚は似ている気がしますね。
奥井: 社員の私からしても、この小さな製品をどう展示すれば魅力が伝わるのだろうと思っていましたけど、松井さんのデザインでは新入社員でもわかりやすい展示になっていて、製品一つひとつを勉強いただいたんだなと感心しました。
こうして博展さんに東レの事業を理解いただいているからこそ成り立った空間なんじゃないかなと思います。
情報をそぎ落とし、能動的に知りたいと思ってもらえる設計にしました。
松井:これらすべてのエリアを10分程度で見て回れるような設計が必要だったので、情報を絞って印象に残る展示にできるよう工夫しました。
具体的には、展示を「製品」「使用シーンのイラスト」「短い説明や図解」の3つに集約させ、それ以外の情報は QRコードからそれぞれのwebサイトに遷移して見られるようにしました。
SNSを見ていても、つい数分前の情報もすぐ忘れてしまいますよね。これからの新入社員はさらに若い方々なので、情報をそぎ落とし、能動的に知りたいと思ってもらえる設計を大事にしました。
高橋:天井高が5mもあるという空間の特徴を活かして、縦に長いファブリックで空間を広く大きく見えるようにデザインしました。
製品が世の中にどう貢献しているかという背景をファブリック素材で表現し、さらに細かい説明はパネルに記載しています。
鈴木:「予算がないからファブリックに」ではなく、「この空間を生かすためにファブリックにすることで、同時に予算も抑えられますよ」と提案していただけたのはありがたかったです。限られた予算ではありましたが、開放感のある空間を仕切りながらエリアごとの統一感を出してくれました。
高橋:東レさんは、製品や技術の進化が速い会社なので、柔軟に更新できるファブリックを選んだという背景もありますが、ご満足いただけて嬉しいです。
資料のクオリティが高かったので社内にも齟齬なくイメージを伝えられました。
奥井:展示コンセプトが決まっていたので、製品は各事業部からスムーズに集まりましたが、記載するテキストの校正には苦労しましたね。また、途中で展示製品やレイアウトが変わってしまったんですが、その度に松井さんがパースを修正してくださったので、社内でも常に空間のイメージを揃えることができて助かりました。
松井:空間の共通認識を図れるように、来場者目線と俯瞰パースを交互にご覧いただきながら、東レさんと空間をブラッシュアップするやり取りは、自分にとってすごく楽しかったです。
鈴木:パースは担当者である私たちと空間をイメージを擦り合わせるためのものですが、これ自体にすごく価値があるんですよ。特にこのプロジェクトは企画段階から役員の承認が必要でしたが、パースを含めた資料のクオリティがとても高かったおかげで社内にも齟齬なくイメージを伝えられて助かりました。
参考画像も含めて、社内のメンバーで完成イメージのすり合わせができたので、製品やその情報も各部から自由に集めるのではなく、ある程度のフォーマットの中で集めることができました。
– 来場者の感想はいかがでしたか?
鈴木:社長からも評価いただいてますし、新入社員からのアンケートも「もっと知りたくなった」「東レで頑張ろうと思った」「業務のイメージがつかめた」という意見が多くあり、私自身も嬉しかったです。
奥井:興味を持ったエリアについてのアンケート結果も、インパクトのある「大」エリアが人気なのかなって予想してましたが、5つのエリアそれぞれに興味を持っていただけたのでバランスのとれた展示なんだろうなと。
藤原:大変嬉しいですね。そう言っていただけるように設計しているので、よりやりがいを感じられますね。
広瀬:つくった側の主観だけ聞くとポジティブな意見が多くなりがちですが、来場者に伝えたい情報がきちんと届いているのはすごく嬉しいですね。 「もっと知りたい」という能動的な気持ちが社員の方々の活力につながっているというのは、当初の目的は達成できたんじゃないかなと思います。
クリエイティブの幅広さと技量の高さがありますね。
奥井:私はこのような大きな展示を初めて担当したんですが、博展さんはどの職種の方でもコミュニケーションしやすく、プロジェクトを引っ張ってもらえたので助かりました。
また、提案力の高さ、東レの社員かのように事業を学んでいただける姿勢、そして、新入社員の声を一緒に喜んでいただける姿勢に、今日改めて価値を感じました。
鈴木:これまで博展さんのいくつかのチームと仕事させていただきましたが、どのチームも素晴らしいです。会社として「ここのクオリティは超えたい」とか「ここまでやりきりたい」という基準が高く、どの方にあたってもいいものを納品してくれるので、私たち発注側からするととても信頼できます。
また、営業・デザイナー・プランナー・制作に限らず多くの職種の方々がひとつのチームとして連携し、しっかり進めていってくれる安心感もありますね。
ただ私たちがお願いしたことだけではなく、本当に東レのことを考えて提案してくれることも信頼できますね。以前、HAKUTEN OPEN STUDIOにも呼んでいただき、アーティストとしてのクリエイティブもできることも知っていますし、クリエイティブの幅広さと技量の高さがあると感じています。
今回の展示を見て、「こういった展示をやりたい」という他事業部からの声があって 博展さんを紹介することもあるんですよ。
現状に満足せずどんどん進化していきたいという想いが強い会社だと思ってるので、新しいことに一緒に挑戦していきたいです。
高橋:東レさんと一緒にやっていると、プロジェクトの進め方やデザインへの考え方など、私たちも学ぶことがたくさんあります。 今後も長く 面白いことを一緒にやっていきたいです。
広瀬:チームとして評価していただけるというのはとても嬉しいです。 個人的には、来場者にきちんと伝わるものが作れているのかというのはやっぱり一番大事にしています。こういった仕事を今後も一緒にできたら嬉しいです。
OVERVIEW
CLIENT | 東レ株式会社 / 株式会社イエローツーカンパニー |
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PROJECT | 東レ総合研修センター改修工事 |
LOCATION | 三島 東レ総合研修センター |
CREDIT
プロデューサー | 藤原三郎、広瀬明生 |
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デザイナー | 松井渉、氏家実咲 |
アートディレクター | 高橋匠 |
プロダクトマネジメント | 渡邉芳博 |
グラフィックデザイナー | 佐藤恭子 |