INTRODUCTION

日本カルチャー発信の拠点として知られる商業施設「jing」で、自動車メーカーHyundaiのポップアップイベント「Hyundai House Harajuku」が、2022年2月19日〜 5月28日の期間限定で開催されました。

先進的なテクノロジーで世界から注目を集める自動車メーカーの日本再参入。Hyundaiが日本のお客様に提供したい価値を表している“LIFE MOVES”や、 “ZEV※から生まれるサステナブルで創造的な新しいライフスタイル” を表現するイベントで彩りました。

※ZEV(Zero Emission Vehicle)=走行時に二酸化炭素等の排出ガスを出さない電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)の総称

今回は「Hyundai House Harajuku」の空間デザインと設営に携わった、プロジェクトマネージャーの太田とデザイナーの跡部が制作の裏側について語ります。

太田 智己
2015年入社。2016年よりtoC系クライアントのイベントプロモーション案件を担当。2021年よりクリエイティブエージェンシーとの協業を軸にプロデュース/プロジェクトマネージメントを担当している。

跡部 隼也
2016年入社。大学では、プロダクトデザインを専攻し、入社後空間デザインの道へ。toBクライアント事業を3年経験したのち、toC事業に異動。現在は、イベントプロモーション、プライベートショー、ウィンドウディスプレイを中心にデザインを行う。ユーザーの感情や行為の設計を意識し、デザインを行う。

OUTLINE

新型車PRと企業ビジョンの具現化を図り、ティザーイベントやポップアップイベントとして昇華

太田:クリエイティブエージェンシーのDrillさん、デザインスタジオのWe +さんにお声がけいただき、原宿で開催されているポップアップイベント「Hyundai House Harajuku」の空間デザイン、新型車のお披露目となる発表会、それに併せたティザーイベントを担当しました。

跡部:2009年、乗用車部門の日本市場は撤収していたのですが、今年2022年2月に再参入を果たしています。再参入にあたっては電気自動車の「IONIQ 5 (アイオニック ファイブ) 」と、汚染物質を排出しない水素電気自動車の「NEXO (ネッソ) 」の2台を展開しているのですが、その販売受付開始に先駆け、六本木と渋谷でティザーイベントを開催。「環境意識の高い若年層」をターゲットに、ブランドの訴求を行いました。

太田:ティザーイベントの会場にはあらかじめ曇りガラスで囲まれた状態で車両を配置しておき、行き交う人々の注目を集めるような仕掛けにしていました。

跡部:「なにが起るのだろう?」と期待感を持ってもらい、発表会への注目を集めることができたと思います。

また、発表会に合わせてティザー会場の車両のアンベールを行い、その後すぐに試乗できるようになっています。もっとも注目が集まり、「試乗したい!」と思ったタイミングですぐに試乗できるスムーズな体験を意識しました。

跡部:発表会の会場は「ピクセル」をテーマに空間設計を行いました。スクエアを基調にしたシンプルな構成、サステナブルな素材を用いたデザインはポップアップイベント「Hyundai House Harajuku」のデザインテーマと共通のもの。エントランスには大型のモニュメントを設置し、一連のコンセプトを印象付けました。

太田:車両には再生素材やトウモロコシを原料とした自然由来の素材を使用しているんですが、会場内にもそのマテリアルをモチーフにしたビジュアルを取り入れるなど、体験の細部にブランドを知るフックを散りばめました。

跡部:ポップアップイベント「Hyundai House Harajuku」は、「LIFE MOVES」と、IONIQ 5とNEXOのコンセプトを体感できる場所。メインコンテンツは、新商品に込められた世界観を五感で楽しむことができるインスタレーションです。

太田:「LIFE MOVES」に加え、「働く・遊ぶ・纏う・食べる・住まう」の5つのサブコンセプトをコンテンツに組み込んでいます。

例えば、IONIQ 5に蓄電された電力を活用したライフスタイル空間を表現した「IONIQ 5 Living」や、車の中で新技術の体験ができる「Driving Theater」、他にも車内インテリアに使われているサステナブル素材を、様々な角度から観察できる「Library」など。

