INTRODUCTION

2020年上旬は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くのブランドがプロモーションや新製品ローンチイベントの中止を余儀なくされました。

「どうやって新しい製品の良さをターゲットに届けていくべきか?」

未曾有の状況で多くの企業が生活者との新たなコミュニケーション施策を模索する中、従来に囚われず、カタチを変えて成功を収めたイベントがシトロエンベルランゴのオンライン発表会でした。

累計330万台を超える販売数を誇ってきた人気車「BERLINGO(ベルランゴ)」が日本に上陸した2020年。Groupe PSA Japan(以下PSA)は8月26日にシトロエンベルランゴのカタログモデル発表会をオンラインで実施。メディア向け発表会であるものの、一般視聴者も自由に視聴できるユニークな公開イベントとして注目を集めました。

今回はプロデューサーとしてこのオンライン発表会に携わった博展 浅野にインタビューし、大成功の舞台裏に迫ります。

OUTLINE

プレゼンターがベルランゴのドライブを堪能するユニークなオンライン配信

浅野:

今回のオンライン発表会では、レジャーアクティビティヴィークルとして日本に上陸したベルランゴの魅力を最大限伝えるために、メディアだけでなく一般視聴者の方に向けて、シトロエン公式YouTubeから約30分の動画をLIVE配信しました。

この動画では代表取締役社長(当時)であるアンジェロ・シモーネ氏がベルランゴの後部座席に乗り、ウェルカムスピーチをしながらキャンプ場まで快適なドライブを堪能。目的地のキャンプ場ではマーケティング部長やプロダクト担当とバトンタッチし、ベルランゴの魅力や仕様の詳細について解説しました。

今回カタログモデルが発表されたベルランゴは、本国では既にリリースされていたこともあり、日本上陸も非常に注目される中での発表となりました。

シトロエンのコンセプトである「comfort(快適性)」を体現し、ベルランゴの積載能力を始めとした使いやすさを全面的にアピールするため、ディーラーから飛び出してターゲットの利用シーンをイメージさせるキャンプ場へとドライブ。

もちろんローンチイベントなので、仕様についてのプレゼンテーションはありましたが、動画の中でもシートの乗り心地やTop Boxにある収納ポケットなど小ネタを挟みながらテンポ良く展開していきましたね。

PLANNING

ストレスなく、楽しく過ごせるベルランゴのcomfort(快適性)を表現

浅野:

2020年のマーケティング活動でシトロエンが最も注力するベルランゴのローンチは、本来一般向けイベントと合わせてプレス発表会もオフラインで実施予定でした。しかし、7月末の全国的な感染者数の急増を受け、招待制のプレス発表会はオンラインへの切り替えが余儀なくされました。

変更が決まり、急遽クライアントと打ち合わせを実施。当初は都内のディーラー店舗で撮影した動画を配信しようといったシンプルな案もありましたが、「せっかくリアルの場という“制約”が無くなるのであれば、思いっきりシトロエンらしく自由にやろう!」という話が生まれ、約1時間のディスカッションの末に「ベルランゴでドライブしながら社長がプレゼンテーションをする」というアイディアにまとまりました。

また、MPV(マルチパーパスヴィークル)であるベルランゴの特性を活かし、キャンプ場など自然豊かなロケ地を探す運びに。

発案から公開まで約1ヶ月というタイトなスケジュールではありながらも、発案日の夜にはクライアントから新たな与件が展開され、博展はパートナーと共にロケ地の選定から撮影/編集までスピーディーに対応しました。

<企画段階中の絵コンテ>

この案件では視聴した人が、「ベルランゴがあるとこんなふうに生活を楽しむことができるのか」と想像できるような表現や演出、スタイリングを心がけました。

また、配信を通してシトロエンのコンセプト「comfort(快適性)」を伝えることにも注力しています。一言に“快適性”と言っても表現方法は様々なので、私自身が“シトロエンらしさ”、“ベルランゴっぽさ”を理解するために、本国でリリースされているサイトやブロガーの記事を読み漁ったり、クライアントにもお時間をいただいて深くヒアリングする機会を頂いたり。

言語だけでは表現できないブランドやプロダクトのイメージを私自身が掴むため、そしてそれをパートナーとともに表現するために時間を費やしました。

例えば、空間として表現するべき“快適性”とは決してラグジュアリーなものではなく、ストレスのない“気軽さ”のようなもの。「あれはトランクに入らないからあきらめよう」などということはなく、家族でテントなどの荷物を積んで気軽にキャンプに行ったり、ショッピングをして気軽に買ったものを積んだり。ベルランゴによって実現できる生活がストレスなく、楽しく過ごせることを表現すべきだと考えて演出方法を検討していきました。

なので、ロケでも実際にテントやイスなどを設置して、キャンプ場でのワクワク感を演出しましたね。

また、公開翌日から全国各地を回るキャラバン型の展示イベントを実施予定だったので、配信の最後にその告知を入れることで、「ベルランゴを体験したい!」と感じていただいた方を次のプロモーション施策へとご案内することができたことも良かったです。

実際にイベントでも、来場された方から「オンライン発表会の配信を見て、気になったから来ました!」という声をいただいたので非常に嬉しかったですね。

また、今回のオンライン発表会はすごく反響がありました。

当時はオンラインイベント黎明期だったこともあり、まだ成功事例が少ない中で、他のオンラインプレスカンファレンスと比べても視聴者に楽しんでいただける配信にできたと感じています。

視聴されたメディアの方からも「最近のメディア発表配信の中でピカイチの出来でした!」などのコメントを頂いたとクライアントから共有してもらいました。

また、他のブランドからも成功事例としてベンチマークされるような事例になっているらしく、オンライン配信イベントの新しいカタチを示せたのではないでしょうか。

KEY FACTOR

「これは自分のためのクルマだ」と感じてもらえるほどブランドメッセージを訴求。

浅野:

繰り返しになりますが、この動画では仕様や乗り心地だけではなく、ベルランゴが実現する生活を表現することによって視聴者に自分ごと化してもらうことができたのだと感じています。

つまり、「これは自分のためのクルマだ」と感じてもらえるほど、ブランドのメッセージを強く伝えられたことが成功の要因だったと思います。

実は私もこのオンライン発表会やキャラバンイベントを通してシトロエンのファンになり、イベントが終わる頃には「シトロエンのある生活」を具体的にイメージできるようになってしまったので、思い切って購入しました。

また、私自身もそうですが、プロジェクトを進めるパートナーも同様にシトロエンのブランドを理解し、共感することでアウトプットとして目指す姿を統一できたこと。そしてチーム一丸となって高いクオリティを実現できたこともこのプロジェクトの成功要因だったと思います。

NEXT TRY

ブランドを深く理解し、消費者との接点を構築していきたい

ベルランゴは日本への導入が待ち焦がれられていた期待値の高いクルマでした。その最初のお披露目として、市場の期待をさらに盛り上げるような形で世に送り出すサポートができたことは大変嬉しく思っています。

これからも、ブランドやプロダクトの特性を深く理解する努力を続けながら、シトロエンと消費者の接点をよりよい形で構築していきたいです。

OVERVIEW

CLIENTGroupe PSA Japan

CREDIT

Producer : 浅野 侑子