
2025年大阪・関西万博において、広島の「原爆の日」前日の8月5日から長崎の「原爆の日」である8月9日までの5日間、広島県ブース「RE:WORLD HIROSHIMA」がギャラリーEASTに出展されました。
被爆80年を迎え、国内外から訪れる万博来場者に向けて、人類初の原子爆弾投下から復興を遂げた広島を見て・聞いて・体験できるコンテンツを企画。さらに、本出展のために特別に制作されたオリジナルキャラクターたちは食を中心に、自然、産業など多岐に渡る広島の魅力を表現しました。
本記事では、広島県商工労働局 観光課 BUYひろしま推進グループの3名のご担当者をお招きし、博展の2名のメンバーとともに、2025年大阪・関西万博における広島県ブース「RE:WORLD HIROSHIMA」のプロセスを振り返りながら、本プロジェクトにかけた想いを語っていただきます。
Index
・国内外から注目される2025年大阪・関西万博で、広島の「平和」と「食」を発信
・イベントの企画・空間デザインだけでなく、キャラクターデザイン、PR施策など博展の総合力を発揮
・万博会場の制約がある中でもワークショップで得られた意見とアイデアで最適解を導く
・想定の3倍を超える来場者が訪れ、ブースが一体となる大盛況のイベントに
・密にコミュニケーションを取りながら、ワンチームで広島の魅力を伝える
国内外から注目される2025年大阪・関西万博で、広島の「平和」と「食」を発信
ー今回、広島県として大阪・関西万博へブース出展にいたった背景や博展への印象をお聞かせください。
瀬藤(広島県 商工労働局 観光課):2023年にG7広島サミットが開催されたことも契機となり、広島県では積極的に観光客の誘致を図っていました。2025年大阪・関西万博においても、G7広島サミットに続くインバウンドも含めた観光誘客につながる大きな機会であるととらえ、万博で広島県のブースを出展することにいたしました。また、2025年は被爆80年ということもあり、平和都市として復興を遂げた広島の姿と人々を支えてきた食文化の魅力を発信するというコンセプトを設定し、公募型プロポーザルにより広島県ブースの企画運営をいただく事業者様を募集いたしました。
中村(広島県 商工労働局 観光課):今回の公募型プロポーザルでは、広島県庁内だけでなく外部の方にも選定委員として参加していただき選定委員会を実施しました。最終的に8社にご応募いただき、各社から魅力的なアイデアをご提案いただいた中で、博展さんの提案は読めば読むほど魅力を感じたように思います。被爆から復興した今の魅力溢れる広島をストーリーとして伝えながら、広島の食文化も訴求するという難しいテーマだったと思いますが、メインコンテンツなど来場者が体験しながら広島の魅力を感じ取れるのではないかと期待感を持ちました。「被爆80年」と「食」という全く異なるテーマをつなぐメインコンテンツや広島県らしいキャラクターもご提案いただき、全体の統一感が出ていたのも評価につながったのではないかと思います。

ー博展内でまずはどのように提案をまとめていったのかをお聞かせください。
上田(博展 クリエイティブディレクター):私は広島県呉市出身で、被爆3世というルーツもあるだけに今回のプロジェクトに対して格別な想いがありました。今回「被爆80年」と「食」というテーマでしたが、広島県の特徴は多岐に渡ります。まず、どんな魅力があるのかを洗い出していきました。平和都市としてはもちろん、平清盛にゆかりの深い歴史もあり、食に関してもお好み焼きがあれば牡蠣もレモンもあり。さらに地形も海や山があり、プロスポーツもあったりと魅力を挙げるときりがありません。広島県の中で点在する魅力を統一した表現にするため、地域ごとの名産をモチーフにしたキャラクターを開発するに至りました。博展には空間デザインの部署がある他、外部デザイナーとのコネクションも多くあるため連携を図りながら、体験型コンテンツの内容を詰めていきました。
松野(博展 プロデューサー):私は大阪府出身で学生時代に広島に訪れたことはありましたが、当時は被爆のイメージが強かったです。今回、営業プロデューサーとして主に全体の進行・管理に携わりましたが、平和都市だけじゃない広島県の魅力をプロジェクトを通して実感することができました。

イベントの企画・空間デザインだけでなく、キャラクターデザイン、PR施策など博展の総合力を発揮
ー「RE:WORLD HIROSHIMA」というコンセプトの基、具体的な体験コンテンツの企画やポイントをお聞かせください。
上田:ブース内はメインコンテンツを中心に、広島ならではの豊かな食文化を発信する「エナジーゾーン」と、被爆の実相や復興の歩みを知ってもらう「ピースゾーン」の2つで構成しました。
ブース中央には、メインコンテンツとして被爆から復興までの歴史、今の広島の魅力をインタラクティブに体験できるデジタルコンテンツを設置しました。大画面のプロジェクション映像を通じて、広島が持つ力強いエナジーを感じてもらうとともに、手を上げるアクションによって音を鳴らしたり、キャラクターを動かしたり、からだ全体で広島の復興と魅力に触れられる体験型のデジタルコンテンツに仕上げました。

