INTRODUCTION

中部国際空港(以下:セントレア空港)は、セントレア第1 ターミナル 4階イベントプラザにおいてクリスマスイルミネーション「FLIGHT CHRISTMAS2021」を開催。

空港内のテナントと協業したデジタルスタンプラリーでは、名古屋市民を中心に1400名以上が参加したほか、イベントプラザ中央に全長 4 メートルのクリスマスツリーを設置し、空港利用者以外の地域に住むファミリー層もツリーを観にくるなど、空港内に再び活気がうまれました。

今回は担当した中部営業所プランナーの矢島・プロデューサーの本間・デザイナーの鈴木にインタビューし、案件成功の要因を振り返ります。

OUTLINE

本間:
セントレア空港は毎年クリスマスイルミネーションを開催しており、今回は「FLIGHT CHRISTMAS 2021」というテーマでイベントを開催しました。

セントレア空港は大型貨物機などめずらしい飛行機が多いことから飛行機ファンの聖地としても有名であり、迫力ある飛行機の離発着を一目見ようと家族連れで賑わっていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、以前と比べて来訪者が減っていることにクライアントが課題感を持っていらっしゃいました。

そこで今年は、より多くのお客様にテナントとコミュニケーションを取っていただくためにデジタルスタンプラリーも実施。このスタンプラリーは各テナントに設置されたQRコードからクイズに挑戦し、正解するとスタンプがもらえます。 スタンプは5種類で計28個あり、全5種類のスタンプを集めて参加できる抽選では、当選者にイルミネーションにも飾られている飛行機型ライトをプレゼント。抽選に外れた方にもテナント店舗で使用できるクーポンをプレゼントし、送客につなげました。

PLANNING

「セントレア空港ならでは」と「コミュニケーション促進」

矢島:
企画を考えるにあたってクライアントとは目的から議論を重ね、2つを方針として定めました。

一つは「“セントレア空港らしさ”のあるイルミネーションであること」。
そしてもう一つは「テナントの売上につながるようなコミュニケーションを促進すること」です。

1:“セントレア空港らしさ”のあるイルミネーション

名古屋市近郊には他にも大型のイルミネーションを実施している施設があるため、セントレア空港らしいユニークなイルミネーションのデザインと、SNSなどでシェアされた写真から“セントレア空港らしさ”が伝わるようなコミュニケーション設計も重要でした。

飛行機は人を運ぶだけでなく、その人が持つ想いを乗せていること、そしてセントレア空港が地域に密着して支えていることに着目し、手の温もりが伝わるようなクラフト感のある「エアクラフトライト」を作成しました。

本プロジェクトのために制作したエアクラフトライト

また、それを当選者にプレゼントする際には今回の「FLIGHT CHRISTMAS 2021」ロゴのスタンプが押された紙袋に入れてお渡ししました。

鈴木:
クリスマスツリーのデザインでは、たくさんの想いを乗せた飛行機がクリスマスを祝福し、幸せを運んでくる様子を表現しています。また、日本の中央に位置するセントレア空港で、ツリーに向かって集まってくる飛行機の軌跡からプレゼントボックスが降り注ぐようなデザインは、セントレア空港らしいアプローチになりました。

このツリーはエスカレーターを上がると目に飛び込んでくる場所に設置されているため、ツリーが象徴的に表現されており、とてもインパクトがあります。

また、SNSでシェアされるようにフォトスポットも設置しました。シェアされるフォトスポットの写真には、ツリーやクラフトライト、「#FLIGHT CHRISTMAS」というイルミネーション全ての要素が入るように設計しました。

フォトスポットで撮った写真がSNSでシェアされていたり、子供たちが飛行機型ライトやプレゼントボックスに興味を持ち、イルミネーションを眺めている姿を見たりと、平日でも順番待ちが出るほど盛況で、名古屋市民の方々に楽しんでいただけたことはとてもうれしかったです。

2:“あと一歩”を後押しするコミュニケーション施策

矢島:
空港内のショッピングモールで来場者の動きを観察していると、商品が気になっているものの、店舗内まで入らない利用者が多くいることに気がつきました。「商品は気になっているけど、店員さんに話しかけるきっかけがないのでは?」と考え、テナント様と来場者のコミュニケーションを活性化し、店舗に入るまでの“あと一歩”を後押しする企画が必要だと感じました。

