INTRODUCTION

2020年、新型コロナウイルスの流行によって私たちの生活様式は大きく変化し、外出自粛が推奨されたことで、あらゆる場所で人々が“集う”ことが制限されました。それによって、来場者との対面コミュニケーションを要するイベントもまた、大きな打撃を受けた業態の一つです。

ニューノーマルの生活様式が求められるなか、東京ミッドタウンでは2020年10月2日(金)~11月8日(日)に『TOKYO MIDTOWN RETREAT GARDEN 2020 ~日常から離れて、ココロとカラダをリセットする庭~』を開催。

博展は東京ミッドタウンマネジメント様とディスカッションを重ねながら、“場所の美しさ / 変化した人々の生活様式”にフォーカスし、デザインの力で自然に密を避けられるイベントを作り上げました。

「都会の中心で自然を感じ、心と身体を整える場所」という意味が込められた“RETREAT GARDEN”。

今回は担当プランナーの中里がプランニングの ポイントを語ります。

OUTLINE

心と体をリセットする場所「RETREAT GARDEN」

中里:
今回東京ミッドタウンマネジメント様からは、近隣住民の方や新型コロナウイルス流行以前にミッドタウンを利用していた方の再訪を目的に、ミッドタウン・ガーデンを利用した企画提案のお話をいただきました。

東京ミッドタウンが有するミッドタウン・ガーデンは、4つのエリアから成り立っており、今回は「山のせせらぎゾーン」、「森のエッジゾーン」、「芝生広場ゾーン」の3つのエリアを活用したイベントを提案しています。

ソーシャルディスタンスを確保したうえで、ミッドタウン・ガーデンの魅力を最大限活かせるザイン / コンセプトであることを強く意識しプランニング。

『TOKYO MIDTOWN RETREAT GARDEN 2020 ~日常から離れて、ココロとカラダをリセットする庭~』という名称で、“場所の魅力”と“ココロとカラダを整える”をテーマに空間をプロデュースしました。

“RETREAT”とは、「日常から離れ、ココロとカラダをリセットする」という意味を持ちます。

新型コロナウイルスの流行で、私たちの生活様式は大幅に変化しました。今まで当たり前だと感じていたことが当たり前ではなくなり、制限も増え、息の詰まるような日々が続いています。

そんな時は、いっそ日常から離れて、いつもの自分と距離を置くことが、大切なのではないでしょうか。

たとえば、このミッドタウン・ガーデンに一歩足を踏み入れてみる。

都心の中にある豊かな自然に触れ、今日この瞬間を過ごすことに意識を向けてみる。

さざなみ立つ気持ちは静まり、リセットされていく心。人それぞれの自由がある庭として、この『RETREAT GARDEN』を多くの人に利用していただきたいと思っています。

PLANNING

場所の魅力を引き出し、自然な距離感を創り出すコロナ禍で求められた新しいイベントのカタチ

ー“ミッドタウン・ガーデンの魅力” / “心と身体を整える”という2つのキーワードに行きついた背景を教えてください。

中里:新型コロナウイルスの蔓延を受け、アプローチしたいテーマが3つありました。

ひとつめは、場所の魅力を引き出すこと。
新型コロナウイルスの流行以前は四季折々のイベントを行っており、常に賑わいのある空間でした。

しかし、外出に制限がかかりイベントの開催が厳しい状況下で人々に再び訪れていただくためには、3エリアの異なる魅力を再定義 / 再発見し、伝えることが重要だと考え、エリアごとに異なる空間を演出しています。

次に、社会的に問題視されている生活習慣の乱れ。 

家に籠ることによって生活リズムが崩れ、精神的にもストレスを感じてしまう日々。閉鎖的な空間で長時間過ごすことによって乱れた生活習慣を、自然豊かで開放的なミッドタウン・ガーデンという場所を活かして改善したいと考えました。

