INTRODUCTION

業界最先端の技術やデモンストレーションが集まるIIFESにおいて、会場最大の100コマを誇るオムロンのブース。

博展は全体のプランニングディレクション / 意匠の実施設計 / 各コンテンツのクリエイティブディレクション / 制作を担当。

展示内容やデモ体験を主役として捉えた時のブースの役割について突き詰め、ブースのあるべき姿を模索しながら、あらゆるコンテンツや意匠のブランドマネジメントに精微に取り組みました。

また、表現としてだけではなく、機能的な側面でも体験を細かく設計し、ブース内での効果的な顧客体験を実現。

ブースという”場”の作り方だけでなく、どこでどんな”顧客体験”を作っていくかを大切にしました。

プロデューサー 佐藤、デザイナー 歌代、プランナー 中島、グラフィックデザイナー 岡本、プロダクトディレクター 江口が舞台裏を語ります。

<左からデザイナー 歌代、プロデューサー 佐藤、プランナー 中島、グラフィックデザイナー 岡本、プロダクトディレクター 江口>

OUTLINE

ストイックな企業姿勢に伴走し高度なアウトプットを目指す

佐藤 (プロデューサー): 

オムロン様は京都に本社があり、西日本営業所の私が営業担当窓口でした。

今回で3回目のサポートなのですが、オムロン様の物事を突き詰める徹底した姿勢によって、年を重ねるごとに目指すレベルが上がっていきました。

今回はオムロン様社内でデザインを統括する部署が本格稼働する中でのスタートとなりました。

通常の案件と違い、オムロン様が建築家の松井亮氏にクリエイティブディレクターを依頼して、3社でタッグを組んで進行する体制で進めました。

コンペはプランを提案するというより、どういうパートナーであるかをアピールする場になったような気がします。

プロジェクト進行にあたっては、オムロン様が目指す高度なレベルに応えられる体制とメンバーの温度感を評価していただき、受注。

いいアウトプットを作るためにはプロセスも非常に大切にされる企業様なので、そういう意味で、一緒に進めていく”パートナー”として認識いただいてのスタートとなりました。

中島(プランナー):

先方のプロジェクトメンバーの方々と、綿密にコミュニケーションを図って取り組んだこれまでの経験が、プランニングをしていく上で非常に重要なポイントに。

また、大規模で長期間のプロジェクトになるため、複雑な体制や難易度の高い進行に対する体力面も必要とされましたね。

PLANNING

場の作り方だけではなく、どんな”体験”を作っていくかを大切に

中島(プランナー):

博展としては、見える部分のデザイン設計に意識が向いてしまいがちなところを、ブースという”場”をどのように作り、その場を使ってどのような”体験”を生み出すかという視点を大切にしました。

実際に訪れた方々がどのようなフローでイベントを体験して、そのイベントの前後でどのような心理的変化が起きるか、ブランドに対する認識がどう変わるのか。

整理されたデザインのアウトプットだけが目的だけではなく、それによって来場者の方々がどんな気持ちになるか、どういう情報の取得の仕方をするか、その場で生まれるコミュニケーションはどのようなものか、その後どう情報を持って帰っていただけるか。

これらを徹底的に突き詰めることで、精度を上げていきました。

歌代(デザイナー):

例えば、最適な通路幅を設定する際には、過去の混雑時のデータで”混雑”の定義づけをするところからスタート。

混雑時でも滞りなく空間の機能が発揮される通路幅を模索したり、プレゼンテーションの観覧人数によって生まれる人だかりを考慮した運営計画を練ったりしました。

そうしたロジックに加え、実寸検証で感覚的に”来場者がそれを見た時にどう感じるか?”という点での確認を行い、そのようなプロセスを経て機能する空間を設定していきました。

岡本(グラフィックデザイナー):

グラフィック面で重視したのは、見た目の美しさやブランディングの観点だけではなく、コミュニケーションツールとしての情報整理の仕方など、常に顧客体験を中心に考えて追求することです。

来場者とオムロン様の社員の方々との間で活発なコミュニケーションが生まれ、必要最低限でも分かりやすく、しかも体験を促すツールとして機能するグラフィックやサイン計画とはどのようなものか。

それをどう実現するかを考え、検証しました。

例えば、ソリューション情報が掲載されたモニターグラフィックひとつとってみても、イベント本番で実際に来場者が視認する距離、その場に何人の人だかりができるかをシュミレーション。

その状況下で一番最初に目に飛び込んでくるべき情報は何で、その文字の大きさはいくつが最適なのか、という細かい設定を検証しつつ、情報掲示の方法を模索しました。

KEY FACTOR

展示会の感覚を超えた可能性を探り、「過去最高の空間」に

歌代(デザイナー):

デザインや構造、仕様に対する松井氏の建築的なアプローチは、我々が短期のプロモーション空間の設計で固定概念化しているアプローチとは異なる部分もあり、新鮮で学びも多くありましたね。

素材は通常の展示会で使用しないような、アルミ部材、金物エキスパンドメタル素材など、徹底的にオムロン様が目指す世界観に近づけるよう本質的に検討を重ねました。

江口(プロダクトディレクター):

時間やコストといった様々な制限の中で、松井氏のイメージを元に、どう理想に近づけていくかを社内デザイナーと何度も検討を繰り返して、仕様や構造の擦り合わせを行いました。

展示会の工期は1日半程度。限られた条件の中で、いかにオムロン様が目指す印象を実現するかを軸に、できるだけ効率的に進行し、来場者には見えない裏側を工夫するなど、コストを抑え、工期を短くするために、通常の展示会の感覚を超えてあらゆる可能性を探りました。

佐藤(プロデューサー):

博展の強みは、こうした体験設計を、社内で一貫してできる体制にあると思います。

プランニングからデザイン、施工までを一貫することで、プロジェクトメンバーが全体のコンセプトやクライアントの意図に対する共通認識を持ち、フィジビリティを高めたアウトプットを提供できると思います。

今回のプロジェクトの責任者の方が、社員の皆さんが集まる朝礼の場で「過去最高の空間ができた」とおっしゃっていただけたことは、オムロン様の徹底して突き詰める姿勢が詰まった空間が出来上がったということだと理解しています。

博展にとっては、最高の褒め言葉です。

OVERVIEW

CLIENTオムロン株式会社

CREDIT

プロデューサー 佐藤 達也
プランナー 中島 健希
デザイナー 歌代 悟
プロダクトディレクター 江口 明徳