INTRODUCTION

一度は完全にストップしてしまった展示会ですが、その多くがリアルとオンラインで開催するハイブリッド型に変わったことによって、出展社も従来の手法に囚われない新たな情報の伝え方を求められています。

「人とくるまのテクノロジー展 2021」は、初めてのオンライン×リアルのハイブリッド開催を予定していましたが、リアル展示会は中止に。そんな中、株式会社SUBARUは新型レヴォーグに搭載された技術を“体感的に”伝える特設サイト「移動を感動に変える10の技術」を開設し、多くの人にわかりやすく技術を伝えました。

「今後は単なる情報サイトではなく、“体験”を重視したオンライン施策を求められるだろう。」
今回は本案件の企画から制作までを包括的にサポートし、新しいオンライン体験を作り上げたプランナーの山中、WEBディレクターの水間、デザイナーの鈴木がオンラインプロモーションの今後を紐解きます。

OUTLINE

ユーザー体験型情報サイト「移動を感動に変える10の技術」

山中:
SUBARU様は「人とくるまのテクノロジー展」オンライン開催を受けて、「移動を感動に変える10の技術」をテーマに、ユーザー体験型情報サイトを開設。

「休日にドライブでちょっと遠くまで出かけてみよう」というストーリーを軸に、マウス / トラックパッドのスクロールで画面上の新型レヴォーグを操作し、搭載された10の技術を体感できます。

実際に自分の手を動かして、車線変更時や交差点に潜む身近な危険から身を守る技術を体験でき、非常にわかりやすいサイトになっています。

“リアルイベントが中止になっても成り立つ提案

山中:
今回「人とくるまのテクノロジー展」は、初めてリアル×オンラインのハイブリッド開催が決まっており、SUBARU様から企画をご提案する機会をいただきました。

先行き不透明な社会情勢の中、“リアルイベントが中止になっても成り立つ提案”が求められていたように感じます。そのような背景を受けて、今回は展示会をオンラインに移行するのではなく、オンラインをベースにリアル展示会に派生させる提案を行いました。

しかし、新型コロナウイルスの影響でリアル展示会は中止に。

展示会の中止は非常に心苦しいものでしたが、オンライン施策だけでも成り立つように企画内容を詰めていたので、苦労することはありませんでした。

PLANNING

リアルを生業にしてきた博展が考えるオンラインでの体験価値情報サイトと展示会のちょうど中間にあるオンラインコンテンツ

山中:
今回ポイントになったのは「体験型サイト」であるということ。
情報サイトと展示会のちょうど中間にあるオンラインコンテンツを目指してプランニングしました。

ウェブサイト上で、ユーザーがスクロールによって車を動かし、その性能を理解してもらうという設定になっています。

展示会の良さって、滞在時間が短かったとしても、情報が網羅されていなかったとしても、その企業をなんとなく理解できるということにあると思います。

ブースの前を通り過ぎるだけでも、その企業が何をやっているか大枠理解できますよね。

これってユーザーが知りたい情報を自ら拾いにいく既存の情報サイトと、相反する特徴でもあるように感じています。

まだニーズが顕在化していない顧客にとって、展示会と情報サイトの中間を担う、気軽に体験でき、体感的に情報を拾えるサイト作りが必要だと考えました。

オンライン施策を提案するうえで試された高い編集力

山中:
ウェブをつくるときは、セールスかブランディングか、目的を明示してから作ることが非常に重要です。

今回はカー・オブ・ザ・イヤーを受賞した、新型レヴォーグの技術を多くの人に伝えることが目的だったので、わかりやすさ / 驚きといった“イベント感”を意識してプランニング。

「移動を感動に変える10の技術」というタイトルで、SUBARU新型レヴォーグの技術をストーリー性を持たせて紐解いていくサイトを作成しました。

走り出しから高速道路に乗り、車を降りるエピローグまですべてのシーンで、自分が車に乗り、ドライブをしているかのような感覚になるように、台本を綿密に作成しています。

<実際の企画書 一部抜粋>

水間:
ウェブには情報をたくさん載せられますが、伝わる情報はほんの一部だけなんです。情報を整理し、本当に伝えたいことを端的に表示し、興味を持ってくれた人には動画や説明文を別で用意することで、だれでも気軽に楽しめるような設計にしました。

