株式会社ゴールドウイン(以下:ゴールドウイン)は、4月23日から5月29日にかけて、東京ミッドタウンで「PLAY EARTH PARK」を、さらに7月23日から8月14日にかけて、富山県富岩運河環水公園と富山県美術館にて、子どもやファミリーを対象としたイベント「GOLDWIN PLAY EARTH PARK TOYAMA」を開催しました。さまざまな建築家をお呼びし、「地」・「水」・「火」・「風」・「空」といった地球を構成する5 つのエレメントをテーマにした「遊具」の設置の他、THE NORTH FACEやHELLY HANSENなどのゴールドウインが展開する5つのブランドからコラボレーションアイテムを発売しました。

本インタビューでは、ゴールドウインの山屋様と企画・キュレーションをおこなったユージーン・スタジオの和田様をお招きし、運営・施工管理を担当した株式会社弊社プロデューサーの宮村とデザイナーの青栁とともにプロジェクトを振り返ります。

(左から、㈱ゴールドウイン 山屋様、ユージーン・スタジオ 和田様、㈱博展 プロデューサー宮村、デザイナー 青栁)

Index

創業の地・富山の方にも改めてゴールドウインを知っていただきたかったんです。

– 今回の「PLAY EARTH PARK」はどのような経緯で開催されたのでしょうか?

山屋:「PLAY EARTH PARK」は、「地」「水」「火」「風」「空」の地球を構成する5 つのエレメントをテーマに、さまざまな建築家がデザインした遊具を公園空間に設置し、スポーツの起源である“遊び”を通して、未来をつくる子どもたちに地球と繋がる新鮮な遊びを提供するプロジェクトです。

これは、2020年にゴールドウインの設立70周年を記念したプロジェクトだったので、東京オリンピックに合わせて“スポーツ”の新しい捉え方を世界に発信しようという構想を練っていました。しかしながら、皆さんご存知の通りコロナ禍によって環境が変わってしまったため、開催地を有明から東京ミッドタウンに移し、子どもやファミリーを対象にしたイベントに変更して開催しました。そして、創業の地であり本店もある富山でもイベントを開催することで、地元の方たちにも改めて、ゴールドウインという会社を知っていただくことも目的の一つでした。

和田さんには、会社の事業戦略のコンセプト設計をはじめ、様々なプロジェクトでのデザインワークを手伝っていただいているので、周年イベントの実施が決まったときから参画していただいているんです。お付き合いでいうとかなり長く、8年くらいになるかと思います。

課題へ前向きにチームで取り組めないと、プロジェクトは成功しないです。


– なぜ今回、博展にご依頼いただいたのでしょうか。

和田:PLAY EARTH PARKでは、複数の建築家がデザインした遊具をひとつの場所にうまくまとめる必要がありました。それぞれの遊具にこだわりのある建築家がいて、それをうまくまとめていく必要があるというイレギュラーなプロジェクトをいかに実現させるかが肝になっていたと思います。博展さんはその部分に強みがありますし、これまでも何度もご一緒していたこともあったのでご相談しました。

山屋:もちろん博展さんはTHE NORTH FACEをやられている実績もありますし、ゴールドウインの考え方やクリエイティブのトンマナ、コミュニケーション部分を理解されているので、同じ目線で物事を語れるというのは非常に良いですね。何かプロジェクトが発足した際も、何をやろうとしているかという構想段階でもすぐに企画の意図を汲み取ってチームで動いてくれる距離感にいるんです。そこも含め、今回のPLAY EARTH PARKのような大規模のプロジェクトでもきちんと実現してくれるのは、やはり博展さんじゃないと難しいかなと考えていました。

和田:そうですね。広い業務範囲を横断したプロジェクトで、建築家にも「全く新しいものを創ってほしい」という大きな課題を伝えているなかで、さらにそれを実現させなければならないというのは簡単ではなかったはずです。そこに対し、フレキシブルに、創造力も持って並走していけるパートナーって世の中にそんなにいないと思うんですよね。ある意味、業務的にならずに、決まった答えがないことに対してポジティブに楽しんでくれながら、新しいものを一緒に創ることができるチームは貴重だと感じています。