エナジーゾーンでは今回開発したオリジナルキャラクターと連動させ、広島の食文化の歴史や風土、食べ方などから五感を使って知ってもらえる展示にしました。中でも、大阪・関西万博限定の「オリジナルお好み焼味マイふりかけ」は、創業明治34(1901)年の田中食品株式会社さんにご協力いただき、「おいしい!広島」を視覚・味覚・香りで体験できるコンテンツにしました。
その他にも、動画で広島グルメに没頭できる没入型特設ブース、万博オリジナル広島キャラクターのコースターのクラフト体験、ダーツを使って県内市町のノベルティが獲得できる体験も企画しました。
ピースゾーンではVR技術を用いた体験プログラムを実施し、被爆当時の状況、そしてそこから復興に向けて立ち上がる人々の想いを体験できる内容に構成しました。また、来場者が折った折り鶴を壁一面に飾る折り鶴ウォールを設置したり、SNSと折り鶴を通して平和のメッセージを世界に発信する「#未来へのおりづるキャンペーン」と連携しました。

松野:今回のプロジェクトでは、イベント企画や空間デザインだけでなく、キャラクターデザインやWEB・SNSプロモーション、メディアへのPR施策など幅広く担当しました。「リアル・デジタルを通じて人の“体験”を統合的にデザインする」博展だからこそできる総合力を発揮できた案件だと思います。

佐藤(広島県 商工労働局 観光課):最初の印象としてコンテンツの豊富さに驚きました。「平和」と「食」という2つのテーマを両立させられるのか懸念もありましたが、プロジェクトが進む中で親和性が出て、ブース内で一つにまとまっているのを見るとチャレンジ精神の大切さを改めて感じました。
瀬藤:メインコンテンツでは被爆から復興までのストーリーと、食という広島の魅力を伝える2軸が上手く融合されていて、そこにワクワク感を感じたことを覚えています。万博オリジナルのキャラクターも会議が進む中でどんどんブラッシュアップされていき、ホームページに掲載されたりメインコンテンツの映像として形になったときには愛着が増しました。メンバーそれぞれ推しのキャラクターもいて、みんながキャラクターに対して思い入れがあったように感じます。
中村:当初、キャラクターは20種類ぐらいでしたが、追加していただきたいキャラクターがたくさんいて最終的には24種類できましたね。
万博会場の制約がある中でもワークショップで得られた意見とアイデアで最適解を導く
ーテーマのひとつである「食」を発信する中で、大阪・関西万博会場内で飲食禁止という制約があったと伺いました。どのようなアイデアで打開されましたか?
上田:まず、「食」をテーマに発信するにあたり、広島県の方々が「食」に対してどのような想いがあるかヒアリングするために、ワークショップを開催しました。
中村:広島県の食に関する取り組みを促進する「おいしい!広島」プロジェクトに関わる広島県庁の観光や広報、農林水産系の部署、広島県観光連盟の方にも参加していただきました。博展さんメンバーを含め総勢20名ほどでアイデアを出し合いましたが、そのあと博展さんが上手くまとめてさらにブラッシュアップして提案していただいたことが印象に残っています。ワークショップから出た意見からコンテンツをつくり上げていく取り組みはとても新鮮で、県庁内でもこの手法はとても好評でした。いろいろな視点からの意見・アイデアを企画に盛り込むきっかけにもなりましたし、改めて同じ目標や進むべき方向性の再確認にもなり、一体感が生まれたと思います。
上田:ワークショップで印象的だったのが、参加者の方から「美味しいと言っているからには、中途半端に美味しいものを出したくない。」という意見でした。「であれば、むしろもどかしいくらいのところで寸止めするのはどうか」と話が盛り上がり、その後の「ふりかけ」のアイデアにつながりました。香りを楽しめるふりかけを通じて「広島名物を食べたい!」という感情を最大限引き上げてお持ち帰りいただくという体験は、飲食禁止会場ならではの発想でした。

松野:さっそく県庁の方々と一緒に田中食品さんへも訪問し、前向きにご協力いただけてとても有り難かったです。
中村:田中食品さんでトッピングの配分や香りなど試食させていただきました。元々、広島の食材である牡蠣やレモン味のふりかけもありましたが、今回は関西開催という土地柄もあり、お好み焼味をベースにしようという意見にまとまりました。
松野:博展内は当日を想定し、フレーバーを選んでブレンドし、お渡しするまでにどのくらいの時間がかかるかなど検証しました。おかげさまで、このふりかけのために再度万博に来場される方も続出するほど人気コンテンツになりました。
想定の3倍を超える来場者が訪れ、ブースが一体となる大盛況のイベントに