跡部:メインコンテンツに加えて、会場内には特設ギャラリーも展開しています。Hyundaiの思想に共感してくれたアーティストやデザイナーが作品を通じて「新しいライフスタイル」を表現しています。

《画像》建築家の長坂常さんによる「Mobile House “旅する住まい”」

太田:基本的にV2L機能を備えている電気自動車があれば、さまざまな場所に電力を持ち出せるようになって、生活の場の選択肢が増えますよね。Hyundaiの商品があることで生まれる、新しい生活を想起してもらえるような機会になったと思います。

PLANNING

商品のアイデンティティを素材で表現。
ブランドの世界観に没入するインスタレーション空間

跡部:ポップアップイベントのデザインテーマは、デジタル世界を構成する最小単位である「ピクセル」です。そういった、小さなピクセルという存在が躍動する世界に没入する空間として「Parametric Pixel (パラメトリックピクセル)」というインスタレーションを制作しました。

太田:映像を鏡に移したこの作品は、作業場でプロジェクターを使って実験を繰り返しながら、手探りで制作していきました。

太田:メインコンテンツである新型車の展示スペースでは、2台のクルマが対になって配置され、それぞれのコントラストを表現しています。

EV車・IONIQ 5の展示は「IONIQ 5 Living」。IONIQ 5は、あらゆる場所で電気を供給できるという特徴があります。そこから発想して、IONIQ 5電力でキッチンやリビングを機能させられることを視覚的に表現しました。

跡部:水素自動車・NEXOは “NEXOから流れ出る水が循環する庭” をコンセプトに「NEXO Garden」という展示空間をつくりました。水流によって丸みを帯びた、「川の石、リバーストーン」からインスピレーションを受けた車体デザインになっていることから、水や火といった自然の要素を組み込んだ空間に設計しています。

太田:また、水素電気自動車としてのアイデンティティを表現するために、サステナブル素材を展示全体に使用するといった工夫もしています。集成材や、押し固めた布を削った“ニューロス”、コーヒーの籾殻が入ったコンクリートなどです。

跡部:素材のテクスチャを活かした会場構成そのものが、「ピクセル」というコンセプトを体現しています。商品のテーマや特徴を知ってもらえる空間になったと思います。

KEY FACTOR

“イベントコンセプトを言語化し「ストーリー」を作り上げることで、一本軸の通ったイベント設計ができた”

跡部:イベントのコンセプトを空間の中にどう落とし込むかは本当に頭を悩ませましたね。コンセプトがシンプルであったため、表現の選択肢が無数にありましたから。

そこで、ポップアップイベント一連の体験を通じて何を受けとってもらえれば成功なのか?と、来場者目線から考えてみたんです。来場者の感情の道筋から逆算したことで、体験設計に「ストーリー」という太い軸が通りました。それがそのまま、デザインや展示導線の屋台骨になっています。

太田:また、このストーリーを言語化したことで、クライアントやパートナー企業との間に共通理解が生まれ、制作の足並みを揃えるための拠りどころになりましたね。

跡部:発表会の台本作り、空間デザイン、そして設営まで全ての局面で力を発揮できるスタッフィングは、博展の強みだと改めて感じました。

太田:先方やパートナー企業の方からも、今回のイベントに対して高い評価をいただいています。イベントでの試乗率も高く、クライアントが当初掲げていた目標を達成できましたし、平日でも試乗している方が結構いらっしゃって、予想以上の反響に驚きましたね。

跡部:Hyundaiの日本での新たなスタートに立ち会えたこと、またクライアントが作り出す社会的価値や魅力を伝えるお手伝いができたことを嬉しく思っています。

OVERVIEW

CLIENTHyundai Mobility Japan 株式会社
VENUEjing

CREDIT

プロデューサー 太田 智己 , 楯 誠志郎 , 竹中 真由子
空間デザイナー 跡部 隼也 , 青栁 龍佳
プロダクトマネジメント 高橋 大輔 , 松木 和哉 , 高島 譲ニ , 大野 陽介 , 渡辺 真介