山屋:我々と一つのチームになって楽しみながら動いてくれるか、という点は大事ですね。課題を乗り越えることに対してポジティブに一緒に取り組めるパートナーじゃないと、このようなプロジェクトは成功しないと思っています

みんなのイベントとして一体的に創りあげられたのはすごく良かったです。

– 先程も「イレギュラーなプロジェクトだった」とありましたが、博展として挑戦した部分や発揮できた価値というのはどのようなところでしょうか。

宮村:今回のプロジェクトはとにかく関係者が多かったですね。その中で我々は全体の企画サポートはもちろん、それぞれの建築家が創作した遊具をどう取りまとめていくかというところを担いました。例えば、東京ミッドタウンが定める会場のルール等、様々な制限がある中で、各建築家がこだわりを持って設計した遊具をいかに実現に近づけるかを関係各所との調整も含め、お手伝いさせていただきました。さらにPLAY EARTH PARKというコンセプトに沿った空間にするために、デザイナーにも参加してもらいました。

青栁:建築家の遊具だけが目立ってしまわないように、「PLAY ERTH PARK」のコンセプトでまとめるための体験設計も行いました。あとは細かいところなんですが、今回のイベントロゴを模したサイン看板やベルトパーテーション、運営において必要となる造作周りもオリジナルで設計・デザインしています。

それから、PLAY EARTH PARKでは、パークの外でもPOP-UP SHOPをおこなっており、そのデザインも担当させていただきました。プロジェクトにおいて自分たちが何をするべきなのか、複数の遊具があるなかでひとつの空間を創りあげるために必要な部分は何なのかを意識してデザインしていましたね。


和田:今回のように著名な建築家やデザイナーが複数関わっているイベントというのは、どうしても、“誰かのイベント”になりがちなんです。そこを、「PLAY EARTH PARK」というコンセプトのもとで、誰のものでもない、“みんなのもの”として創りあげられたのはすごく良かったですね。結果的に子どもにも親しみやすい空間になり、多くの方に来場していただけたので会社にとっても良いプロジェクトになりました。


博展さんは最初から「できない」と言わないので非常に頼もしいですね。

– 準備段階ではそれぞれの遊具を設計した建築家さんとのやりとりが多く行われたと思いますが、どのようなことに気をつけながら進めていったのでしょう?

宮村:やはり、会場さんと建築家さんの意向を、どちらもできる限り叶えられるように意識して動いていましたね。東京ミッドタウンでおこなったとき、当初ひとつの遊具が高さ16mあったんです。でも、その会場ではそこまで高い創作物を立てたことがなかったので、不安に思われていたんですね。そこで、両者には運営面でカバーできる部分をご提案しながら、決して本来の遊び体験が損なわれないよう、実現に向けてのサポートと調整をおこないました。


– 調整してまとめたことをゴールドウインさんに伝える、というようなコミュニケーションを取っていたのでしょうか。

宮村:そうですね。関係者が多く大変ではありましたが、そのぶん関われる方が多くいたので新しい繋がりもあり、良かったと思います。

山屋:最終的にまとまったことが返ってくるので助かりました。あと、博展さんのすごいところは最初から「できない」と全く言わないところですね。

こちらがどんな相談事でも、必ず「なんとかできないか、一度検討します」と言って、「どうすれば実現できるか」を一緒に考えてくれるので非常に頼もしいです(笑)

宮村:ありがとうございます。きっと山屋さんは弊社よりももっと多くの関係者と調整されていらっしゃるんだろうなと思っていたので、なるべく負担を減らせるように動いていましたね。

和田:「やったことがないことを、どういうモチベーションで取り組むか」という姿勢が結果さえも変えてしまうのだと感じています。ですから、普通なら「前例がないこと」をネガティブに捉えてしまいそうなところも、博展さんは前向きに取り組んでくれて大変良かったです。