ーイベント当日の運営オペレーションの進行などお聞かせください。
松野:オープニングセレモニーでは、広島県副知事(現・広島県知事)にも登壇していただきました。セレモニーの途中、ふと会場の外を見るとすでにお客様の列ができていて、率直にこれはすごいことになりそうだと感じました。
佐藤:今回、「HITひろしま観光大使」に登録されている方々に募集をかけ、ボランティアに参加していただきました。松野さんがボランティアの方との窓口として密にコミュニケーションを取ってくださって、活動しやすい環境づくりをしていただきました。
松野:ボランティアは全国から応募することができましたが、約6割は広島県在住の方が参加してくださいました。本イベントを通して観光大使同士のコミュニケーションの場にもなり、また私自身もみなさんから温かい言葉をいただけて嬉しかったです。
瀬藤:想定以上の来場者が来られて列もすごかったですが、キャラクターをモチーフにした最後尾の案内プラカードや時間制限のプラカードなどを事前につくっていただいていて、運営面も安心してお任せすることができました。
中村:思ったよりもお客様が来てくださって、オリジナルふりかけやコースター、折り鶴用の折り紙がすぐになくなりそうになり、追加の買い出しなども発生しましたが、博展さんが柔軟に対応してくださいました。運営スタッフ、ボランティアの方と一緒に本イベントをつくり上げることができたと改めて感じています。まるで、大きな文化祭をやっているような気持ちでした。準備段階から当日の運営まで、ほんとに多くの方に協力いただき、大盛況で終わることができました。関わっていただいた皆様に感謝です。

瀬藤:メインコンテンツは身体全体の動きと連動するプロジェクション映像の企画だったので、せっかくなら楽しんでもらいたいと思い、県職員も博展さんも一緒に参加しながら場を盛り上げたのも思い出に残っています。一体となって広島県の魅力をPRできたと感じています。
また、博展さんが広島だけでなく、関西圏のテレビ局や新聞社の方を誘致してくれたことで、オープニングセレモニー後にも連日取材に来ていただけて、メディアからもかなり注目してもらえました。
上田:オリジナルのふりかけはブース内のアンケートに答えてくださった来場者にプレゼントしましたが、SNSで拡散されたこともあり、予想を遥かに超える大人気コンテンツに。1日300食を予定していましたが30分で在庫が切れてしまうほど。また、コースターは広島県観光連盟のSNSをフォローすることで参加できましたが、こちらも人気があり、新規SNS登録者数が大幅アップにつながりました。
松野:SNS発信でいうと、熱狂的な万博ユーザーが広島県ブースを発信してくださって、周知につながりました。波及が上手くいったと感じています。

密にコミュニケーションを取りながら、ワンチームで広島の魅力を伝える
ー最後に、今回のプロジェクトを振り返ってみていかがですか?
中村:1年に渡る長い期間のイベントを委託させてもらいましたが我々のオーダーにも真摯に向き合い、柔軟に対応してくださり、想像以上の提案をいただいて、個人的に毎回ミーティングが楽しみでした。
観光誘客を目指していましたが、今回のイベントを通して広島に関心を持ってもらえたのではないかと手応えを感じています。実際、VR体験をされた方が広島のツアーを申し込んだというお話も伺うことができました。

瀬藤:博展チーム全員が、責任感を持って今回のプロジェクトに取り組んでいただいていると常日頃から伝わってきました。だからこそ、最後まで良い関係を築きながら終わることができたのかなと思います。機会があれば万博以外でもでまたご一緒したいですね。
佐藤:プロジェクトを通じて明確な目標を共有しながら進行されていて、途中参加でもやるべきことが分かりやすく仕事がスムーズでした。わたしは途中からプロジェクトに参加したため、携わった期間は短かったですが、終わる時には寂しいなと思うほど、楽しみながら関わらせていただきました。
上田:チームもなるべく広島出身の人たちを入れながら、広島の濃い魅力を表現したいと様々な体験コンテンツを企画しました。皆さんの万博に対する熱い想いをくみ取り、博展チームはその想いをアイデアに変えて形にすることができたのも、皆さんのお力添えがあったからこそだと感謝しています。
松野:1年間という長い期間ご一緒させていただきましたが、タイトなスケジュールで返答をご依頼した際にも柔軟にご対応いただき、こちらとしても身が引き締まる思いで取り組ませてもらえました。会期が近づくにつれ博展のメンバーも増え、コンテンツの最終段階から確認事項も増えましたが、皆さんの迅速なご対応に救われました。コンテンツや運営面でご迷惑をおかけしたと思いますが、想定の倍以上の来場者数など成果を出すことができ私たちも嬉しかったです。入社2年目ですが、万博×広島県という大きなプロジェクトに携わらせていただき、思い出深い経験を積むことができました。

OVERVIEW
| CLIENT | 広島県 |
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| PROJECT | 大阪・関西万博(EXPO2025)広島県ブース「RE:WORLD HIROSHIMA」 |
| VENUE | 大阪・関西万博(EXPO2025) ギャラリーEAST |
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2025年大阪・関西万博において、広島の「原爆の日」前日の8月5日から長崎の「原爆の日」である8月9日までの5日間、広島県ブース「RE:WORLD HIROSHIMA」がギャラリーEASTに出展されました。 |
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