東京建物株式会社は、2020年3月に閉店した新潟三越(所在地:新潟市古町地区)の跡地を拠点に、人と人が出会い前向きに古町を作るためのプロジェクト『み〜つ』を2023年9月15日(金)から期間限定で開催。
博展は当プロジェクトにおいて、企画・デザイン・施工までトータルプロデュースしています。
新たなランドマークタワーの誕生まで、地元・古町の人々が明るい未来を想像できる場所にしたいという想いから始まった当プロジェクトの背景を、デザイン・商品開発等をおこなうヒッコリースリートラベラーズ(合同会社アレコレ、以下:ヒッコリー)の迫さん、古町エリアの拠点となる複合施設SAN(以下:SAN)の金澤さんとともに、博展 プロデューサー 川岸さん、プランナー 真﨑さん、クリエイティブディレクター 歌代さんにお話を伺いました。

左から 博展 川岸さん、真﨑さん、SAN 金澤さん、ヒッコリー 迫さん、博展 歌代さん、西村さん

Index

新潟三越の跡地を遊休地の利活用として何か盛り上げることをやりたかったんです。

– 『み〜つ』とはどのようなプロジェクトなのでしょうか?

川岸:『み〜つ』は、新潟・古町の三越跡地を拠点に人々が出会い、明るく前向きな気持ちで地元を盛り上げていくことを目的にしたプロジェクトです。企画の内容としては「み〜つ待合室bySAN」、「み〜つカフェ」、「み〜つベース」の3つがあります。

み〜つ待合室bySAN

「み〜つ待合室bySAN」は、会場にいらっしゃった方々をお迎えする中心となる場所で、バスを再利用しグッズ販売もおこなう、誰でも無料で使える休憩所です。 

『み〜つ』公式グッズ

また、「み〜つカフェ」は主に週末に営業するコーヒーショップで、週ごとに出店者が変わるので様々なコーヒーを楽しめます。ここで購入したドリンクは、待合室やベンチで飲むことができます。

み〜つカフェ
み〜つベース

その隣には、「み〜つベース」というコミュニティースペースがあります。ここでは地元・古町に関わりのある方たちが制作したグッズを販売したり、ワークショップをおこなったりする予定です。

博展 プロデューサー 川岸さん

プロジェクト発足の経緯としては、クライアントである東京建物さんから「博展さんとだったらなにか良い取り組みができるんじゃないか」と提案いただいた場所が、当プロジェクトの主役となる地・新潟でした。そこで、新潟三越の跡地を遊休地の利活用として何か盛り上がることをやろう、と企画・提案をしたところから当プロジェクトが始まりました。

真﨑:企画や施工は博展でおこないましたが、場所は新潟なので運営面も考慮すると地元のコミュニティーとの連携が重要でした。

博展 プランナー 真﨑さん

実は新潟は、私の親戚がお店を開いていたり、歌代さんの地元でもあったりと、チームにとっては所縁のある場所でした。
この新潟三越は、閉店時には113年もの歴史がある場所だったので、地元の方にとって大変思い出深い場所なんですよね。ですから、より地域に密着したものにしたいという想いで、そこに共感してくれるパートナーを探していました。

歌代:地元に帰省するたびにお土産を選んでいると、可愛いなとつい手に取ってしまう商品がたくさんあって。「どこがデザインやってるんだろう?」と見るとそれがいつもヒッコリーさんだったんです。
今回のプロジェクトが発足して地元のパートナーを探そうと考えた際に、まず最初にヒッコリーさんが思い浮かびました。新潟三越跡地が所在する「古町」という場所も、ヒッコリーさんが活動するエリアとリンクしていたので。

博展 クリエイティブディレクター 歌代さん

新潟三越が無くなっても、以前と変わらず地元の人々が集まるような場所にしたい。

迫:私の会社ヒッコリーは、普段から古町や新潟のことに積極的に取り組んでいるんです。
2001年頃から、商店街にお店も構えて自分たちで作ったものを販売し、商店街を楽しむ活動をしてきました。古町は自分たちの街なので「少しでも良いところを知ってもらいたい」という想いで、商品開発やブランディングをしながら地元の方々と一緒に活動しています。「こんな街にしたい」といった理想はいくらでも語れますが、私たちは活動することを大切にしているんです。

ヒッコリー 迫さん

博展さんは、私たちの想いに共感していただいていたので、今回のプロジェクトを通して古町の印象がよくなるきっかけの場所にできるといいなと思い、快く引き受けました。

歌代:ヒッコリーさんは、グラフィックデザインだけではなく、新潟での実績が多かったので迷わずお声がけしましたね。

金澤:私たちSANは、2021年12月にオープンした複合施設です。普段は、店舗で地元の方々の反応を見ながら商品開発・販売を行なうなどして古町という場所を盛り上げる活動に取り組んでいます。

SAN 金澤さん

私自身も、小さい頃から新潟三越には家族でよく来ていたので、思い出深い場所です。いまご年配の方は、小さいときからよく遊びに来ていた方やここで働いていた方も多くいらっしゃいます。やっぱり古町に住んでいるひとは、誰もが新潟三越に思い出があるんですよね。
新潟三越が取り壊されると知ったときに、次にどんなものが建つんだろうという期待と不安、そして、この跡地で自分に何かできないかという想いがありました。新潟三越が無くなっても、以前と変わらず地元の人々が集まるような場所にしたいと思っていました。

