INTRODUCTION

当たり前が大きく変化した2020年。
大切な人に会えないもどかしい思いをされた方もいるのではないでしょうか?

株式会社POLA(以下POLA)は、2021年9月18日から11月17日までの約2か月間、ポーラギンザのポップアップスペースにて「Care for Dear‐大切な人へ、想いを届けよう‐」というイベントを実施。大切な人との「繋がり」をテーマにした本イベントは、創業者の想いやPOLAのアイデンティティが空間に落とし込まれた、温かみのあるイベントでした。

このイベントにおいて、博展は企画プランニングから空間デザイン、アートディレクション、コンテンツ制作まで幅広く担当。今回は担当プランナーの中島 / アートディレクターの平山 / プロデューサーの山口が、イベントの成功要因や制作秘話を語ります。

左から山口(プロデューサー)、平山(アートディレクター)、中島(プランナー)

OUTLINE

POLA創業時から受け継がれる“大切な人を想う気持ち”を
来場者に体験してもらう“ブランド体感型イベント”

山口:
今回のイベント「Care for Dear‐大切な人へ、想いを届けよう‐」は、POLA様の創業時から受け継がれてきた「大切な人を想う気持ち」をコンセプトにした体感型イベントでした。

POLA様の創業は、創業者の鈴木忍氏が大切な妻の手荒れを治すために独学でハンドクリームを作ってプレゼントしたことから始まり、それが今でもPOLA創業の原点となっています。商売というよりも、妻への、一人の人間への愛からすべては始まりました。

今回のイベントでは、この「1滴のハンドクリームから創業し、手から手へと広がり続けたPOLAのストーリー」を体験できるローラーコースターの制作も担当しました。

また、空間全体に施されたコンテンツからは、各プロダクトに込められたPOLA様の想いや、POLAブランドが大切にしてきた心遣いを感じ取ることができます。

本イベントの開催時期である9月はPOLA様の創業月であり、SDGs強化週間でもあるので、創業時から受け継がれている“大切な人を想う気持ち”をコンセプトにブランドメッセージを社会へ届けることに大きな意味があると考えました。

平山:
博展とPOLA様は長年お付き合いをさせていただいており、Red B.AやWhite Shotなど多くのブランドのプロモーションイベントをサポートさせていただいています。そういった繋がりがあって、今回はPOLAのブランドデザイン部の方からPOLA2029年ビジョンの「We care more」をテーにしたイベントを開催したいとお声がけいただきました。

山口:
2029年に創業100周年を迎えるPOLA様は、2021年に「創業当初から大切にしてきた『ケア』の精神を社会に発信すること」を目指した「POLA2029年ビジョン」を発表しました。

そこから、 「We Care More. 世界を変える、心づかいを。」という行動スローガンを掲げて、POLAから人へ、社会へ、そして大きくは地球へと「ケア」の精神を拡張しながら、POLA様の想いに共感する人を増やし、繋げていく活動を強化しています。
具体的には、女性支援活動への寄付や地方創生に貢献しているビジネスリーダーの活動支援など、「私と社会の可能性を信じられる、つながりであふれる社会」の実現に向け、様々なサステナビリティ活動を展開しています。

PLANNING

中島:
今回プランニングとデザインにおいては3つのポイントがあります。

1:来場者が自分事化しやすいブランドメッセージの設定

今回のイベントは2029年のビジョンにある「We care more」という未来に向けたブランドメッセージを、「体験」という手法を使いながらも、来場者に身近なものとして感じ取ってもらうことが非常に重要でした。

POLA様社内の関係部署の皆様と対話を繰り返しながら、今回の企画で伝えたい想いや表現したい世界観を定義しました。

そして、それらを最大限に伝えるための体験や空間デザインを設計する過程で、POLA創業時から受け継がれている“大切な人を想う気持ち”を体験者自身の未来を通して感じ取っていただけるよう、企画コンセプトを「Care for Dear」に決めました。

2:POLA創業ストーリーを心に残る体験に昇華する

今回「Care for Dear」というコンセプトを体験に落とし込む際、POLA創業の原点である大切な人を思う気持ちと、「手から手へ」受け継がれてきたブランドのストーリーを、ローラーコースターを用いて表現しています。

このローラーコースターは、体験者自身の大切な人を思い浮かべながら体験することでPOLA様が大切にしてきた心遣いの素晴らしさに改めて気付き、そしてその気持ちを体験者自身の手から大切な人の手へ渡してほしいというメッセージが込められています。