そこで、空港内のテナント様にご協力をいただき、実際に店舗で店員さんと会話することがヒントなるクイズを多く設定したデジタルスタンプラリーを実施。各テナント様にもクイズを考えていただけないかと協力を打診したところ、快く受け入れていただき、博展だけでは思いつかないようなクイズもたくさん出てきましたね。

セントレア空港様だけでなく、テナント様にもこの趣旨に共感いただき、一丸となってこの企画を盛り上げていただけました。また、セントレア空港の中部地方における環境課題への取り組みに関するクイズも出題するなど、サステナビリティ実現に向けた活動の認知獲得にも一役買っています。

KEY FACTOR

実物を使って試行錯誤を繰り返し、相互に刺激しあえる環境

鈴木:
博展の制作拠点であるT-Baseには、他の案件で検討したものの採用されなかった素材や表現手法などのアイディアが集まるラボがあり、デザインを検討する時にはそこで社内のデザイナー仲間から意見やアドバイスなど多くの刺激を受けました。

タイトなスケジュールにおいても、高いクオリティを実現できたのは実物を使って試行錯誤を繰り返せる場所と相互に刺激を与えられるデザイナー仲間がいたからこそだと思います。

また、限られた予算の中でコストとクオリティを両立させるためにクライアントが既に持っていた資源は最大限に活用しながら、コスト内で実現する方法を施工を担当するプロダクトマネジメントとも相談を重ねました。

自分も一人の名古屋市民として「本当に楽しめるか?」を追求

矢島:
自分もこのセントレア空港の利用者であり、休日は子供と出かける父親でもあるので、「本当に自分の企画が子供連れの家族に楽しんでもらえるのか?」と自問自答を繰り返してプランしました。
時には自分の娘にも、「こんなイルミネーションあったら楽しい?」と聞いてしまうなど、企画者と来場者の視点を行ったり来たりしていましたね。

本間:
結果としてデジタルスタンプラリーには約1400名の方に参加していただき、目標をはるかに上回る結果になりました。 中にはスタンプを28個全部集めてくれた方も多く、抽選参加のためだけではなく、純粋にスタンプラリーを楽しんでいただけました。イベント期間中、テナントの方と来場者がスタンプラリーをきっかけに会話をしている姿を様々な場所で目にしたことからも空港内でのコミュニケーションを促進するという目標を達成できたと感じています。

NEXT TRY

公共の場の体験をデザインし、地域に笑顔を増やしていきたい

本間:
私はこれまで展示会などBtoBのビジネスイベントを中心に案件を担当していましたが、今回は一般の方に向けたイベントだったので、セントレア空港に地域からたくさんの方が集まり、多くの笑顔であふれている様子を目にして、地域の方々に喜んでいただけるような空間を提供できたという意味でビジネスイベントとはまた違う魅力・やりがいを感じました。

今後も博展の強みである「体験デザイン」を軸に、地域に根付いたイベントや空間づくりを数多く実施し、市民の笑顔を増やす仕事をしていきたいですね。

矢島:
セントレア空港は地元に根付いた、名古屋市民に愛されている場所なので、地域の方と空港の繋がりを感じられるよう工夫を凝らしています。最近では空港や公園など公共施設のお仕事を多くいただいていることもあり、名古屋という地域の歴史や特徴について学びを深める中で、私は改めてこの名古屋という場所を好きになりました。

今後はこの中部地方に住む人たちにも、この地方ならではの魅力をもっと知ってもらい、地元をさらに好きになってもらいたいですね。中部地方に住む人たちの“地元愛”がもっと深まるように、博展の「本気の遊び心」を駆使して楽しい体験や仕掛けを増やしていきたいです! 

左から矢島(プランナー)、鈴木(デザイナー)、本間(プロデューサー)

OVERVIEW

CLIENT中部国際空港株式会社

CREDIT

プロデューサー 本間 一翔
プランナー / グラフィックデザイナー 矢島 大
空間デザイナー 鈴木 彗 / 稲原 章太郎
プロダクトマネジメント 山本 聖