あらゆる什器が可変性を持つことで、場に柔軟に馴染めるんです。



川岸:役割としては、空間全体の企画・施工を博展、グラフィックとWEBデザインをヒッコリーさん、会期中の運営などの実行部分はSANさんに分担して進めていきました。

歌代:開催エリアの近くに来るととても大きくて賑やかに見えますが、少し引いて見たときにイベント自体が寂しく見えてしまわないよう、厳しい制限の中でもにグラフィックは華やかにするなど、「ちゃんとイベントが行われているんだな」とひとが集まってくるような空間づくりを意識しましたね。

真﨑:仮設のイベントスペースですが、実施期間は比較的長いので、開催エリアはその時々で可変できる屋台や休憩スペースを設置しました。そこを中心に地元のひとが集まるような場所になるといいなと。
設置している什器は誰でも組み立てたり、移動できるように、軽量のコンテナボックスを最小単位として設計しています。コンテナボックスを使った組み立て什器自体には新しさはないのですが、新潟を調べる中で、日本海の港町として栄えた歴史や、このエリアも昔は水路があって、船で物資を運搬していたという文化的背景を知ることで、「さまざまなモノやコトを運んでくる箱を組み立てて空間を作る」という視点はこの街らしいのでは、とデザインしていきました。

椅子の天板には、このエリアの昔の風会写真が印刷されていて、好きな写真を選んでカスタマイズできます。また、ここから時間をかけて地元のひとたちに手を加えてもらうことも考慮した空間にしました。例えば、学校の発表の資料や地元の掲示板のように、みんなで作っていくような、そんなエリアも想定して設計しましたね。
あらゆる什器が可変性を持つことで、場に柔軟に馴染めるんです。

それから、企画を担当したのは私たちですが、この場所を運営するのは新潟の方たちです。その点でもヒッコリーさんとSANさんには協力していただきました。
地元の方たちを紹介していただき、そのつながりも大変助かりましたね。

金澤:私は、バスをリノベーションした待合室「み〜つ待合室bySAN」 の運営を担当していますが、ここは地域のインフォメーションとなる場所なんです。
SANでは普段から観光客に向けて新潟の街を案内しているので、このバスに自分が立つことで、より多くの方に新潟の魅力を伝えられる場所になると思いました。

真﨑:バス停の看板にインターホンがついていて、それを押すとインフォメーションの金澤さんに繋がる仕様になっているんです。バスの件も、迫さんにアドバイスいただきましたよね。

お二人のアイデアは地元の方だからこそ出てくるような素敵な案が多くて、途中からは一緒にプランニングしていきましたね。『み〜つ』プロジェクトのコンセプトや方向性は共有できていたからこそブレずに良いものが作れたんじゃないかと思います。

私たちが発信しなくてもコミュニティが広がっていく様子を見て、このプロジェクトの意義を実感しました。

川岸:私たちもこれだけの長期間で運営をおこなうプロジェクトは多くないので不安もありましたが、ヒッコリーさんが地域の方々とスムーズに連携していただき、大変助かりましたね。
新潟交通さんと連携してバスを手配いただきましたし、お二人とは一緒のチームとして進行できました。

金澤:最初はお互いについて知らないこともありましたが、一緒にやりながら段々と得意なことがわかってきましたよね。私たちができたこともあるし、博展さんだからできたことも徐々に見えてきて、ひとつのチームとして感じられてとても楽しかったですね。

迫:「こういうデザインにしたい」という私たちの意見を、博展さんに精査していただきながら進めていきました。施工時に、アイデアが形になっていくところを見て、とても精度が高く驚きました。そこまでしてくれるんだ、というところまで細かくやってくれて、やっぱり博展さんはプロなんだなと。
それから、博展さんは大きく華やかなイベントをやっているイメージがありますけれど、中のひとは皆さんソフトで、人当たりがいい方が多いですよね。

川岸:ありがとうございます。
東京と新潟という距離もありながら地元の方とのやり取りで進めていくプロジェクトは、自分にとって初めての経験ばかりで不安なこともありました。
けれど、場が出来上がってから、通りがかりのおじいちゃんやおばあちゃんに「この椅子いいね」と言ってもらえて。その瞬間に「あ、いまここでコミュニティが生まれた!」と感じられてとても嬉しかったですし、ようやく始まったんだなという実感が湧きましたね。

迫:新潟三越の向かいのパン屋さんは、「三越跡地に賑わいが戻ってきて嬉しい」って言ってましたよ。「何ができるんですか?」と興味を持っていただいて、反響も良さそうですね。

金澤:パンを買いに来たお客さんに「こういうのができるんだって」と言ってくださってるようで。私たちが発信しなくてもコミュニティが広がっていく様子を見て、このプロジェクトの意義を実感しました。

川岸:自然と広がっていくのはとても嬉しいですね。まだ始まったばかりではありますが、地元の声に耳を傾けながら、アップデートしていきたいですね。

OVERVIEW

CLIENT東京建物株式会社
PROJECTみ〜つ
VENUE新潟三越跡地
LOCATION新潟市古町地区

東京建物株式会社は、2020年3月に閉店した新潟三越(所在地:新潟市古町地区)の跡地を拠点に、人と人が出会い前向きに古町を作るためのプロジェクト『み〜つ』を2023年9月15日(金)から期間限定で開催。
博展は当プロジェクトにおいて、企画・デザイン・施工までトータルプロデュースしています。

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