だれもやったことのないプロジェクトこそ博展さんとやりたいですね。


– ゴールドウインさんとはこれまでも何度もプロジェクトをご一緒させていただきましたが、これまでを振り返りながら、博展のどんなところに価値を感じてくださっているのでしょうか。

山屋:一番印象に残っているのは2018年に原宿BANK GALLERYでおこなわれた「THE NORTH FACE SUMMIT SERIES EXHIBITION 2018」のときです。やはり、我々のクリエイティブをすでに理解してくれたうえでコミュニケーションできるというのは非常に大事だと思っていますし、何より一緒に仕事をしていて楽しいですね。博展さんはパートナーというより、“仲間”といった意識のほうが強いかもしれません。

それから、重ねてにはなりますが最初から「できない」を言わないというのもとても大事だと思っていて、「夢を描きながらどう実現するか」という広い間口で進められるところも助かっていますよ。

和田:今回のように誰もやったことのない、最もストレッチが必要なプロジェクトこそ博展さんとやるべきだと思っています。できる範囲の仕事をお願いするパートナーがほとんどのなかで、やったことのないことを実現できる企業は限られています。「自分たちのイメージをより広げてほしい」というときは、博展さんにお願いすることが多いので、良い関係性だと感じてます。

青栁:そうですね。通常であれば社内で考えをまとめてから提案するところを、ゴールドウインさんと仕事をするときは敢えて複数の社内クリエイターがそれぞれの案を展開し、アイディアを膨らますこともあります。そうすることで、先程の話でもありましたように、クリエイティブの幅を広げられるんだと思っています。

山屋:PLAY EARTH PARKも盛況でしたし、社内のメンバーから他のプロジェクトも博展さんとやりたいという声もあり、8月のプレス展もお願いすることが決まっています。そして、 これは極論なんですが、“会社”じゃないんです。結局は、“ひと”なんですよね。 だから博展さんにお願いしたいというメンバーが多くいるんだと思います。

未来の事業デザインの解像度が上がったプロジェクトになりました。


– 最後に、今回のプロジェクトを振り返っていかがでしたか?

一般的に周年プロジェクトはこれまでの軌跡を振り返るような企画が多いと思いますが、今回はこれからのゴールドウインの姿を垣間見えたイベントとなりました。

会期中の現場スタッフはゴールドウインの社員が担当していたのですが、社員自身が実際に遊具で遊んでいる子どもたちと一緒に楽しんでいたんですよね。これが、会社の未来の事業デザインの解像度を上げたと思っていますし、企業として我々がどうあるべきか、どうなっていくべきかという問いに対する答えの意思統一ができたと思っています。そんな機会を博展さんと共に実現できたことは、非常に良かったと思っています。

和田:ゴールドウインもブランドが増えたこともあり、社内で統一した価値観やコンセプトがどうしても持ちづらくなってきたなかで、全てのスポーツの起源は「遊び」であることを社内で再認識できたと思います。ゴールドウインというものづくりの会社が、今回のように、遊具を提供し未来のアスリートが育つ公園をつくる「ことづくり」をしたことは、我々にとって大きな転換点になったと感じています。

宮村:そんな機会を共に実現することができ、我々も嬉しいです。

博展メンバーの間でも、「ゴールドウインさんとこういうことやりたいね」とか、「やったことないことを実現させたいよね」とよく話しています。先ほど山屋さんが“仲間”と表現されていましたけど、普段言葉にされることは無くても、そう感じていただけていることが伝わっていますし、我々もそう感じてます。今後もご一緒できたら嬉しいですね。

青栁:そうですね。やっぱりゴールドウインさんと一緒に仕事をするのはとても楽しいです。このようにお互い高め合いながら創り上げていく関係性というのは、そう簡単に築けるものではないと思うので、非常に貴重だと感じていますね。これからもよろしくお願いします。

OVERVIEW

CLIENT株式会社ゴールドウイン
PROJECTPLAY EARTH PARK
VENUE東京ミッドタウン、富山県富岩運河環水公園、富山県美術館

CREDIT

プロデューサー 佐藤光太、宮村直人
デザイナー 青栁龍佳