それによって、よりPOLAというブランドや、他者への心遣いを通した社会との繋がりを深く意識できる体験設計になっています。

3:動きあるデザインが伝わる空間クリエイティブ

平山:
今回のイベントはPOLA 2029年ビジョン公式サイトのグラフィックを空間デザインに落とし込んでいます。

2029年ビジョンのグラフィックを担当したアーティストMACCIU氏のグラフィックを空間で表現する際には、どこまで手のモチーフを踏襲するべきか、イラストは一枚単位でバラして使っていいのかなどのレギュレーションを都度確認して、MACCIU氏のデザインらしさを担保しながら空間に昇華していきました。

https://www.pola.co.jp/wecaremore/

MACCIU氏のグラフィックは、非常に明るく、インパクトがあり、元気がもらえる作品なので、それを空間で大胆に表現するために、色味には徹底的にこだわりました。

空間全体を見たときに、実際のグラフィックで使われている色の比率から逸脱してしまうと、MACCIU氏らしさを失ってしまいます。しかし、グラフィックのままの比率では空間が静かになってしまうので、そこのバランス感は綿密に調整しました。

外から店舗を目にしたときや、店内をぐるりと見渡したときなど、どこの視線を切り取ってもMACCIU氏の動きのあるデザインや色味が伝わる空間を表現しました。

KEY FACTOR

POLAブランドに対するメンバーの深い共通理解

平山:
博展とPOLA様は長年お付き合いさせていただいているので、今回の担当メンバーも各ブランドをはじめ、POLAという企業に対して深い理解がありました。そういった点が、今回のようなコンセプトの検討段階から企画に参加させていただけた要因だと思います。

また、博展として一気通貫で携わらせていただいたので、アウトプットのクオリティを担保できたこともキーポイントでした。
博展にはアカウントとして全体を統括する営業、課題整理をして何を打ち出すべきなのかを考えるプランナー、そしてそれを実現させるプロジェクトマネージャーなど、各分野でのプロフェッショナルが揃っています。

アイデアを具現化するまでのプロセスや認識を統一しながら進行できたので、クライアントの「やりたいこと」をしっかり形にできたのだと感じています。

山口:
MACCIU氏の世界観を表現するために天井の造作は必要だと考えていたのですが、それをどう実現するかが苦労した点ですね。

具体的には、造作物を安全に天井から吊り下げるためのガイドラインを整備し、毎週計測しに行ったり、地震が起きるたびに点検に行ったりなどのメンテナンス業務まで博展で徹底することで、一つひとつ課題をクリアしてクオリティの担保に務めました。

NEXT TRY

ブランドや店舗の在り方が目まぐるしく変化する時代に
博展が新しい店舗体験を定義していきたい

山口:
今回のように長期間かけて開催するポップアップイベントは、今後博展としてもさらに力を入れていきたい分野です。しかも、今回はポーラギンザのスタッフさんにもご協力いただきながら店舗の世界観を作っていったので、とても質の高いアウトプットが出来ました。

今後も、今回のノウハウを生かして様々な取り組みに挑戦していきたいですね。

平山:
店舗のあり方自体が日々変化している中で、単に商品を売る場所という意味合いだけでなく、ブランドを体験できるという側面でも機能する場所を作っていきたいと思っています。

POLA様はプロダクトだけでなく、アートの文脈を用いて知的好奇心をくすぐるようなコンテンツをたくさん発信しているので、それをポーラギンザで、イベント性を持たせて発信していけたら、ほかのブランドとは違うPOLAならではのコミュニケーションやブランド価値が発揮できるのではないかと考えています。

中島:
今回のプロジェクトは、ブランドの掲げている大きなビジョンの実現に向けて「まずは身近なところから」という観点で小さな一歩ではありますが、それでも着実な一歩として、体験者の行動を通じて社会を前に進めることができたプロジェクトだと思っています。

ブランドのあり方や生活者との関わり方が時代やトレンドに合わせ変化したとしても、ブランドから発信するメッセージを最大化するだけでなく、「社会に対して良い影響を与える一歩を踏み出す」そういった軸を大切にしながら、今後もプロジェクトをリードしていけるように頑張っていきたいです。

OVERVIEW

CLIENT株式会社POLA
VENUEポーラギンザ ポップアップスペース

CREDIT

プロデューサー 山口 文也 / 木島 大介
プランナー 中島 健希
アートディレクター 平山 彬子
デザイナー 西塚 有紗 / 青栁 龍佳
グラフィックデザイナー 佐藤 恭子
デジタルディレクター 金 兌妍
プロダクトディレクター 熊崎 耕平 / 垣本 晃佑 / 松木 和哉
グラフィックプロダクション 渋谷 友美