たくさんある技術を10個に厳選したり、サイトに表示する文章量も最適化するためにかなり短縮化したり、多くの工夫を施しています。

博展が編集者として情報量を調整できたことが良い結果につながったと感じています。

<サイトの様子>

KEY FACTOR

編集力を駆使し情報を簡潔に伝えるだけでなく新型レヴォーグのある生活を情緒的に訴えるCREATIVE

鈴木:
山中さんがイメージの絵コンテを書いてくださっていたことや、自分自身がウェブサイトを見るのが好きだったこともあり、「こういうデザインであれば情報がすっと入ってくるな」ということを念頭に置くことができていました。

実物を見せられないオンライン上で、「移動を感動に変える」というSUBARU レヴォーグのコンセプトをどう伝えるかに加えて、サイトを訪れた人も直感的に理解できることを意識しています。

サイト全体をアイコニックなデザインに統一し、タイトルからキャッチーな言葉選びを意識し、全体を設計しました。

また、SUBARU様は「だれが、どういう感情でそのときを過ごしているのか」を非常に重要視されている企業。デザインによって、このシーンで走りたい!という感情を生み出せるように工夫していますね。あくまで主役は車なので、背景は車の魅力を引き立たせるためのデザインにしました。

<サイト一部抜粋>
<実際の進行資料 一部抜粋>

NEXT TRY

オンラインだからこそ可能なことを、デザインの力で増やしたい展示会でもオンラインでも“体験性”が求められる時代へ

山中:
コロナ禍を受けて、「体験を通じて情報を伝えること」の重要性を感じています。リアルの体験を届けられない人たちにも裾野を広げるという点で、オンラインに力を入れる重要性にも気づきました。

ウェブ上になんでも情報がある現在だからこそ、その見せ方が重要になると感じています。

ニーズが顕在化していない人たちにも情報を届けられる、というのがオンラインの魅力なのだとすれば、そこに見せ方 / 伝え方という観点で、リアルならではの空気感や楽しさという要素をどうやって組み込んでいけるかが、今後のポイントになるではないでしょうか?

オンライン施策はたくさんの情報を載せるのが吉だと思いがちなのですが、実はいかに情報をそぎ落として、研ぎ澄ましていくかが重要なのだと感じています。

ウェブでどう差別化をしていくかが今後追求したいポイントです。

体験性だったり、イベントで培った「ユーザー視点で体験を設計する力」であったり。クライアントに提示される情報をいかにユーザー視点で整理していくかという編集力を駆使し、博展ならではの強みを磨いていきたいですね。

鈴木:
私も、この1年で改めて体験デザインの重要性を感じています。

リアル空間ならではのワクワク感や実物を見た時の感動など、リアルならではのココロの動きを、オンラインに移行した際にそぎ落とすのではなく、エフェクトやデザインの力でさらにわかりやすくする方法を模索していきたいです。

今回の案件も、リアル展示会だけでは、技術や性能を伝えきれなかったかもしれません。

しかし、エフェクトやUIを考えて伝えることで、体感的に理解してもらうことができたのはウェブだったからこそ可能になったことだと感じています。

今後も、ウェブだからあきらめるのではなく、ウェブだからこそ可能になることを増やし、リアルとオンラインを縦断し、最適解を生み出し続けたいです。

水間:
リアルのイベントとオンラインで共通しているのは、“来場者(ユーザー)がいること”。ユーザーのデータをどのように活用していくのかで、いろいろな可能性を広げることができます。

オンライン領域における今後のテーマは“データの活用”だと思います。
現状はまだ、データを収集することはできても、うまく活用することができていない企業が多いように感じています。オンラインでは展示会では取れないデータが取れるようになるからこそ、博展としてもそれをどう活かしていくかが次のステップになると考えています。

今後求められるであろうデータを取るためのギミックやUIをうまく活用し、単にやり方だけではなく、マーケティング全体のサポートができる博展でありたいですね。

OVERVIEW

CLIENT株式会社SUBARU

CREDIT

ディレクター 川口 優莉
プランナー 山中 優花
Webディレクター 水間 音文
デザイナー 鈴木 彗