なかなか外出できない状況だからこそ、“自分自身に立ち返り、心と身体を整える機会”が必要だとポジティブに伝えています。

最後に、新しいサードプレイスの在り方。

公共の場に自然なディスタンスをとれる場所がなく、落ち着ける場所がなくなってしまったことを受け、『RETREAT GARDEN』では、場所の意義を考慮した“自然な距離の取り方”を取り入れ、新しいサードプレイスとして愛される空間を目指しました。場所の魅力を活かしながら自然と距離をとれるデザインになっています。

コロナ禍でイベントの開催ができなくなった一方で、通常時よりも確保できた時間を使って今までやってきた施策を整理し、本来のブランドポジションに立ち返る。そして、ニューノーマルによって生まれた新しい社会のルールを美しいものへと変換していくこと。

この二軸でアプローチし、改めて東京ミッドタウン、さらにはミッドタウン・ガーデン本来の魅力 / メッセージに回帰しました。

ー3つのテーマは各エリアにどのように落とし込まれていますか?

1:空と月の丘エリア

月をモチーフにした月時計を作成。

円形状に月の満ち欠けがあり、その丘で月を見上げながら心を整えるエリアです。

“月”をテーマに選定した理由は2つあります。

1つ目は、人間のサイクルは月のサイクルとリンクしており、“月”という存在で人間の周期を体感してもらいたかったから。日常の生活のリズムを見直すきっかけになるようにという思いが込められています。

2つ目は、もともとこのエリアには「月の庭園」というコンセプトがあったから。

普段から足を運んでいただいているお客様にも改めてこの「月の庭園」というコンセプトを伝えられるデザインにしました。

月形の什器を置くことで自然と距離をとれる設計になっています。

2:木陰エリア

都会の中心で、木陰で休めるという特別な体験ができるエリア。

木陰エリアには普段街中では目にしないような多種多様な木々が生い茂っており、都会で自然を感じられる貴重な空間が広がっています。

ただテーブルを置くのではなく、木と一体化した家具にすることで日常から離れ、木々の鼓動を感じることができます。

せわしない日常から一歩引いて、ゆっくりと流れる時間を楽しめる空間です。

3:秋の風エリア

ここは非常に風通しがいい場所であり、“風”を感じられる空間を作り上げました。空間には風鈴が吊るされており、風を体 / 耳 / 目で楽しめます。

風鈴はもともと夏を想起させるものですが、俳人飯田蛇笏の「くろがねの秋の風鈴鳴りにけり」という句からインスピレーションを得て、今回は秋風鈴をセレクトしました。

鉄器から鳴り響く重めの音色が季節の移り変わりを演出しています。

NEXT TRY

社会を取り巻くすべての変化をポジティブな美しいものへと変換していく

コロナ禍だからこそ原点に戻り、場所 / モノの魅力を再定義する。

社会を取り巻くすべての変化をネガティブなものとせず、ポジティブな美しいものへと変換していく。

コロナ禍は、制限があるからこそ、原点に立ち返り自分たちの魅力を再考するチャンスです。

外出自粛や三密回避など、様々な制限が生まれ、人々の生活も様変わりしてしまいましたが、私たちはWithコロナの現在をもっと前向きにとらえることができるはず。       

今まで確保できなかった“時間”は、自分に立ちかえり見つめなおすきっかけにもなります。

ニューノーマルに突入しつつある時間を、ネガティブではなくポジティブに活用しようと努力する必要があります。

今回の『TOKYO MIDTOWN RETREAT GARDEN 2020 ~日常から離れて、ココロとカラダをリセットする庭~』を皮切りに、ニューノーマルにおけるイベントのカタチを考察し続けたいと思っています。

OVERVIEW

CLIENT東京ミッドタウンマネジメント株式会社
PROJECTTOKYO MIDTOWN RETREAT GARDEN 2020 ~日常から離れて、ココロとカラダをリセットする庭~